野菜を1日に350g以上食べよう!
「野菜を1日に350gとろう」というフレーズを耳にしたことはありませんか?
これは、厚生労働省が展開する「21世紀における国民健康づくり運動(健康日本21)」(以下、健康日本21)の中で、健康な生活を維持するための目標値として掲げられたものです。
しかし、厚生労働省の「令和元年国民健康・栄養調査結果の概要」によると、日本人の野菜摂取量は1日280g程度で、目標値には達していないのが現状とのこと。
もっと野菜をとるためにはどのようにすればよいのでしょうか。
「『野菜350g』は健康日本21(第2次)で掲げられているのですが、その中のカルシウムの項目で『緑黄色野菜120g以上をとる』とされています。そこから考えると、350gをざっくり淡色野菜2:緑黄色野菜1の割合でとるのが良いですね。
淡色野菜はクセがなく生でも食べやすく、緑黄色野菜は味が濃くて加熱して食べるものが多いので、このバランスを考えて料理を作ると彩りもよく、栄養も整いやすいですよ」(野口さん)
上の画像は、野口さんのお話を元に、淡色野菜2:緑黄色野菜1の割合で実際に計ってみたもの。
淡色野菜は、キャベツ、白菜、きゅうり、なす、大根、玉ねぎなどです。
緑黄色野菜は、にんじん、ほうれん草、かぼちゃ、小松菜、ブロッコリー、トマト、ピーマンなど、カロテンを多く含む野菜を指します。
野菜の栄養についてはこちらの記事も参考にしてください。
安くて栄養がある野菜を選ぶコツ!【野菜ソムリエ監修】
参考:厚生労働省 令和元年国民健康・栄養調査結果の概要
野菜350gってどのくらい?
野菜350gがどのくらいの量になるかは、取り合わせる野菜によっても大きく変わります。また、毎日野菜を350g先に計量して、作る料理を考えるのも現実的ではありません。
しかし、よく使う野菜の重量目安を知っていれば、「夕食のとんかつ3人分に、キャベツ1/2個を使った千切りを添えて、きゅうりとトマトのサラダも作ったから、今日はほぼ1人350gの野菜がとれているみたい」とか「かぼちゃ半個を4人分の煮物にしたからこれで緑黄色野菜が1人100gくらいはとれたかな」といった見当がつくようになるでしょう。
以下は、知っておくと便利な野菜の目安重量を表にしたものです。
皮や種を除いて食べるにんじんやかぼちゃなどの野菜は、可食部が9割程度と考えてください。
野口さんおすすめ「野菜の重量を簡単に知る方法」
上の表のように、野菜の重さの目安を覚えておけるといいですが、同じ種類の野菜でも大きさには差がありますし、いちいち量るのも面倒だったりするもの。もっと簡単に目安を知る方法を野口さんに教えてもらいました。
「野菜は、大人の握りこぶしのひとまわり小さいくらいが大体70gと考えてください。ただし、レタスやキャベツの千切りサラダなどは、握りにぎりこぶし1つ分の量で半分(35g)程度と考えるといいです。そして、この握りこぶし5つ分の野菜を食べると350gになると考えます。
例えば、朝ごはんに1個分、昼ごはんにも1個分の野菜を食べるとすれば、残りは3個。晩ごはんであと握りこぶし3個分の野菜を食べるように意識すれば、350gを自然に食べられるようになります」(野口さん)
この方法なら、難しく考えることなく実践できそうですね!
【野菜のプロが伝授】野菜350gを効率良く食べるポイントとおすすめレシピ!
「野菜350gという数字を意識しすぎるよりも、まずは野菜をたくさん食べられるメニューをいくつか知っておけば、日常的に野菜をしっかりとることにつながります」と野口さん。
野菜を食べる=生野菜のサラダと思ってしまう人も多そうですが、そうではありません。いろいろな料理で野菜を食べることも大切です。
1日に350gの野菜を効率よく食べるためのポイントとおすすめレシピを、野口さんに教えてもらいました。
サラダ野菜はひと手間加えてたっぷり食べる
生で食べられる野菜は調理の手間が省けるので、気軽にとれるのがメリット。ただし生野菜だけを大量に食べるのは難しいこともあります。
野口さんによると、先にドレッシングとあえておくタイプのサラダだと味がなじむのでたくさん食べられるのだそう。簡単に作れる「チョレギサラダ」の作り方を教えてもらいました。
「コツはサニーレタスの水気をしっかりきること。野菜やのりをちぎるのはお子さんと一緒にするのも楽しいですよ」(野口さん)
【チョレギサラダ】
【材料】2人分 野菜摂取量:95g/人
サニーレタス・・・外葉4枚(150g)
きゅうり・・・1/2本
のり(20cm角程度)・・・1枚
[A]
すりごま・・・大さじ1
にんにくすりおろし・・・小さじ1/2
しょうゆ・・・大さじ1
酢・・・大さじ1/2
ごま油・・・大さじ2
【作り方】
- サニーレタスは洗ってしっかり水気をきり、手でちぎる。きゅうりは縦半分に切り、斜め薄切りにする。
- Aを混ぜ合わせドレッシングをつくる。
- 1と2を混ぜ合わせて皿に盛り付け、ちぎったのりをトッピングする。
熱を加えてかさを減らす&油調理でビタミンup
野菜は加熱するとかさが減って食べやすいことに加え、緑黄色野菜は油と合わせて調理すことでβ-カロテンもしっかりとれます。
野口さんのおすすめは、メイン料理の付け合わせにしたり、パスタの具としても使える「ペペロナータ」。
「塩を最初に加えて炒めることで、野菜の水分が出やすくなり味がしっかり入り、野菜のうまみが引き出されます。お好みでローズマリーやタイムなどのハーブを加えるのもいいですね」(野口さん)
【夏野菜のぺぺロナータ】
【材料】4人分 野菜摂取量:120g/人
パプリカ(赤・黄)・・・各1/2個
ピーマン・・・1個
ナス・・・1/2本
タマネギ・・・1/2個
トマト・・・大1個
オリーブオイル・・・大さじ1
ニンニク・・・1かけ
塩・・・小さじ1/4
【作り方】
- ニンニクはみじん切り、その他の野菜は2cm角に切る。
- フライパンにオリーブオイルとニンニクを入れて火をつけ、弱火で加熱して香りが出たら、タマネギと塩(分量の約1/2)を入れて炒める。
- 2にナス、パプリカとピーマンの順に加えて炒め、しんなりしたらトマトを加えてさっと炒める。
- 残りの塩で味を整え、温かいままボウルに入れてアルミホイルなどで蓋をして蒸らす。(耐熱保存容器に入れてふたに隙間をあけておいてもOK)
野菜の常備菜で手軽に野菜をプラス
野菜の常備菜を作っておけば、今日の献立には野菜が足りないなと思った時などに、手軽に野菜の一品をプラスできます。
今回、野口さんが教えてくれたのは「小松菜とツナの和風和え」。
「カルシウムの多い小松菜は通年お手頃価格なので常備菜にぴったり。ツナ缶を入れることで調味料が少なくてもおいしく仕上がります。子どもにも食べやすい和風味なのでお弁当の副菜にもいいですよ」(野口さん)
【小松菜とツナの和風和え】
【材料】野菜摂取量:200g/レシピ
小松菜・・・1束
ツナ缶(70g)・・・1缶
いりごま・・・大さじ1/2
しょうゆ・・・小さじ1
砂糖・・・小さじ1
【作り方】
- 小松菜はたっぷりの熱湯でゆで、冷水に取った後しっかり水気を絞って5cm長さに切っておく。
- ツナ缶、いりごま(指でひねりながら加えるとよい)、しょうゆ、砂糖を入れて混ぜ、1をあえる。
野菜×野菜の組み合わせもおすすめ
野菜と野菜を組み合わせると味わいが深まるだけでなく、野菜だけで主役級の一品も作れます。他の野菜と合わせやすいトマトは、煮込んで作るトマトソースのほか、ドレッシング風のソースにするのもおすすめです。
野口さんに教えていただいた「ナスのグリル~サルサ風ソース添え~」では、トマトにナスを組み合わせます。
「ナスは薄切りにして焼くと短い時間で火が通せます。辛いもの好きならサルサ風ソースにタバスコを加えても。サルサ風ソースは肉や魚料理に添えてもおいしいですよ」(野口さん)
【ナスのグリル~サルサ風ソース添え~】
【材料】2人分 野菜摂取量:150g/人
ナス・・・2本
オリーブオイル・・・大さじ1
トマト・・・1/2個
きゅうり・・・1/4本
ピーマン・・・1/2個
[A]
ケチャップ…大さじ1
酢・・・大さじ1
オリーブオイル・・・大さじ1
塩・・・少々
【作り方】
- サルサ風ソースをつくる。トマトは1cm角、きゅうりとピーマンは5mm角に切り、Aと混ぜておく。
- ナスを8mm幅の縦切りにし、オリーブオイルで両面を焼く。
- 皿に2を盛り付け、サルサ風ソースをかける。
時間がない人・料理が苦手な人が野菜をたくさんとるために
「料理が苦手」「時間がない」「外食が多くて・・・」という方にもおすすめの方法や注意点を、野口さんに伺いました。
生ですぐ食べられる野菜を常備しておく
「ミニトマトなど、洗ってすぐ食べれるものを常備しておくと、朝食や時間がない時に野菜をとるのに役立ちます。レタスやきゅうりもすぐに食べられるのでいいですね」(野口さん)
先入観なく野菜を使う
「ラタトゥイユやお味噌汁にはどんな野菜を入れても合います。カサも減ってたくさん食べられるので、『トマトは味噌汁の具には使えないし』といった先入観を持たず、野菜室にあるお野菜をどんどん使ってみてください」(野口さん)
外食時に麺類を食べる時も「野菜入り」を選ぶ
「パスタなら、ペペロンチーノやカルボナーラより、トマトソースやオルトラーナなど野菜を使った種類を。うどんでもおろしうどんやサラダうどんなどを選ぶと、たくさん野菜を食べられますよ」(野口さん)
野菜ジュース=野菜ではないと知っておく
「野菜の量にこだわった野菜ジュースを飲んでいるから野菜をしっかりとれていると思ってはダメ。どんな野菜ジュースでもコップ1杯で大体野菜70gと考えてください。時間のない時に野菜料理1皿分の代わりにというのならいいですが、ジュースに頼らず食事でも野菜をとってください」(野口さん)
子どもに野菜をたくさん食べさせるためのヒント
野口さんによると、人間は味覚の五味(甘味、塩味、酸味、苦味、うま味)の中で、本能で「酸味=腐っている」、「苦味=毒が入っているから食べてはいけない」とセンサーが働くようになっているのだそう。そのため、幼いうちは酸味・苦味に拒否感があり、酸味や苦みがある野菜を苦手に感じることが多いといいます。
「でも、何度も食べていくうちにこの酸味や苦みは安全なものだということを脳が認識して、そこからおいしさに変わるんです。そのため、苦手な野菜も、料理の味付けを変えたり、ハンバーグに混ぜ込む、ポタージュスープにするなどして、子どもに『食べられる経験』をさせることが大切。味覚の幅が広がることで苦手なものが減っていきます」(野口さん)
また、子どもと一緒に野菜を料理したり、家庭菜園をはじめたり、「これは〇〇の畑で採れたんだよ」というように野菜について話すことも、子どもを野菜好きにするきっかけになるそうです。
子どもも1日に野菜350gをとるべき?
大人に必要な野菜の量が1日350gだとして、子どもの場合はどうなのでしょうか。
「国は、子ども向けの摂取量については明示していないのですが、私は野菜350gについての講演や保健所での親子料理教室などでは、女子栄養大学による食品構成の参考表をもとに説明しています。この表によると、身体活動レベルが『ふつう』の場合、10歳以上は350gになっています。それ以下の年齢の子どもについては食事量とのかねあいもあるので、もう少し減らしてもよさそうです」(野口さん)
野菜が苦手な子どもにはおやつで工夫!
苦手な野菜はおやつにすると食べやすいことも。子どもが「これはおいしいから好き!」と感じることで、野菜へのイメージも変わります。野口さんに教えていただたのは、「にんじんのパンケーキ」です。
「ホットケーキミックスを使うので簡単。色がキレイで、にんじんが苦手な子にも食べやすい味です。ひと口サイズに作ってみるのもいいですよ」(野口さん)
【にんじんのパンケーキ】
【材料】4枚分 野菜摂取量:15g/枚
ホットケーキミックス・・・150g
にんじん・・・60g
豆乳・・・80cc
卵・・・1個
クリームチーズ・・・適量
バター・・・適量
【作り方】
- にんじんをすりおろして、卵、豆乳を混ぜ、さらにホットケーキミックスを入れて混ぜる。
- フライパンを熱してバターを溶かし、1をスプーンですくって落とし、両面を中弱火で焼く。
- 皿に盛り付けて、クリームチーズを添える。
お弁当に野菜をいれる時はここに注意!
1日に野菜を350gとるためにはお弁当にも野菜をいれたいですが、どんなことに注意すればよいのでしょうか。お弁当によく使う野菜について野口さんに伺いました。
- ミニトマト:ヘタに雑菌がたまりやすいので、ヘタを取って入れてください。
- ブロッコリー:水を含みやすい野菜なのでしっかり水分を除くのがポイントです。
- 大葉:殺菌効果もあるのでお弁当にぴったりですが、そのままだと変色したりしなびたりしやすいので、肉巻きなどに使うのもよいでしょう。
「いろいろな野菜を細かく切って卵に混ぜ込んで焼いた卵焼きや、小松菜とにんじんのナムルやごまあえなどは、彩りよく野菜の栄養がしっかりとれるのでお弁当にいれる野菜のおかずとしておすすめです」(野口さん)
おわりに
管理栄養士・野菜ソムリエ上級プロの野口知恵さんに、1日に野菜350gをとるためのコツや注意点を詳しく伺い、オリジナルのレシピも教えていただきました。
野口さんによれば「野菜は、価格も安く、栄養価も高い旬の野菜をたっぷり使うのがおすすめ」とのこと。季節の野菜をしっかり食べて、健康的な生活を目指しましょう!