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【専門家に聞く】食事や入浴を見直して夏バテ解消!

暑い日が続くと食欲が落ちる、身体のだるさが続くなど、なんとなく調子が悪くなるという経験はありませんか。それはいわゆる「夏バテ」かもしれません。実は夏バテは、食事や入浴などを見直すことで解消できる可能性もあるのだそう。夏バテの原因、そして夏バテの予防や解消に役立つあれこれについて、工藤内科の消化器内科医 工藤あき先生に、医学的見地から解説してもらいました。

最終更新日:2024.8.19

目 次

夏バテはなぜ起こる?

工藤あき先生

Aki Kudo

毎年のように夏バテで苦しい思いをするから夏は苦手という方もいるようですが、そもそも「夏バテ」はなぜ起こるのでしょうか?
工藤内科で消化器内科医を務める工藤先生に、夏バテの原因について聞いてみました。

夏バテの原因その1 「温度差」

「夏バテにはいろいろな原因がありますが、大きな原因の一つと考えられているのは【温度差】です」と工藤先生。

「例えばクーラーの効いた部屋に長時間いると身体は冷えますが、そこから外へ出ると今度は暑いので汗をかきます。この時、身体は温度調節を行いますが、このように温度差の激しい環境を何度も行き来すると、体温調節を繰り返して行うことになって疲れてしまいます。しかもこれは、運動などによる身体の疲れとは違い、自立神経の疲れです。つまり夏バテとは、自立神経が疲れてしまうことだと考えられているのです」

また、「自律神経の働きが弱ると、汗をかきにくくなる場合もあります」と工藤先生。暑いのに汗をかかなくなったと感じたら注意したほうがよさそうです。

夏バテの原因その2 「強い日差し」

工藤先生によれば、夏の日差しも身体に負担をかけて夏バテの原因となる可能性があるとのこと。

その理由は、人の身体は紫外線を浴び続けると目から入った紫外線の刺激が脳に伝わり、交感神経が優位になります。その結果、興奮状態になって疲れてしまうからだそう。
夏はアウトドアレジャーなどで強い日差しを長時間浴びる機会も多いので、注意が必要ですね。

夏バテの原因その3 「冷たい飲食物」

また工藤先生は、冷たい飲み物や食べ物が身体に与える影響についても考えて欲しいと言います。

工藤先生「暑い日にはどうしても冷やし中華のような冷たい食べ物、アイスコーヒーなどの冷たい飲み物を取りたくなりますよね。でも、人間の身体に適しているのは体温に近い温度(35℃~37℃)の食べ物や飲み物なのです。この温度の食物を取ると消化に必要な酵素がしっかりと働いて、お腹の状態も良くなります。

つまり暑さを解消したいからといって冷たい物ばかり取っていると、身体に負担をかけることになり、特に胃腸が疲れてしまいます。
実際に夏は胃もたれなどの症状で受診される方も多いので、冷たい飲食物の取り過ぎも夏バテの原因の一つになっていると考えられます。

夏バテに効果的な食事や飲み物とは?

にゅうめん

PIXTA

室内ではクーラーで身体が冷え、外に出ると紫外線を浴びて大量の汗をかき、思わず冷たい物ばかり取ってしまって胃腸を疲れさせてしまう夏の生活。これでは夏バテになりやすいのもうなずけます。

工藤先生によると、胃腸は身体の大半を占める大きな臓器なので、そこが疲れると全身症状としてだるさを感じてしまうようになるとのこと。
そこで工藤先生に、夏バテかな? と感じた時に効果がある食事や飲み物について教えていただきました。

夏バテに効くのは「粗食」

湯豆腐

PIXTA

「夏バテだと感じたら、元気を出そうとうなぎやお肉などを食べようとしていませんか。もちろん胃腸が疲れていない時であれば、ビタミンが豊富な豚肉や、疲労回復成分のイミダペプチドが含まれている鶏の胸肉などは食べてもよいです。でも、胃腸が夏バテで疲れている時には、粗食がおすすめです」と工藤先生。

「粗食」と言われてもピンとこないかもしれませんが、例えば、おかゆや麺類などでもよいのだそう。
そして、夏の定番そうめんも、胃腸が疲れている時はいつものように冷たくせず、温かいにゅう麵にするとよいそうです。にゅう麵なら気軽に取り入れられそうですね。

さらに工藤先生のおすすめは「湯豆腐」。夏に湯豆腐とはなかなか思いつきませんが、工藤先生によると湯豆腐は植物性タンパク質が豊富で胃腸への負担も少ない、つまり消化がよく身体も温まるのでよいメニューなのだそう。

このほか、ビタミンが豊富な夏野菜も積極的に取り入れたい食材です。

夏バテしているから食事でスタミナを! と考えるより、むしろ「粗食」を意識した食生活にすること。そして、よく噛んで食べることで胃もたれなどの解消になるといいます。

とはいえ、食事で大事なことは食べ過ぎないことです。腹八分目を心がけましょう。

冷たい飲み物は取り方の工夫を

暑いとどうしても冷たい飲み物が飲みたくなりますね。夏バテを防ぐためには、冷たい飲み物は全てNGなのでしょうか。

工藤先生によると、ある程度の量の冷たい飲み物は身体に早く吸収されるので、脱水症状や熱中症予防のためには効果的なのだそう。そのため、暑さの中で水分補給をしたい場合には一旦冷たい飲み物を取り、暑さが落ち着いたら温かいお茶やハーブティーなどを飲むことで、少しでも身体を温めることを推奨しているそうです。

また、夜寝る前には心身をリラックスさせるために、冷たい飲み物より自分がほっとできる温かい飲み物がおすすめとのこと。例えばミルクが好きならホットミルクや、お茶が好きならハーブティーなどがよいでしょう。

お風呂にゆっくりつかって夏バテ対策

お風呂にゆっくり浸かるイメージ

PIXTA

暑い日は湯船にはつからず、シャワーだけで済ませていませんか。

東京ガス都市生活研究所が調査した「入浴への意識」によると、30代と40代の女性の約6割以上が「夏の冷えには、お湯につかる入浴が有効だと思う」と回答していますが、「夏季:1週間の入浴回数」のデータを見ると、浴槽入浴の回数より、シャワー入浴の回数の方が多いことが分かります。

京ガス都市生活研究所が調査した「入浴への意識」

(「あてはまる」または「ややあてはまる」と回答した割合)
出典:東京ガス都市生活研究所 生活分野別調査2019(2) n=2600

東京ガス都市生活研究所が調査した「入浴への意識」

出典:東京ガス都市生活研究所 生活分野別調査2019(2) n=2600

一方、「夏でも本当はお湯につかりたい」と回答するのは、10代から70代までの男性・女性の約5割近く。つまりお湯につかる入浴はよいと分かっているものの、現実的にはシャワーだけで済ませている人が多いという結果が見て取れます。

東京ガス都市生活研究所が調査した「入浴への意識」

(「あてはまる」または「ややあてはまる」と回答した割合)
出典:東京ガス都市生活研究所 生活分野別調査2019(2) n=2600

多くの人がお湯につかるのはよいと分かっていても、夏は手軽なシャワーだけで済ませてしまう傾向にあるようですが、実際、夏の入浴は夏バテの予防や解消に効果があるのでしょうか。

「お湯の温度などに注意すれば入浴はおすすめです」と工藤先生。
具体的には、以下のようなことに気を付ければよいそうです。

・お湯の温度を適度に保つ。熱すぎない39度くらいのお湯が適温
・ぬるめのお湯に5分から10分程度つかる
・肩を温めたいときは肩までつかってもOK
・肩までお湯につかると圧迫感があるという人は半身浴でも良い
(半身浴の場合は、20分程つかることで効果的です)

工藤先生によると、湯船につかることは、身体が温まることで全身の血流が良くなり自律神経が落ち着くということだけでなく、睡眠のためのメリットも大きいのだそう。

東京ガス都市生活研究所の実験結果からも、肩までお湯に浸かる全身浴は、お湯に浸かる面積が大きいためシャワー浴よりも温熱効果が高く、短時間で身体を温めることができ、筋肉の疲れや肩こりが緩和しやすいことが分かっています。

「寝る1時間以上前にお風呂に入るとよいと聞いたことはありませんか。お風呂に入って温まり、室内で過ごしていると体温が下がっていきますが、実はこの体温の中でも深部体温が下がった状態が入眠につながると言われています。要はお風呂から出て1時間以上経った身体が、睡眠のためにはちょうどよく冷えていると言えます」と工藤先生。

お風呂の入り方や睡眠時間も意識して、夏バテを予防していきたいですね。

参考:東京ガス都市生活研究所 「快適バスライフのすすめ」(2015年9月)

サウナは夏バテに効く?

ちまたで「ととのう」と人気のサウナ。サウナには二種類あり、入浴施設などに多い高温で低湿度の「ドライサウナ」と、家庭用でも普及が進んでいる低温で高湿度の「ミストサウナ」があります。サウナは夏バテに効くのでしょうか。

工藤先生によると、夏バテで疲れているときのドライサウナは、なるべく控えたほうがいいそうです。その理由は、かなり熱い所に入るドライサウナは交感神経を優位にするので、自律神経が疲れているときにはおすすめできないのだとか。

そういう意味でも、低温で身体への負担が少なく、リフレッシュできるミストサウナは取り入れやすいと言えそうですね。

夏バテ解消のためにはこんな方法も

ウォーキングをする女性

PIXTA

食事や入浴に気を付ける他にも、夏バテを予防・解消するために効果があると考えられる方法について工藤先生に教えていただきました。

環境を整えて質の良い睡眠をとる

「夏バテを防ぐためには、睡眠の重要性が挙げられます」と工藤先生。理由は睡眠不足だとしっかりと回復できず、身体のバランスを崩して夏バテの原因につながるからです。「人は限られた時間の中で睡眠時間を確保しなければいけないので、良質な睡眠を取るために、その環境を整えることが大事です」と工藤先生。
暑い夏に良質な睡眠を得るためのポイントは次の3つだそう。

・エアコンの温度設定
・扇風機を併用し効果的に使う
・お腹は冷やさない

エアコンの温度設定は、エコの観点などからも28度に設定が望ましいとされています。工藤先生によると、寝る時のエアコンの温度設定は26度くらいと少し低めに設定し、布団をかぶって寝ると、質の良い睡眠がとれるとのこと。

工藤先生「疲労専門の先生が言うには『部屋は冷やして自分は布団で温かく寝る』方法が睡眠の質が上がるというふうに考えられているそうです。ただエアコンが苦手な方は無理をせず適宜調節を行ってください」

また、扇風機を併用すると、室内の風を循環させエアコンの温度調節を助けてくれます。ただし、扇風機の風が直接当たると身体を冷やしてしまうので注意しましょう。

参考:環境省 どうして「28℃」?/COOLBIZ|COOL CHOICE 未来のために、いま選ぼう。

自分にとって心地よく感じられる運動をする

夏バテ対策として、普段から運動をすることも効果があるそうです。
といっても、工藤先生によれば運動が苦手な人は、自分が気持ち良いと感じられる程度の運動で良く、決して無理をしてまで行う必要はないとのこと。

工藤先生「運動をするメリットは大きいですが、大事なことは本人にとって“気持ち良い”と思う運動をすることです。気持ち良いと思うことはリフレッシュにつながり、リフレッシュできるとリラックスにつながります。中には運動をするということ自体がストレスになる場合もあるので、運動が苦手な人はヨガやウォーキングなど自分に合ったものでよいでしょう。運動が得意な人には、全身運動である水泳は理想的だと思います」

普段運動をする習慣がない人は、仕事などで頭ばかり疲れてしまい、身体はほとんど疲れていない状態が続いています。これでは寝つきが悪く、睡眠の質も落ちてしまうので、自分にできる運動の習慣を取り入れて、快適な睡眠を目指しましょう。また、運動をする時はもちろん水分補給をしっかりと行い、脱水症状や熱中症にならないように注意してくださいね。

おわりに

エアコンの冷え過ぎに注意をし、冷たい飲み物や食べ物を控えて胃腸をいたわり、できるだけ湯船につかって身体を温める。そして、質の高い睡眠をとり適度な運動を心がけることなど、夏バテを予防、解消するための方策はいろいろあるようです。

でも、無理をしないことも大切です。工藤先生からも「夏バテをしない工夫をすることはもちろん大事ですが、疲れたら無理をしないということを常に頭の片隅に置いていてくださいね」とアドバイスがありました。無理せず、元気に、夏の暑さを乗り切りましょう。

  • この記事取材先プロフィール

    工藤あき

    工藤内科・副院長

    工藤あき

    消化器内科医・美腸・美肌評論家。一般内科医として地域医療に貢献する一方、消化器内科医として、腸内細菌・腸内フローラに精通、腸活×菌活を活かした美肌・エイジングケア治療にも力を注いでいる。また、漢方医として「植物由来で内面から美しく」をモットーに、日本でのインナーボタニカル研究の第一人者としても注目されている。テレビ、書籍、雑誌監修などメディア出演多数。その美肌から「むき卵肌ドクター」の愛称で親しまれている。2児の母。日本消化器病学会専門医・日本消化器内視鏡学会専門医。

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公開日:2022.7.28

最終更新日:2024.8.19

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