簡単! 蜜蝋(みつろう)ラップの作り方
蜜蝋ラップとは、布に蜜蝋を染み込ませてつくる食品用ラップのこと。繰り返し使うことができて環境にやさしく、好きな色や柄を楽しむこともできます。
蜜蝋は、ミツバチが巣を作るときに体から分泌するロウ成分のこと。家具や革製品の手入れに使うほか、リップクリームやクリームなど化粧品の原料、フランスの焼き菓子であるカヌレの材料にも使われるなど、安全性の高い素材です。
保湿性があり、抗菌作用も期待できる蜜蝋ラップ。端切れと蜜蝋があれば、作業は10分もかかりません。
蜜蝋ラップの販売やワークショップを手掛けるサスティナブルショップ「Honeymom*」の代表を務める柳田ふみさんに、蜜蝋ラップの作り方を教わりました。
用意するもの
材料
・綿100%の布(端切れなど。今回は15センチ四方の綿ブロードを用意)
・蜜蝋(ペレットなど粒状のもの) 5グラム(目安)
道具
・新聞紙 8~10枚(汚れ防止)
・クッキングシート (30センチ×30センチ程度) 2枚
・アイロン
・アイロン台(なくても可)
・汚れてもよい大きめの布(あれば)
蜜蝋ラップの布は、綿100%がおすすめです。「食品に使うものなので、天然素材が良いと思います。おうちに端切れがあればそれで十分」と柳田さん。
今回は、15センチ四方の綿ブロードを使います。
以下に、柳田さんが教えてくれた蜜蠟ラップの作り方の手順をご紹介します。
【作り方1】新聞紙の上にクッキングシートを置く
テーブル(あればアイロン台)の上に、新聞紙、クッキングシートを順に敷きます。
アイロンの温度は低~中温(120℃前後)に設定しておきます。
【ポイント:新聞紙のインク移りに注意! 】
テーブルに新聞紙を敷いて作業すると、アイロンの熱で新聞紙のインクがテーブルに移ってしまうことがあります。熱が伝わらないよう新聞紙を多めに敷くか、汚れてもよい大きめの布があれば、それを新聞紙の上に置くと安心です。
【作り方2】 布に蜜蝋ペレットを置いてクッキングシートをかぶせる
クッキングシートの上に布を置き、蜜蝋ペレットをまんべんなく散らします。
その上にさらにクッキングシートを載せて、布をクッキングシート2枚の間に挟む形にします。
【作り方3】アイロンをかける
クッキングシートの上からアイロンをかけて、蜜蝋を溶かします。濡れたように見えてきたら、蜜蝋が布の下の方まで溶けた合図。布全体に染み込むようにアイロンを動かして蜜蝋を広げます。蜜蝋が染み込むと布の色が変わるので目安にしましょう。
【ポイント:服のしわ伸ばしのようにアイロンを使うのはNG!】
アイロンをかける際、衣服のシワを伸ばすように上から押しつけるのはNG。最初は蜜蝋を溶かすために、アイロンの熱を利用するイメージで。あまり動かさず、少しずつ場所を変えながら全体の蜜蝋を溶かしましょう。
蜜蝋が溶けたら、布全体に広がるようにアイロンを動かします。布の中心から外側に向かって動かすと、蜜蝋がまんべんなく広がります。蜜蝋を均一にするように、ここでは少し力を入れてアイロンをかけてもOKです。
【ポイント:アイロンの温度に注意!】
蜜蝋が溶けるのは65℃前後。作業中に煙が出てきたら加熱し過ぎなので、アイロンの設定温度を下げましょう。逆に低過ぎると蜜蝋がなかなか溶けなかったり、作業の途中で冷えて固まったりして、作るのに時間がかかってしまいます。
【作り方4】布を剥がして乾かす
熱いうちに上のクッキングシートを剥がし、両手で布の角2カ所をつまんで素早く剥がします。そのままひらひらさせて15秒ほど風に当てます。冷めてくると布がだんだん固くなるのが感触で分かります。すっかり冷めて、布が固くなったら完成です!
蜜蝋ラップを作ってみた感想
柳田さんに教わった方法で蜜蝋ラップを作ってみました。
準備から完成まで10分足らず。難しい作業もありませんでした。蜜蝋がアイロンの熱で溶けていく感覚や、蜜蝋が布に染み込んでいく様子を見るのも面白く、作業自体がとても楽しかったです。
小さいお子さんがいるご家庭でも、やけどしないよう見守りながら一緒にできるのではないでしょうか。
蜜蝋(みつろう)ラップの使い方
蜜蝋ラップは手のぬくもりで柔らかくなり、冷えれば固まります。そのため、形に合わせて数秒間手で包むと、形を整えることができます。
どのような使い方ができるのか、柳田さんに教えていただきました。
蜜蝋ラップで食品を包む
使いかけの野菜やチーズを包んだり、残ったおかずにラップしたり。冷蔵庫に入れると蜜蝋が冷えて固まり、しっかり密着します。「冷蔵庫で使っていると、冷蔵庫の扉を開けるたびに気持ちが明るくなりますよ(笑)」と柳田さん。
お弁当用のおにぎりやサンドイッチを包むのに使えば、ごみが出ません。蜜蝋ラップはたたんでコンパクトになるので、持ち帰るのも楽ですね。
【ポイント:包み方にひと工夫】
おにぎりなどの丸いものを包む際、使い捨てラップと同じようにピッタリとくるんでもよいのですが、柳田さんはあまり密着させずに包むそう。蜜蝋ラップの四隅を中心に向かって軽く折りたたんだら、最後に折った角の端を内側に折り込みます。織り込んだ部分は指で挟み、固定させます。
「密着させると包んだものの形に沿ってシワがつきますが、シワや折り目からロウが剥がれやすくなります。折る回数を少なめにして、ふんわり包む方が蜜蝋ラップは長持ちしますよ」と柳田さん。ラップというよりは折り紙をイメージしたような包み方ですね。
蜜蝋ラップを容器の代わりに使う
小さめの蜜蝋ラップは、お弁当の仕切りやおかずカップにも。おかずカップは、ココットなどの小さい容器を使うと簡単に型取りできます。
持ち寄りパーティーにお料理を包んで行ったり、手作りお菓子のラッピングに使ったり、使い道はさまざま。蜜蝋ラップごとプレゼントしても喜ばれそうですね。
便利! 蜜蝋(みつろう)ラップはこんな使い方もできる
蜜蠟ラップの使い方は、容器やラッピング以外にも多様です。アウトドアで使う紙皿代わりにしたり、割り箸の代わりにマイ箸を包んで持参したり。
家族で出かけるとき、人数分のおにぎりを一個ずつ包むのは結構手間がかかります。そんなとき柳田さんは、重箱などにおにぎりをそのまま詰めて、食べるときに蜜蝋ラップで挟んで持つそうです。
「手づかみで食べるのはちょっと・・・、というときは蜜蝋ラップが便利です。使うのは10センチ四方程度の小さいもので十分」と柳田さん。お弁当を包むときに一緒に入れておけばよいので手軽ですね。
蜜蝋(みつろう)ラップを使うときの注意点
蜜蝋ラップの使い道はいろいろありますが、使う際に気を付けなければいけないこともあります。柳田さんに注意点などを伺いました。
蜜蝋ラップに適さないもの
【その1】熱
蜜蝋は熱に弱く、熱々のものを包んだり、電子レンジやオーブン調理には使えません。
熱湯消毒もできないので、生ものへの使用も避けましょう。
【その2】酸
蜜蝋は酸にも弱いので、レモンやライム、パイナップルなど酸の強い食品への使用もおすすめできないと柳田さんは言います。
そのほか、ニンニクなどの香りの強い食材はにおい移りが気になる場合もありますが、柳田さんは、ニンニクやショウガには専用の蜜蝋ラップを使っているのだそう。
「使いかけでも気にせず包めますし、長持ちしますよ」(柳田さん)
また、滅菌処理されていない蜜蝋でラップを作った場合は、1歳未満の乳児の口に入るものには使用しない方が安心です。
使用後のお手入れ方法
【適切な洗い方・保管方法】
蜜蝋ラップを使った後は水洗いをして、自然乾燥させましょう。汚れが気になるときは、食器用の中性洗剤を泡立ててやさしく洗うこと。ゴシゴシこすると蜜蝋が剥がれる恐れがあります。
保管するときは、なるべくたたまずに。たたんだ折り目から蜜蝋が剥がれやすくなるためです。大きいものはくるくる丸めてもよいですが、「丸める手間がかかるので、私は軽く二つ折りにしています」と柳田さん。平らにすると保管スペースが確保しやすいですね。
また、使い始めは蜜蝋由来のにおいがすることがありますが、何回か使ううちに気にならなくなるそう。においの強さは、材料に使った蜜蝋の製法にもよるようです。
【使用期限】
使用期限は、使い方にもよりますが半年から1年ほどは持つと言います。使い続けると、布に水分が染み込むようになったり、ラップとしての機能が弱くなったりしますが、メンテナンスすることでさらに長期間使うこともできます。
【メンテナンス】
メンテナンスの方法は作るときと同じ手順で簡単です。元の蜜蠟ラップに、上から蜜蝋を足します。蜜蝋の分量は作るときよりやや少なめで、15センチ四方の蜜蝋ラップなら1~3グラム程度。アイロンで熱をかけるので「メンテナンスは殺菌にもなります」と柳田さん。
お手入れ方法も簡単で、繰り返し使うことのできる蜜蠟ラップ。メンテナンスをすればさらに長持ちが期待できるのも、うれしいポイントですね。
おわりに
柳田さんに蜜蝋ラップの作り方を教えていただき、短時間で簡単に作れることが分かりました。「お気に入りの布で作った蜜蝋ラップなら、見るだけでも気持ちが上がります。お手入れしながら楽しんで使っていただければ」と柳田さん。愛着あるものを長持ちさせて使っていけるとよいですね。