読書嫌いの子どもにも役立つ読書ノート
「うちの子は本を読まなくて・・・」「読書感想文の宿題があると憂鬱・・・」そんな悩みを持つ親御さんは少なくないでしょう。読書よりも簡単に楽しめるツールがあふれている中、本嫌いの子を読書好きにするのは至難の業かもしれません。
そんな時に役に立つのが、読んだ本の概要や感想、そこから得た新しい情報を記録するための「読書ノート」です。
読書ノートを利用することで、子どもは読書から一歩深い学びを得ることができ、それが本を好きになるきっかけにもなります。
「読書しょうかいノート」(学研ステイフル)の監修・指導を務めた一般社団法人「教育デザインラボ」の代表理事である石田勝紀先生に、小学生の読書ノートの書き方や、書き続けるためのポイントを伺いました。
小学生が読書ノートを書くメリット
本をあまり読まない子どもやその親にとっては、「本を読むだけでもハードルが高いのに、本について記録するのはさらに大変では?」と思えるでしょう。
しかし、石田先生によると読書ノートを書くことにはさまざまなメリットがあるそうです。代表的なメリットをいくつか教えていただきました。
知識を整理し、インプットできる
本から得た知識を自分なりに文章にまとめて読書ノートに書くことで、その知識が定着しやすくなります。また時間が経ってその知識を忘れてしまったとしても、読書ノートを読み返せば簡単に思い出すことができます。
本の内容を深く考えるきっかけになる
読書ノートをつけるためには、本の内容を思い出しながら文章を書く必要があります。これは本の内容について深く考えることにもつながります。
抽象化してまとめる能力が身につく
「読書ノートを書くということは、その本に書かれていることを自然に抽象化し、まとめることになります」と石田先生。
抽象化というと難しそうですが、要は、「伝えたいことをポイントを絞って簡潔に文章化する力」が身に付くということです。この力は国語だけでなく、他の教科の学習においても役立ちます。
読書感想文を書く時に役立つ
読書感想文を書くのが苦手な子にとって、読書ノートは強い味方になります。石田先生によれば、「読書ノートはいわばネタ帳、読書感想文の骨格となります」とのこと。
本の中で重要だと感じた内容や感動した点などを読書ノートに書き留めていれば、それを元にして膨らませていくことで、読書感想文が書きやすくなるということです。
石田先生監修の「読書しょうかいノート」を使うことで、読書感想文が得意になり、コンクールで賞をとった子も多数いるそうです。
読書の習慣が身につく
「読書ノートは昆虫採集のようなもの。『本の標本』を作っていると思ってください」と石田先生。読書ノートを書き続け、自分だけの記録として積み重ねていくことは、昆虫の標本が増えるのと同じ。本のコレクションが増えていくと、自然と読書への意欲が高まっていくという効果があります。
小学生の読書ノートの書き方
小学生の場合、読書ノートにどのような内容を書くのがよいのでしょうか。書き方のポイントを石田先生に教えていただきました。
読書ノートとして使うノートはどんなものでもいいですが、書く項目があらかじめ書かれている専用のノートも市販されていますので、子どもの年齢や好みに合ったものを選ぶとよいでしょう。
また、子どもが慣れるまでは親が書き方をサポートしてあげることも大切です。
【読書ノートに書く項目1】基本的な本の情報など
「書名」「著者」「読んだ日」など、その本についての基本的な情報を分かりやすく書きます。
【読書ノートに書く項目2】心に残った文章とその理由
まずは心に残った文章や場面をノートに書き出し、それについてどう思ったのかを書き留めておきましょう。
石田先生によると、読書ノートを読み返した時、この年齢で、自分はこんなふうに考えたのだな、思ったのだなと気付くことができるのだそう。
「本を読んで内容を理解するには、内容すべてを把握しなくてはいけないと考えがちです。しかし、大人でも読んだ本の内容すべてを覚えているわけではないことからも分かるように『この本を読んだことでひとつ新しい情報を得た』『あの場面は感動した』。それで十分なのです」(石田先生)
読書を通じて、小さなことでも学んだり心を動かしたりすることがあれば、学習効果があるということですね。
【読書ノートに書く内容3】主人公や著者と似た気持ちを抱いた経験について
「読書感想文では、登場人物と自分を重ね合わせて、文章をより膨らませるため、過去に自分が登場人物と似たような気持ちを抱いた経験を書きます。そのため、読書ノートを使って読書感想文を書きたいなら、そのことを記載しておくとよいでしょう」(石田先生)
まったく同じ経験でなくても、主人公と同じような気持ちを味わった出来事があったか、考えてみましょう。
【読書ノートに書く内容4】自分がこの本を薦めたい人は誰か、なぜ紹介したいのか
誰ならこの本を気に入ってくれそうか、どのように話せば相手が「面白そう」と思ってくれるか、考えてみましょう。
お薦めする相手は、友達や家族だけではなく、アニメや小説に出てくる架空の人物でも構いません。相手の気持ちを考えながら書いてみてください。
「他人にその本を読ませたい場合は、ただ『おもしろいよ』というだけでは読んでもらえそうにありませんよね。どのように、読みたい気持ちにさせるか考えることで、思考力を養うことができます」(石田先生)
小学生が読書ノートを無理なく続けるためのポイント
読書ノートは習慣化できれば、子どもたちも自主的に書くようになります。しかし、そうなるためにはちょっとした仕掛けが必要です。
好きな本を選ばせる
「大人でもそうですが、他人から勧められて読む本と、自分で選んで読む本では読書のモチベーションが異なります」と石田先生。親が読ませたい本を強制するのではなく、子どもが読みたい本を読ませることで、読書の楽しみを知ってもらうことが大切です。
最初は、絵本や漫画でも構いません。「読書が苦手な子には、『漫画ノート』でもよいのです。活字の量が少なくても、ノートをつけるためには頭を働かせて考えることが必要になり、それを起点に興味は広がります」(石田先生)
また、デジタル絵本や読み聞かせアプリについても、それぞれの家庭の考え方次第で取り入れてみるとよいとのこと。上手に使えば、よいきっかけになるでしょう。
最後まで読むことを強要しない
「あまり本を読まない子なら、図書館に行って子どもに数冊の本を選ばせてください。といっても、すべての本を読ませる必要はありません。少し読んで面白くないならやめて別の本、というように、その中で気に入った本だけ読ませてみてください。借りてきたから、買ったから、最後まで読まなくてはいけないというわけではないのです」(石田先生)
読み始めたらつまらなかったとしても、最後まで読まなければいけないというプレッシャーが子どもを読書嫌いにさせてしまうこともあるでしょう。子どもが面白いと感じる本から読ませることで、少しずつ読書の習慣を付けるようにしましょう。
また、最後まで読まなくても、興味があった内容、心に残った部分などを読書ノートに書いておくのもよいでしょう。後で読み返すと本の続きを読んでみたくなるかもしれません。
本を最後まで読むことより、まずは読書の習慣を付けることが大切です。そうすることで、子どもも読書の楽しさに気付いてくれるかもしれません。
長文を書かせようとしない
石田先生「子どもが読書感想文を嫌がるのは、書き方も知らないのに、いきなり長文を書かなくてはいけないからです。大人でもこれは大変なことでしょう? また、書くことが苦手な子は、長い文章を書くことが面倒くさいのです。そのため、書く内容は、いくつかの項目に分けて、簡潔にまとめるようにするとよいでしょう」
子どもが「このくらいなら書いていい」と思えるよう、できるだけ書きやすい環境を整えてあげることが大切です。上の「小学生の読書ノートの書き方」で説明した「書く内容」を項目としてあらかじめノートに書いておいたり、項目が印刷された専用ノートを使うのもよいですね。
まずは本について話してみる
「子どもにいきなり『この本の内容を書いて』といってもうまく書けないことも多いです。しかし、『この本、どんな内容だった?』と聞いて話させてみると、案外理解していてしっかり説明できるのです。そのため、まずは一度言葉で話させてからそれをノートに書かせるのもよいでしょう」(石田先生)
また、どうしても文章として書くのが難しいという場合は、子どもが言ったことを音声ファイルにして保存しておくことから始めてもよいそうです。
付箋など、便利なものは取り入れる
本を読んでいる途中で印象に残った箇所に付箋を貼ったり、しおりを挟んだりしておくと、読書ノートを書く時の助けになります。
大人がやってみて便利なことは、子どもの読書にも取り入れてみるのがおすすめです。
おわりに
読書が好きではない子どもが読書ノートを書けるようになるためには、大人のやり方を押し付けるのではなく、その子が書きやすく続けやすい工夫をしていくことが大切です。
たとえば、「国語の先生は読書好きな方が多いため、読書が好きではない子どもの気持ちが分からないのです」と石田先生。その分、親は子どもの目線で考え、意見に耳を傾けて、子どもが自分で「読んでみたい」「書いてみたい」と思えるように手助けしていくのがよさそうです。
子どもたちが本に親しみ、自分の言葉で表現できるようになるためにも、読書ノートを書くことを親子で始めてみてはいかがでしょうか。