注目されている「睡眠負債」
睡眠不足が借金のように積み重なっていく「睡眠負債」という言葉が注目されています。睡眠不足はその日、その場限りの問題ではなく、累積して心身に悪影響を及ぼすおそれがあるという報告もあります。
厚生労働省が毎年調査している「国民健康・栄養調査(平成27年)」によると、男性も女性も、2割以上が「睡眠全体の質に満足できなかった」と回答しています。
また、「睡眠時間が足りなかった」との回答が、男性は2割以上、女性は約3割を占め、中でも男性では30歳代、女性では20歳代および40歳代で約4割がそのように回答しています。
1日の平均睡眠時間が6時間未満の割合は、ここ数年で増加傾向にあり、睡眠の妨げになっていることは、男性では「仕事」、女性では「育児」「家事」という回答が多いようです。
多忙でなかなか睡眠時間を増やせない現代人。睡眠の「質」をあげることが着目されています。特に眠り始めの時間帯の睡眠の質が重要であり、そのために必要なのは、スムーズに眠りに入ることのようです。
参考:西野精治「スタンフォード式 最高の睡眠」
参考:厚生労働省:平成27年「国民健康・栄養調査」の結果
なぜお風呂が眠りに関係するの? 体温と眠りの関係とは?
小中学生のころ、水泳の授業の後で急激な眠気に襲われた経験はありませんか?
実はここに良質な睡眠のヒントが隠されています。
水泳は全身運動なので、授業を終えたころには血流が良くなり体温が上がっています。その体温がぐっと下がり始めたころ、ウトウトと心地よい眠気がやってくるのです。というのも、私たち人間の体は体温が下がり始めると眠くなるようにできています。
しかも、体温の下がり方が急であるほど眠りにつきやすいと言われています。水泳の後の眠気は自然の摂理にかなっていたんですね。
グラフで確認してみましょう。
上のグラフは運動した場合としなかった場合の体温の上り下がりを調べたもの。下のグラフは、運動をした場合としなかった場合の睡眠の深さを調べたものです。
両グラフを重ねて見ると、運動をして体温がいったん上がった時点では覚醒するものの、体温がぐっと下がり始めると深い眠りに落ちているのがわかります。
つまり、スムーズな入眠には都合のよいタイミングで体温を上げ、下がり始めたところでお布団に入るのが効果的ということ。
ではどうやって故意に体温をあげれば良いのでしょうか? そこで登場するのが我らがお風呂! 適度な運動と同様、入浴は全身の血行を良くして体温を上昇させてくれます。
お風呂の入り方で睡眠の質がアップ!? 【眠りを誘う入浴方法】
上の図は、環境温度の影響を受けにくい身体の深部の温度である耳内の上昇温度を入浴方法別に比較したものです。入浴方法によって差がみられます。
スムーズな入眠に理想的な体温上昇の目安は0.5℃程度※と言われています。
同じ10分の入浴で比較した場合、シャワー浴に比べ全身浴の方が温まりの効果が高く、また、ぬるめのお湯での半身浴でも入浴時間を長めに取ることで、全身浴と同じくらい温まることがわかります。お湯の圧迫感が苦手な方には、浴室を温めて、38℃の半身浴を行う方法もおすすめです。
就寝直前に熱いお湯に入ると覚醒しやすくなるため、お湯の温度は40℃以下、就寝の1時間から2時間前に入浴を済ませておくとよいでしょう。
※体温上昇や睡眠には個人差があります。時間や温度はあくまで目安です。
※参考:足利大(小林敏孝氏)日常生活における快適な睡眠の確保に関する総合研究
眠りを誘うツボシャワーとは?【眠りを誘う入浴方法】
安眠点(耳の後ろあたり)
耳たぶのうしろの骨沿いに安眠点があります。安眠点を刺激すると緊張感がほぐれ、自律神経のバランスよくなります。温水シャワーを2~3分当てましょう。
足先全体 足先には様々なツボが集中しており、第二の心臓といわれるほど。足先の冷えの解消、血行の促進も兼ねて足先全体に温水シャワーを当てましょう。
参考:東京ガス都市生活研究所「しあわせバスタイムレシピ」
眠りを誘うアロマバスとは? 【眠りを誘う入浴方法】
ラベンダーは心身にリラックスを与えてくれるので、ストレスを緩和して張りつめた神経を癒し、安眠に役立ってくれるでしょう。
フランキンセンスは浄化の精油としてヨーロッパでは家庭に常備されていると言われています。呼吸器のトラブルをサポートしてくれるので咳、気管支炎、ノドの痛みがある時にも適していると言われています。
グレープフルーツの爽やかな香りがリラクゼーションを誘います。
(レシピ&コメント提供/アロマサロンセラピュア 小澤智子先生)
※アロマの容量を守りましょう
※レシピはあくまでも参考に。自分がいい香りだと思ったものが、その時あなたの体が欲している精油です。自分が好きだと感じる香りからお試しください。
※妊娠中の方や幼児の使用には注意が必要です。
眠りを誘う浴室環境とは? 入浴前に◯◯すること!?
心身ともにリラックスできるよう、浴室環境を整えるのも大切です。
気持ちよく入浴するためにも、入浴前に浴室を暖めておきたいもの。
そんな時に活躍するのが、「浴室暖房」や「ミストサウナ」です。
寒い浴槽と熱いお湯の温度差は体に負担がかかります。浴室はもちろん、脱衣室も暖房して温度バリアフリーを実現しましょう。
入浴前にスイッチオンしておけば、浴室全体がムラなく暖まります。入浴中のヒートショックをなくすには、安心して入浴できるよう浴室と湯温との差を少なくすることが必要です。
ミストサウナは、高温で低湿度のドライサウナと異なり、低温・高湿度で息苦しくならず、全身がじんわりと潤いに包まれます。
上のグラフは、入浴後の体の温かさを比較したものです。
ミストサウナ浴はシャワー浴よりも体の中まで入浴後の温まりが続きます。
浴室全体を温めるので、洗い場にいても寒くありません。洗い場で体や髪を洗いながら、同時にミストサウナで体の中まで温められるので、湯船にゆっくり浸かる時間がない時や、忙しい方にもおすすめです。
○各効果は個人により異なります。
○浴室の大きさにより、浴室のミスティの立ち上がり時間や浴室内の乾燥時間等が異なります。
○ミスティの注意事項等は取扱説明書をご参照ください。○画像はイメージです。実際の商品とは異なります。
おわりに
いかがでしたか? 入浴と眠りの関係についてご紹介しました。
時間がなくてついシャワーで済ませてしまう…なんてこともあるかもしれませんね。
良質な睡眠は、一日の疲れを解消し、心身の健康のためにも必要不可欠です。改めて、入浴タイムを見直してみてくださいね。