重曹とベーキングパウダーはどう違う? 膨張剤の基本と性質

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実は、ベーキングパウダーのベースとなる主成分は重曹です。化学名は炭酸水素ナトリウムで、弱アルカリ性の性質があります。そのため、油汚れなど酸性の汚れを落とす掃除目的でも使われることがあります。
ベーキングパウダーは、この重曹がより安定して膨らみやすいように、成分を調整したものです。主成分が同じであれば代用できそうにも思えますが、管理栄養士の中村りえさんは「この二つには、性質や反応のタイミングに決定的な違いがある」と言います。
徹底比較:重曹 vs ベーキングパウダー

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それぞれの特徴を整理すると、上の表の通りになります。最大の違いは、ベーキングパウダーは水分と加熱で持続的に膨らみ続けるのに対し、重曹は加熱時に一気に膨らむ点です。
重曹の特性

Rie Nakamura
重曹は化学名を「炭酸水素ナトリウム」といい、100%単一の成分からなる、弱アルカリ性の物質です。重曹を使うと、生地が黄色っぽく、焼き色が強くつきます。これはアルカリ性の重曹の影響で、メイラード反応が促進されるためです。
また、重曹が加熱されると分解され、二酸化炭素と「炭酸ナトリウム」が生成されます。生成された炭酸ナトリウムによって、独特の苦味や塩味が残ります。そのため、繊細な洋菓子よりも、黒糖や小豆など味の強い材料を使う和菓子や、色を強調したいチョコレート菓子に適しています。
中村さん「どちらも膨らませる働きはありますが、重曹はやや苦味があり、膨らむ力も強めです。代用するなら、ベーキングパウダーよりも使用する量を少なくする必要があります。また、黄色い色味と独自の風味があるため、和菓子に向いています」
しっかりした焼き色をつけたい場合や、どら焼き、おまんじゅう、温泉まんじゅう、カラメル焼きなど、生地の厚みを薄く仕上げたい生地なら、重曹が良いでしょう。重曹を使うと生地が横に広がり、しっとりとした独特の食感と香ばしい焼き色が出ます。
ベーキングパウダーの特性
ベーキングパウダーは、重曹に「酸性剤」と「コーンスターチなどの分散剤(遮断剤)」を配合したものです。ベーキングパウダーの場合、酸性剤が重曹のアルカリ性を中和するため、苦味や変色を抑え、素材本来の風味を引き立てます。
アルカリ性の重曹に酸性剤を加え、置いておくと空気中の水分が加わり、化学反応が始まってしまいます。そこで、保存中の反応を防ぐために加えられるのが分散剤です。分散剤には保存性を高め、酸性剤と重曹が保存中に反応してしまうのを防ぐ役割があります。
中村さん「ベーキングパウダーは、ふっくら膨らませたい場合や、素材の味や色味を生かしたい場合にぴったりです」
スポンジケーキやマフィン、パンケーキなど、縦にふっくら仕上げたい生地には、ベーキングパウダーが向いています。
焼き上がりを徹底比較:重曹 vs ベーキングパウダー

Rie Nakamura
実際に中村さんが蒸しパンを作る際に、重曹とベーキングパウダーを使い、仕上がりを比較したのが、上の写真です。左がベーキングパウダーを使ったもの、右が重曹を使ったものです。

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割ってみると、ベーキングパウダー使用の蒸しパン(左)は気泡が均一で、ふんわりと膨らんでいます。一方、重曹使用の蒸しパン(右)は真ん中に気泡が固まり、生地全体がもっちりとした仕上がりです。
中村さん「重曹は膨らませる力が強く、また一気に起こるため、均一に膨らませられず、中が空洞になってしまいました。苦味もあるため、合わせる材料を選びます」
ベーキングパウダーの場合、水分と熱によって持続的にガスが出続けるため、細かく均一な気泡が生まれます。それにより、ふんわりやわらかい食感になります。
重曹とベーキングパウダーの歴史

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重曹の起源には諸説あり、紀元前ともいわれています。パンなどのふくらし粉として使用されてきたようです。日本では小麦粉、重曹、黒糖などを混ぜて蒸したものが、ソーダ菓子などと称されてきました。
一方、ベーキングパウダーの始まりは19世紀。たまたまレモン汁を加えたところ、重曹による苦味やニオイが抑えられたことがきっかけだったという説もあります。欧米で開発され、19世紀半ばからアメリカで工業化されました。日本での始まりも諸説ありますが、昭和初期に株式会社大宮糧食(当時、アイコク社)が製品化し、戦後は小麦粉の普及とともに一般家庭にも広まったともいわれています。
参考:農林水産省「食文化>うちの郷土料理」
ふっくら仕上げる! 重曹とベーキングパウダーの使い方のコツ

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重曹を使う場合のコツ
重曹は和菓子の他に、アメリカンクッキーのように表面に強い焼き色をつけ、表面のカリッとした食感と中のもちっとした食感の両方を味わいたい場合にも適しています。その他、山菜のアク抜きにも使用できます。
苦味や黄色っぽさが気になる場合は、レモン汁や黒糖などの酸性の材料を加える方法も。酸性の物質を加えることで、化学反応が起こり、安定して均一に膨らませる効果が期待できます。
ベーキングパウダーを使う場合のコツ
ベーキングパウダーは「水分」に触れた瞬間から、ガスの発生が始まります。そのため、液体を混ぜ合わせたら、時間を置かずに、すぐオーブンに入れることが鉄則です。放置すると、焼く前にガスが抜けてしまい、十分な膨らみが出なくなります。
また、ベーキングパウダーは非常にデリケートな物質です。水分に触れると反応が始まり、熱によって加速します。コンロの近くやシンク下は避け、湿気の少ない冷暗所に保管してください。さらに、開封後は空気中の湿気を吸収して徐々に膨張力が低下します。大きなパックを長く使うより、半年程度で使い切れる小容量のものを購入し、缶のふたは、隙間なく閉めるようにしましょう。
メーカーによるベーキングパウダーの違いとアルミフリー製品
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Rie Nakamura
中村さん「重曹は純度の高さにより、食品用と掃除用に分かれているくらいの違いで、基本、どのメーカーで購入しても、大きな違いはありません。ベーキングパウダーはメーカーにより成分が多少、異なります。同じ小さじ1でも4gの製品と3gの製品があります。ベーキングパウダーは、いろいろ使って試してみるのもおすすめです」
上の写真は、各社のベーキングパウダーを使って蒸しパンを焼き、仕上がりを比べたものです。膨らみ方の違いがわかります。
従来、ベーキングパウダーには、安定剤としてミョウバン(アルミニウム含む)が含まれていましたが、健康意識の高まりから、現在は「アルミフリー」の商品も市販されています。ミョウバン不使用でも、技術革新により十分に安定した膨らみが得られます。
困ったときの代用アイデア集:重曹・ベーキングパウダーがないときの対処法

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中村さん「それぞれ、違った食感、味わいになるため、完全な代用にはなりませんが、異なるものとして違いを楽しんでみるのもおすすめです。マフィンをドライイーストで作るのも、もっちりした独特の食感になっておいしいですよ」
ベーキングパウダーを重曹で代用する場合
膨らませる力が強いため、控えめに使うのがコツです。量の目安は、ベーキングパウダー指定量の半分(粉重量に対して1〜1.5%)が目安です。苦味を抑え、反応を助けるために、小さじ1程度のレモン汁や酢を加えてください。酸が加わることで、アルカリが中和され、色が白く風味も良くなります。
重曹をベーキングパウダーで代用する場合
重曹と比べ、ベーキングパウダーの方が膨らませる力が弱いため、多めに使う必要があります。量の目安は、重曹指定量の2倍くらいの量が目安です。
ベーキングパウダーをドライイーストで代用する場合
化学反応ではなく「発酵」を利用するため、イーストの餌となる砂糖が必要です。ケーキのような、ふわっとした食感ではなく、パンに近いモチっとした弾力のある質感になります。また、30分〜1時間以上の発酵時間が必要なため、クイックブレッドの場合には完全な代用にはなりません。
ベーキングパウダーをホットケーキミックスで代用する場合
すでにベーキングパウダーと薄力粉、砂糖が含まれています。使用する際は、レシピ内の薄力粉と砂糖の量を差し引いて調整してください。
ベーキングパウダーを天ぷら粉で代用する場合
すでにベーキングパウダーとでん粉が含まれています。甘みがないため、お菓子作りの際は、砂糖を適量追加してください。また、でん粉の分、薄力粉の量も調整する必要があります。
おわりに
縦にふんわりと膨らませ、素材の味わいを生かしたいならベーキングパウダー、横に広がり、香ばしく焼き色をつけたいなら重曹を選びましょう。この違いを論理的に理解することで、仕上がりのクオリティーが劇的に向上し、万が一の際にも代用できるようになりますよ。
記事監修:株式会社大宮糧食
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