マットレスに生えるカビの正体や、体に与える影響とは?
カビにはいくつかの種類がありますが、マットレスに生えるカビはどんな特徴を持っているのでしょう。
上級睡眠健康指導士の加賀照虎さんによると、ベッドに生えるカビは「黒カビ」といわれるクラドスポリウム属。浴室のゴムパッキンや、冷蔵庫内などに生えるカビと同種のものだそうです。
「カビは『高湿度(80%以上)』『あたたかい温度(20~30℃)』『豊富な栄養源』を好みます。そして、残念なことにマットレスはこれらの条件がそろっているため、カビが繁殖しやすいのです」(加賀さん)
マットレスに黒カビが生えた場合、洗濯や乾燥は困難です。生えたカビをそのままにしておいて良いのでしょうか?
「マットレスのカビはアレルギー疾患や感染症を引き起こすことがあるので、放置は厳禁です。黒いシミを見つけたら、それ以上広がらないように、すぐに対処すべきです。カビの状態によってはご自身で落とすこともできるので、まずはカビの被害の程度を見極めましょう」(加賀さん)
マットレスにカビがないかチェック! 生えやすい場所とは?
加賀さんによると、夏はマットレスの表(天面)に、冬はマットレスの裏(底
面)にカビが生えやすいのだそう。ただし、天面と底面でカビが生える原因は異なります。
「天面のカビは汗や皮脂など、人の体から出るものをエサに繁殖したものです。したがって天面のカビは、汗をかきやすい梅雨時~夏によく発生します。一方、底面のカビは、マットレスと床との温度差で発生する『結露』が原因です。こちらは、床が冷える冬によく発生します」(加賀さん)
また、以下のような環境もカビが繁殖する原因になります。
- 寝室の換気が悪い
- すのこやベッドフレームなどを使わず、床に直接マットレスを置いている
- 結露の多い窓や壁にマットレスをくっ付けている
カビが生えやすい箇所や季節を知っておくと、早めの対処ができますね。
マットレスにカビが生えた場合の対処策は3つ!
マットレスにカビが生えてしまった場合、以下の3つの方法があります。
- 自力でカビ取りをする
- マットレスをクリーニングしてもらう
- マットレスを処分する
以下、それぞれの方法の特徴や注意点をご紹介します。
【マットレスにカビが生えた場合の対処策1】自力でカビ取りをする
点々としたカビの被害が、マットレス外側の側生地(がわきじ)までで収まっていて、マットレス内部まで侵入していない場合、カビは自力で落とすことができます。
【自力でカビ取り1】カビ取り剤の選び方
カビ取りは、市販のスプレータイプのカビ取り剤(漂白剤)を使って行います。薬剤は主に以下の3つの種類があります。
[塩素系]次亜塩素酸ナトリウムなど
[酸素系]過酸化水素、過炭酸ナトリウムなど
[ナチュラル系]重曹など
加賀さんのおすすめは、最も効果が強い『塩素系』です。
「カビの被害が手のひら大程度の小さな範囲で収まっているのなら、刺激が少ない酸素系でもOK。広範囲に及んでいるなら、塩素系が早くて確実です。その際は、刺激やニオイがマイルドな『寝具用』の塩素系カビ取り剤を選びましょう。塩素系は生地の変色や色落ちの可能性があります。寝具用の薬剤は、色落ちにもある程度の配慮がなされた処方になっているものが多いのですが、どうしても色落ちを避けたいのなら酸素系を使いましょう」(加賀さん)
呼吸器などに不安がある、小さなお子さまやペットへの影響が気になる・・・などの理由で、ナチュラル系(重曹)を選ぶ人もいるそうですが、加賀さんはあまりおすすめしないそう。
「正直、重曹のカビ除去効果には疑問が残ります。労力に対して目に見える効果が出にくいので、あくまで予防的な使い方に留めておいたほうがいいかもしれません」(加賀さん)
【自力でカビ取り2】カビ取りの6つのステップ
「作業は午前中に行うといいですよ。半日ほどしっかりと乾燥させれば、就寝時もニオイが気になりません」(加賀さん)
塩素系の薬剤はニオイ・刺激が強いため、作業中はしっかりと換気を。目はゴーグル、手は手袋で保護しておくのもおすすめです。以下の通り、カビ取りの6つのステップを見ていきましょう。
- マットレスから側生地を外す。側記事を取り外せない場合は、内部のウレタンに薬剤がしみ込まないよう噴出量に注意して2~6の作業を行う
- 湿らせたペーパータオルや古布などで表面のカビを取る。カビが飛散しないよう、ペーパータオルはすぐに捨てる
- カビに直接薬剤をスプレーし、指定された時間だけ放置
- カビが残っていれば「3」を繰り返す
- カビが取れたらスプレー液を拭き取るか、洗濯機で洗う
- 風を当ててしっかりと乾燥させる
せっかくカビ取りをしてキレイにしたマットレスは、次の方法でカビが繁殖するのを防ぎましょう。
【マットレスのカビを防ぐお手入れ方法1】 立てかけて風をよく通す
マットレスのカビを防ぐ最も有効な対策は、通気性を確保すること。2週間に一回程度、マットレスを立てかけてマットレスの下面に風を通すと、カビ予防に効果的です。
立てかけるのが難しい場合は、本などを挟んでベッドフレームから浮かせ、風を通す方法も有効だそうです。
【マットレスのカビを防ぐお手入れ方法2】掃除機で汚れを吸い取る
夏、マットレスのカビが繁殖する要因は、表面の汗や皮脂。フケ、アカ、ホコリなどは、掃除機で吸い取りましょう。
加賀さんによると普通の掃除機でよいですが、必ず寝具専用のアダプターを使うのが大切だそう。部屋の汚れをマットレスに付けてしまわないように注意しましょう。
【マットレスのカビを防ぐお手入れ方法3】プロテクターを使う
カビ対策として、マットレスを汚さないようプロテクターを活用するのもおすすめです。
マットレスプロテクターは、防水性・吸水性・透湿性・伸縮性のある生地でできたもの。マットレスに直接かぶせて、プロテクターをかぶせた上に、敷きパッドやシーツを敷いて使います。
「アメリカでは半数以上の人が利用しているといわれるほど、ベッド生活に身近なアイテムです。5千円ほどの出費でマットレスの寿命を飛躍的に伸ばせるため、日本でも少しずつ普及してきました」(加賀さん)
マットレスプロテクターを使うと汗や皮脂、皮膚くずなどがマットレスに付着するのを防ぐことができ、カビ・ダニの繁殖予防に高い効果を発揮します。お子さんのおねしょや血液などの汚れからマットレスを守る効果もあり、マットレス購入時に合わせて買う人も増えています。
【マットレスにカビが生えた場合の対処策2】クリーニングサービスを活用しよう
「出張クリーニング業者へ依頼する最大のメリットは、カビだけでなく他の汚れ(ダニ、汗、フケ、アカなど)も一掃してもらえるところ」と、加賀さん。
プロ専用の薬剤と道具で、自力では不可能なマットレス内部のカビ・汚れまで吸い出すことができるため、カビの根が残って繰り返しカビが生えるということもほぼなくなります。
「業者によって価格はさまざまですが、シングルサイズなら1万円台前半、ダブルサイズなら1万円台後半が相場でしょうか。2~3月の異動時期、汗をかく梅雨~夏、結露やおねしょが増える冬は、繁忙期ですぐに予約が取れないこともありますので、ピークをずらして利用するのもいいですね」(加賀さん)
クリーニングの頻度は、マットレスの使い方により変わります。
マットレスに直接寝ている場合は、1~2年に一度。シーツのみ敷いている場合は、3~4年に一度が目安。シーツ、パッド、プロテクターなどを敷いている場合は、汚れの問題があれば行う程度でOKのようです。
【マットレスにカビが生えた場合の対処策3】マットレスを処分する
大きくてかさばるマットレス。処分するのにも労力がかかります。
加賀さんが教えてくれた処分方法は以下の5つ。
- 新しいマットレス(ベッドフレーム)の購入先で、無料下取りをしていないか確認
- 家具に強いリサイクルショップや、不用品回収業者に引き取ってもらう
- 自力でごみ処理場に持ち込む
- 燃えるごみとして処分
- 粗大ごみとして処分
燃えるごみとして処分できるのは、ウレタンやラテックスのマットレスのみ。この場合、電動のこぎりやカッターなどでマットレスを細かくカットしてから出す必要があります。
スプリングやコイルマットレスの場合は粗大ごみとして引き取っていない自治体もあるため、下取りまたは不用品回収業者に有料で依頼するという人も多いようです。
カビが生えにくいマットレスの構造とは?
マットレスの種類はさまざまありますが、カビ対策にはどんなマットレスが有効なのでしょう。
「スプリングマットレスやエアファイバーマットレスは、通気性が良いため内部までカビが生えることはまれです。ただし、ホテルのマットレスのような分厚いタイプには要注意。たとえスプリングで内部の通気性は良くても、天面・底面の素材が厚いため、湿気がたまりやすくなります。特に底面はカビが生えやすくなるので、時々マットレスをめくって底面をチェックしておきましょう」(加賀さん)
加賀さんによると、ウレタンやラテックス素材のマットレスの場合、内部の密度が高い分、カビが生えやすいのだそう。シーツやパッドをこまめに取り替えるとともに、マットレスを乗せる底板をすのこタイプにするなど、通気性に配慮することが大切です。
昨今、ウレタンやラテックス素材などのノンコイルマットレスは、種類も豊富ですし、コイルマットレスに比べ比較的安価のため人気を博しています。ただし、こうしたお手入れ面のデメリットは意外と知られていないため、意識しておいた方がよいそうです。
マットレスの種類や選び方については、以下の記事で加賀さんに詳しく伺っています。こちらもご参考になさってください。
驚くほど眠りが変わる!? プロに聞く「マットレスの選び方、5つのポイント」
おわりに
「病気でも、寝具でも、『予防』が一番コストパフォーマンスがいいんですよ」と、最後にメッセージをくださった加賀さん。実は今回ご紹介した「マットレスプロテクター」は、加賀さんが海外の展示会で見つけて数年前に日本へ持ち込んだもの。生えてしまったカビを除去するよりも、まずはカビを生やさないようにする工夫を心掛けたいものですね。