学童保育とは? 誰が、いつまで利用できる?
学童保育の利用を検討している保護者が知っておきたい、学童保育の詳しい内容や選び方などを、最新状況や現場の様子に詳しい株式会社ベネッセスタイルケアの学童事業部長・田端江津子さんに伺いました。
学童保育とは、日中自宅に保護者がいない小学生の児童が、小学校の放課後や長期休暇中に過ごすことのできる施設のことです。呼び方は自治体により異なりますが、厚生労働省は「放課後児童クラブ」としています。
学童保育は小学1年生から6年生まで利用できるケースも多いですが、田端さんによると、利用者の多くは小学1年生から3年生くらいという傾向があるのだそう。
また、学童保育には公立と民間があり、利用できる時間帯やサービス内容が異なります。
学童保育の内容について田端さんに詳しく教えていただきました。
公立の学童保育のメリット・デメリット
公立の学童保育を設置しているのは自治体で、多くは小学校や地域の児童館に設置されているため、放課後に子どもが行きやすいといえます。利用料金や広さは地域によって差がありますが、利用料金は月額4,000〜7,000円程度とリーズナブルなところが多いようです。
小学校に併設されている学童保育であれば、校庭で遊ぶことができるのがメリット。おやつ、勉強の時間などは設定されていますが、比較的自由に過ごすことができるのが特徴です。
小学1年生から6年生まで利用できるケースが多い反面、「遅い時間まで利用できない」「送迎がない」などはデメリットといえるでしょう。また、保護者が就労している(学童保育が必要な状況)といった利用条件や定員が設けられている場合もあり、希望者全員が利用できるわけではないところも多いようです。
民間の学童保育のメリット・デメリット
民間の学童保育は、企業やNPO法人などが運営しています。18時以降の延長保育や送迎があることも多いので、早い時間のお迎えが難しい家庭に向いています。
また、民間の学童保育には、学習カリキュラムや習い事が充実していたり、定期的な学びのイベントを開催していたりするところもあります。
「ベネッセの学童クラブでは、毎月学びにつながる体験レッスンを実施していて、『ドキドキ理科タイム』、『えいご体験』などを行っています。中でも好評なのが『オンライン社会科見学』。動物園のお仕事、花火師のお仕事、警察官のお仕事などを見学するのですが、これには子どもたちも大興奮。近いうちにオンラインだけでなく、現地での見学もできればと思っています」と田端さん。
デメリットは、料金が公立の学童保育に比べて高額なこと。学童保育により異なりますが、週5日程度の利用で月に5万円程度になることもあります。毎日通わせるのは費用的に負担が大きいため、例えば週に2日は英語と算数の学習に力を入れた民間に通い、残りの3日は公立に通うというように民間と公立の学童保育を併用している人も多いそうです。
学童保育で子どもたちはどんなふうに過ごしているの?
公立と民間の学童保育で過ごし方は異なります。
公立の学童保育の場合は、利用時間が長くても19時頃までで学習カリキュラムや習い事、体験イベントなどは少ない傾向があります。
民間学童保育の一例、ベネッセスタイルケアが運営する民間学童保育では、下記のようなスケジュールが一般的だそうです。
学校が終わると学童保育へ
15:00〜15:30 おやつタイム
15:30〜17:00 自由時間。公園や室内で遊ぶ、体験イベントなどを実施
17:00〜 宿題など自主学習
17:30〜19:00 順次帰宅
19:00〜21:00 帰宅が遅い子どもは夕ご飯。21:00までには全員が帰宅
上記は平日の例で、夏休みなど長期休暇になると、子どもたちは朝から学童保育に来るそうです。
「15時以降のスケジュールは平日とほとんど変わりませんが、午前中に学びや、遊びの時間があり、12時から1時間ほどお昼休みを設けています。それ以外にも遠足やお泊まり会、キャンプなど、長期休暇ならではのイベントを開催することもありますよ」(田端さん)
学童保育ではどんな大人が働いているの?
学童保育では1クラス(子ども40人以内)に、放課後児童支援員という資格を持った職員2人を配置するように定められています(自治体により、1人は補助員でも可)。
放課後児童支援員とは、学童保育などで子どもたちが安全に楽しく過ごせる場所を提供するための職員で、資格を取得するには、保育士、社会福祉士の免許、幼稚園や小学校などの教員免許を持っていること、または高校を卒業して2年以上児童福祉事業に従事していて学童保育に関する講習を受けていることなどの条件があります。
「学童保育には、放課後児童支援員に加えて、地域の方にも加わっていただくこともあります。弊社が運営する民間学童保育では、近隣の大学生やリタイアした高齢の方にも参画してもらっています。大学生は放課後児童支援員よりも子どもたちと年齢が近いため、一緒に遊ぶのはもちろん、子どもも何かあったときに相談しやすいようです」(田端さん)
学童保育の申し込みはいつごろ行うの?
公立の学童保育の申し込み期間は自治体によって異なりますが、早いところでは、小学校入学前年の秋ごろから始まります。そのため、住んでいる地域の募集開始時期を調べておく必要があります。
ただし、利用できるかどうかが分かるのは、入学前の2月になってからです。
申し込んでいたけれど利用できないとなると、共働きの家庭などでは困ってしまうので、対策として民間の学童保育を仮押さえしておく保護者も多いそうです。
「早い人は子どもが産まれてすぐに、近隣の民間学童保育の検討を始めています。公立の学童保育に入れるかどうかが分かるのが小学校入学直前の2月。ダメだったということでそこから探し始めるようでは民間も定員に達していることが多いため、子どもが3〜4歳になると、とりあえず民間に申し込みをしておくという人が多いようです。もし公立に入れた場合は、民間の方を辞退するという形になります」(田端さん)
学童保育を選ぶ際のチェックポイント
田端さんからは、学童保育の下見に行く際は、子どもがある程度の年齢であれば、一緒に連れていくのがおすすめというアドバイスもいただきました。
「もし施設内に入ることができ、一緒に遊ぶなどの体験ができれば、ぜひ参加してみてください。その上で、『どうだった?』など子どもの感想や気持ちを確認するとよいでしょう」(田端さん)
保護者は、自宅からの距離や所要時間、長期休暇中の開所時間といった詳細を確認しましょう。
学童保育を利用するときに注意したいこと
「保育」という名称ではありますが、保育園や幼稚園、小学校とは全くシステムが異なる学童保育。利用する際に、知っておきたい注意点がいくつかあります。
トラブルを防いで、学童保育の時間を子どもにとって有意義なものとするためにチェックしておきたいことを田端さんに伺いました。
子どもの話だけをうのみにしない
学童保育に通うことが多い小学1年生〜3年生は、成長が活発な時期。
お話も上手になり、意見を主張するようになります。場合によっては、子ども同士でケンカになってしまうことも。ささいなケンカであれば成長につながる経験となりますが、お互いの誤解から事態が大きくなってしまうこともあるそう。
「幼稚園や保育園の時と比べて、学童保育では保護者のお迎えはないことが多いため、放課後児童支援員が保護者と話す機会は少ないです。そのため保護者は、学童保育での子どもの情報が分かりにくいこともあります。例えば、子どもが家で話した出来事だけを聞くと、大きなトラブルなのではと心配に思ってしまうこともあるようです」(田端さん)
しかし、実際に支援員やお友達など自分の子ども以外の視点から話を聞いてみると、想像と違っていたということも多いそう。もし不安やトラブルに思うようなことがあれば、早めに相談することも大切だそうです。
学童保育を掛け持ちし過ぎない
公立と民間の学童保育を併用する子どもも多いですが、田端さんは掛け持ちには注意が必要だと言います。
「学童保育に来る子どもは基本的に柔軟で、学童保育でもお友だちとすぐに仲良くなってしまう子どもが多いです。ただ、いくつもの学童保育を掛け持ちすると、結局どこにもなじめず子どもが自分の居場所を見つけられなくなってしまうことも。特に小学1年生は学校に慣れるだけでも大変なので、最初のうちは通う学童保育はできるだけ一つ、多くても二つまでにするのがよいでしょう」(田端さん)
学童保育を「卒業」したら?
学童保育自体は小学1年生〜6年生まで通えることが多いですが、高学年になると利用頻度が低下する傾向があります。
理由は、小学校高学年になると一人で留守番ができるようになり、学童保育以外の友達と別の場所で遊ぶ機会も多くなるため。また、塾や習い事に通う子どもも増えてきます。
そんな学童保育を「卒業」した子どもが、家で一人で過ごすときの注意点をまとめてみました。
子どもが留守番する時のルールを決めておく
田端さんによると、留守番は4年生くらいからできるようになるようですが、事前に子どもといろいろなことを決めておくことが大切だそう。
保護者とその日の予定を確認しておくことや、事前に保護者の携帯電話の番号を教えておき、何かあったときや困ったときには一人で判断せずに保護者に連絡するようにするといった、「留守番するときのルール」を決めておくと安心です。
留守番ができたらそのことを褒める
もし留守番をしている間に子どもが想定外のことをしてしまっても、いきなり叱らないこと。まずは、きちんと留守番できたことを褒めてあげるようにしましょう。
一人でいるときにしてはいけないことは、理由もしっかり説明する
子どもは、してはいけないことだけを言われても、その理由が分からなければきちんと守らないことも。頭ごなしに「ダメ!」と言うだけでなく、それをするとどんな危険があるのかなど、子どもがなぜしてはいけないかを理解、納得するまできちんと説明をしましょう。
危険なことが起きた際の対処法を決めておく
地震が来たら机の下に潜る、避難したときの待ち合わせ場所はここ、困ったらお巡りさんや隣の家の人に相談をするといった「危険なことが起きた際にどうするか」を、子どもと話し合っておきましょう。
いざというときに頼ることのできる地域のママ・パパ友や親戚などに、子どもが一人で留守番していることを話しておくのもよいでしょう。
また、田端さんによると家で留守番をするときだけでなく、一人で出掛ける場合についてもルールを決めておくのがおすすめだそう。誰と、どこへ何をしに行くのか、何時に帰るのかといったことを保護者に伝えてから出掛けるということを、子どもに徹底して行わせましょう。
「もし守れなかったときは、その理由をきちんと聞くことが大切です。約束の時間までに帰れないときなど、子どもにはそれなりの理由があることも。理由が分かれば改善策や対処法を話し合えて、次につないでいくことができます」(田端さん)
保護者は、子どもが自分で考えて行動できるようにしてあげることが大切ですね。
おわりに
学童保育には公立や民間といった種類があり、どこにいつまで通うかは、家庭や子どもの状況によってさまざまです。子どもが安全かつ有意義に放課後の時間を過ごすためには、学童保育とはどんなものなのかをしっかり知っておくことが重要だといえるでしょう。