スケルトンリフォームで起こりがちな「後悔」5選
住宅リフォームの中でも、下地まで撤去して作り変える「スケルトンリフォーム」はかなり大がかりなものです。
家のイメージを大きく変えることも可能なので人気がありますが、大がかりなリフォームである分、失敗や後悔が起こりがちというのも実状。
スケルトンリフォームを行ったときにありがちな「後悔」とは、どんなものなのでしょうか。
その1 間取りが思い通りにならなかった
スケルトンリフォームは、水まわりの取り換えなどを含めて全面的に改装するフルリフォームよりも大がかりで、床・壁・天井の下地まで撤去して、専有部分をがらんどう状態にしてスタートします。
ただし、建物の強度を保つための柱や壁など、構造上撤去することができない部分もあります。施主(リフォーム依頼者)が素人の場合、見ただけではその壁や柱が撤去できるものなのかそうでないのかの判断は難しいでしょう。
また、マンションなど集合住宅の場合は、規約でリフォーム範囲が制限されている場合もあります。
「近年では、リフォームを行うにあたってSNSで情報収集される方が増えています。良い面もたくさんあるのですが、理想のイメージが先行してしまい、施主さまご自身の物件では実現が難しいケースなども増えている印象です」(向井さん)
このように、自分が思い描いていたような間取りにリフォームすることが不可能となり、変更を余儀なくされることもあるようです。
その2 工期が長く仮住まい費用がかさんだ
現在住んでいる家をスケルトンリフォームする場合は、工事期間は別の場所に仮住まいしなければなりません。
スケルトンリフォームは大がかりなリフォームのため、工事期間もそのほかのリフォームに比べると長くなる傾向があります。面積にもよりますが、おおよそ3~5カ月の工期が必要となるため、仮住まいにかかる費用もそれなりになります。また、着工後に追加工事の必要性が判明するなどして、工期がさらに延びることもありえます。
そのため、仮住まいにかかる費用が想定外にかかってしまい後悔することになりかねません。
その3 イメージと異なる仕上がりになった
イメージしていたリフォーム後の様子と、完成したものが異なっていたというのは、スケルトンリフォームに限らず起こりえることです。
「完成イメージがしっかりとあって、採用したい設備や仕様などを品番まで把握している方もいらっしゃいます。しかし、その情報に基づいて同じ品番のものを採用しても、物件の部屋の広さや天井の高さ、また照明状況や周辺環境などによって印象はガラリと変わるため、結果的に『イメージと異なった』というケースもあります」(向井さん)
素人である施主が図面からすべてを理解するのは難しいのはもちろんですが、3D画像やサンプル製品などを見ながら話しても、実際に自宅に取り付けると印象が違った、というケースも珍しくありません。
その4 予算を大幅にオーバーしてしまった
リフォーム会社と契約する際、予算や希望を伝えた上でおおよその見積もりができあがりますが、詳細は契約後に詰めていきます。
そして契約後、ショールームで実物を見たり、具体的な完成イメージを持ちながら進めていくというのが一般的な流れですが、この過程で予算オーバーになっていきやすいそうです。
「最初の見積もりは、基本的には予算を前提として設備や建材などを当てはめています。しかし、詳細を決めるためにショールームで実物を目の当たりにすると、より良いものを選びたくなる気持ちになります。ご予算の上限をご家族間やリフォーム会社と事前共有しておくことをおすすめします」(向井さん)
また、「数万~数十万円のオプション」が大きな買い物に感じなくなり、安易に追加し続けてしまうことで大幅に予算オーバーしてしまうこともあるそうです。
その5 着工後に想定外の設備状況が発覚し、計画の変更が必要になった
基本的に、スケルトンリフォームができないということはありません。しかし、解体後に想定外の設備状況や構造状況が判明した場合、計画を一部変更する必要が出てくることもあるのだとか。
「もちろん築年数や状況などから想定できることがあれば、それを含めたご説明をしたり見積もりを作ります。しかし、隠れている柱の腐食などは着工後に判明するということもあります。こういったことは、古い木造の戸建てなどでは起こることもありますね」(向井さん)
築年数がある程度経過している古い物件をリフォームする際には、計画が変更になる可能性がありそうか、リフォーム会社と慎重に確認するとよいでしょう。
スケルトンリフォームで後悔しないためのコツ
ここからは、スケルトンリフォームを成功させるために注意しておくべきことをご紹介します。
これらの注意点は一部リフォームや内装替えのみのリフォームの場合にも活かせますし、先に解説した「スケルトンリフォームの後悔」を防ぐためにも役立ちます。
なぜスケルトンリフォームを行うのかを明確にしておく
リフォームには、以下の通りいくつか種類があります。
- 水まわりなどだけ替える小規模な部分リフォーム
- 水まわりと壁紙や部分的に間取りを変えるリフォーム
- 壁紙下の下地まで剥がして専有部分を丸ごと作り変えるスケルトンリフォーム
まずは、希望しているリフォーム内容が、どの種類に該当するのかをよく検討する必要があります。
「とはいえ、一般の方がその是非を判断するのは至難の業。プロの判断により、スケルトンリフォームでなくても十分に希望を実現できる可能性もあるので、しっかりと検討や相談をすることが重要です」(向井さん)
そのため、スケルトンリフォームも視野に入れていると伝えながらプロに相談するのがおすすめです。
リフォーム内容の優先順位を決めておく
スケルトンリフォームをするにあたり、自分たちが何を優先しているのかを明確にしておくことが、構想から完成までをスムーズに進めるために非常に重要で、一番大事なポイントだと向井さんは言います。
「予算、リフォーム箇所や内容、デザイン性、工期など。各ご家庭で優先することは違います。それらを構想段階でしっかりと決めたうえで打合せを進めていきたいですね」(向井さん)
例えば『キッチンにはしっかりとこだわりたい』という優先したい箇所が決まっていれば、全体での予算がオーバーしても、『じゃあ洗面所の機器のランクを下げて、その分の予算をキッチンにあてよう』というように、迷いなく内容を検討していくことができるのです。
注意したい点としては、リフォームを検討すると色々な話題が出てくるため、自分たち家族が何を大事にしたいのかが分からなくなってしまうこともありがちなのだそう。
そうならないためにも、「譲れないポイント」や「大事にしたい軸」を明確に決めておくことが重要です。
「小さいお子さんがいる世帯であれば、親御さんが見守りをしやすいレイアウトを希望されるお客さまが多いです。ただ子どもは成長につれて必要とする空間が変わっていくので、固定しすぎず可変性のある間取りの方がおすすめです。
また、リモート勤務をしているご家庭であれば、お子さまが小さいうちは見守りながら仕事をする可能性があるので、リビングの近くに仕事スペースを設けることもおすすめです。仕事の仕方や頻度、ご家族の在り方によっても優先順位は異なりますのでよく相談すると良いでしょう。
スケルトンリフォームの打ち合わせでは、色々なことを決めなくてはならないので、頭が混乱してしまうこともあると思います。そのようなときも、優先順位がはっきりしていれば、『何のためにリフォームをしようとしていたのか』というところに立ち戻って再確認する指標にもなりますね」(向井さん)
予算をしっかり決めて守るようにする
当初設定した総予算をしっかり守るようにしていかないと、あれよあれよと言う間に必要額が膨らんで、何割増もの請求額となってしまう可能性があります。
スケルトンリフォームの計画では、いろいろな物に出会い、新しい生活にワクワクするため、つい予算度外視になったり、「少しだけならオーバーしてもいいかな」の積み重ねで大きな予算オーバーになってしまったりが起こりがちなのだそう。
「スケルトンリフォームは数百~数千万円の規模の話なので、最初はその金額の大きさに驚かれるのですが、少しずつ慣れていってしまいます。総額が大きいため、数十万円ほどの設備を追加することや仕様のグレードアップが大した金額ではないように感じてしまうということは、皆さまあるようです」(向井さん)
しかし、予算をしっかり決めてそれを守ることを心がければ、どんどん希望を追加したり変更を加えたりすることを防ぐことができますし、結果として、完成が先延ばしになってしまうことも防げます。
もしどうしても予算を超えそうな場合は、一旦冷静になって、超過する部分は予算を増額してでも行いたい内容なのか、やる必要があることなのか、他に削れる部分はないのかを検討しましょう。
引越し希望の時期から逆算して工期などを把握する
スケルトンリフォームした家にいつから住みたいのかによって、リフォーム会社へ見積もりを依頼する時期も変わってきます。
「スケルトンリフォームでは、見積もり依頼から完成まで最短で半年以上必要です。お子さんの学校生活や引越し業者の繁忙時期など、リフォーム以外の要素も加味してタイミングを考えると良いと思います」(向井さん)
例えば、新年度に新生活をスタートしたい場合は、前年度の3月までには引越しを完了しておきたいので、前年の秋口にはリフォーム会社に相談をスタートしたいところ。
ただし、3月~4月は引越し業者が繁忙期となり割増料金を設定していることも多いため、その分の予算も考慮する必要があるでしょう。
完成イメージを納得できる形で確認する
スケルトンリフォームの完成イメージは、図面だけではなく3Dパースや模型などで確認させてもらいましょう。
壁紙やタイル、フローリングなどはできるだけ大きなサイズのサンプルを見せてもらい、可能であれば使用する場所にあててみることもおすすめです。
向井さんによると、最近はSNSで多くの情報を得てからリフォーム会社に相談に来る人も多いとのこと。
「以前より、事前にリノベーションの知識や情報をより深く調べている方が増えていると感じます。例えばこんな感じにしたいというのも写真で見せてもらえるので分かりやすいですね」(向井さん)
一方で、SNSの画像などを見せて同じようにして欲しいと依頼したのに、完成したものが違うと感じるケースもあるそう。
「画像でおおよその方向性やデザインの好みなどは把握しやすくなりました。しかし、例えば色味などは照明や周辺環境の影響が大きいので、同じように作っても思い描いていたものと異なってしまう場合もあります」(向井さん)
こういったことを防ぐためには、気になるものと同じものや近いものを、複数の投稿や画像、またはショールームやサンプルで実物を確認してみるのがおすすめだと向井さんは言います。
それによって想定できる幅が広がり、完成時のギャップに戸惑うことが防げる可能性が高まります。
信頼できるリフォーム会社を選ぶ
複数のリフォーム会社から依頼する会社を選ぶ際には、必ず合い見積もりも兼ねて担当者と会いましょう。担当者の人柄や会社の雰囲気なども重要です。
そこですべてが分かるわけではありませんが、直接話をする中で、信頼できそうか、真摯な対応をしてくれているか、リフォーム内容の提案力はあるかなどを確認します。
「私も担当させていただく上で意識していることですが、ご要望の深堀をするように努めています。例えば『対面キッチンにしたいんです』と施主さまがおっしゃったときに、言葉をただ受け取るのではなく、どうして対面キッチンにしたいのか、どのような対面キッチンにしたいのか、というように、より相手を知ろうとしてくれる担当者だと、良いものができあがるのではないかと思います。
リフォームしたい=何かを改善したいはずなので、その問題を汲み取って、ご家庭に合った形で解決方法を提案してくれる担当者が信頼できると思います」(向井さん)
また、スケルトンリフォームを希望する場合は、施工実績が多いリフォーム会社を選ぶようにしましょう。
どれほど担当者の人柄が良く、予算内でいろいろなことをしてくれそうでも、例えば水まわりの交換をメインにしているというリフォーム会社では、大規模な工事になるスケルトンリフォームの経験値が不足しているといった場合があるからです。
「スケルトンリフォームの実績が多い会社は問題解決方法をたくさん蓄積しています。そのため施工実績が十分にあるかどうかは要チェックですね」(向井さん)
スケルトンリフォームでは近隣への配慮が必須
大規模工事となるスケルトンリフォームでは、近隣の居住者の理解も必要不可欠といえます。
特に注意するポイントは騒音と振動です。対処方法も含めて教えていただきました。
リフォーム工事の騒音と振動は想像以上
スケルトンリフォームでは壁紙を剥がすだけでなく、下地まで撤去します。
そのため工事開始から数日間は撤去による騒音と振動があり、全工期の中でももっとも配慮しなければいけない期間となります。
「マンションのコンクリート躯体にビスを打つ工事があった場合、音や振動は、近隣住戸に想像以上に響いていきます。近隣配慮の点でも施工範囲や工法はプロと共有しておくとよいでしょう」(向井さん)
事前の案内と工期中の配慮
スケルトンリフォーム工事を始める前に、リフォーム会社の担当者とともに近隣のお宅へ事前の案内と挨拶にいきましょう。
「お客さま自身の近隣挨拶はお客さまのご判断にお任せしておりますが、今後長く住んでいくお住まいであればコミュニケーションをとられておくことをおすすめします。
ご挨拶の対象としては、自宅に接しているお宅(左右、上下、前後など)には出向くようにするといいでしょう」(向井さん)
また、工事開始から数日間の特に大きな騒音・振動に関しては、書面だけでなくひと言添えておくなど、その後の関係のためにも十分に配慮しましょう。
向井さんによれば「築年数20年以上のマンションの住民は、リフォームの音に慣れている場合もあります。逆に築浅の場合はマンション内のリフォーム件数が少なく音に不慣れな方が多いように思います」とのこと。
可能であれば、管理事務所にマンション内でのこれまでのリフォーム歴なども聞いて対策を考えられると理想です。
それでも苦情などがあった場合は、工事を行う曜日や時間などを調整する必要性が出てくることも。そうなると当然工期が延びてしまうので、そのようなことができるだけ起こらないよう、工事に関する配慮は自分と近隣宅のためにしっかり行いましょう。
スケルトンリフォーム向きの物件例
いろいろな注意点もあるスケルトンリフォームですが、それでも人気がある理由は、自分のこだわりの間取りや理想のインテリアを実現することができるからです。
スケルトンリフォームの醍醐味は間仕切りを取り払って新しく組み変えられること。室内の壁までコンクリートの物件などは不適ですが、下記のような物件や希望がある場合は大いに検討する価値があるでしょう。
間取りだけが残念
購入にあたって住環境や価格などには満足しているが、全体的に間取りを変更したいといった場合はスケルトンリフォームがおすすめです。
部屋数を変えたり、配管などの状況によっては水まわりの移動も可能です。
理想の間取りをプロに伝え、どこまで実現できそうか検討してもらいましょう。
外観の雰囲気は残して中を快適にしたい
戸建ての古民家など、外観の雰囲気はそのままにしながら内部を快適にリフォームしたい場合などにも、スケルトンリフォームがおすすめです。
もちろん古い分、柱の腐食などは確認が必須ですが、それらをクリアできれば素敵な古民家スケルトンリフォームが叶います。
築年数が長い物件の配管まで替えられる
通常のリフォームでは専有部で見えている部分しか触れませんが、スケルトンリフォームではその奥まで手を入れるため、共用部までの配管を新しく交換することができます。
築年数の長い物件などは配管を替えることで、その後も長く快適に暮らせるというメリットがあります。
スケルトンリフォームに関するQ&A
Q.スケルトンリフォーム費用の相場は?
「一概には言えませんが、70平米の3LDKくらいで約1,500万円~でしょうか。戸建てでは2,000万円以上のケースも多いです」(向井さん)
近年は材料費の高騰もあり、少し前より相場は上がってきているそうです。
Q.スケルトンリフォームでできることは何ですか?
「マンションの場合、基本的に専有部は変えることができます。ただし、建物の強度にかかわる構造部分や共用配管関係部分などは変えることができません」(向井さん)
戸建ての場合であれば、配管の共用部はマンホールへの出口なので、外壁や屋根も含めてかなりの範囲が施工範囲です。
Q.スケルトンリフォームはどんな流れで進みますか?
「東京ガスリノベーション株式会社でのスケルトンリフォームはこのような流れです」(向井さん)
- 打合せ・ヒアリング
- 現地調査・採寸
- プラン提出・見積り提出・お打合せ
- 修正見積り提出、お打合せ
- 契約
- 詳細の仕様打合せ
- 工事着工
- 施主検査・完成
- 引き渡し
- アフターフォロー
スケルトンリフォームに限らず、リフォームの流れは基本的に上記が主流のようです。
Q.スケルトンリフォームは、フルリフォームよりも耐久年数が長いですか?
「配管や下地を交換できるという意味では、スケルトンリフォームは20~30年が耐久年数の目安です。対して部分リフォームや内装のみのリフォームではそこまで交換できないため、経年状況によって耐用年数は異なります」(向井さん)
とはいえ、新しく建て替えるわけではないので、これらはあくまでも目安と考えましょう。
リフォームは東京ガスリノベーションにご相談ください!
東京ガスリノベーションは、お客さまの「憧れの暮らし」への想いをしっかりと汲み取り、想像を超えるご提案で期待にお応えするリフォームを目指しています。スケルトンリフォームはもちろん、水まわりなどの部分的なリフォームもお任せください。丁寧なヒアリングと確かな提案力のあるスタッフがリフォームをお手伝いします。
東京ガスリノベーションのリフォームについては詳しくは以下をクリック!
おわりに
スケルトンリフォームでありがちな後悔とそれらを防ぐためのコツについて、東京ガスリノベーション株式会社の向井まりえさんに伺いました。
スケルトンリフォームを成功させるためには、どのような暮らしを実現したいか、ご家族で優先順位を明確にすることが重要です。そして、実績のあるリフォーム会社を選び、担当者としっかりコミュニケーションを取っていくことが大切になります。また、着工が決まったら、周囲への配慮も忘れずに。スケルトンリフォームで快適な暮らしを実現させたいですね。