せいろを使った蒸し料理の魅力
せいろを使った蒸し料理のメリットは、蒸気で水分を補いながら食材を温めることでふっくらとおいしく仕上がること。また蒸し料理は栄養素が壊れにくいことも特徴です。肉や魚を蒸すと余分な脂も落としてくれるので、ヘルシーで素材の味を十分に楽しめる料理ができます。
せいろの選び方
「せいろで蒸し料理をしてみたい!」と思ったら、まずはせいろ選びから! 管理栄養士の内山由香さんにせいろの選び方について詳しく伺いました。
【せいろ選び方1】素材
せいろに使用される素材は杉・竹・ひのき・ステンレス・アルミがあります。
杉
杉は軽く、手軽な価格で購入できるのも魅力です。蒸すと杉の香りがほのかにします。ただし、30分以上の加熱は避けましょう。耐久性が弱まってしまいます。
竹
竹は杉よりもやや耐久性はありますが、同じく30分以上の加熱は極力避けた方がよいでしょう。蒸しても香りはないため、調理する食材の香りを生かすことができます。
ひのき
ひのきは杉・竹よりも高価ですが、ふちに厚みがあるため耐久性と強度があり、1時間以上調理したい場合にも向いています。正しく使用すれば長年使うことができます。
ステンレス
ステンレスは木のせいろより、熱伝導が良く、お手入れが簡単です。ただし蒸気を逃がしづらいので、水っぽい仕上がりになってしまうのがネックです。
アルミ
アルミはステンレスより若干価格が安く、特徴はステンレスとほとんど変わりません。
【せいろ選び方2】サイズ
素材を決めたら次はサイズを決めます。
専用のせいろ鍋や蒸し板を一緒に買う場合は別ですが、家にある鍋を活用する場合はその鍋の直径に合わせて選びましょう。鍋の取っ手が出っ張っていてうまくのらないということもあるので、鍋は上面が平らなものを使います。せいろの直径より1~2cm小さいサイズの鍋を使用するとグラつきません。
せいろ自体は15cmから36cmくらいまで展開がありますが、収納スペースの観点から考えると18cm、21cm、24cmがおすすめです。同じサイズを2個持っておけば2段にして同時調理も可能で便利です。
内山さんによると、サイズごとの目安は以下の通り。
- 18cm:1~2人用。普通サイズの肉まんが2個入る大きさ
- 21cm:2~3人用。肉まんが3個入る大きさ
- 24㎝:3~4人用。肉まんが4個入る大きさ
家族構成や用途にあわせ、サイズを選ぶと良いですね。
せいろを購入したら、調理する前にすべきこと
せいろを購入したらまずは「空蒸し」をします。上の写真は竹製のせいろです。この後記事中で行う実験では、全てこちらの竹製せいろを使用しています。
「鍋にたっぷりの湯を沸かして、食材を何も入れていない状態のせいろをのせ、15分ほど蒸します。こうすることで、独特のにおいやほこり、木のあくなどがとれます」(内山さん)
せいろの底には何を敷けばいいの?
「空蒸し」が終わり調理をする際、底部分には何を敷くのが良いのでしょうか。
「油分が多い肉や魚、くっつきやすいシューマイなどを蒸す場合は、せいろの底に敷物を敷くと、せいろが長持ちします。布巾を敷く方法もありますが、お手入れの手間を考えると、野菜やクッキングペーパーを下に敷くのが良いでしょう」(内山さん)
野菜を敷く
「野菜を敷けば見た目もよく、蒸し野菜は料理と一緒に食べることができます。シューマイにはレタスやキャベツなどの葉もの野菜が適しています。肉や魚などで高さに余裕がある場合には、葉もの野菜だけでなく、お好みの野菜をいろいろ足すのも良いでしょう。かぼちゃやにんじんなど根菜もおすすめです」(内山さん)
クッキングペーパー
「クッキングペーパーなら使い捨て。洗う手間がなくラクチンですが、布より調理時間がかかることもあります。ペーパーに小さめの穴を数か所空けると、蒸気の通り道ができてムラなく蒸すことができ、余分な脂を落とすことができます。
布巾
「布巾は繰り返し使えて経済的です。使用する前はよくぬらして絞ってから使いましょう。おこわを作るときにも便利です。ただし、しっかり洗って乾燥させて衛生面を保つことが必須です」(内山さん)
せいろは何段まで蒸すことが可能? 重ねる順番は?
準備が整ったら、いよいよせいろで調理をしていきましょう。せいろは重ねて使用することができますが、何段まで蒸すことができるのでしょうか。
「1段ずつ蒸すことをおすすめします。重ねると、下段より上段の方がせいろ内の温度が低くなり、蒸し上がりにムラが出てしまいます。どうしても重ねて調理をしたい場合は、蒸し時間が短いもの(火の通りやすい食材)を上段に置きましょう。例えば、野菜と肉を蒸す場合は、肉を下段、野菜を上段にするとよいです」(内山さん)
なお、冷めてしまったものを温めたり保温するときは、重ねて使うのが良いそう。温めの際は、温めに時間がかかりそうなものを下段、すぐに温まりそうなものを上段に置くのがおすすめです。
実際に、すでに調理済みで温め直しをするだけのシューマイと、根菜類も含めた野菜を使って加熱時間の違いを確認してみました。
上段に野菜&下段にシューマイの場合、下段のシューマイは約5分で火が通り、上段の野菜は約7分半で火が通りました。
一方、上段にシューマイ&下段に野菜の場合では、上段のシューマイは約5分半で火が通り、下段の野菜は約5分で火が通りました。
今回の組み合わせでは上段にシューマイ&下段に野菜とすることで加熱時間を短く、さらにほぼ同時に仕上げることができました。固い根菜類の場合、そのままではシューマイより調理に時間がかかります。薄切りにしたことで、加熱時間を短くすることができました。
素材によって蒸し時間が長くなることもありますので、切り方や上段下段を入れ替えるなど工夫しながら試してみてください。
ガス調理とIH調理でせいろの使い方に違いはある?
内山さんによると、せいろで調理をする際に大切なのは「蒸気がしっかり上がる火加減にすること」。IHでもガスでも仕上がりに差異はありませんが、IHを使用する際は強火、ガスの場合は中火から強火にして調理をすると良いとのことでした。
せいろと電子レンジ、仕上がりの違いは?
「電子レンジの調理は加熱時間が短いのがメリットですが、食材内の水分が一気に加熱して温かくなるため食材がパサついたり固くなってしまったりすることがあります。一方せいろは加熱時間はかかりますが、食材を水蒸気で包み込んで外側からゆっくり温まるため、素材の水分や脂が逃げにくく、ふっくらジューシーに仕上がります」(内山さん)
実際、電子レンジとせいろで茶わん蒸しを作って比べてみると、せいろでは加熱時間が15分かかったのに対し、電子レンジでは3分ほどで固まりました。
短時間で出来上がったのは電子レンジでしたが、その見た目にはかなりの違いが・・・。
左がせいろ、右が電子レンジで加熱したものです。食べてみた食感も、なめらかなのはせいろで加熱した方でした。
特に茶わん蒸しのように食感を大事にしたい場合、時間はかかってもせいろの方がおいしく仕上げることができますね。
せいろのお手入れ方法と、カビてしまった場合の対処法
調理後のせいろは、基本的には洗わずにキッチンペーパーなどで水けをしっかり拭いて風通しの良いところで乾かします。内山さんによると、乾いた後もプラス1日さらに乾かしておくくらい十分乾かすのがコツなのだそう。
「ただし、油がついたりベタついたりしている場合は、洗剤は使わずに水やぬるま湯でさっと汚れを洗い流しましょう。食材がついてしまっていたら、洗剤がついていないスポンジでさっとこすって汚れを取り除いた後、水けをしっかりふき取り、風通しの良いところで乾かします」(内山さん)
油汚れには洗剤を使いたくなりますが、洗剤の成分がせいろに浸透してしまうリスクがあるそう。洗剤を使わないで汚れを落とすには、お湯を使うことや調理が終わってすぐに洗うことがポイントになります。
「保管をする際は、湿度に注意。3~4日に1度使う場合は、そのままの状態で風通しの良い戸棚やラックで保管しても大丈夫ですが、1週間以上間をあけての使用になる場合は、通気性のよい薄めの布や新聞紙で包み、風通りの良い場所で保管します。保管場所に除湿剤を置くのもよいでしょう。新聞紙を使用する際は、湿気を吸いやすいので、定期的に新聞紙を交換することをおすすめします」(内山さん)
ついついやってしまいがちですが、ビニール袋に入れて保管したりキッチン下に収納するのはNG。通気性が悪くなり、せいろがカビる原因になるので避けたほうが良いそうです。それでも万が一せいろにカビが生えてしまった場合はどうすれば良いのでしょうか。
「カビがつき始めたふわふわした状態なら、水洗いをしてカビを取り除きしっかり乾燥させてください。水洗いで落ちないカビは、せいろが乾いている状態のときに紙ヤスリでカビを削り、せいろを殺菌するため水で薄めたお酢の中につけてしばらく置き、水でよくすすいでから完全に水けをふき取り、しっかり乾燥させてください。ただ、カビが大きい場合には処分することをおすすめします」(内山さん)
せいろを使ったおすすめ料理
最後に内山さんにせいろを使ったおすすめ料理を教えていただいたのでご紹介します。蒸しながら温めて調理するせいろは食材のうまみを引き出し、ふっくらと仕上げてくれます。いろいろな料理で意外なおいしさを発見できるかもしれません。
- 手作りシューマイ:豚ひき肉と玉ねぎ、しいたけやたけのこで肉だねを作り、シューマイの皮で包んでせいろに入れて蒸す
- 野菜の豚巻き蒸し:豚薄切り肉にお好みの野菜を巻いてせいろに入れ、蒸す。ポン酢しょうゆや、韓国風のピリ辛ダレにつけていただく
- アクアパッツァ風魚介のせいろ蒸し:白身魚の切り身、あさりやミニトマト、オリーブ、ブロッコリーなどをクッキングペーパーに並べてオリーブオイルや塩、こしょうをして包み、せいろに入れて蒸す
- 昔ながらの固めプリン:卵、砂糖、人肌に温めた牛乳を混ぜて数回こしてなめらかにし、カラメルソースを入れた型に入れて蒸す
おわりに
管理栄養士の内山由香さんに、せいろの使い方とお手入れ方法を教えていただきました。野菜や肉を蒸すための便利なグッズはたくさんありますが、昔ながらのせいろもコツをつかめば意外に便利。ヘルシーな料理を作りたい方はぜひ挑戦してみてくださいね。
あわせて読みたい
体に優しい「豆乳入り茶碗蒸し~梅だれ添え~」
体に優しい豆乳を使ったなめらかな食感の茶碗蒸しです。さっぱり味の梅だれをかけて食欲増進。
蒸したてを召し上がれ!「豆苗とモヤシの梅肉豚巻き」
定番の蒸ししゃぶを梅肉仕立てで。豚肉の旨みと豆苗の香りを梅肉の酸味が引き立てます。