前回のおさらい
近年、刺繍が根強い人気です。かわいい図案が載った本が多数出版され、材料がすべてそろった刺繍キットも多く販売されています。刺繍は針と糸さえあればでき、狭いスペースでも完結する手軽さも人気の理由です。独自のモチーフが人気の刺繍家、「クロヤギシロヤギ」の千葉美波子さんに、1回目では刺繍の道具や糸など、始める前に知っておきたい刺繍の基本的なこと、2回目では英字プリントのエコバッグにフリーハンドで描く花とネコの刺繍を教わりました。
さあ、いよいよお待ちかね、今回はこの連載のために千葉さんに特別に描き下ろしていただいた「ウチコト」オリジナルのアルファベットの刺繍図案を紹介します。またその図案を使ったハンカチへのワンポイント刺繍も紹介します。
「ウチコト」オリジナルのアルファベット図案を紹介します
テーマは「家を楽しむ、暮らしのアルファベット図案」! 千葉さんはどういったイメージでこの図案をデザインされたのでしょうか?
千葉さん「お家時間を楽しむ家族をイメージしてデザインを考えました。家族構成は、お父さん、お母さん、小学生の子どもの3人家族。猫と金魚を飼っていて、庭があるお家に住んでいます。小学生の子どもはスポーツをしているという、ストーリーを思い描きながら各文字をデザインしていきました」
ではお待ちかね、まずは前半A~Nまでの図案のデザインを見ていきましょう。
A:おむすびを握る
B:床掃除する
C:手を洗う
D:ネコがお出迎え
E:おもちゃを片付ける
F:シャツを畳む
G:お湯を沸かす
H:花を飾る
I:電気をつける
J:猫がくつろぐ
K:豆をつまんでお箸の練習
L:入浴する
M:庭木の剪定
N:ボタンをつける
それぞれの文字に暮らしのひとコマが表現されています。何気ない生活の一部だったり、クスッとしてしまうような情景、想像をかき立てられるような愛おしい風景が描かれていて、見ているだけでも楽しい図案です。続いて後半のO~Z、おまけの!マークと、?マークのご紹介です。
O:金魚鉢
P:メイクをする
O:お皿を洗う
R:おやつを食べる
S:芽が出る
T:ユニフォームを干す
U:料理を煮込む
V:アイロンをかける
W:キャッチボール
X:野菜を切る
Y:ワインを買う
Z:乾杯する
!:庭の花
?:庭の草
いかがですか? とても楽しくかわいい図案です。お湯を沸かす「G」、入浴する「L」、料理を煮込む「U」など、ガスのある暮らしをたっぷり盛り込んでいただきました。
千葉さん「今回のアルファベット図案は、初心者の方でもチャレンジしやすいように、基本的な4つのステッチだけで刺しています。使っているステッチは、ストレートステッチ、バックステッチ、サテンステッチ、フレンチノットステッチの4種類だけ。すべて25番刺繍糸を2本取りで刺繍しています。手持ちのものにワンポイントで刺してもいいですし、布に単語で刺して何かのアイテムに仕立てるのもいいと思います。また、全部刺して額装するのもおすすめです」
「ウチコト」オリジナルのアルファベット図案、早速刺してみたいと思った方も多いのではないでしょうか? 図案はこちらからダウンロードできますので、ダウンロードして、準備を始めましょう。
ハンカチにワンポイント刺繍をしてみよう!
今回は、市販のハンカチにワンポイントでアルファベット図案を刺していきます。「D:猫がお出迎え」を例に刺繍の手順と使用している4種類のステッチを紹介します。使用しているステッチは、イラストと動画でもご覧いただけますので、そちらも参考になさってください。
今回のポイントを千葉さんに伺いました。
千葉さん「ハンカチへの刺繍は人気があります。使うものなので、ワンポイントがおしゃれで実用的だと思います。刺繍のポイントはそれぞれの工程でお知らせしますが、裏も肌に触れるので、使用感が悪くならないように、玉結びと玉どめがない糸始末をしています。これはハンカチや衣類ならではかなと思います。プレゼントなどにも喜ばれるので、ぜひチャレンジしてみてください」
今回刺繍するハンカチ
千葉さん「今回は白無地のコットン100%のものを使用しました。布目が粗いと、図案写しや刺繍がしにくい場合もあるので、初めての方はご注意ください」
刺繍の仕方1
刺繍するハンカチと刺繍したい図案を用意します。図案を置き、表側を上にしてハンカチを重ねます。刺繍枠にはめるので、図案があまり端にならないように位置を調整します。位置が決まったら、ハンカチと図案をまち針でとめます。
刺繍の仕方2
チャコペンを使い、図案をしっかり写します。図案が写せたら図案を外し、刺繍枠にはめます(写真では8㎝の刺繍枠を使用しています)。刺繍の準備が整いました。
千葉さん「今回は白の無地で図案が透けたので、重ねてそのまま写していますが、透けない場合は、図案、手芸用片面複写紙、ハンカチの順に重ねて、鉄筆で図案をなぞって転写してください」
刺繍の仕方3
ドアからバックステッチで刺していきます。25番刺繍糸2本を針に通し、糸端はそのままで刺し始めます。 図案から3㎝程離れたところに表から針を入れ、ドアの下角から0.2㎝進んだところに針を出します。
刺繍の仕方4
ドアの下角に針を入れます。これでバックステッチが1つ刺せました。刺し始めの糸端は後で始末するので、そのままにしておきます。刺し進める時は、糸端がからまないよう、利き手と反対の指で押さえておきます。
千葉さん「バックステッチの針目の長さですが、細かい図案の時は0.2㎝くらい、大きな図案の時は0.4㎝くらいの針目を目安にしてください。でも針目の長さはあくまで目安です。刺した後に糸の引き加減を調整して、針目の高さをそろえるとバックステッチはきれいに見えます」
刺繍の仕方5
同様にして、0.2㎝進んだところに針を出し、0.2㎝戻ったところに針を入れるのを繰り返し、ドアをぐるりと刺繍します。
刺繍の仕方6
刺し終わりは裏側で針目を数回すくって巻きつけ、糸をカットします。刺し始めの糸は、裏側に引き抜き、針に通して、刺し終わり同様に、針目を数回すくって巻きつけてカットします。
刺繍の仕方7
窓もドアと同様にバックステッチで刺繍します。刺し始め、刺し終わりの糸始末も同様です。
刺繍の仕方8
次にネコをバックステッチで刺繍します。刺し始めは、すでに刺してあるドアの裏側の針目に糸をからげてから刺し始めます。裏側のドアの針目に針を通し、糸端は3㎝程残します。針目を数回すくって巻きつけ、糸を引いてみて、抜けなかったらOKです。刺し終わりは今まで同様に始末します。
千葉さん「刺し始めの糸始末は、もちろんバックステッチと同じでも大丈夫。でもこの糸始末の方が、すでに刺繍がしてある場合、最後に針に糸を通すひと手間が省けます。糸通しが面倒という方におすすめです」
刺繍の仕方9
次にドアノブをサテンステッチで刺繍します。ドアノブの図案の内側に針を出し、小さく1針入れます。糸端は1.5㎝程残し、図案の内側をもう1針小さくすくいます。これを捨て針といいます。この上を刺繍で埋めていきます。
刺繍の仕方10
丸の中心の上の印に針を出し、その真下の印に針を入れます。中心に1針刺せました。この1針を目安に左右を交互に埋めていきます。左側に同じ角度で1針刺し、つぎに右側も同じ角度で1針入れます。これを繰り返して図案が埋まったら、刺し終わりは、裏側の針目に数回針を通し、糸を切ります。サテンステッチの完成です。
千葉さん「左右対称の図案をサテンステッチで埋める場合は、中心の1針を目安に左右交互に刺していきます。左右が同じ針数になる必要はないので、目視で形を確認しながら埋めていきます」
刺繍の仕方11
次にネコの目をフレンチノットステッチで刺繍します。糸端は8と同じように始末し、針を表に出します。針に糸を1回巻きつけます。そのまま出した穴の隣に針先を入れ、巻きつけた糸を引いて形を整えます。裏から針を引き、目ができました。
刺繍の仕方12
最後にヒゲをストレートステッチで刺繍します。針を出し、鼻先に針を入れます。これを繰り返し、ヒゲができました。刺繍の完成です。
千葉さん「ネコの目とヒゲは同じ糸を使っていて、さらに位置が近いので、続けて刺しています。ドアノブも同じ糸を使用していますが、続けて刺すと裏側で糸が渡ってしまうので、今回は使う時に気にならないように別々にしています」
刺繍の仕方13
刺繍枠を外し、刺繍を水でぬらし、図案の線を消します。当て布をしてアイロンをかけ、しっかり乾かします。
完成
ハンカチのワンポイント刺繍の完成です。ドアからお出迎えをしてくれているネコが何ともかわいい図案です。今回使用したステッチは、イラストと動画でも刺し方を確認できますので、ぜひご覧になってください。
ストレートステッチの刺し方
バックステッチの刺し方
サテンステッチの刺し方
フレンチノットステッチの刺し方
こちらの2枚も紹介します。1枚は、「T:ユニフォームを干す」と「W:キャッチボール」の数字とボールを変えて刺繍しました。もう1枚は「G:お湯を沸かす」「H:花を飾る」「O:金魚鉢」からそれぞれやかん、花、金魚の小さい図案を抜き出して刺繍しました。
数字と他のボールの図案も千葉さんにご用意いただきました。自分だけのアレンジを楽しんでみてください。図案はこちらからダウンロードできます。
千葉さん「アルファベットと数字を組み合わせて刺繍すれば、お誕生日に飾るバースデーボードなど、記念日の飾りにも応用できますので、それもおすすめです」
まとめ
今回は「ウチコト」オリジナルのアルファベット刺繍の紹介と、その図案を使ったワンポイント刺繍のハンカチを紹介しました。次回は同じくアルファベット図案を使ったマットの作り方を説明します。刺繍の後に仕立てる工程もありますが、直線縫いだけでできますので、ぜひチャレンジしてみてください。お楽しみに!