子どもの「叱り方」の原則とは
子どもの叱り方の原則は、子どもの「自己肯定感」を大切にすることです。
自己肯定感とは、
「自分は大切な存在なんだ。自分らしく生きていていいんだ」
と思える気持ちです。
いわゆる「自信」とも混同されがちですが、「◯◯ができるから、私はすごい」といった「能力に対する自信」ではなく、「◯◯ができなくても、私は私でいい」という「存在に対する自信」です。
この自己肯定感が育っていると、「できるか分からないけど、やってみよう」というチャレンジ精神や、「苦手なこともあるけど、得意なことを頑張ろう」という前向きな意欲を持ちやすくなり、結果的にさまざまな能力や才能が伸びやすくなります。
一方、自己肯定感が育っていないと、何かができなかったときに「自分には存在する価値がない」と思い詰めてしまうことがあります。
自己肯定感は、身近な人が子どもの「気持ち」を認めることで育っていきます。
だから、子どもを叱るときに大切な原則は、「行動」は叱っても、「気持ち」は受け止めることです。
例えば、子どもが何かいけないことをしたら、その「行動」は叱らなくてはいけませんが、どうしてそんなことをしたかという「気持ち(理由)」は否定せずに受け止めた上で、その気持ちに合わせた対応をする必要があります。
やってはいけない子どもの叱り方
自己肯定感を下げてしまう「やってはいけない叱り方」を5つご紹介し、ではどうしたらよいかという基本的な考え方を解説します。
すぐに結果を求めない
やってみたけどできなかった、失敗した、という結果に対して「なんでできないんだ!」と叱ってしまうと、「また頑張ろう」という意欲をなくしてしまいます。
すぐに結果を求めるのではなく、「やろうとした」という気持ちをまず認め、長い目で見てあげることが大切です。
人と比べたり、順位づけしない
誰かと比べて、「◯◯くんはああなのに、なんであなたはこうなの」といった叱り方をすると、「自分らしくいてはいけないんだ」と思うようになってしまいます。
一人一人成長のペースや個性は違うので、その子自身のペースでその子らしく成長していくのを見守りましょう。
人格否定をしない
その子の行動が悪かったからといって、「本当にダメな子ね」などとその子の全てを否定するような叱り方をしてしまうと、「自分は生きている価値がない」と思うようになってしまいます。
行動と、その子の気持ち(理由)を分けて、「どうしてそんなことをしたんだろう」とその子の気持ちを考えて対応する必要があります。
怖がらせたり、脅しをしない
大声で怒鳴りつけたりして子どもを過度に怖がらせたり、「そんなことをすると鬼に食べられるよ」といった脅すような言い方を繰り返していると、「怖い」という印象は残っても、叱られた内容が心に残らなくなります。
怖がらせて無理やり言うことを聞かせるのではなく、「大好きなママ・パパの言うことだから聞こう」という信頼関係の下で叱ることが大切です。
罰を与えない
叱るために罰を与えるというやり方は、子どもの心身の成長に悪影響しかありません。
直接たたいたりするだけでなく、食事やおやつを抜く、押入れに閉じ込める、正座をさせるなど、どんな罰でも同様です。
脅しと同じように、子どもは「罰が怖いから」という理由で行動するようになり、何が正しいことなのか、本当には理解できなくなってしまいます。子どもの行動を強制的に変えようとするのではなく、子どもの気持ちを大切にしながら、根気よく言い聞かせ続けるようにしましょう。
子どもの年齢別の叱り方について
「自己肯定感を大切にする」という原則は同じですが、子どもの年齢によって、叱るときに気を付けるポイントが変わってきます。ここでは、0〜1歳の赤ちゃん、2〜3歳のイヤイヤ期(第一次反抗期)、4〜8歳の幼児・小学校低学年、9〜11歳のプレ思春期、12〜16歳の思春期(第二次反抗期)に分けて、叱り方のポイントをご紹介します。
※思春期や反抗期の年齢区分については諸説あります。また、子どもによっても個人差がありますので、おおよその参考としてください。
0~1歳の赤ちゃんの叱り方
0~1歳の赤ちゃんは、まだ言葉を理解していませんし、自分の行動を自分でコントロールすることもできません。
ですから、危ない行動やしてほしくない行動を避けるためには、「ダメ!」と叱るのではなく「環境を整える」ことが大切です。
例えば、散らかしてほしくないものは隠す、棚にロックをかけるといったことです。それが、赤ちゃんをけがや事故から守ることにもつながります。
食べ物を床に落とすなら、床にシートを敷いておく、乾湿両用掃除機を使う・・・・・・といった物理的な対策を取りましょう。
なお、何かやってしまったら、優しく手に触れながら「いけないよ」と言葉でも伝えてあげてください。厳しく言って怖がらせる必要はありません。
状況に応じた声がけをすることで、赤ちゃんは少しずつ言葉を学んでいきます。
2~3歳のイヤイヤ期(第一次反抗期)の叱り方
子どもがおおよそ2歳頃になると、いわゆる「イヤイヤ期」がやってきます。
自我が芽生えて、何でも「イヤ!」と反抗するので、「第一次反抗期」とも呼ばれます。
言葉も発達してくるので、つい親も強く叱ってしまいがちです。
でも、この時期の子どもは、言葉を理解はしていても、まだ自分の行動をコントロールすることができません。これは、理性を司る脳(前頭前野)がまだ発達していないからだと言われています。
「言ってることは分かるけど、言うことを聞けない」という時期なのです。
これは、子どもが順調に成長している証拠で、健全なプロセスです。
生活リズムを整える
この時期にまずおすすめなのは、「体で覚えさせること」です。
もちろん、体罰をするという意味ではありません。
「寝る」「起きる」「食べる」「遊ぶ」といった生活リズムを整えて、「同じ時間に同じことをする」を繰り返すことで、いちいち「○○しなさい」と言わなくても、体が自然に動きやすくなります。
子どもの自律神経も整い、体の健康的な成長にもつながります。
生活リズムが整わないうちは、公園から帰りたがらない、お風呂に入りたがらない、といったことも起こりがちです。
特に、保育園に行かずおうちで育てている場合は、親が自力で生活リズムを整えるのは至難の業かもしれません。
そんなときは、「おやつで誘う」「おもちゃや入浴剤で誘う」といった、子どもの好きなことに合わせた対応をしても大丈夫です。
イヤイヤ期は、長い目で見ればほんの一時期のこと。
「脳が育つまでの辛抱だ」と、多少のことには目をつぶり、臨機応変な対応で乗り切りましょう。
気持ちは認めつつ、行動は物理的に止める
イヤイヤ期は、気持ち(感情)が行動に直結していて、自分では止められないという状態です。
ただ、この年齢では、子どもは自分の欲求を通したいだけで、友達を傷つけてやろうとか、親を困らせてやろうといった悪気はありません。
そこで、「子どもの気持ちは認めつつ、いけない行動は物理的に止める」という対応がおすすめです。
例えば、おもちゃを取り合って遊び相手をたたいてしまったときは、「おもちゃが欲しかったんだね」という気持ちは認めつつ、「でもたたいたらいけないよ」と、抱っこして相手から物理的に離します。
まだ「ごめんなさい」が言えないことも多いですが、無理に子どもに言わせるのではなく、まずはママ・パパが、相手の子どもと親に「たたいてしまってごめんなさい」と謝りましょう。
子どもは、親の姿を見て学びます。初めに親がきちんと謝る姿を子どもに見せてから、「たたいたのはいけなかったから、ごめんなさいって言うんだよ」と根気よく言い聞かせ続けることで、いつか必ず言えるようになります。
4~8歳の幼児~小学校低学年の叱り方
イヤイヤ期が過ぎて4歳頃になってくると、だんだんと自分をコントロールする力が育ち、いわゆる「聞き分け」が良くなってきます。
言葉でのコミュニケーション能力もより発達し、相手の気持ちを考えた行動もできるようになってきます。「正しいことをしたい」という気持ちも芽生えてくるので、やっていいこと・いけないことをきちんと言い聞かせたり、そのお手本を行動で見せていくことが大切です。
なお、4歳の幼児から8歳の小学校2年生くらいまでは、精神的には延長線上にありますので、今回は4~8歳のくくりで解説します。
子どもの気質に合わせた対応をする
4歳頃になると、子ども一人一人の個性がよりはっきりしてきます。
子どもの個性というのは、「生まれつきの気質」と「環境の影響」がおおよそ半々だと言われており、約100年前にドイツで考案された「シュタイナー教育」の考え方では、人間の生まれつきの気質は4つに分けることができます。
誰もが4つの気質全てを持っていますが、子どものうちは、特にそのうち1~2つが強く出ます。
子どもの自己肯定感を大切にしながら叱るためには、それぞれの気質に合わせた叱り方を知る必要があります。
そこで今回は、シュタイナー教育の考え方を基に(※)、4つの気質ごとの叱り方のポイントをお伝えします。
前述の通り、誰もが4つの気質全てを持っているので、「子どもがどのタイプに当てはまるか」というよりも、「この気質が強く出ているときの対応方法」、という感じで活用していただければと思います。
(※シュタイナー教育の気質の名称は難しいため、ここでは私の考案した分かりやすい用語で解説します)
(1)怒りんぼう気質
怒りんぼう気質が強い子は、意思が強く、負けず嫌いで、自分の主張を曲げません。
思う通りにいかないと、ついカッとなって暴力を振るってしまうこともあります。
でも、目標をしっかり達成したり、周りを引っ張るリーダーにもなれる、力強くて頼もしい気質です。
この気質で叱られがちなのは、怒って人に暴力を振るったり、物に当たったり、怒鳴ったりするときです。
ただ、この気質の子がカッとなっている間は、何を言っても火に油を注ぎます。
強く叱ればさらに反発しますし、笑わせようとしても「バカにされた」と思って怒ります。
まずは、少しクールダウンの時間を持ちましょう。
小さいうちは、安全な別室に連れて行ったり、抱きしめて抑えるのもおすすめです。
少し大きくなって、すぐに怒りが収まらない場合は、翌日でも大丈夫です。
いったん落ち着いたら、きちんと自分を振り返れるようになります。
まず、どうして怒ったのかを尋ね、「そっか、それで怒っちゃったんだね」と気持ちを認めましょう。「そんなことで怒らないの!」と叱ってはいけません。怒りんぼう気質の子は、自分の怒りを正しいと思っているからです。
気持ちは認めつつ、その子がした行動については、「でも、◯◯しちゃったのは良くなかったよ」と、しっかり伝えて反省を促します。
カッとなった間に自分がしたことを忘れがちなので、叩いた、蹴った、投げた、怒鳴った・・・・・・など、一つ一つ振り返って思い出させることもポイントです。
このカッとなる衝動を抑えるのは、怒りんぼうタイプの子にはとても難しいことです。
反省しても、何度も繰り返してしまうと思いますが、その都度根気強く反省を促しましょう。
おおよそ9歳くらいになると、少しずつ衝動を抑える力がついてきます。
(2)ほがらか気質
ほがらか気質の強い子は、いつも陽気に振る舞い、好奇心旺盛で、いろんな人に愛想よく接します。
いつも新しいアイデアで人を楽しませたり、周りの人を明るい気持ちにしてくれます。
ただし、気まぐれで飽きっぽく、八方美人なところもあります。
この気質で叱られがちなのは、1つのことに集中できず、いろいろなところへ気が散ってしまうときです。
でも、自由を愛するほがらか気質の子は、叱られるとやる気を失ってしまいます。
「◯◯しなきゃダメ!」と叱るのではなく、「◯◯したらこんなにいいことがあるよ」と、もっと良くなる提案をすると、聞いてくれやすくなります。
また、新しい物ばかり欲しがるときもあります。
でも、本来アイデアマンのほがらか気質の子は、今ある物を工夫して、新しい遊びを考えるのも得意です。
「何でも欲しがらないの!」と叱るのではなく、「あなたなら、今のおもちゃでもっと楽しく遊べるよ」と褒めることで、喜んで工夫してくれるでしょう。
気に入ったおもちゃを一度しまっておいて、しばらくしてまた出すと、また喜んで遊ぶということもあります。ダンボールや紙など、自分で工作できる材料を揃えるのもおすすめです。
欲しがる物をどんどん与えてしまうと、将来浪費家になってしまう可能性もあるので注意しましょう。
(3)おっとり気質
おっとり気質の強い子は、のんびり穏やかで、人とぶつかることがあまりありません。
1つのことに根気強く取り組み続けることも得意です。
おおらかで人当たりがよく、周りをほっとさせてくれる癒し系です。
ただ、全ての行動がゆっくりなので、見ていてやきもきすることがあります。
おっとり気質が叱られがちなのは、とにかく行動がゆっくりなことです。
時間がないときや遅刻しそうなときも、「急ぐ」という言葉が辞書にないかのようにゆったりと行動します。
でも、この気質の子を「早く早く!!」「しっかりしなさい!」「ぼけっとしないで!!」などと叱り過ぎてしまうと、自分を守るために心を鈍くしてしまい、行動もますます遅くなります。
おっとり気質の子がゆっくりなのは、怠けているのではなく、体感時間が違うからです。
本人は、「自分は頑張っているけど、周囲が速過ぎる」と感じています。
成長するにつれて、だんだんと周囲に合わせられるようになるので、焦って叱り過ぎてはいけません。
まずは、おっとり気質の子のペースに合わせられるよう、大人の方で生活リズムや時間の使い方を工夫しましょう。
特に朝は、目覚めるのに時間がかかるので、早めに起こしてあげることがおすすめです。
ゆっくりでも少しずつ成長しているので、いつか必ず自分で時間管理ができるようになります。
(4)繊細気質
繊細気質の強い子は、心も体も敏感で、ちょっとした言葉や刺激も人一倍強く感じます。
そのため、何でも深刻に考え過ぎてしまうこともあります。
でも、真面目で誠実で、いつも慎重に行動することができます。
自分の考えを表に出すことも苦手ですが、細やかな感性を文学や芸術で表現できれば、素晴らしい作品を生み出すこともあります。
繊細気質が叱られがちなのは、痛みや辛さなどの訴え方がおおげさに思えるときです。例えば、ちょっと転んだだけで大騒ぎして、周囲を困らせることがあります。
でも、敏感気質の子は、わざと大げさに騒いでいるのではなく、本当に人一倍痛みを感じているのだと思いましょう。
「それくらいで泣かないの!」と叱られるととても傷つきますし、かといって「そんなの大丈夫だよ」と軽く言ったりしても、「僕の痛みを分かってくれないんだ・・・・・・」と悲しくなります。
叱ったり軽視したりせずに、「痛かったんだね、かわいそうに」としっかり慰めてあげると、気持ちの回復が早くなります。
また、繊細気質の子に対しては、叱ること自体をあまりおすすめしません。心が敏感なため、ちょっと叱っただけで傷つき過ぎてしまうことがあるからです。
もし注意するときは、「◯◯しちゃダメでしょ!!」とは言わずに、「あなたの△△はとてもいいと思うよ。でも、◯◯はしないでね。いつものあなたならきっとできると思うよ」と、なるべく肯定的な言葉とセットで伝えましょう。
自分と違うタイプの子を理解するために
今回は4~8歳で気質を取り上げましたが、気質に合わせた対応は、9歳以降から思春期、むしろ大人になってからも有効です。
4つの気質は、大人になるにつれてだんだん混ざり合い、バランスが取れていきますが、特に強く出やすい気質が1〜3つはあるはずです。自分と違うタイプの子を理解するためにも、気質の考え方を活用していただければと思います。
9歳~11歳の叱り方、知っておくべき「9歳の危機」
9歳、つまり小学校3~4年生頃になると、幼児の延長線上からは大きく変化します。
周りの物に対する見え方が変わって、今まで無条件に信じていた物を批判的に見直すようになるのです。
例えば、「自分の家」と「友達の家」の違いに気が付いたり、それまで分からなかった人間関係を察知するようになります。
この年齢の子どもを叱るときには、まず、9歳以降の子どもの心は大きく変化していて、不安定になりやすいと知っておく必要があります。
子どもの気持ちが不安定になると、大人にうそをついたり、友達に意地悪をしてしまうこともあります。この時期を、前述のシュタイナー教育では「9歳の危機」といいます。
子どもの変化と向き合う
もちろん、うそをつく、意地悪をするといった、いけない行動はきちんと叱らなければいけません。
ただし、この時期の子どもは、大人の振る舞いや言動を批判的な目で見始めています。
一方で、まだ「本当は大人を信じたい、頼りたい」という気持ちも持っています。
そんなとき、大人にとって大切なのは、子どものいけない行動を叱ることだけではなく、自分自身の行動を見直すことです。
例えば、子どもがうそをついたことを叱ったら、「ママだってうそつくじゃん!」と言われる、といったことがよくあります。つい、「それとこれとは別でしょ!」と叱りたくなるかもしれません。
でも、実際に自分がうそをついたことがあったならば、きちんと認めて謝ることが大切です。
親としては、自分を正しく見せなければいけないと思いがちですが、親が自分を正当化したり、言い訳をするのを見ると、この時期の子どもはそれを見抜き、がっかりして、いけない行動がよりひどくなりかねません。
自分の矛盾や間違いを正直に認める親の姿を見ると、子どもは大人を信頼し、その正直さを見習うようになります。
「9歳の危機」では、子どもの変化としっかり向き合い、批判的な目を持ち始めた子どもにも、「やっぱり、ママ・パパは信頼できる」と改めて感じてもらうことが大切です。
そうすれば、子どもの心は落ち着き、大人と一緒にいろいろなことを楽しめる時期になります。
12〜14歳の「プレ思春期」の叱り方
12~14歳頃になると、子どもは、さらに大人に反抗し始めます。
この時期は「プレ思春期」と呼ばれることもあり、9~11歳頃よりももっと攻撃的に大人に反抗したり、何か言うたびに面倒くさそうな態度を取るようになります。
もう、小さなかわいい子ども時代ではなくなったんだと感じて、寂しくなってしまうかもしれません。
でも、この時期の子どもが「かわいくなくなった」のは、ひねくれたわけでも、育て方が悪かったわけでもなく、とても健全な成長の証です。
プレ思春期の子ども達は、これまでのように大人の言う通りにするのではなく、「自分で考えてやってみたい」と思うようになっているのです。
まずは、「自立の一歩を踏み出したんだね、成長したね」と認める気持ちを持つことが大切です。
子どもと一緒に話し合う
プレ思春期の子どもは何でも自分で考えたがりますが、その考えている内容自体は、大人から見ると、とても未熟で受け入れがたいことが多々あります。
例えば、これまで毎日部屋の片付けを自分でしていたのに、「別にやらなくてよくない?」「月1回でいいじゃん」などと、いろいろな理屈をつけて面倒くさがるようになります。
そんなとき、「何言ってんの、やりなさい!」と頭ごなしに叱ると、ますます反発して、ただサボるだけでなく、うそをついたり、やっているふりをしたりと、ずる賢さまで発揮してきます。
家事やお手伝いだけでなく、生活習慣、習い事、宿題や勉強などでも同じことが起こりがちです。
大人がこの時期にやるべきことは、「対等な話し合い」です。
一方的に叱ってやらせようとするのではなく、子どもと一緒に解決策を考え、お互いに納得できる方法を探すのです。
子どもから奇抜なアイデアが出ることもあります。それを「くだらない」と叱るのではなく、ときには「それも面白いね」と認めてあげるとよいでしょう。
もちろん、何でも言いなりになる必要はありません。大人として譲れない一線があれば、きちんと説明して、子どもが納得できるように努めましょう。
ただし、そうやって決めたことでも、プレ思春期の子どもはすぐに忘れたり、約束を破ったりします。
そこで怒って叱り飛ばしたり、がっかりして諦めたりせず、「一緒に話し合って決めたことなんだから、ちゃんとやろう」と、実行まで根気強くサポートすることが大切です。
大人でも、ダイエットや禁煙など、自分で決めてもなかなか続けられないことはありますよね。そんなとき、「なんてダメな奴だ!」などと叱られると、ますますやる気がなくなってしまいます。
納得していないようなら、本当に納得できるまで何度でも話し合い、「ママ・パパも頑張るから、あなたも頑張ろうよ」と伴走パートナーになってあげることで、子どもの「決めたことを自分でやる力」を育てることができます。
14〜16歳の「思春期(第二次反抗期)」の叱り方
14~16歳になると、いよいよ本格的な「思春期」、そして「第二次反抗期」が始まります。
この時期の子どもは、9歳の危機よりも、プレ思春期よりも、さらに大人に対して厳しく批判的になり、反発を強めることが多くなります。
プレ思春期のとき以上に、「今までと同じ扱いをしないで!」と子どもが強く思っていることを、親は理解する必要があります。
第二次反抗期に親がやってはいけないこと
この時期に大人に反抗するのは、「自分で考え、自分でやりたい」という自立心が、これまで以上に強くなるからです。反抗期は、大人に向かって成長していくための健全なプロセスです。
だから、「ああしなさい、こうしなさい」と一方的に干渉したり、反抗自体を問題視して「親に反抗するな!」と押さえつけたりしてはいけません。
かといって、「じゃあもう一切口出ししないから、全部自分でやりなさい」と突き放すことにも問題があります。
この時期の子どもは、親に激しく反発する一方で、親が自分に興味を持っていないと不安定になります。
小さな子どもだった自分から、「新しい自分」に変わっていくことを認めてほしい。
「新しい自分」に干渉はしてほしくないけれど、興味と愛情は向けてほしいと、無意識に思っているのです。
普段は何も興味を持たずに放任して、問題を起こしたときだけ叱るというやり方も、大きな反発を招きます。
こうしたやり方をしていると、かえっていじめや非行などの大きな問題を起こす可能性があります。
責任のある行動ができるようにサポート
この時期の大人の関わり方は、基本的にはプレ思春期と同じです。
まず対等に話し合い、話し合いで決めた内容は実行までサポートする、ということです。
子どもの行動に問題を感じたときには、一方的に叱るのではなく、まず話し合いをします。
「出かけるなら連絡をする」「部屋の掃除を自分でやる」「目標に向けて勉強をする」といった、1つ1つのことに話し合いが必要になります。
このとき、子どもが自分の気持ちを尊重してもらえないと感じると、「どうせ言ったってしょうがない」「どうせ分かってもらえない」と、最初から対話を諦めてしまいます。
親は、子どもの中の「新しい自分」を尊重し、理解しようとしていることが伝わるような接し方を心がけましょう。
そして、「連絡はするけど、友達関係に口を出さないで」とか、「掃除はするから、勝手に部屋に入らないで」といった、子どもの気持ちに真剣に耳を傾ける必要があります。
そして、話し合いの結果、子どもが納得して「やる」と決めたことは、必ずやれるようにサポートし続けることも大切です。
反抗期の子どもは、考えていることや口で言うことと、実際にやっていること・できることに大きなギャップがあります。
やっていなかったら注意をし、できるように励まし、どうしたらやりやすいかを一緒に考えましょう。
決めたことをきちんとやる経験を通して、子どもは「自分の行動に責任を持つ」ということを学んでいきます。
「反抗」と「甘え」の行ったり来たりを受け止める
思春期は、親に反抗する一方で、やはり親に頼ったり、あてにしてくるときもあります。
そんなときは、「都合のいいときだけあてにしないで!」と叱らずに、子どもの甘えを受け止めてあげましょう。
例えば、話し合いがうまくいかずにお互いモヤモヤしていても、いつものように食事を作ってあげたり、洗濯をしてあげたりすることが、親子の信頼関係につながります。
「こんな自分でも頼っていいんだ」という信頼関係があれば、大切なことを自分から相談してくれたり、大きな問題になる前に悩みを打ち明けてくれることにもつながります。
おわりに
子どもの叱り方の原則や、やってはいけない叱り方、年齢別の叱り方について解説しました。
子どもを叱るのはエネルギーが必要ですし、親としての在り方も問われて、とても疲れるものです。
時には、つい良くない叱り方をしてしまって、反省することもあるかもしれません。
ストレスが溜まってしまったら、子どもにぶつけてしまう前に、少し育児から離れられる時間を持ち、気持ちをリフレッシュすることも大切です。
また、自分の失敗を反省し、次はもっと良い関わり方をしようと、親が頑張っている姿そのものが、子どもにとってとても良い影響があります。最初から完璧な叱り方ができなくても大丈夫。子どもと一緒に成長していくつもりで、大変な時期を共に乗り越えていけたらいいですね。