「ロープワーク」ってなに?
Ayako Uchidate
「ロープワーク」は、キャンプや登山などのアウトドア経験のない人にとってはなじみがない言葉かもしれません。
「ロープワークとは、ロープの扱い方や結び方のことを指す言葉です。太古の昔から、人類はロープを使って、狩りの道具として石を棒にくくりつけたり、獲物をつるしたり、ロープワークを活用してきました。ロープワークという言葉自体が広まったのは船舶の歴史と関係が深いようです。船をロープで固定する際にその技術が活用され、現在の船舶免許の試験でもロープワークの技術が求められます」(内舘さん)

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このように人類の英知ともいえるロープワークですが、現代では主にアウトドアシーンで活用されています。
例えば、テントやタープを張る、ランタンやハンモックを木につるすなど、さまざまな場面でロープワークを使います。
「資源ごみをまとめるときや、ほどけないように靴ひもを結ぶ場合など、日常生活でもロープワークを活用できる場面は少なくありません」(内舘さん)
使えるアイテムが限られる災害時にも役立つ
「ロープワークの魅力は、専用の道具がなくともロープだけでいろいろな問題が解決できること。結び方はいくつもありますが、基本的なロープワークを覚えるといろんな場面で活用できますよ」(内舘さん)
使えるアイテムが限られる災害時には、ロープワークを身につけておくと役に立つ場面が多そうです。
「災害時には、例えば、避難所で隣の世帯と目隠しのために大きな布をつるしたり、洗濯ものを干すとき、それに荷物やゴミなどをしっかりとまとめる時などにも使えると思います」(内舘さん)
他にも、内舘さんに、腕を骨折した時に手ぬぐい2本を本結びにして三角巾の代わりにする方法も教えてもらいました。
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また、ロープを保管する際には、基本的なロープワークの一つである「棒結び」(下の写真の右側)を使うと、すぐに使える状態でコンパクトに収納できます。写真左の結んでいないロープとは、見た目も大違いですね。
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ロープワーク 覚えてほしい4つの技術
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内舘さんに、災害時に活用できる基本のロープワークである、「もやい結び」「本結び」「自在結び」「棒結び」を教えていただきました。
基本のロープワーク1「もやい結び」

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ロープワークの王道である「もやい結び」。
「結ぶとほどけにくく、それなのにほどきたい時にはするっとほどくことができるのが一番の特徴です。ポリ袋をまとめる際、雑に結ぶとほどくのにひと苦労することもありますが、もやい結びならそのストレスがなくスルっと外れるので便利です。輪を作ってものを固定したい場合も使えます」(内舘さん)
テントやタープとポールをロープでつなぐ時、犬のリードを柱などにつなぐ時、ランタンなどをつるす時など、さまざまなシーンで利用できる結び方です。
もやい結びの結び方とコツ
1. 丸く穴をつくる(数字の「6」のイメージ)

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2. 穴に向かって「下」から通す

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3. さらに「下」から通す

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4. 新たな輪に向かって「上」から通す

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5. 引っ張る

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「6を作って下・下・上」と覚えましょう。

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基本のロープワーク2「本結び」

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ロープ同士をつなぐ時や、まきなどを束ねたり、ゴミをまとめる時にも役立ちます。災害時、散らばったゴミを片付けたくても袋がなくて片付けられないというケースも想定できるので、覚えておくと便利そう。
靴ひもを結ぶときにも向いているので、日常生活に取り入れやすい結び方です。
本結びの結び方とコツ
1. 左右の手で別々のロープを持つ

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2. 右手のロープを下に普通の結び目をつくる

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3. 右手のロープを今度は上にして普通に結ぶ

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4. 左右を引っ張る

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堅結びと本結びの違いは「ほどきやすさ」
結び方「3. 右手のロープを上にして普通に結ぶ」プロセスを、右手のロープを下にして普通に結ぶと堅結びに。
右手のロープの上下を変えて2回結ぶのが本結び、結び方を変えずに2回結ぶのが堅結び。
たったそれだけの違いなのに、本結びのほうがぐっとほどきやすいのです。本結びは覚えておくと便利です。

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本結びのほどき方

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上の写真にあるように、結び目がまっすぐになっている側の上下のロープを上下に引っ張る。

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上下に引っ張ったロープから結び目がゆるみ、ほどける。
基本のロープワーク3「棒結び(まとめ結び)」

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ロープを収納する場合に棒結びを使うと絡まらずに保管できます。
絡まっていない状態をキープしておけば使いたいときにすぐに使えるので覚えておくと便利です。
ロープが何本もある場合も、この結び方をして保管すればロープ同士が絡まることもないので安心です。
結び方とコツ
ただ巻くだけだと途中で絡まってしまうので、八の字に巻いていく「八の字巻き」をすることがポイントです。
1. 親指と小指にロープを挟んで押さえる

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2. 8の字になるようにロープを重ねる

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3. 8の字のロープを指から外す

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4. 8の字の中央の部分を残りのロープで上から下へコイル状に巻いていく

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5. コイル状にしたロープの先を下から引っ張る

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完成です!

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基本のロープワーク4「自在結び」

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自在結びはロープの長さを調整できる結び方。たとえば、避難所で物干しざおの代わりにロープをピンと張りたい場面などでも活用できます。
結び方とコツ
1. 自在結びをしたいところにロープをたらす

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2. 普通に結び、少し離れたところに同じ結びをする

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3. 2個目の結びの輪に再度ロープを通して結び目をつくる

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4. 2個結び目を作ったら、一番下に通す

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輪の大きさを変えるように結び目部分を引くと張り具合が変わります。輪を大きくするとテンションは強まり、小さくすると弱まります。
どんなロープを用意すべき?

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「災害時に使用することも考えるとアウトドアショップで販売されているアウトドア用ロープがおすすめ。最近では100円ショップでも販売されているようです。カラー展開も豊富なので、ぜひ好みのロープを選んでみてください。
蓄光仕様になっているロープなら、昼間に太陽光をあてておくと夜間に光り、暗闇でも視認することができます」(内舘さん)
デザインや色がかわいいものも多いので、ポーチにつけたり、小物を提げるネックストラップ代わりに使うのもおすすめ。気負わずさりげなく、ロープを身近においておくことができます。
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ロープを使わないときはポーチにつけておくのもアイデア。
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アウトドアロープを携帯ライトにつけて首から提げられるアイテムに。小物類にロープをつけておくと、紛失防止にも役立ちそうです。
ロープがないときはどうする?
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アウトドア用ロープがない場合、用途にもよりますが、ビニールひもや麻ひもなどで代用することもできます。ただし、アウトドア用ロープより耐久性が劣るので、使い捨て用と考えるとよいでしょう。
ロープワークを上達させるには

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ロープワークを身につけるベストな方法は、普段から活用することです。靴ひもを結ぶ時や資源ごみなどをまとめる際に積極的に使って、身体で覚えておくことが大切だと内舘さん。
「あとは、とにかく楽しむことです。子どもたちとロープワーク競争をしたり、つないだロープの引っ張り合いをして強度を体感したりと遊びの中でトライしてみてください。
子どもには結び目を見せて興味を示してもらうのも一手です。そして、使ったロープは、まとめ結びをしてきれいに収納するのもお忘れなく」(内舘さん)
ちゃんと結べるようになるとうれしいロープワーク。何秒で結べたか自己ベストを記録していくのも楽しそうです。
今回紹介したロープワークは4種でしたが、実はロープワークは3000種以上も存在するのだとか。注)
全制覇は難しそうですが、今回の4種をマスターしたら、他のロープワークにもチャレンジしてみては?
注) 大泉書店・太田潤著「使えるロープワーク」より
おわりに
内舘さんのロープを結ぶ迷いのない手の動きが小気味よく、できた結び目の美しさにも感動しました。また、するっとほどける感触も何とも気持ちがよいものです。
機能美の詰まったロープワークは災害時にも役立つ技術。日常生活に取り入れてみてはいかがでしょうか。