鉄フライパンとは?
鉄フライパンと一言でいっても、製造方法の違いや鉄の厚み、柄の素材の違いなど、実はさまざまな種類があります。
メーカーによっても扱い方法は異なりますが、一般的な鉄フライパンはどのような種類や特徴があるのか、宮野さんに教えていただきました。
鉄フライパンの種類
「一般的な鉄フライパンには、鋳物(高温で溶かした金属を型に流し込み、冷やし固めることで形をつくる方法)や鍛造(一枚の鉄板を加熱したたくことを繰り返すことで形成する方法)があります」(宮野さん)
ちなみに、釜浅商店の看板商品「釜浅の鉄打出しフライパン」は、鍛造で一枚の鉄板を何千回も叩いて形成しているのだそう。鍛造は鉄を何度もたたくことで強度が増し、より長く使用することが可能で、表面には目に見えない凹凸があるため、よりフライパンの油なじみをよくしてくれるのだそう。
さらに、柄の接着部分にはビス留めではなく溶接留めを採用しているため洗いやすく、柄が低くつけられているので、しっかりとふたが閉まりやすいといった工夫が施されているのだそう。
鉄板の厚み
また鉄板の厚みによる違いについて、宮野さんは次のように言います。
「鉄フライパンは『焼く』ことが得意な調理器具なので、蓄熱性や保温性を保つために、ある程度の厚みが必要になってきます。釜浅の鉄打出しフライパンは厚みが2.3ミリと厚いほうですが、厚いことで蓄熱性や保温性が高くなります。そのため食材を入れても温度が下がることがなく、じっくりと火を通すことができるのです。
一方で中華鍋も同じ鉄でできていますが、鉄フライパンと比較すると鉄が薄いため蓄熱性や保温性に欠けます。しかし中華鍋は『炒める』ことを得意とした調理器具で、強い火力で短時間に調理するため、鉄フライパンほどの厚みを必要としません」(宮野さん)
鉄フライパンは蓄熱性や保温性が高いことで、弱火にしても温度が安定し、料理がおいしく仕上がるのですね。
柄の種類
また柄の種類について、宮野さんは次のようにいいます。
「柄の種類にはプラスチックや木製・鉄製などさまざまなものがありますが、プラスチックや木製は熱くなりにくい反面、使っていくうちにどうしてもがたつきやすくなってしまいます。
しかし柄が鉄製であればがたつかず、何十年と使うことができるため、長く使いたいという方には鉄製をおすすめしています。柄のためにフライパンを交換するくらいであれば、鉄の柄に慣れてしまおうという人も多くいらっしゃいます」(宮野さん)
一方で、鉄の柄には注意点もあるのだそう。
「鉄は熱が伝わりやすいので、柄をにぎるときはタオルやミトンを使用してもらうようお客さまにはご案内しています。慣れるまではパッと触ってしまうこともあるかもしれないので、やけどに注意が必要です。しかし柄に長さがあり短時間炒めるくらいの料理であれば、さほど熱くならない場合もあります。加熱具合や調理方法によって気をつけるようにしてください」(宮野さん)
鉄フライパンのメリット
一般的に鉄フライパンは、料理がおいしくなることや耐久性の高さがあげられることが多いですが、実際にどんなメリットがあるのか、宮野さんに教えていただきました。
焼き物や炒め物がおいしく仕上がる
鉄フライパンの魅力の一つに、料理がおいしくなることがあげられます。具体的にどのようにおいしくなるのか、宮野さんに伺いました。
「鉄フライパンはフッ素樹脂加工のフライパンに比べて蓄熱性・保温性が高いので、食材を入れたときにフライパンの温度が下がることがないためおいしく仕上がります。例えば、ステーキの表面はカリっと中身はやわらかくジューシーに、野菜炒めは野菜の水分を出さずに短時間で炒められるので、シャキッと仕上がるのです」(宮野さん)
そして鉄フライパンを買って最初におすすめしたい料理は、「目玉焼き」だと宮野さんは言います。
「鉄フライパンで焼いた目玉焼きはふちや底がカリッとするので、鉄のよさが実感できますよ。シンプルな料理であればあるほど、鉄フライパンの焼き心地がわかりやすくなります。素材をただ焼くだけでも違いを実感できるので、お好み焼きやステーキなど、いろいろな料理を試してほしいです。鉄ならではの焼き心地や仕上がりを一度経験すると、その後も同じクオリティーを求めるようになってしまいます」(宮野さん)
耐久性が優れている
鉄フライパンは耐久性が優れているイメージがありますが、実際、毎日使用することで10年以上、場合によっては一生使えるのだそう。
「フッ素樹脂加工のフライパンは使用頻度が高いほど寿命が短くなっていきますが、鉄フライパンは使えば使うほど寿命が長くなります。
鉄フライパンは使うたびに油膜が蓄積されるので、サビがでにくく、こびりつきにくく、使いやすくなっていきます。一方で月に1回など使用頻度が少ないと油膜が酸化してしまい、サビがでる原因になってしまいます。そのため毎日使っていただくのが理想です」(宮野さん)
鉄フライパンは耐久性が高いため長く使うことができ、より使いやすいフライパンへと成長していくのだそうです。
宮野さん「私たちは鉄フライパンを、育てる道具だと思っています。油膜が蓄積されると油の層が重なり、つやがでているのがわかるようになります。そこまでいくと使いやすいフライパンになっている状態です。革製品を使えば使うほど味がでるように、鉄フライパンも買ったときに比べると表情が変わるので、より愛着が湧きますね」
また鉄フライパンはヘラやお玉など、金属製のツールを使用しても基本的には問題ありません。
「金属のキッチンツールを使用する際も、一般的な炒める程度の力で使用するのであれば問題ありません。しかし、あまりにも力を入れ過ぎると深い傷になってしまい、そこがサビの原因となってしまいます。しかし仮に傷ができてしまったとしても、料理をしているときの油が油膜となり傷をカバーしてくれるので、そこまで心配しなくても大丈夫です」(宮野さん)
鉄フライパンのデメリット
鉄フライパンはメリットが多くある反面、デメリットも存在します。どのようなデメリットがあるのか、宮野さんに伺いました。
重い
鉄フライパンは重いと聞きますが、実際はどうなのでしょうか。
宮野さん「鉄フライパンを初めて使う人は重いと感じることも多いようです。ただフライパンはコンロの上に固定して焼くことがメインの道具で、調理中に持ちあげるシーンは意外と少ないので、重さはそれほど気にしなくてもよいのではと思います。一方でお皿に盛りつけるときなどは、重さを感じるかもしれません」
釜浅商店のスタッフでも、以前はフッ素樹脂加工のフライパンを使用していて、鉄フライパンに変えた方がいたそうですが、重さに関しては使っているうちに自然と慣れていったとのこと。
とはいえ、フライパンの重さに食材の重さも加わるので、最初は少し大変に感じるかもしれませんね。
サビやすい
鉄フライパンは水分に弱く、水分が残っているとどうしてもサビやすくなってしまいます。
「鉄フライパンは水分が天敵なので、湿気が多いところではどうしてもサビがでやすくなってしまいます。フライパンをぬらしっぱなしにせず、食材を入れっぱなしにしないことがサビを防ぐコツになります。また使う頻度が少ないとサビがでやすくなってしまうので、なるべく毎日使用しましょう。そして収納する際は、通気性のよいところにぶら下げてあげるのが一番よいでしょう」(宮野さん)
不向きな料理がある
水分に弱い鉄フライパンには、してはいけない料理や使用方法はあるのでしょうか。
「鉄フライパンには特別やってはいけない料理はありませんが、水を使う調理は油膜をとってしまうので、サビの原因につながります。しかし、ゆで調理などをしたあとに炒め調理などをすれば、また油膜が張られた状態になります。もし、ゆで・蒸し調理が続くようであれば、揚げ物をするとよりサビがでにくくなるでしょう」(宮野さん)
またアクの強い食材を使用すると、鉄と化学反応を起こして料理が黒くなってしまうことがあります。しかしこれは体に害があるものではないので、好きな食材を使って大丈夫だと宮野さんはいいます。
「アクの強い食材だけでなく、トマトなど酸性の食材を調理すると、フライパン自体の色が変化することもあります。人体に害はありませんが、気になるようであれば避けてもらったほうがよいですね」(宮野さん)
鉄フライパンの正しいお手入れ方法
一般的に鉄フライパンはサビやすく、焦げ付きやすいうえにお手入れが大変といったイメージがあるため、初心者にとってはハードルが高く感じられるかもしれません。
どのようにお手入れをすればよいのか、ポイントを宮野さんに伺いました。
一般的な鉄フライパンは使用前に「空焼き」をする
鉄フライパンを買ったらまずすることの一つに、空焼きという作業があります。空焼きとはどんなものなのか、宮野さんに伺いました。
「一般的な鉄フライパンでは、買ったばかりのものにサビ防止のニスが塗られていることが多くあります。そのため、使用する前にニスを焼き切る『空焼き』という作業が必要になります。
フライパンをコンロにかけて強火で10分ほど(灰色になるくらいまで)加熱することで、ニスを焼き切ることができます。
しかし最近のご家庭のコンロでは高熱になりすぎるとセンサーで加熱が止まってしまうことも多く、焼き切るまでに時間がかかってしまうケースが多々あるようです。
そのため釜浅商店の鉄フライパンではニスを塗らず防さびシートを使用することで、空焼き不要ですぐにお使いいただけるようになっています。しかし防さびシートのにおいや汚れが気になるようであれば、使用する前にたわしと洗剤で洗っていただき、水気を飛ばしてから油ならしをしてください」(宮野さん)
空焼きはフライパンを傾けながら、側面もよく焼いていきます。空焼きをすることで、黒っぽくつやつやした色から灰色になればOKだそうです。
釜浅商店の「釜浅の鉄打出しフライパン」のように空焼き不要のものもありますが、メーカーによって異なるので必ず使用前によく確認しましょう。
初めて使うときには「油ならし」を
鉄フライパンを初めて使用するときには、サビを防ぎ、焦げつきにくくするため使用前に「油ならし」という作業が必要になります。
油ならしは以下のように行います。
- 洗った鉄フライパンの水気をよく切り、予熱をして水分をとばしてから油を入れる。
- 野菜くずなどをフライパンに入れ、10分ほど全体になじませるように炒める。
「油ならしのやり方は油をそのまま入れ加熱する方法もありますが、釜浅商店では野菜くずを使用するやり方をおすすめしています。野菜くずを使用することで、ネギなどの香味野菜がフライパンの鉄臭さを取ってくれます。また野菜くずをはけ代わりに使用することで、フライパンの上部の鍋肌までむらなく油をなじませることができるので、やりやすいと思います」(宮野さん)
調理後は「湯洗い+油塗布」
調理後は、鉄フライパンならではのお手入れ方法があると宮野さんはいいます。
「鉄フライパンを使用した後は、フライパンがあたたかいうちにお湯とたわしで洗ってください。その際に洗剤を使わないのがポイントです。洗剤を使って洗ってしまうと、せっかく張っている油膜がとれてしまいます。とはいえ、こびりついたソースなど汚れが気になる場合は洗剤を使用してもかまいません。しかしそのときは、しっかりと水分をとばしてから再度油ならしをする必要があります」(宮野さん)
さらに宮野さんは次のように言います。
「洗ったあと長期間使わない場合は、フライパンがあたたかいうちに薄く油を塗り、新聞紙で包んで収納してください。フライパンが冷めた状態で油を塗ると油が固まってしまい、次に調理をするときに支障がでてしまうことがあります。そのためあたたかいうちに塗るのがポイントです。また新聞紙に包むと、塗った油が酸化しにくくなるのでおすすめです」(宮野さん)
焦げ・サビがついてしまったら
鉄フライパンを使用していると、どうしても焦げついてしまったり、サビが出てしまったりすることがあるかもしれません。しかしそんなときでも慌てなくて大丈夫だと宮野さんは言います。
「頑固な焦げつきがある場合には、フライパンに水を入れて煮沸してください。煮沸することで焦げつきがゆるみ、落ちやすくなります」(宮野さん)
またサビがでてしまったときの対応を、次のように教えていただきました。
「サビがでてしまった場合は、金たわしを使いフライパン底を削ってみてください。地肌が銀色になったら、サビを取りのぞけている状態です。その後に多めの油とくず野菜で、サビていたところを重点的に油慣らしをしましょう」(宮野さん)
鉄フライパンを使うときの注意点
フッ素樹脂加工のフライパンとは使い方が異なる点が多い鉄フライパンですが、使用するときはどんなことに注意したらよいでしょうか。宮野さんに伺いました。
予熱してから食材を入れる
鉄フライパンを使うときには、調理前の予熱が大切だと宮野さんは言います。
「最初にしっかり予熱することで、食材がフライパンにくっつきにくくなります。しかし初めて鉄フライパンを使用する方のなかには、最初はどのくらい予熱をしたらよいのかわからない方もいると思います。
予熱はフライパンから煙が出るくらい、しっかり加熱してください。フライパンから煙があがったのち、水滴を落とすとビー玉みたいにコロコロ動いている状態になります。それが調理を始めてもよいサインになります。その水滴を拭き取ってから油を入れれば、くっつきにくい状態で調理できます。最初は煙が出るまで加熱することに不安を感じるかもしれませんが、そのくらいやったほうがくっつきにくくなります」(宮野さん)
また予熱の仕方について、ガス火とIHとでは異なる点があるのだそうです。
「ガス火の場合は最初から強火で予熱をしてもOKですが、IHの場合は徐々に温度を上げるようにしてください。IHは電磁波がかなり強いので、最初から強火にしてしまうとフライパンが温度変化に耐えきれなくなり、本体が丸く変形してしまう恐れがあります。そのため、ゆっくりと温度を上げるよう注意してください。フライパンの熱が上がり切ってしまえば、強火にしても大丈夫です」(宮野さん)
釜浅商店の鉄フライパンはガス火でもIHでも利用するのは問題ないそうですが、サイズによってはガス火のみのフライパンもあるので、よく確認してから使用しましょう。
調理時に多めの油を使うことで、「油返し」は不要に
フライパンの使い始めなど油がまだしっかり慣れていない時期は、「油返し」という「油ならし」より少ない量の油を調理前になじませる作業が必要とされています。しかし、宮野さんによると、調理時に少し多めの油を使うことでその作業は省略できるのだそう。
「フライパンの大きさにもよりますが、レシピで指定された油の3倍くらいの量を使用するようにしてください。例えば通常が大さじ1であれば、大さじ3入れるといった具合です。特にフライパンを使い始めのころは油は多い方がよいので、ちょっと多いかなと思うくらい入れてしまって大丈夫です」(宮野さん)
調理した食材を放置しない
鉄フライパンの注意点の一つに、調理した食材をそのまま放置しないことが大切だと宮野さんは言います。
「鉄フライパンの中に調理したものをそのまま放置しておくと、サビの原因になることがあります。そのため料理ができあがったらすぐに、保管容器やお皿に移しましょう。そしてフライパンはすぐに洗い、タオルで拭き火にかけて水をとばすところまでやりましょう。料理を食べる前にフライパンだけは洗い、水分をとばしておくとよいですね」(宮野さん)
汚れはしっかり落とす
鉄フライパンに汚れが残っていると、次に調理をした際、食材が汚れにこびりつきやすくなってしまうのだそう。そのため汚れが残らないよう、しっかり洗うことが大切とのことです。
「釜浅商店では、洗うときは『しゅろ』という木の皮だけを使ったたわしをおすすめしています。『しゅろ』のたわしはすごく繊維が細かいのですが、油落ちがよいという特徴があります。
また、釜浅商店の『フライパン用たわし』は、鬼毛という硬いところを使っているので、タレなどの頑固な汚れがきれいに落ちやすいです。これでもしっかり落ちない場合は、先ほども紹介した、水を入れて煮沸する方法を試してみてください。頑固な汚れがふやけてくるので、たわしで落としてあげるとよいでしょう。普段の汚れの場合は、たわしで軽く洗う程度で大丈夫です」(宮野さん)
鉄フライパンの選び方
初めて鉄フライパンを購入する際など、選び方がわからず迷ってしまう人もいるかもしれません。どのように選んだらよいのか、選び方のポイントを宮野さんに教えていただきました。
「鉄フライパンにはさまざまなサイズがありますが、釜浅商店では20センチと26センチが一番使いやすいとご案内しています。20センチは目玉焼きが2個入るサイズ感で、ちょっとソーセージを焼きたいときやお弁当のおかずをつくりたいときに活躍します。朝食をつくるのに手ごろなサイズでしょう。
一方26センチは、ハンバーグやステーキ、餃子などのメインを焼くのに便利なサイズです。一般的には2~3人前のサイズ感で、夕食をつくるときに活躍します。この二つのサイズを使い分けるのが一番おすすめですが、家族の人数やお子さんの年齢によっても使いやすさは変化するので参考にしてみてくださいね」(宮野さん)
おわりに
「初心者にはハードルが高そう」と感じてしまう鉄フライパンですが、
- 空焼きをする
- 油をしっかり塗る
- 余熱してから食材を入れる
- 多めの油を使う
- 調理した食材を放置しない
- 洗剤は使わない
- 湯洗い+湯塗布
- 汚れはしっかり落とす
要点を押さえれば難しくないということがわかりました。
たとえサビてしまっても、金たわしで削ればまたリセットできるというのも鉄フライパンの良いところ。使い方に慣れてしまえばメリットの方が大きいので、ぜひチャレンジしてみてはいかがでしょうか。
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(※)搭載機能や機能名は機種によって異なります。