「賃貸」vs「購入して持ち家」どっちがいいの?
「ずっと家賃を払うより買った方がお得」「生涯収支で考えると賃貸も購入も変わらない」。どちらも耳にする説ですね。人生の三大支出の1つと言われる住宅。迷ってなかなか決められない・・・という方も少なくないのではないのでしょうか。
賃貸の場合と購入して持ち家の場合、コストはどの程度変わるのでしょうか。またコスト以外の面から見たメリット・デメリットとは? ファイナンシャルプランナーの竹下さくらさんに伺いました。
「賃貸」vs「購入して持ち家」それぞれのメリット・デメリットとは?
賃貸住宅のメリットとは?
【賃貸のメリット1】住まいに縛られず自由に引っ越しができる
(竹下さん)契約の定めに従い、退去前(一般的には3ヶ月~1ヶ月程度前)に家主に退去通知をする必要はありますが、必要な手続きさえ踏めば、自由に引っ越しすることが可能です。
子どもが生まれたり、独立したりと家族構成が変われば、適した間取りは変わります。また、人生何が起こるかわかりませんから、「収入が減った」「親の介護が必要になった」など、何か起こった際に、適した住まいに住み替えられるのは便利ですね。また近隣住民とのトラブルがあった際も賃貸なら気軽に引っ越しできます。
【賃貸のメリット2】住宅支出をコントロールしやすい
(竹下さん)賃貸の場合、かかる支出は基本的には家賃と更新料だけです(※)。住宅支出の見通しが立てやすく、家計管理しやすいのが良い点です。一方、持ち家の場合、維持費や税金が継続的にかかります。設備が壊れた時の修理費や老朽化した際のリフォーム代など、思いがけない支出が発生することもあります。
※分譲住宅を借りた場合、管理費や共益費がかかる物件もあります。
【賃貸のメリット3】住宅購入と比べ、一度にかかるお金は多くない
(竹下さん)住宅を購入する場合、税金、登記費用、保険料・手数料などが諸費用としてかかり、現金として用意する必要があります。一般的には新築の場合でも物件価格の3~5%はかかると言われています。中古の場合ではこの割合はもっと高くなり、6~8%ほどになります。例えば5,000万円の物件なら150万円~400万円程度が目安ですね。
一方、住宅を賃貸する場合も、初期費用として敷金や礼金がかかりますが、購入の場合と比較すれば低廉です。一般的な敷金・礼金は家賃の1ヶ月~2ヶ月分で、保険料や最初の月の家賃と合わせても、家賃の約5~6倍、例えば家賃18万円のケースなら5倍の90万円程度を用意するイメージです。
【賃貸のメリット4】リスクが少ない
(竹下さん)購入した持ち家の場合、地震や津波など自然災害で被災した場合に修繕費がかかりますが、賃貸の場合、家主がそのリスクを負うため、借りている側に負担はありません。また万一、欠陥住宅で住み続けるのが難しくなった場合も、引っ越すという選択をしやすいです。
実は難しい!? 「一生賃貸」という選択肢の落とし穴
長期的には「賃貸暮らし」の金銭的な負担は少なくない
ーーー災害も多く雇用も不安定な中、リスクが少ない賃貸暮らしも魅力的ですね。
(竹下さん)確かに賃貸にも様々なメリットがありますが、「一生賃貸という選択肢は大都市圏ではなかなか難しい」ということを頭に入れておいた方が良いと思います。実際、60歳以上(※)は約8割が持ち家住まいです。
竹下さんによると、老後も現役時代と同じ家賃を払い続けられるか、試算することが大切だそうです。
「『老後2,000万円問題』という言葉が話題になりましたが、これは65歳から95歳までの30年間、毎月5万5千円の生活費の不足分を累計したら約2,000万円になるということです。同様に考えると5万5千円の家賃を払い続けるケースなら2,000万円の負担になるということですね。住宅支出にこれだけ用意できるなら購入することも視野に入ってきそうです」(竹下さん)
※出典:総務省「平成30年住宅・土地統計調査」
十分な資金があっても高齢になると借りられないことも・・・
(竹下さん)また十分に資金があったとしても、入居時、更新の際には連帯保証人が必要になります。孤独死に関心が高まるにつれ、高齢になると貸してくれる家主が見つからなかったり、連帯保証人がいても家賃保証会社の利用を義務付けられるケースが増えてきています。
持ち家を購入するメリットとは?
【持ち家を購入するメリット1】設備が充実している
(竹下さん)賃貸向けの物件に比べ、分譲向けの住宅は設備がより充実している傾向があります。食器洗い乾燥機やディスポーザー、浴室暖房乾燥機などの人気の設備が標準装備されている物件も多くあります。快適な暮らしが手に入るのは魅力ですね。
【持ち家を購入するメリット2】広めの物件が多い
(竹下さん)需給バランスの関係で、賃貸は1〜2人暮らし用の物件が多いですが、購入の場合、ファミリータイプの物件が多く、家族が増えても対応しやすいのもポイントです。
【持ち家を購入するメリット3】老後も住み続けられる「安心感」が手に入る
(竹下さん)現役時代に住宅ローンを完済すれば、維持費・管理費や税金だけで、老後も住み続けられます。言い換えれば、将来の住宅支出を前倒しで支払うことができるのです。
【持ち家を購入するメリット4】税制優遇や交付金が受けられる
(竹下さん)国はマイホーム購入に対し様々な支援をしています。消費者が住宅を購入すれば、新しい家電や家具を買う機会も増え、経済活動にプラスになるからです。
納めた税金の一部が還付される「住宅ローン控除」や「すまい給付金」があります。自治体によって独自の補助制度を用意していることもあります。
プロの試算で確認! マンションの場合「賃貸」vs「持ち家」でコスト面での差はどれくらい?
モデルプランの家族構成・試算条件
【家族構成】
夫:39歳(81歳で没)
妻:38歳(87歳で没)
子ども:二人(5歳と7歳)
【試算条件】
・賃貸・購入どちらのケースも戸建てではなくマンションを想定。※北区の「広さ約77m²、4LDK、ファミリータイプマンション」の実例を参考にしています。
・夫が39歳に購入(または賃貸)を開始し、81歳までの間にいくらかかるかを試算する。
・購入の場合、物件価格5,000万円、諸費用150万円、頭金 500万円で、借り入れ額4,650万円(フラット35、元利均等返済、固定金利1.3%)と想定。
・賃貸の場合、下の子が23歳で独立し、その後安い家賃の物件に引っ越しする。
・妻は夫の死後、年金と貯金で支払える施設に入居する前提でそれ以降の住居費は試算に含めない。
※関東圏の物件で分譲と賃貸の両方に出されていたケースの数値を参考にしています。
※戸建ての賃貸も存在しますが、物件数としては多くないため、マンションの場合での比較にしています。
【試算結果】賃貸を続けることで住宅支出が約200万円多い結果に! {{{/h3}}}
ーーー上の前提条件で夫が39歳から81歳までの間にいくら住居費がかかるかの試算は、上の表の通り、持ち家を購入するより賃貸を続ける方が約200万円多い結果になりました。
(竹下さん)これは単純に住宅関連の支出だけを比較したものですが、住宅購入の場合、住宅ローン控除が受けられるので、持ち家の方が実質的な負担はさらに少ないかもしれません。なお、今後も少額の住宅支出で住み続けられる点や売るときには売却益を得られる可能性が高い点で、購入有利と判断する人が多い印象です。
また、最近の低金利が続く中で、フラット35ではなく変動金利を選んでいる人が増えています。変動金利を選べば、住宅ローン返済中に金利変動がなければ、さらに住宅ローンの総返済額は少なくて済みます。
ただ、試算としてフラット35を採用したのは、それだけ利点もあるためです。フラット35では物件調査が入るので、欠陥住宅のリスクを下げることができます。また万一、収入が減って人に貸したいという時に、銀行の住宅ローンの場合、自分が住み続けないのであれば、一括返済を求められるのが一般的です(転勤など契約上で認めた条件を除きます)。フラット35なら自分が引っ越して他人に貸すような場合でも返済を継続できていればとがめられることはありません。
『リビングデザインセンターOZONE』では中立的な立場から家づくりをサポート
『リビングデザインセンターOZONE』では、家づくりサポートメニュー「OZONE家design」をご提供しています。
戸建住宅を建てるお手伝いだけではなく、多世帯住宅や賃貸マンションやその他住居系以外の用途の建物のサポートも行っています。建築家・工務店・ハウスメーカーなどの依頼先をご紹介したり、完成までをサポートします。
『リビングデザインセンターOZONE』とは
『リビングデザインセンターOZONE』は、新宿パークタワーの3~7Fに展開する「住まいとインテリアの情報センター」。
家具や生活用品、住宅設備、建材まで、個性豊かなショールームとショップ、住宅デザインの書籍や製品カタログを集めたライブラリーなどの情報フロアで構成されています。
毎日を快適に、暮らしが楽しくなるような住まいの実現に向けて、セミナーやワークショップ等のほか、コンサルティングを重視した専門家による家づくり支援やインテリアデザインのプログラムを実施しています。是非、お越しください!
リビングデザインセンターOZONE
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◆営業時間:OZONE 10:30~19:00
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