換気とは? なぜ必要なの?
新型コロナウイルスの感染拡大で、換気の必要性について耳目に触れる機会が増えましたが、そもそも「換気」とは何をすることなのでしょうか?
空調専門メーカーであるダイキン工業株式会社の高木旭さんによると、住宅における「換気」とは、室内の空気を外の空気と入れ換えること。換気することで、室内の汚染物質の濃度を薄めたり、外に出したりする効果があるのだそう。
実は室内では、空気を汚す物質が絶えず発生しています。
「建材や家具から発生するホルムアルデヒドなどの化学物質は、シックハウス症候群の原因になるといわれています。また、ガスストーブや石油ストーブなど室内で燃焼する暖房機器を換気せずに使用すると、不完全燃焼によって一酸化炭素が発生する恐れがあります。
空気が乾燥している冬は、乾燥を好むウイルスが活性化しやすいので感染症に注意が必要ですし、梅雨時は、湿気が家屋に悪影響を及ぼすことも。他にも、調理中に発生するにおいや水蒸気、人が発する二酸化炭素や水分など、普段どおりに生活するだけで空気は汚れていくのです」(高木さん)
近年は住宅の気密性が高まり、積極的に換気をしなければ空気の入れ換えが十分にできません。換気を怠れば汚染物質は室内にたまり続け、知らず知らずのうちに健康に悪影響を及ぼしてしまうかもしれません。
エアコンでは換気できないの?
室内の温度を調節するエアコン。「空気の入れ換え」もエアコンがやってくれると思われがちですが、高木さんは「一部の機種を除いて、一般的なエアコンでは換気はできません」と注意を促します。
「エアコンは、室内の空気を温めたり冷やしたりしてから再び室内に放出する仕組みになっています。このため、空気そのものは室内を循環しているだけ。また、フィルターが付いているので『空気中の汚れが取れているのでは?』と考える人もいるかもしれませんが、エアコンのフィルターで捕集できる汚れはホコリや油など。ウイルスなどの微細なものはできません」(高木さん)
ただし、換気ができるエアコンもあります。 例えば、ダイキン工業の製品には換気機能を搭載したルームエアコンがありますが、これはエアコンの室外機から搬送ホースを通して外の空気を取り込む仕組みなのだそう。
「取り込んだ空気は温度調整されているので、室温を変えることなく換気ができるのがメリットですが、十分な換気量を確保するためにも一般的な換気も併用してください」(高木さん)
正しい換気の仕方とは?
室内と外の空気を入れ換えることが「換気」と分かりましたが、どれぐらい時間をかければ十分に換気できるのでしょうか?
「1時間に1回、5分から10分の換気を行うのが目安です。さらに言うと、1時間に1回、10分間の換気をするよりも、1回5分の換気を1時間に2回する方が効果的です」(高木さん)
汚染物質は室内に人がいる限り増え続けるもの。そのため、こまめに換気する方が体への悪影響を少なくできるわけです。
続いて、具体的な換気の仕方を伺いました。
換気の仕方その1. 基本は自然の風を通す窓開け換気
換気は外気との入れ換えですから、窓を開けるのが基本的な換気の仕方。
「窓を2カ所開けると、部屋の中に空気の通り道ができます(上の図)。ただ、2つの窓が近すぎる場合(左図)、部屋全体の空気の流れができにくくなってしまいます。できれば、部屋の対角線上にある窓(右図)を開けていただくと、効率良く換気できます」(高木さん)
風がない日はなかなか空気が通らず、換気がしにくいですが、その場合は窓の開け方にひと工夫を。「風が入る方の窓を小さく、出る方の窓を大きく開ける」ことを意識すると、空気が通りやすくなるそうです。
換気の仕方その2. 換気扇やレンジフードを窓開けと併用すると効率的!
窓開け換気をもっと効率的に行いたいときは、換気扇やキッチンのレンジフードと併用する方法があります。
「浴室やトイレなど、換気扇が設置されている場所はいくつかありますが、住宅の換気設備の中で最も排気量が大きいのはキッチン。窓開けと併用すれば、レンジフードが換気をアシストしてくれて空気が十分に通ります」(高木さん)
換気の際は、換気扇やレンジフードからなるべく離れた窓を開けると部屋全体に空気の通り道ができます。窓が1つしかない部屋や、窓を開けてもあまり風が通らない日、窓をあまり開けたくない場合の換気の仕方としておすすめだそうです。
換気の仕方その3. 24時間換気システムは「正しく使うこと」が肝心!
24時間換気システムとは、室内の空気を常に換気するための設備で、建物全体の空気が2時間で1回入れ換わるようになっています。
建築基準法の改正により、2003年7月以降に建てられた住宅には設置が義務付けられています。浴室やトイレなどに設置された換気扇を回すと、排気口から室内の空気を外へ追い出し、壁や天井にある換気口から外気を取り込む方式が一般的です。
ただし、換気システムが作動するのは電源を入れているときだけ。電源を切ったままにしていたり、換気口を閉じたりしていると十分に換気できません。
高木さん「電気代が気になって電源を切ったり、外から冷気が入り込むのがイヤで換気口を閉じたくなったりしますが、それでは換気設備としての役割を果たせません。システムの電源は切らずに、換気口は常に開けて、正しく使ってください」
せっかく設置されている設備ですので、仕組みをしっかり理解して、正しく使いたいですね。
季節に合わせた換気の仕方はあるの?
換気した方がよいと分かっていてもおろそかにしがちなのは、エアコンなどで快適になった室温が換気によって変わってしまうことや、外から入り込む花粉などが気になるからではないでしょうか。
「ちょっとした工夫で、換気時の快適性をアップすることができますよ!」と高木さん。季節や気候に合わせた換気の仕方について、コツを伺いました。
花粉シーズンは「レースカーテンを活用」
花粉は、種類によって春先から秋口まで飛散しています。窓を開けると花粉が入ってくるので、花粉症の方にとっては窓開け換気をしたくない時期です。
「窓開け換気の時、部屋になるべく花粉を入れない工夫として、レースカーテンを活用しましょう。窓は小さめに開けて、カーテンをしたまま換気することで、室内に入る花粉の量を4分の1程度に減らせるといわれています」(高木さん)
カーテンに付いた花粉は洗濯すればOK。レースなら布地が薄いので、洗濯も手軽です。
また、窓を小さめに開ける分、換気扇を併用すればより効率良く換気できます。
空気清浄機と併用する換気もおすすめ!
花粉シーズンや、インフルエンザなどのウイルス感染症が気になる時期の換気の仕方として、高木さんがおすすめするもう一つの方法は「空気清浄機」を活用すること。
厚生労働省は、換気が難しい空間において、HEPA(へパ)フィルター搭載かつ風量5.0㎥/分程度以上の空気清浄機を推奨しています。
HEPAフィルターは、0.3マイクロメートルの微粒子を99.97%除去することが可能な高性能フィルターのこと。花粉(直径は数10マイクロメートル程度)はもちろん、ウイルスを含むエアロゾル飛沫の捕集にも効果的であることがわかっています。
ただし、空気清浄機に換気機能はありません。人の呼吸で増えた二酸化炭素などの濃度を下げることはできないので、窓開け換気も行う必要があります。
前述したレースカーテンを活用する換気の仕方と組み合わせると、よりしっかりと花粉対策ができそうです。
参考:厚生労働省 冬場における『換気の悪い密閉空間』を改善するための換気の方法
空気清浄機を効果的に使う方法については、こちらの記事も参考にしてみてください。
雨や雪の日は「小さい窓開け+換気扇」が効率的!
雨や雪の日の換気は、どのように行えばよいでしょうか?
窓を全開にすると部屋に雨や雪が吹き込むので、「入ってこない程度に小さめに開ける」のが基本的な換気の仕方。ただ、窓をしっかり開けないとそれだけ換気量が落ちてしまうので、いつもより長めに換気時間を取る必要があります。
「おすすめは『換気扇やレンジフードとの併用』。キッチンのレンジフードを回せば排気量がアップし、窓を小さめに開けていてもスピーディーに換気できます」(高木さん)
冬に室温を下げずに換気する「暖房後の窓開け換気」は節電にも!
寒い時期は、窓を開けると室温が下がってしまうのが悩み。部屋を暖める暖房にかかる費用も気になって、つい換気を怠りがちになります。
寒い季節の窓開け換気の仕方について、高木さんは「暖房で部屋を暖めてからの換気がおすすめ」と言います。
エアコンは起動してから室温が設定温度に達するまでの間に最も多くの電力を消費します。このとき室温と設定温度の差が大きいと、それだけエアコンにかかる負荷が高くなり、消費電力も大きくなります。
「暖房で壁や天井を先に温めておけば、換気した際に冷たい空気が室内に入っても部屋の温度が下がりにくくなりますし、温度差が小さくなるので節電にもつながります。
また冬は風が強く、部屋の中に空気の流れを作りやすいので、窓を開ける時間を5分より短くしても必要量の換気ができますよ。
朝に換気したい際は、起床時間に合わせてエアコンのタイマーを活用し、先に部屋を暖めてから換気すれば効率的ですし、快適性の面でもおすすめです。帰宅時間が分かっている場合にもタイマー機能を使うのがいいですね」(高木さん)
暑い季節は「窓開け換気後の冷房」を!
暑い季節でも、室温を快適に保ちながら換気する方法はあるのでしょうか?
高木さんによると、外から帰宅したときは、室内の熱気を外に逃がしてからエアコンの電源を入れて、エアコンを使用中の場合は、電源を切らずに換気するのがおすすめとのこと。
先述の「冬の換気」でも触れましたが、「室温とエアコンの設定温度との差が小さい方がエアコンにかかる負荷が少ない」というのは夏場も同じ。冬は先に部屋を暖めてから換気を行いますが、夏は逆に、まず窓を開けて部屋にこもった熱気を逃がしてからエアコンを立ち上げるのが正解です。
また、エアコンは起動時の消費電力が大きいので、電源を入れ直す回数が多いとその分余計に電力を消費します。
「エアコンが稼働中の場合は、つけたまま換気する方が節電になります。これは夏も冬も同じです。また、換気扇を併用すれば短時間で換気ができます」(高木さん)
換気扇や換気口のお手入れも忘れずに!
住宅の換気には、窓を開けるだけでなく、外気を取り込むための換気口や、室内の空気を外に出す換気扇やレンジフードも重要な役割を果たしています。換気口や換気扇、レンジフードには空気に混じった汚れを取り除くためのフィルターが付いている場合、何もせずに放っておくと汚れはどんどんフィルターに蓄積します。
「フィルターが目詰まりを起こすと外気を取り込みにくくなり、換気の効率が落ちます。換気能力を落とさないために、製品の取扱説明書に従って定期的にお手入れしてください」(高木さん)
フィルターが付いていないタイプでも後付けできるものがあるので、サイズや種類を確認したうえでフィルターを活用するのもいいかもしれません。
頑固なレンジフードの汚れは「プロ」に依頼するのもおススメ!
「自分でやりたいけど時間がない」「パーツの外し方がわからない」「自分でやってみたけど、汚れが落ちきらなかった」。そんな場合はハウスクリーニングの専門業者にお任せするのもおススメです。
東京ガスのハウスクリーニングは、自社研修を受けたプロが、フィルターやカバー部分の油汚れはもちろん、日ごろお掃除できないレンジフードの内部パーツまで分解・専用洗剤で洗浄してくれます。
利用した方の中には、せっかくお金をかけて綺麗にしてもらったのだから、綺麗な状態を維持しようと感じる方も多いそう。
ご自宅向けにはもちろん、ご両親へのプレゼントにも喜ばれること間違いなしです。
Webで簡単にお申し込みできます。ぜひお試しください!
おわりに
高木さんのお話から、工夫次第で室内を快適に保ちながら換気ができることが分かりました。節電につながる換気の仕方も知っておいて損はありませんね。今回高木さんに教えていただいた換気の仕方を参考に、住まいの状況に応じた効率的な換気を実践してみてください。