ビニールクロスの特徴とは?
ビニールクロスは、他の壁紙よりも施工がしやすく安価であることから、広く使用されています。主な原材料はポリ塩化ビニルで、通気性や吸湿性は低いですが、その分水に強いので水拭きが可能。手入れがしやすいのが大きなメリットです。
日本の多くの住宅で使用されているビニールクロス。ついたばかりの汚れなら水拭きできれいに落ちることが多いですが、いつの間にかついた汚れや、汚れの種類によってはなかなか落ちないこともありますね。
頑固な汚れを落とすには、汚れの種類ごとに適した落とし方を知ることが大切です。
ご自身のYouTubeチャンネルや、著作『やみつき掃除術 市販洗剤4本で感動的に汚れが落ちて家じゅう試したくなる! 』で、実践的なお掃除術を発信しているお掃除職人きよきよさんに、汚れの種類別にビニールクロスのお掃除方法を教えていただきました。
色や柄のバリエーションが豊富なのもビニールクロスの特徴ですが、きよきよさんによるとやはり多いのは白色系のクロスだそう。それだけに汚れが目立つともいえます。
今回は、最も広く使用されている白色系のビニールクロスを前提に、汚れ落としの方法をご紹介します。
クロスの汚れは気付いた時に即、水拭きで落とす
「どんな汚れでも気づいた時にすぐに落とすのが大切です」ときよきよさん。
「クロスに汚れがついてしまった! 」と気付いたら、すぐにタオルやスポンジをきれいな水でひたして固く絞ってから拭きとりましょう。クロスに傷をつけないように、強くこすりすぎないことも大切です。
水拭きでは落ちない汚れ&シミになった汚れの落とし方
「手強そうな汚れの場合はこすって落とすのではなく、洗剤の力を借りて落とすと良いでしょう」(きよきよさん)
水拭きしただけでは落とせなかった汚れやシミを落とすには、洗剤を使いましょう。
落書き、コーヒーや紅茶が跳ねて付着したシミ、血液のシミといった、すぐに水拭きしても落ちにくい汚れの落とし方をご紹介します。
落書きは使ったものの種類によって落とし方を変える
「なにで落書きされたかにもよりますが、まずは消しゴムで落としてみると良いでしょう。鉛筆での落書きやこすれによる汚れは、消しゴムで落とせる場合がよくあります」(きよきよさん)
消しゴムで試しても落ちなかった場合は、スポンジやタオルに洗剤を含ませて落とすのがおすすめ。落書きに使われたものの種類によって、以下のように洗剤の種類を変えます。
- 油性ボールペン・油性クレヨンなど:アルカリ洗剤
- 中性ペン:中性洗剤
ただし、きよきよさんによると、油性マジックは中まで染み込んでしまうケースが多く、プロであっても完全にきれいに落とすのは難しいとのこと。
「洗剤を使っても落とせなかった落書きには、修正テープを貼って補修するという方法もあります」(きよきよさん)
落書きされた場所に修正テープを貼り、指でなじませるように押すと修正テープが壁にぴったりと沿うため、ほとんど目立たなくなります。白い壁なら文具の修正テープでも大丈夫ですが、ホームセンターではさまざまな色の壁補修用テープが販売されているのでチェックしてみるといいですね。
コーヒーや紅茶のシミは洗濯用染み抜き剤を活用
ついたばかりのコーヒーや紅茶の汚れなら、水拭きで落ちることが多いです。できる限り早めに対処しましょう。時間が経ってしまった場合は、洗濯用染み抜き剤をスポンジや布に含ませて落とすのがおすすめ。
「その時、シミが広がらないように横にゴシゴシ拭かず、トントンとピンポイントで叩くようにしてください。力を入れれば落ちるわけではないので、気をつけましょう」(きよきよさん)
血液のシミも洗濯用染み抜き剤を活用
血液がクロスについてしまった場合は、目立つため、ほとんどの方がすぐに拭き取ります。そのため、ハウスクリーニングで落とす機会はほとんどないのだそう。ただし、気付かないうちに血液がシミになってしまっている場合もあります。
「血液のシミには、コーヒーや紅茶のシミと同じように洗濯用染み抜き剤を使うのがおすすめです。この場合も、横にゴシゴシこすって拭き取ろうとせずトントンと叩いてくださいね」(きよきよさん)
原因が分からない古い汚れには「つけ置き」が効果的
普段目につきにくい場所についてしまった汚れや、いつの間にか壁が全体的に黄ばんでいるといった場合は、何による汚れか分からない場合も多いと思います。
「ハウスクリーニングのプロは、お客さまの生活を想像してそれがどのような汚れかを予想してクリーニングを行います。また、さまざまな汚れに対応できる洗剤や道具を持っていますので、早く的確に汚れを落とせます。しかし、一般のご家庭ではそれは難しいので、酸素系の漂白剤である酸素系漂白剤パウダーでの『つけ置き』をおすすめします」(きよきよさん)
酸素系漂白剤パウダーでのクロスの「つけ置き」汚れ落としの手順
- 1. 40℃~60℃のお湯4ℓにつきスプーン1杯分(約28g)の酸素系漂白剤パウダーを加え、溶けるまでよく混ぜる※
- 1.の液をスポンジやタオルに含ませて、クロスを濡らすように塗布していく
- そのまま半日程度放置する
- 水拭きしてしっかり拭きとる
※分量は製品により異なります。ここでは例としてオキシクリーンの分量を紹介しています。
洗剤は垂れてしまっても構いませんが、床に洗剤が溜まると床材を傷める可能性があります。新聞紙やビニールシートを敷いておきましょう。
ただし、これはあくまで汚れの原因が分からない場合の無難な落とし方とのこと。
酸素系漂白剤パウダーは、基本的には洋服やキッチン、お風呂など家中の汚れに対応している商品で、消臭効果に加えて除菌効果もあります。とはいえ、きれいに落とせるかどうかは、汚れの種類や程度にもよるとのことです。
また、「つけ置き」は、洗剤を汚れに浸透させて落とす方法なので、ある程度時間がかかります。これらのことをあらかじめ留意しておけると良いでしょう。
少しずつついてしまった汚れを落とすには?
気付かないうちに少しずつついてしまった汚れでも、クロスの場所や汚れの見た目によっては、何の汚れなのかを判断できる場合があります。汚れの原因が分かる時は、種類ごとに対処しましょう。
油汚れには食器用中性洗剤を使う
「キッチンのクロスなどについた黄色や茶色の汚れは、多くの場合、油汚れです。油汚れが原因の場合は、ついてから時間が経っておらず、少量の汚れであれば食器用中性洗剤で落とせます。しかし、時間が経っていたり、量が多かったりする場合は中性洗剤では落ちません」(きよきよさん)
きよきよさんによると、落ちにくくなってしまった油汚れを落とすには重曹やセスキ炭酸ソーダなどを使う方が多いとのこと。
重曹・セスキ炭酸ソーダでクロスを掃除する手順
- 説明書に記載された割合で重曹やセスキ炭酸ソーダをぬるま湯に溶かして、洗浄液を作る
- 1.をスプレーボトルに入れ、クロスに吹き付ける
- 濡れた雑巾で拭き上げる
「ナチュラル系洗剤で落ちない場合は、キッチンの油汚れ用のアルカリ性洗剤を使用してみてください。汚れを拭いて落とすイメージです」(きよきよさん)
アルカリ性洗剤でクロスを掃除する手順
- アルカリ性洗剤を壁に塗布する
- 時間は置かないで、濡れた雑巾またはマイクロファイバークロスで拭き取る
- 仕上げに、濡らしてよく絞った雑巾またはマイクロファイバークロスで拭き取る
カビは塩素系漂白剤か消毒用エタノールを使う
「リビングなどの洋間や洗面所の壁についた黒っぽいシミのような汚れは、カビだと考えられます。臭いが残っても気にならない場所の真っ白なクロスについたカビ汚れを落とすのなら、カビの菌糸を死滅させ、漂白効果のある塩素系漂白剤を使うと良いでしょう。しかし、塩素系漂白剤を使うと、クロスの色や柄が落ちてしまうことがあるので、使えない場所もあります」(きよきよさん)
塩素系漂白剤を使用する際は必ず窓を開けて換気をして、事前に目立たないところにつけて色落ちなどがないか確認してから使用してください。また、長時間臭いを残さないために、汚れ落としの後は水拭きをしましょう。
「塩素系漂白剤の方が強力なので、まずは塩素系漂白剤をおすすめします。塩素系漂白剤が使えない場所には、消毒用エタノールがおすすめ。カビによる黒ずみを真っ白にする効果はありませんが、こちらは臭いが残らず、色落ちもしません」(きよきよさん)
カビは、たんすの裏やカーテンまわり、結露が生じている窓周辺などのクロスに発生しやすい汚れです。カビの発生を防ぐためには、普段から適切な換気を心がけ、結露は小まめに拭き取っておくことが大切です。
カビの原因となる結露の原因や対策については、以下の記事も参考にしてみてください。
タバコのヤニ汚れにはアルカリ洗浄剤を使う
「壁全体についた黄色味を帯びた汚れは、大抵の場合タバコのヤニのほか、食卓で鉄板やホットプレートを使用した際の煙、蚊取り線香の煙などが原因です。これらの汚れは有機物質です。そのため、アルカリ洗浄剤を使うときれいに落としやすいです」(きよきよさん)
きよきよさんによれば、タバコのヤニ専用のクリーナーもありますが、油汚れ用の台所用・住宅洗剤を使用すればきれいに落とせるとのことです。
ビニールクロスを掃除する時の注意点
気になる汚れを落とすことはもちろん、ビニールクロスの普段の掃除にも役立つポイントをきよきよさんに教えてもらいました。
長い柄のフロアモップを活用する
クロスは天井から床まで貼られているものなので、幅広い範囲、また、手の届かない高い場所も掃除が必要なことがあります。しかし、脚立を使うと危険ですし、時間もかかります。
「クロスを掃除する際は長い柄のあるフロアモップがおすすめ。隅っこまできれいに拭けて、早く掃除が終わります。フロアモップに、速乾性のアルコール入りのウェットシートを付けて使用すると良いですよ」(きよきよさん)
ほこりが溜まりやすい場所は掃除機をかけてから拭き掃除を
「たんすや電化製品、家具の裏など、いつもは掃除ができないところのクロスをきれいにしたい時には、まず掃除機をかけて表面についたほこりや汚れを吸い取っておきましょう。そのまま拭いてしまうと、汚れを壁紙に広げてしまうことになりかねません」(きよきよさん)
クロスの継ぎ目には注意して
クロスには貼り合わせの継ぎ目があります。
「クロスとクロスの間の部分から水が入ってしまうと、クロスがはがれてしまうことがあるので、汚れ落としや掃除の時にこの部分を拭く場合、注意して丁寧に拭きましょう」(きよきよさん)
ビニールクロスは10年をめどに張り替えも視野に
「ビニールクロスは表面はビニールですが、中は紙です。そのため、10年以上経っているのなら、張り替えを検討するのも良いでしょう。ビニールクロス壁の掃除の頻度は、家庭状況やペットの有無や、掃除方法によっても異なりますが、汚れが目立ってきたときにする程度で問題ありません」(きよきよさん)
日ごろのメンテナンスできれいに維持することはできますが、寿命があることは考慮しておいたほうがよさそうです。
なお、きよきよさんによると、フロアモップでのホコリ取りは、3か月ぐらいに1回程度がおすすめだそう。ペットを室内飼いしている場合は、もう少し頻繁に。換毛期などはよりこまめに掃除すると良いそうです。
おわりに
お掃除職人きよきよさんにお話を伺って、ビニールクロスの汚れは、汚れの種類に適した洗剤を使い、強くこすらずに落とすことが大切であることが分かりました。今回紹介していただいた洗剤や掃除用具は、スーパーやドラックストアで手に入るものばかりなのでぜひ試してみてください。
お家の多くの場所に使われているビニールクロス。手間をかけずにきれいに保って、清潔で気持ちの良い室内でおうち時間を楽しみましょう。