小学生に習い事は必要か? やらせる意味とは?
そもそも、小学生が習い事をすることにはどんな意味があるのでしょうか。
調査によると、現在、小学生の80.4%が何らかの習い事をしているそうです。約30年前の同じ調査では、その割合は39.1%。つまり、今の親世代の子どもの頃に比べて、2倍に増えていることになります。
これだけの子どもが習い事をしていると、「皆しているから」という理由で習い事をさせる方も多いと思います。
ただ、習い事に費やす時間やコストは、決して少なくありません。親も子どもも後から後悔のない時間を過ごすために、何のために習い事をするのか、その意味をしっかり考える必要があるでしょう。
参考:学研教育出版総合研究所 小学生白書「7.習い事について」(2019年)
習い事で子どもの能力は伸びる?
習い事をしている子を持つ親に対する調査によると、習い事を始めた理由の上位は以下だそうです。
1位:体力づくり・運動能力向上のため
2位:子どもの可能性を伸ばしたいから
3位:子どもの好きなこと・得意なことを増やしたいから
どれも、子どものためを思った素敵な理由だと思います。
ただ、少しだけ注意して考えておきたいのは、習い事で「習ったこと自体」の能力が伸びたり、得意になるとは限らない、ということです。
もちろん、子どもの頃から習ったことは、他の子より得意になりやすくなります。でも年齢が上がるほど、能力を伸ばすためには、その子自身の「好きという気持ち」や「継続的な努力」が必要になってきます。
ずっと続けることができなければ、得意さや優位性はだんだんと失われていきます。
そして、まだ小学生の頃から、ずっと続けられることを見つけるのは難しいもの。
有名なアスリートやアーティストの中には、子どもの頃から習って才能を開花させた方もいますが、そんな「運命の出会い」は一握りです。
でも、せっかくやるのなら、将来的にも意味のあるものにしたいですよね。
そんなときにおすすめなのは、習い事を通して「非認知能力」を伸ばすことです。
参考:株式会社バンダイ「子どもの習い事に関する意識調査」(2019年)
将来的にも効果の続く「非認知能力」とは
「非認知能力」は、IQなどの知力(認知能力)や、運動能力、技術的なスキルではなく、
- 自己肯定感
- 目標に向かってがんばる力
- 人といい関係を築く力
などの、目には見えにくい「心の力」を指します。
OECD(経済協力開発機構)では「社会情動的スキル」とも呼ばれ、今世界的に注目されている考え方です。
ノーベル経済学賞を受賞したジェームズ・J・ヘックマンの研究によると、この「非認知能力」は、子どもの頃の教育効果が大人になっても続きやすく、将来に渡って人生に良い影響を与えると言われています。
その理由は、非認知能力には「スキルがスキルをもたらす」という効果があるからです。
例えば、「自己肯定感」や「目標に向かってがんばる力」が育っていれば、自分にとって難しいこともがんばってみようという気持ちにつながります。
また、「人といい関係を築く力」が育っていれば、できないときは人に教えてもらったり、お互いに協力し合うことで、できることの幅が広がっていきます。
そして、できなかったことができるようになることで自信がつき、また他のことをがんばろうという意欲が湧きます。
習ったこと自体の得意さや優位性が続かなかったとしても、非認知能力を培うことができていれば、また別のことに取り組むときに、その力を活かすことができます。
言ってみれば、とても「コスパがいい」能力なのです。
「非認知能力」を伸ばす習い事の選び方
では、習い事を通して非認知能力を伸ばすには、どんな観点で選ぶとよいのでしょうか。
いろいろな考え方があるとは思いますが、私は以下の3つをご提案したいと思います。
(1)苦手なことを克服するより、興味のあることや好きなことを
習い事を通して、子どもが苦手なことを克服させたい、という考え方もあります。
子ども自身に、今は苦手だけど興味がある、やってみたい、という気持ちがあるならいいと思います。
ただ、親の意志だけで、運動が苦手だからスポーツをさせる、人前が苦手だからダンスをさせる、といった選び方をすると、子どもはなかなか習い事を楽しめません。
やれと言われたから仕方なくやる、という意識で習い事の時間を過ごすと、非認知能力は伸びにくく、もったいない時間の使い方になってしまいます。
それより、子どもがもともと興味のあることや好きなことを選ぶことがおすすめです。
好きなことに思いっきり取り組むことで、自己肯定感が高まります。
また、難しくてもやってみようという意欲があれば、目標に向かってがんばる力を伸ばすことができます。
(2)勝ち負けや競争より、自分のペースで成長できることを
習い事のジャンルや教室の方針によっては、試合やコンテストを重視しているものもあります。子どものタイプによっては、そうした「競争に勝つこと」をモチベーションにしやすい子もいます。
ただ、人に勝つことだけが目的になってしまうと、周りといい人間関係を作ることが難しくなってしまうこともあります。
また、そもそも競争が好きではないタイプの子は、負けたときに落ち込みやすくなったり、かえってモチベーションが下がることもあります。
非認知能力という観点からは、過度な競争は必ずしも必要ではありません。
勝ち負けという結果だけでなく、「がんばるプロセス」を大切にしてくれるところを選ぶことがおすすめです。
プロセスを認めてもらい、自分のペースで成長できることで、自己肯定感が育ちます。
また、他の子と競争するだけでなく、共に成長し合える仲間がいることで、人といい関係を築く力を伸ばすことができます。
(3)頭だけを使うより、手足をたくさん使うことを
小学生の習い事の調査では、高学年になるほど、学校の補習や受験のための「勉強(学習塾)」の割合が増えていきます。ただ、非認知能力という観点からは、机に座って頭だけを使うより、手足をたくさん動かす習い事がおすすめです。
当たり前のことですが、体や手足を動かすためには、自分から「動こう」という意志が必ず必要です。
特に、まだ体が未成熟な小学生にとっては、自分の体を思い通りに動かすことは、大人が思う以上のがんばりが必要です。
ですから、何かするために手足をたくさん動かすことで、目標に向かってがんばる力が育っていきます。
一方、机に座って教えてもらうタイプの習い事は、どうしても体を動かすことが少なくなります。
非認知能力を伸ばすためには、体全体を動かす運動系、あるいは手先を動かして表現をする芸術系やものづくりなどがおすすめです。
小学生におすすめの習い事ランキングベスト10
上記を踏まえて、「非認知能力を伸ばす」という観点から、小学生のおすすめの習い事ランキングベスト10をご紹介します。
10位 総合型キッズスポーツ
スポーツの習い事というと、野球やサッカーなど特定の種目が多いかと思います。
ただ、特定の種目だと、体の特定の部位だけ酷使しがちなため、体の未成熟な子どもの発達にとってはバランスの悪い面もあります。
一方、総合型キッズスポーツという習い事では、一つのスポーツに限定せず、様々な種目や運動を体験できます。
特定の分野で勝つためというよりも、いろいろな動きを体験しながら運動能力の基礎を作ることが重視されているので、非認知能力も伸ばしやすいといえます。また、子どもが一番興味を持てるスポーツを見つけたいときにもおすすめです。
9位 スイミング
スイミングは、子どもの習い事として歴史も長く、人気の習い事の一つです。
その分、子どもが上達するためのノウハウがしっかりと確立されています。具体的には、「顔を水につける」「バタ足」など小さなステップが設定されていて、少しずつ等級を上がっていきます。
目標を達成するためのノウハウが明確で、一人一人が自分のペースで成長できるので、非認知能力も伸ばしやすいといえます。
泳ぐことに慣れていない子どもの場合、少人数で一人一人のペースに合わせてくれるところがおすすめです。
8位 楽器
楽器を習うメリットとして、音感やテクニックなどが注目されがちですが、指先をたくさん動かせることも、非認知能力を伸ばすという点で魅力的です。
近年では、ピアノやバイオリンだけでなく、キッズギターやドラムなど、さまざまな楽器を子どもの頃から習うことができます。
ピアノは人気があるだけあって、教室の種類も多く、個別レッスンやグループレッスンなど形態の幅も広いのが特徴です。
バイオリンやギターなどは、かさばらず持ち運びしやすいというメリットがあります。
また、ドラムや和太鼓など、打楽器を習える場所も増えています。
子ども自身が興味を持って取り組めるものを選ぶのがおすすめです
7位 ダンス
ダンスは、子どもから興味を持ちやすい習い事の一つです。チアダンス、ヒップホップ、バレエなど、多様な種類があります。手足をしっかり動かす運動でもあり、またチームで協力して踊ることも多いので、非認知能力を伸ばす面でも魅力的です。
見た目は華やかですが、指導や競争が厳しい場合もあるので、教室の雰囲気をよく見て、子どもに合いそうなところを選ぶことがおすすめです。
6位 英語+表現活動
子どもの習い事として人気のある英会話。
ただ、小学生のうちから英語が実際に役立つ機会はまだ少なく、はっきりした目的意識がない限りは、習っていても受け身になりがちです。
そこで、小学生からは、英語+「歌」「ダンス」「劇」など、英語を使って表現活動をするような習い事が、非認知能力を伸ばす観点からはおすすめです。
英語をただ覚えるよりも、英語を使って楽しい経験をすることで、いつか本格的な英語が必要になったときにも、苦手意識なく取り組めるようになります。
5位 料理・お菓子作り
お菓子作りやお料理の教室は、大人の習い事としても人気がありますが、最近では、子ども向けの教室や親子で参加できる教室も増えています。
「食」は子どもにとってとても身近で、生活に密接しているもの。
食べるだけでなく、自分の手を動かして作る過程を体験することで、お菓子や料理の見方も変わります。
子どもが興味を持ちやすいこと、競争もないので自分のペースで成長できるところが、非認知能力の観点からも魅力的です。
習ったことを普段の生活に活かしやすく、日常の中で続けやすいのも特徴ですね。
親子で楽しめる! 東京ガス料理教室
東京ガスの料理教室は、大人から子どもまで、ご要望に合わせて1回からご参加いただける料理教室です。
多くのお客さまに支持していただいている東京ガス料理教室のコンセプトは、楽しんで料理をして、自然と身につけていただくこと。
環境に優しいエコ・クッキングの考え方を取り入れ、初心者はもちろん、親子で楽しめるコースを、頼れる専属講師がきめ細やかに指導します。
親子料理教室では、パン作りやかわいいスイーツ作りをはじめ、ハロウィンメニューやクリスマスメニューなど、お子さんも楽しく取り組める内容を豊富にご用意しています。
一回完結型なので、入会金は不要! ※
お申込みも簡単なので、気軽にご参加いただけます。東京ガス料理教室で、楽しくお料理してみませんか。
※一部コースを除く
4位 プログラミング・STEAM教育
近年、小学校でプログラミングの授業が必修となりました。
コンピューターやアプリが身近になった現代において、それを使ったり消費するだけでなく、理解して作り出せる人間を育てたい、というのがプログラミング教育の目的です。
また、人のためになるプログラムを作り出すためには、知識や技術力だけでなく、芸術的なセンスや創造力も必要となります。そこで、STEAM教育(科学、技術、工学、芸術、数学を重視した教育)という考え方が注目されているのです。
まだ始まったばかりの試みですが、習い事で学べるところも増えています。
非認知能力という観点からは、一人で画面を操作するだけでなく、組み立てブロックを使うなど手先を動かす過程があったり、チームの仲間とコミュニケーションをしながら一緒に取り組めるような内容がおすすめです。
3位 工作・絵画教室
工作や絵を通して、作品を創造することに取り組める習い事です。家でも工作やお絵描きはできますが、ダイナミックで大きな作品を作ったり、多彩な材料や道具を使ったり、さまざまな手法を学んで表現の幅が広げられたりするのは、専門の教室ならではです。
非認知能力の観点からは、コンクールなどで賞を狙うより、伸び伸びと手を動かして、自分のイメージを形にするプロセス自体を楽しめるような教室がおすすめです。
工作や絵画だけでなく、アート、アトリエ、図工、造形、芸術などさまざまな呼び方がありますので、いろいろなワードで探してみると見つけやすいかもしれません。
2位 合気道
道場で行われる「武道」も、習い事として人気のジャンルの一つです。
柔道、剣道、弓道、あるいは空手や少林寺などいろいろなものがあります。その中でも、非認知能力の観点から特におすすめなのは「合気道」です。
合気道では、組み手や等級試験はありますが、試合や勝ち負けはありません。相手の動きを感じながら、それを活かして相手を制する技を、組み手をしながら学び合います。
人と協力し合いながら、自分自身のあり方を学べるのは、非認知能力を伸ばすために適した武道だといえます。
年齢・性別を問わずできるので、親子で通うこともおすすめです。
1位 自然体験
非認知能力を伸ばすという観点から、一番おすすめしたいのが「自然体験」です。
習い事で自然体験、というとあまり馴染みがないかもしれませんが、少し探してみれば、自然体験教室、自然体験施設でのプログラム、サマーキャンプやスキー合宿、あるいはボーイ/ガールスカウトなど、さまざまな形態の活動があります。
都会に住んでいても、山林や川や田畑などの身近な自然を生かした体験の場は、調べれば意外と近くにあるはずです。
森、山、海、川などの自然の中は、植物や生き物の多様性、季節や天気などの変化に溢れています。思うようにいかないことや、予想外のことも多いからこそ、それに柔軟に対応する力が身に付きます。自然の中で思いっきり体を動かして遊ぶことはもちろん、動植物の知識やアウトドア活動のノウハウに体験を通して触れられることも、小学生にとっては楽しい学びとなります。
実際に、子どもの頃に自然の中でよく遊んでいた子は、自己肯定感やコミュニケーション力、へこたれない力などの非認知能力が高いという研究があります。自然の中で遊ぶ機会が減っている今、習い事の感覚で自然体験をさせてあげることも、ぜひ選択肢として考えていただけたらと思います。
参考:国立青少年教育振興機構「子供の頃の体験がはぐくむ力とその成果に関する調査研究」(2018年)
習い事をやめたいと言い出したときはどうする
子どもが習い事をやめたいと言い出したとき、やめさせるかどうか親は悩むところですね。ここでは判断するときのポイントを確認しておきましょう。
習い事をやめない方がいいとき
習い事の選び方で、興味のあることや好きなことを選ぶことがおすすめ、と書きました。
もし、興味や好きな気持ちはあるけど、何らかの理由でやめたいという気持ちになっているのであれば、それは一時的なものである可能性が高いです。
まず大切なのは、子どもの話をよく聞いてみることです。
また、習い事の先生(指導者)ともよく話し合ってみることも大切です。子どもが、本当は乗り越えられる力を持っているのに、できないと思い込んでいることもあります。子どもと先生、そして親との信頼関係のためにも、親と先生が力を合わせてサポートしてあげることがおすすめです。
習い事をやめてもいいとき
一方、習い事の内容は好きだけど、先生や環境との相性が合わなかったり、親としても先生と信頼関係を築きにくいような場合は、別の教室を探すという選択肢もあります。
無理に続けさせると、子どもの自己肯定感が下がってしまったり、やる気がなくなってしまって、非認知能力という面ではかえってマイナスです。
また、そもそも、本人が習い事の内容に興味がない、好きになれないというときも、無理をして続ける必要はないと思います。もっと子どもに向いた習い事を探すのもいいですし、習い事自体をいったんやめる、という選択肢を持つことも大切です。
習い事以外で非認知能力を伸ばす方法
そもそも、非認知能力は、特別な習い事をしなければ伸びないというわけではありません。
結果よりプロセスを大事にする、楽しみながら手足を動かす、双方向のコミュニケーションをするといったことは、特に「外遊び」や「友達との遊び」の中で経験できると言われています。
そうした貴重な遊びの時間よりも、もっと子どもが楽しめて、もっといろいろな友達と交流できるというときに、習い事を選択することがおすすめです。
親の送り迎えが難しいときはどうする?
色々な習い事をご紹介しましたが、親の仕事や用事などで、習い事への送り迎えが難しいこともありますよね。
そんなとき、最近では「オンラインの習い事」もあります。
英語、工作・絵画、プログラミングなどさまざまな分野で、家でオンラインでも習えるサービスが増えています。
遠隔だからこそ、色々な人と双方向のやり取りをしながら、好きなことを自分のペースで学べるメリットもあります。
また、親が家を不在にしなければいけないときは、「見守りサービス」などを使って、子どもの安全を遠隔で見守るという方法もあります。
見守りサービスにはいろいろありますが、子どもの帰宅や施錠を遠隔から確認でき、いざというときは警備員に駆け付けてもらうこともできます。子どもが留守番ができる学年で、オンラインの習い事にも自分で取り組めるようであれば、選択肢として知っておけると便利ですね。
おわりに
将来にも活かせる「非認知能力」について、非認知能力を伸ばせる習い事の選び方、おすすめの習い事ランキングなどをご紹介しました。
なお、非認知能力は数値化が難しいので、ランキングはご参考までにしていただき、子どもの興味や合いそうなものを優先して考えていただければと思います。
小学生時代の貴重な時間を使う習い事。子どもが興味を持って楽しみながら、将来にもつながる力を伸ばせるものに出会えるといいですね。