退去費用は何で決まる? 金額決定のポイントは「原状回復」
賃貸住宅から引っ越すときに必要となる退去費用について、またその金額をできるだけ抑えるために知っておきたいことを、数多くの引っ越しに関わってきた株式会社CHINTAIの荒木雅浩さんに伺いました。
引っ越しに伴う退去費用の主体となるのは「原状回復」に関わる費用です。原状回復とは、借りた部屋を住む前の状態に戻すこと。荒木さんによると、それにかかる費用をどこまで借主が負担すべきかで、以前はトラブルも多く起こっていたのだそう。
「令和2年の民法改正に伴って、国土交通省が定めた『原状回復をめぐるトラブルとガイドライン』(以下ガイドライン)が変更になり、借主が負担すべき内容が分かりやすく記されたのです。これによりトラブルがかなり減りました」(荒木さん)
参考:国土交通省「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」
原状回復のために貸主が負担すべき費用
荒木さんによると、経年劣化(暮らし続けていく中で自然に発生する汚れや消耗、摩耗など)については、貸主が原状回復の費用を負担することになっているそうです。
「例えば太陽による壁の日焼け、お風呂やトイレの黄ばみなどです。またエアコンやインターフォンなど使用設備の損耗についても、借主が故意に壊したなどでなければ、貸主側の負担になります」(荒木さん)
ただ、どちらが払うか判断が難しいケースも。タバコによる壁の黄ばみは経年劣化になるため、基本的には貸主負担です。しかし、借主がヘビースモーカーで1年しか住んでいないのに全面の張り替えが必要なくらい黄ばんだ場合は、経年劣化に該当しないこともあります。
原状回復のために貸主が負担すべき費用
退去時に貸主が負担すべき費用は、故意の過失や、通常を超えるような使用により起こった消耗、故障、破壊などを元に戻すために必要な費用です。例えば壁に釘を打ったとき、子どもがふすまに穴を開けたり、壁紙に落書きをしたときなどはこれに該当します。
また、上記のような特別な部分がなくても、部屋のクリーニング費用は原則として借主の負担となります。
「クリーニング費用の相場は1平米1,000円〜1,200円程度。もし故意の過失などがないにもかかわらず、これを大幅に超える退去費用を請求された場合は、貸主に内容を確認したほうがよいでしょう」(荒木さん)
貸主によっては、範囲を超えた退去費用を請求してくることもあるそうです。
特約などがない限り、破損や汚れがあっても、通常は壁紙は1面ごと、畳みは1枚ごと、ふすまは破けた範囲のみ交換となるため、請求はその部分のみとなります。
ところが、貸主によっては部屋全体のクロスや全ての畳、障子の張り替え費用を請求してくることもあるそうです。
「そんなときは国交省の『ガイドライン』などを確認し、納得できなければ、専門家などに相談するようにしましょう」(荒木さん)
ただし、注意が必要なのが契約時の特約事項です。国土交通省の「ガイドライン」内では基本的にこれまで述べた内容が適用されますが、貸主が「経年劣化による回復も借主が負担する」といった特約をつけている場合もあります。このような特約がある場合は、契約時に不動産屋などから説明があるので、理解した上で契約するようにしましょう。
引っ越しが決まったら必読! 退去費用を抑えるコツ
部屋の状態に特に問題がなければ、退去費用として借主が支払うのは基本的にはクリーニング費用だけです。しかし、早めに準備をしておかないと、追加で費用がかかることも。退去時の貸主からの請求額を極力減らすためにやっておくべきことを、時系列で紹介します。
【引っ越し3カ月以上前】解約告知期間の確認
借主が貸主に退去することをどれくらい前までに知らせるべきかを定めているのが「解約告知期間」です。最大の解約告知期間は3カ月ですが、契約内容により1カ月前のところもあれば、2カ月前の場合もあります。
「地域によっては日割り計算をしてくれず、例えば解約告知期間である1カ月前の9月5日に伝えたのに、10月末までの家賃を請求されるという場合もあります。引っ越しを考えている人は、最初に解約告知期間をしっかり確認しておきましょう」(荒木さん)
【引っ越し1〜2カ月前】不用品を処分する
「ごみや不用品を部屋に残していくと、処分にかかった費用を請求されることがあります。そのため、退去前に自分で処分するのがおすすめです」(荒木さん)
家具や家電など一般ごみとして捨てることができないものは、廃棄に時間がかかることも。自治体の粗大ごみ回収だと、引き取りまでに最長1カ月待ちということもあります。そのため自治体の回収状況の確認だけでも、余裕をもってしておくとよいでしょう。どうしても間に合わない場合は、引っ越し先に持っていって処分するという方法もあります。
また、荒木さんによると、借りていた部屋の設備を間違って持っていってしまう人もいるのだそう。賃貸物件ではエアコンや洗濯機の排水エルボ(排水口と排水ホースの接続部品)などは備え付けのものがほとんど。引っ越しの際に間違って持っていってしまわないように気を付けましょう。
【引っ越し10日〜1週間前】破損箇所の補修
荒木さんによると、コンセントカバーの破損、フローリングのひび割れなども貸主からの修理費請求の対象になるそうです。多少の破損であれば、ホームセンターなどで購入した道具で修理しておいた方がいいでしょう。
ただし、慣れていない人や修理が苦手な人が無理に行うと失敗することも。そうなると余計に費用がかかってしまうため、自分が確実にできそうだと思える範囲で行ってください。
【引っ越し3日前〜前日】水回りの掃除
引っ越しの荷物がまとまったら、水回りの掃除を。水回りの汚れがひどいと余計なクリーニング費用を請求される原因になります。日常生活レベルでいいので、最後に掃除をしておきましょう。
賃貸住宅では退去時のことを考えた生活を
引っ越しが終わってひと安心・・・と思いがちですが、もし転居先も賃貸住宅なら、退去時のことを考えて生活するのがおすすめです。知っておくと良い、次の退去費用を抑えられるポイントをご紹介します。
入居時には面倒でもしっかり現状確認を
入居したら最初に部屋の現状をしっかりと確認すること。平面図や国土交通省の「ガイドライン」の中にある「入居時の物件状況及び原状回復確認リスト」を使用して、部屋の状態をチェックしましょう。
もし不備などがあった場合は、事前に管理会社などに共有してください。荒木さんによると写真を撮影して送るなど、証拠を残しておくことで、退去時のトラブルを防げるそうです。
また退去時の支払いに関しての特約の有無を改めて確認しておくことや、賃貸契約における「善管注意義務」の内容についても、しっかりと把握しておくことが大切です。「善管注意義務」とは、民法で定められたもので、簡単にいうと部屋を借りている間は「善良なる管理者の注意義務」をもって暮らさないといけないということです。
善管注意義務について、荒木さんからは「基本的には普通に暮らしていれば大きな問題になることはありませんが、ルールを知っているか知らないかでは、結果が大きく変わることも。退去時の支払いに関わることは入居時にしっかり確認することが大切です」とアドバイスがありました。
「入居時の物件状況及び原状回復確認リスト」はこちらからダウンロードできます。
入居中はこまめに掃除やケアを行う
部屋の掃除や片付けを怠らなければ、不備や瑕疵がある場合に早く気付くことができます。また、きちんと掃除やケアを行っていれば、経年劣化で壊れたものについても主張しやすいそうです。
日常ケアの大切さについては、「新しい物件でも気密性の高さから結露が発生し、カビが発生しやすいことも。壁などがカビだらけになってしまうと、元に戻すのはとても大変です」と荒木さん。窓はもちろん、フローリングに付着した汗や皮脂なども、こまめに拭くように心掛けた方がよさそうです。
また、物を落として洗面台を割るなど、不注意で設備などを壊してしまった場合は、早めに貸主に相談するのがおすすめとのこと。小さな被害のうちに相談した方が、結果的にリーズナブルに済むそうです。
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以下の記事では、実際にハウスクリーニングがどのように行われるのかをご紹介しています。
参考にしてみてください。
東京ガスの浴室クリーニングで、汚風呂はどこまでキレイになる?
入居中の「ついうっかり」で退去費用がかさむことも
ついやってしまいがちだけど、退去費用がかさむ要因になる事柄を荒木さんに教えてもらいました。
設備や内装を勝手に変えると退去時の原状復帰が難しくなるとは分かっていても、
・鍵を無断で取り替える
・エアコンを無許可で設置する
などはやってしまいがちなので注意を。
また、ペット可の住宅であっても、入居時の申告からペットの種類が変わったり数が増えたりすると、契約違反になり、汚れが増える分の原状回復義務が増える場合もあります。
荒木さんによると「熱帯魚はペットではないと解釈している人も多いかもしれませんが、重い水槽は床が傷む原因になることが予想されますし、水漏れなどの汚れについても『通常範囲外』とされる可能性もあります」とのこと。賃貸住宅で生き物を飼育するときは注意しましょう。
おわりに
賃貸住宅の引っ越し時に気になる退去費用ですが、退去時に部屋の状況や請求費用の内容をしっかり確認をすることはもちろん、入居中も注意して生活をすることで、出費を抑えることができます。引っ越しの予定がある方はぜひ気を付けてください。
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