防災食としてもおすすめ! 干し野菜の魅力

Kanako Miyake
「うまみがギュッ! 干すだけ簡単 はじめてのドライフード」(山と渓谷社)の著者でもあるフードコーディネーターの三宅さんは、登山の行動食として干し野菜の存在を知り、以来、さまざまな干し野菜作りにチャレンジしているとのこと。三宅さんに、防災食の観点も含めて干し野菜の魅力を教えていただきました。
保存性が良い

提供:三宅香菜子
「なんといっても保存性の良さが干し野菜の魅力です。保存状態にもよりますが、風味良く食べるには1カ月から3カ月を目安に食べ切ることを推奨します。それ以上経過しても、しっかり干されたものであれば食べられなくはないでしょう」(三宅さん)
常温で保存できることや、水分が抜けてかさが減って保存しやすい点もメリットといえます。数日で鮮度が落ちてしまうものが多い生野菜に比べて、各段に日持ちすることは防災食としても心強いですね。
うまみが凝縮している
干し野菜は、その特徴的なおいしさも魅力だと三宅さん。生の野菜の青っぽさはなく、噛めば噛むほど滋味あふれる味わいです。
「干すことでうまみ成分が凝縮されているので、料理に使うとだし代わりになり、少量の調味料でも味わい深く仕上がることもメリットです」(三宅さん)
干すことで栄養も増す

提供:三宅香菜子
「野菜は天日干しすることで栄養価が増すことがわかっています。災害時には野菜が取りにくくなることも考えられるので、野菜不足を補える点でも干し野菜はおすすめです。インスタントラーメンに干し野菜をプラスするなど、手軽に活用できることも魅力です」(三宅さん)
手作りの干し野菜があれば、レトルトの防災食にプラスして栄養が取れますね。
普段の食事に取り入れやすい
乾燥野菜は、常備菜の材料としての役割を果たすので、普段の食事に活用しやすいことも魅力です。
「水分が少ないので炒め物に使っても水っぽくなりません。形が崩れにくく、味がしみやすいので煮物にもぴったりです。酢漬けやオイル漬けなどにしても、生野菜を漬けた場合とは違う味わいと食感になるので、漬け込んで常備菜にしても良さそうです」(三宅さん)
ちなみに、干し野菜は水で戻したり、加熱しないと食べられないのでしょうか?
「干し野菜は水戻ししてから調理して食べるもの、と思い込んでいる方が多いかもしれません。でも、生で食べられる野菜であれば、加熱しなくても食べられますよ。切り干し大根をおやつとしてそのまま食べている人もいます」(三宅さん)
実際、切り干し大根はそのまま食べても、さきいかのような味わいがあり、食感も特徴的でおいしいそう。また、ドライトマトなども同様にそのまま食べられそうですね。
「切り干し大根はドレッシングで戻して、サラダとして食べるのもおすすめです。少量のドレッシングで軽く戻すと、やわらかくなりすぎず、ポリポリとした食感が残るので、おすすめですよ」(三宅さん)
余った野菜でもOK! 干し野菜を作ってみよう

uchicoto
干し野菜の基本的な作り方を三宅さんに教えてもらいました。
- 野菜を洗い、水分をふき取る
- 野菜を1cmほどの厚みに切る
- 野菜同士が重ならないように注意してざるに並べる
- 天日干しする
- カラカラの状態になるまで乾かす
「完全に乾き切っていないセミドライの状態は冷蔵庫で保存する必要があるため、防災食として常温保管するなら、しっかり乾燥させカラカラの状態まで干したほうが良いです」(三宅さん)
干すときは、ざるや網を使うのが一般的ですが、段ボールで干すやり方もあるそうです。
干し野菜に適した野菜は?
「干し野菜は防災備蓄としてだけでなく、普段の食卓でもとても役立つ素材なので、日頃からさまざまな野菜で干し野菜作りにチャレンジしてみてください」(三宅さん)
特に干し野菜に向いていて作りやすい野菜をご紹介いただきました。
舞茸
「私のイチオシは舞茸です。干すとポルチーニ茸のような濃厚な香りが漂い、食感もさらに良い感じになります。干し椎茸が苦手なお子さんでも、干し舞茸なら食感が違うので食べられるかもしれません。わが家では干し舞茸の炊き込みご飯をよく作ります」(三宅さん)
- 干し方
食べやすい大きさに裂いて干す。
セミドライなら2時間から半日程度、しっかり干すなら1~3日程度。
白菜
「干し白菜もおすすめです。セミドライにした干し白菜をステーキにすれば食感が良いだけでなく、甘みやうまみもぐっと増します。ベーコンと一緒に焼くのもいいですね。味付けは塩胡椒だけでも、ステーキソースやワインビネガーで作ったソースを添えてもおいしいです。完全に乾燥させたものは水で戻して炒め物や漬物に使うのもおすすめです」(三宅さん)
- 干し方
芯をつけたまま1/6株の厚みに切り、天日干しする。ステーキにする場合は半日程度干してセミドライに。
保存用に乾燥する場合は、大きめのひと口大に切り、1日以上かけてしっかり乾燥する。
きゅうり
「きゅうりは干してから漬物にするとおいしいですよ。きゅうりの干し野菜はカビやすいので作り方が難しいともいわれますが、一年中手に入る素材なので、乾燥シーズンの冬から春先にトライしてみてください。冬なら半日干すだけで乾きますよ」(三宅さん)
- 干し方
1cm程度の輪切りにして干す。
セミドライであれば半日、しっかり干すなら2日程度。
ぶどう
「野菜ではありませんが、ぜひ作ってみてほしいのが干しぶどうです。ぶどうは種なしのものを選びましょう。1日~3日くらいで乾燥しますが、干している最中につまみ食いしたくなるほどのおいしさです! 干しながら、毎日味見をして変化を楽しんでいただきたいです。自然な甘さで、子どもたちのおやつにもぴったりですよ。大きさは小さくても大きくてもおいしいのですが、小さいほど早く乾燥できます。また、大きなぶどうを時間をかけて干しぶどうにしても、おいしいです」(三宅さん)
- 干し方
皮ごと半分に切って干す。
セミドライであれば半日程度、しっかり乾燥させる場合は1日~3日程度。
納豆
「こちらも野菜とは違いますが、干し納豆もおいしいですよ。納豆を干すというのは意外かもしれませんが、4~5日かけて干し上がったものはそのまま食べてもおいしいですし、味噌汁に入れるのもおすすめです」
- 干し方のコツ
付属のタレを加えてなるべく粘りが出ないように混ぜてから、オーブンペーパーの上にできるだけ広げるようにして干す。
皮や端など捨てる部位も乾燥させればおいしいブイヨンに

uchicoto
「野菜の皮や切れ端などを冷蔵庫に保管し、ある程度たまったらまとめて天日干しかオーブンで乾燥させてから、フードプロセッサーで粉末状にするとブイヨンとして使えるんですよ。市販のブイヨンとは違い添加物も入っていない自然なおいしさが楽しめます。また、元々捨てる部位なのでコストをかけず作れますし、生ごみが削減できるので環境にも優しいと、いいことづくめ。ぜひ作ってみてください。私は干し野菜の手作りブイヨンを作り始めてから、市販のブイヨンを買わなくなりました」(三宅さん)
上の写真のように、三宅さんは野菜くずはジッパー付きの袋に入れて冷蔵庫保管し、完成した粉末ブイヨンは瓶に入れて保管しているそうです。
干し野菜作りの注意点やコツ

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はじめて干し野菜を作る方へのアドバイスを三宅さんに伺いました。
「天気予報を必ずチェックしてください。良い天気が続きそうなときを選んで干しましょう。基本的には屋外で干しますが、湿度が気になるタイミングでは屋内にとりこんだり、冷蔵庫で乾燥させると良いでしょう。ただ、日光を当てるという意味では屋外がおすすめです」
ベランダや庭がない場合は
「できるだけ窓辺に置くなどして日光を当てるようにして干してください。乾燥シーズンであれば窓を開けて外気にさらすことも大切です」(三宅さん)
青菜を干したい場合は
「青菜を干す場合は、用途によって干し方や切り方を変えましょう。生のまま干すとえぐみが強くなるので、塩茹でしてからしっかり水気を絞ってから干します。生のまま干す場合は、細かく刻んで干し、味噌汁の具などに用いると良いでしょう」(三宅さん)
虫や鳥などの害を避けるには
「私自身は虫の被害に遭ったことはありませんが、干し柿をカラスに持っていかれたことがあります。それほど心配しなくても大丈夫かもしれませんが、もし不安ならネットに入れて干すことをおすすめします」(三宅さん)
干し野菜の保存法

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しっかりと乾燥させた干し野菜は、瓶やジッパー付き袋などに乾燥剤とともに入れ、保管しましょう。直射日光に当たる場所や湿気の多い場所は避けてください。
セミドライのものは冷蔵庫で保管しましょう。
干し野菜を使ったおいしいレシピ
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画像提供:三宅香菜子
三宅さんに干し野菜を使ったおすすめのレシピを教えていただきました。
切り干し大根のサラダと干し野菜の味噌汁

提供:三宅香菜子
「切り干し大根と干し人参をヨーグルトで戻したサラダです。戻し加減で食感が異なるのも乾燥野菜の魅力の一つです。味噌汁の具材は全部干し野菜。干したえのき・わかめ・人参・しめじ、だしは入れずに味噌だけで作りました。干し野菜はだしが出るため、だし不要でも十分おいしいんです」(三宅さん)
干したきのこの炊き込みご飯

提供:三宅香菜子
干した舞茸や椎茸などは炊き込みご飯の具にするのもおすすめです。きのこ類は干すと香りも強まるし、良いだしも出るのでぜひ作ってみてください」(三宅さん)
おわりに
作り方が難しそうに思える干し野菜ですが、三宅さんのお話をきくと、案外簡単に作れることがわかりました。干し野菜は保存性も良く、場所取らないので、防災備蓄にもぴったりです。普段の献立にも干し野菜を取り入れれば、食感や味に変化をつけられます。日常と非日常の差をなくすフェーズフリーな防災は、毎日の食卓をぐっと豊かにしてくれそうですね。料理の幅を広げながら、防災対策もできる干し野菜作りを始めてみませんか?