親に見守りは必要? 判断する目安とは
親が高齢になってくると身体に痛みや不調が出たり、家事や日々の雑事がこなせないことも出てきます。家族としては、どう見守っていけば良いかと悩みますね。でも、子どもの方から親に民間の見守りサービスを提案しても、「まだまだ私は元気だから大丈夫」と拒否されてしまうことも。実際、親に見守りが必要かどうかをどのように見極めれば良いのでしょうか。
介護・福祉ライターでご自身も介護経験がある浅井郁子さんによると、親は「自分が弱ってきても、なかなか認めないもの」だと言います。子どもには弱みを見せなかったり、変化を悟られないように努力する親が多いそう。親が高齢になってきたら、コミュニケーションを増やし、子どもの方で親の変化に気づいてあげることが大切です。例えば、以下のようなチェックポイントで変化が見られないか確認すると良いそうです。
親の見守りの必要性を判断するチェックポイント
- 歩く速度が遅くなっている
- 日常の動作が変化している
- 以前と比べて出掛ける頻度が減っている
- 夜、眠れていない様子が見られる
- 物忘れが増えている
- ネガティブな発言が増える
- 食欲が減退している
- 体重が減っている
- 普段の食事の内容が変わった
- 趣味をやめた
親の見守り方法や見守りに適したサービス
浅井さんによると、親の見守りでまず一番大切なのは、親子のコミュニケーションの頻度を増やすこと。自然に親の変化に気づく機会になりますし、これ以上悪化させないように環境を整えたり、アドバイスできます。例えば、足腰が弱ってきた時に「ウォーキングしてみたら」と提案すれば、フレイル予防につながるかもしれません。
また一緒に見守ってくれる人を増やすことも大切。離れて住む場合だけでなく、同居していても「親の見守りは絶対必要になる」と浅井さんは強調します。それは、同居していても日中は親が一人になる時間が多いもの。自分の他にも親を見守ってくれる目を増やすことで、ちょっとした親の変化をキャッチしやすくなります。
親の見守りには、以下のような方法や見守りサービスがあります。実施できることや使えるサービスがあるか、確認してみましょう。
親の見守り方法
・親子のコミュニケーションを増やす
親に会いに行く機会が増やせればベストですが、仕事や家事育児で忙しかったり、会う頻度を増やせないかもしれません。また今まで会いに来なかった子どもが急に頻繁に会いにくると親が警戒することも。それでも「少なくとも減らないように意識する」ことが大切だそう。
また、電話やオンライン通話も利用して接する機会を増やすのもおすすめ。オンライン通話では、ただ話すより食事を共にすると会話が続きやすいそうです。
・親の近所付き合いや趣味のコミュニティーを知る
長年同じ地域に住んでいる親なら、隣近所の付き合いがあるかもしれません。隣近所の人たちなら、「ゴミが出ていない」「新聞がたまっている」など、ちょっとした日々の状況の変化にも気づいてくれる可能性も。親を訪ねた際にでも、隣近所でお付き合いがある方にはあいさつし、連絡先を交換しておきましょう。
また、親が参加している趣味のサークルやコミュニティーを知ることも大切。特に親しくしている人がいればとつながっておけると何かあった時に連絡をくれるかもしれません。
親の見守りになる支援サービス
・宅配弁当や生協の定期利用
高齢になり足腰が弱ってくると、買い物や炊事がつらくなることもあります。そうした時に宅配弁当や生協など、定期的に来訪してくれる業者を委託しておくと安心です。買い物や炊事の負担が減るだけでなく、何か変化があれば気づいてくれるかもしれません。
公的な親の見守りサービス
・介護保険サービスや福祉サービスの利用
要支援や要介護など介護認定を受けて介護保険サービスを活用したり、社会福祉協議会やシルバー人材センターなどの福祉サービスで家事支援を受けたりすることは、日常の見守りにつながります。
・緊急通報システム
各自治体では、高齢者向けに緊急通報システムサービスを提供しています。本人が緊急時にボタンを押したり、見守りセンサーや火災センサーが異常を感知すると、電話確認のうえ、救急車の手配や駆けつけてくれる仕組みです。
レンタル料がかかる場合もありますが、自分で民間の警備会社に頼むより格安で委託できる場合がほとんど。各自治体によりサービス内容が異なるため、民間サービスと比較検討しましょう。また、民間のサービスと組み合わせて使う人も多いようです。
民間の親の見守りサービス
民間企業からも多彩な見守りサービスが提供されています。カメラやセンサーを活用したサービスも数多くあります。高齢になると緊急時にヘルプを求める際に、タッチパネルやキーボードでの端末操作は難しいことも。音声認識や通話先の相手に口頭で伝えられるサービスだと安心です。
また、見守りサービスは本人の緊急時に支援する目的のものと、本人の状況を家族に通知する目的のものがあります。見守りサービスを選ぶにあたっては「どんな目的で使うのか」を、最初に親と家族で話し合っておくのが大切です。
浅井さん「例えば、家族が本人の状況を知りたいけど、本人は暮らしぶりを知られたくないという場合には、センサー式で、何かあった時にだけ通知が来るサービスを選ぶと良いでしょう」
高齢者向けの見守りサービスというと、昔から警備会社のものが有名ですが、現在ではさまざまな業種の企業から多様なサービスが展開されていると浅井さん。
浅井さん「私の著書でもいろいろな会社のサービスを紹介していますが、高齢化社会になり、ここ最近は保険会社や宅配会社など、見守りサービスを提供する企業が増えてきました。人によって求めるサービスは異なるので、比較検討して自分に合うものを探してみて欲しいです」
親の見守りにおいて一番大切なこと
「見守り」と言われると、親は守りの姿勢になって壁を作りやすいと浅井さん。親にとって「子どもはいつまでも子ども」。守ってくれる存在というより、年をとっても子どもは親が守る対象と認識しています。同情されたくないし、親としてのプライドもあります。それでも、親が高齢化して見守りが必要になると、この親子関係は徐々に逆転していくことになります。子どもを見守ってきた自分が、子どもから見守られる対象に。
浅井さん「自分だったらと思って、想像してみてください。親子関係の逆転はすごく不安だし、怖いと思いますよ」
親が壁を作ると、困ったことがあっても子どもにSOSを出さなくなってしまいます。子どもの前で自分を取り繕い、弱みを見せないようにしがちです。例えば、家で転倒した経験があっても、子どもには内緒にする親はかなり多いのだそう。そうした状態が続くと、親の変化に子どもが気づけず、気づいた時には親の老化がかなり進んでしまうことに。
親が自然と子どもを頼りにするようになり、親が「いつの間にか弱みを見せちゃった、自然と本音を言えた」と言ってくれるような関係を作るのがベスト。いきなり親へのアプローチを変えると、親は警戒するもの。普段からこまめにコミュニケーションを取り、親の様子をよく観察することが大切なのだと言います。
「高齢になると、けがや病気、ちょっとしたことでも大きく様子が変化します。例えばコロナ禍以降、全く外出しなくなり、急速に衰えた高齢者が多いんです。出掛けなくなると老化は一気に進みます。親が不安になった時にそっと手を差し伸べてあげられると良いですね」と浅井さん。
子どもが自分の心配を押し付けるのではなく、まずは親本人の不安を先にキャッチして自然にサポートしていくことが大切なのだそう。自分の話をしながら親の情報を引き出したり、自然なコミュニケーションを心がけると良いですね。
おわりに
親が高齢化してきたら、親と子のコミュニケーションを築き直す必要があると浅井さんは言います。「親子関係の再スタート」だと思って、これまでのやり方を変えていく必要があります。でも親自身は変わったつもりはないので、急がず丁寧にコミュニケーションしていくことが大切なのだそうです。
参考:浅井郁子「突然の介護で困らない! 親の介護がすべてわかる本」