アウトドア用の熱源は災害時の強い味方

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アウトドアで食事を作ったり、コーヒーを楽しんだりするときには、携帯用のバーナーやカセットコンロなどを使います。
キャンプごはん作りに欠かせないツールは、実は災害時にも強い味方になるのだそう。
CAMMOC所属のフードコーディネーター三宅香菜子さんに、アウトドアで使うバーナーやカセットコンロについて教えてもらいました。
コンパクトで便利なアウトドア用バーナー
アウトドア用バーナーはガスや液体燃料、固形燃料などを燃焼させる携帯用のガスコンロで、湯沸かしや調理に使えます。
バーナーには、火口が1口の「シングルバーナー」と、2口の「ツーバーナー」がありますが、よりコンパクトなのは前者です。
「わが家のシングルバーナーは小型ですが、それでも20cm程度の鍋が置けるので便利です。子どもが2人いる4人家族なので、いつもはアウトドアでもカセットコンロをメインで使いますが、少量のお湯を素早く沸かしたいときなどにシングルバーナーはとても便利です。何よりコンパクトで軽量なので防災グッズとして用意するのもよいでしょう」(三宅さん)
シングルバーナーの種類

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分離型シングルバーナー

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直結型シングルバーナー
「シングルバーナーは、大きく分けると、バーナーとガスボンベが直結している直結型とホースなどでつなぐ分離型の2タイプがあります。上の画像の左側が分離型で、こちらのほうが大きな鍋を置いても安定しやすいです。直結型はよりコンパクトなことが特長です」(三宅さん)

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分離型(左)と直結型(右)のシングルバーナーを折りたたんだところ
どちらも折りたためますが、写真のようにたたんだときの大きさには差があります。
「どちらが使いやすいかは好みですね。ほかにも多くの種類のシングルバーナーがありますよ。私はネットで購入しましたが、重さや組み立て方も違いますので、アウトドアショップなどで実際に手に取って自分が使いやすそうなものを選んでみるのがよいかもしれません」(三宅さん)
シングルバーナーで作れる食事量の目安
お湯を沸かすだけでなく、調理もできるシングルバーナーですが、コンパクトなため使用できる調理器具も限られています。そのため、作れる飲み物や料理は、基本1~2人分が目安です。
アウトドアでも役立つカセットコンロ

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「わが家ではアウトドアで2つのカセットコンロを使用しています。上の写真の左のものは一般的な家庭用カセットコンロ。右のものはアウトドア用です。アウトドア用は、頑丈で風に強く安定感があるので外で使うときに頼りになる存在です」(三宅さん)
三宅さん宅で使われているタイプのカセットコンロのほかに、最近では、よりコンパクトで、風防にもなるふたが付いているなど、戸外での携帯に便利なタイプのカセットコンロもあります。
バーナー? カセットコンロ? 選ぶ基準とは
三宅さんに、災害用で使用する場合のカセットコンロやバーナーを選ぶ基準を伺いました。
「まずは、外に持ち運ぶかどうか。持ち運びしやすいのはバーナーですが、持ち運ぶ場合の移動手段を考えてどちらにするかを決めるとよいでしょう。あとは調理できる量もポイントです。大人数分の料理をする場合には、大きめの鍋を置いても安定感のあるカセットコンロがおすすめ。1人分を作る場合や小さめの調理器具を使う場合、お湯を沸かすなど、ちょっとした調理での使用はシングルバーナーが活用できます」(三宅さん)
災害時にも役立つアウトドア用のバーナーやカセットコンロですが、三宅さんによると、ニーズによって使い分けるのがよいとのこと。
「まず、持ち運んで使うかどうかを考えてみてください。リュックなどに入れて運ぶならコンパクトなバーナーが適していますし、車に積むならカセットコンロでも問題ありません。
また、調理する量もポイントです。数人分の料理を一度に作るなら、火力があり、大きな鍋やフライパンが使いやすいカセットコンロがおすすめです。小さな調理器具で1人分の料理をさっと作りたい、お湯を沸かして熱い飲み物が作れればよいといった場合には、シンプルで場所をとらないシングルバーナーが威力を発揮します」(三宅さん)
バーナーやカセットコンロと一緒に用意しておきたいアウトドア用ツール

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バーナーに限らず、アウトドア用のアイテムはどれも実用的なだけでなく、丈夫なことも魅力です。災害への備えに適していることはもちろん、日常生活に取り入れることでQOLが上がりそうですね。
三宅さんにバーナーやカセットコンロ以外のおすすめアイテムを伺いました。
シェラカップ

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「シェラカップは便利ですよ。直接火にかけてお皿としても使えるし、目盛りが付いているので計量カップとしても役立ちます」(三宅さん)
上の写真はシンプルなシェラカップ。小さいお子さんがいるご家庭でも気がねなく使えますし、地震のときも安全に保管できる点も魅力です。
「シェラカップはステンレス、チタン、アルミといったじか火で料理できる素材のものがほとんどですが、プラスチックやシリコンなど、じか火NGの素材のものもあるので、注意して選びましょう」(三宅さん)
ホットサンドメーカー

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「ホットサンドメーカーは、フライパン代わりにもなる活用度大のアイテムです。サンドイッチだけでなく、焼きおにぎりを作ったこともあります」(三宅さん)
パンの耳までカリカリに焼けるホットサンドメーカーは子どもにも喜ばれそう。焼き印をつけられるタイプもあるので、普段の食事も楽しくなりそうです。お子さんが好きな具材をいろいろ用意して、一緒にホットサンドを作るのはおうちキャンプのメインイベントにもなりそうですね。
防災用品としても役立つホットサンドメーカーを選ぶポイントを三宅さんに教えてもらいました。
「停電に備えて電気式ではなく直火にかけて使えるタイプであること。洗う水がない場合もあるのでフッ素樹脂などでコーティングされていてこびりつかないもの。また、上下で分離できるものだと、単体でフライパンとしても使用できるので便利ですよ」(三宅さん)
アルカリ電解水スプレー

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「アウトドアでの食器洗いや調理器具をクリーンにするアイテム、アルカリ電解水スプレーを持っておくと便利です。シュッとひと吹きするだけで消臭・殺菌効果もあるので、水や一般的な洗剤を使えない災害時にも役立ちます。わが家では普段から調理器具などの掃除に使用していますよ」(三宅さん)
吹きかけるだけなので子どもにお手伝いとして頼めそうですね。
災害時にも役立つ「おうちdeキャンプごはん」レシピ

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アウトドアバーナーやカセットコンロを使って作れる、三宅さんのおすすめレシピを教えていただきました。覚えておくと災害時にも役立ちます!
基本の白ごはん

提供:三宅香菜子
「まずはバーナーやカセットコンロでの調理に慣れるため、シンプルにごはんを炊いてみることから始めてみてはいかがでしょうか。いくら防災用アイテムをそろえていても、実際の災害時に慣れていないものを使うのはストレスになってしまいます。いざというとき、安心して使うためにも、ぜひ基本のごはんを炊いて練習しておきましょう」(三宅さん)
作り方とコツ
- 米をとぐ
- 鍋に1を入れ水を加え、夏は30分、冬は1時間程度浸水する(水の量は米2合に対して450ccが目安)
- バーナーやカセットコンロに鍋をかけて加熱する
- 水が沸騰したら弱火にして10分炊く
- 鍋のふたを開けてみて、水気がなくなっていれば火を止め、再度ふたをして10分程度蒸らす
お米の炊き方は、ポリ袋に米を入れる湯せん炊飯(ポリ袋炊飯)もあります。詳しくは下記のサイトをご覧ください。
カレーライス

提供:三宅香菜子
炊いたごはんとレトルトカレーを一緒にお湯に入れて温めれば、カレーライスが簡単にできますよ。レトルトカレーの袋は、お湯が沸騰したら鍋に入れるとよいでしょう。
子どもたちもキャンプ気分を楽しみながら、防災食を作るトレーニングになりますね。自然と防災食への興味も深まりそうです。
親子丼

提供:三宅香菜子
やきとり缶詰があれば、調味料がなくても親子丼が作れます。
缶詰を防災備蓄しているご家庭も多いと思うので作りやすいですね。
作り方とコツ
- 耐熱性のポリ袋に卵1個を割入れ、ポリ袋の上から卵を溶くように軽くもみながら混ぜる
- やきとり缶のやきとりを汁ごと1に加え、ポリ袋の口を軽くむすぶ
- 沸騰したお湯に2のポリ袋を入れてふたをし、火を止めて3分余熱で火を通す
- 袋を開けて白いごはんの上に盛る
ホットサンドメーカーで作る焼きおにぎり

提供:三宅香菜子
作り方とコツ
- おにぎり(市販のものでもOK)の表面にしょうゆを少量塗り、かつお節をまぶす
- 焼き面にごま油を塗ったホットサンドメーカーに1のおにぎりを入れる
- 弱火~中火にかけ、おにぎりに香ばしい焼き色が付くまで焼く
おわりに
アウトドア用のグッズは、タフで実用的な頼もしいアイテムばかりです。普段使いもできる調理器具の中には、バーナー、カセットコンロ、ホットサンドメーカーなど、災害時に役立つものがあります。
いざというときに慌てないよう、普段の料理に活用すれば、いつものメニューでも、新鮮な気持ちで料理を楽しめそうです。お持ちの方は、ぜひご自宅でおうちキャンプごはんにトライしてみてはいかがでしょうか。