冷えが身体に与える影響とは?
近年、国内外の多くの研究で住まいの冷えが健康に影響を及ぼすことが分かってきました。 基礎疾患リスクやヒートショックへの影響も懸念されています。
2015年に出されたイングランド公衆衛生長の指針によると、室内は最低でも18℃以上が望ましいとされています。2018年11月にWHO(世界保健機構)で「住まいと健康に関するガイドライン」が策定され、中には「室温は寒さによる健康被害から居住者を守るために十分高くなければならず、寒い季節に安全な温度として18℃以上を提案する」と記載されています。
- 18℃未満・・・血圧上昇、循環器疾患の恐れ
- 16℃未満・・・呼吸器系疾患に対する抵抗力低下
- 5℃未満・・・低体温症を起こす危険性
特に高齢者は自宅で過ごす時間も長く、持病を抱えるケースも少なくないので、住まいの冷えが与える影響は心配ですね。
高齢者だけでない!冷えが与える影響! 特に女性が心配な不調とは?
季節を問わず、冷えに悩まされる人は少なくありませんね。
手足が冷えて眠れないなど体感できる症状にとどまらず、意識していない部分でも冷えの影響を受けていることがあります。
【冷えに伴って起こる不調の一例】
- 髪のトラブル(抜け毛、白髪、薄毛など)
- 目のトラブル(ドライアイ、老眼、近眼、疲れ目など)
- 肌のトラブル(乾燥肌、かゆみなど)
- 痛みのトラブル(肩こり、腰痛、頭痛、月経痛など)
あらゆるトラブルに影響する冷え。「冷えは万病のもと」と言われるゆえんですね。
また、世界的な新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、在宅ワークという新しい就業形態が広まる中、長時間過ごすことになる住まいを、「いかに健康でいるための快適な空間にできるか」といった関心が高まっています。東京ガス都市生活研究所の調査を元に冷えの影響や対策を具体的にご紹介します。
住まいを暖かくすると、どんなプラスの効果があるの?
高齢化が進み、日中を自宅で過ごす人が年々増えています。また、在宅勤務が推奨されている昨今、家にいる時間がより長くなっている人も多いのではないでしょうか。
家にいる時間が長い人ほどこだわりたいのが、住まいの暖かさです。
暖かい住まいがどれほど健康に関係しているかについて、気になるデータを紐解いてみましょう。
【暖かい住まいの健康メリット1】効果的にインフルエンザ対策ができる
空気中の水分が少なく乾燥した環境は、インフルエンザウイルスを活性化させ、気道粘膜が異物を除去する機能を低下させることがわかっています。
そこで、厚生労働省は「室内の湿度50~60%RH」を推奨しているのですが、ここで注目すべきが「住まいの温度」。
室温が高いほど、空気中には多くの水分が保持できます。
同じ湿度表示50%RHでも、室温15℃と25℃を比べると、15℃の場合は約半分ほどしか空気中に水分はありません。
インフルエンザ対策には、加湿だけでなく、室内を暖かく保つことが大切なのですね。
【暖かい住まいの健康メリット2】風邪をひきにくくなる
住まいの暖かさは風邪の発症率と相関があることが分かっています。
上の図表は、「冬期の住宅における健康性を考慮した断熱改修評価方法の検討」(早稲田大学 田辺ら 2019年9月)という研究をもとに作成したもの。
これによると、築40年の寒い家では風邪の発症率が63.8%と高いのに対し、築5年の暖かい家では35.9%。約30ポイントも低くなっているのに驚きます。
住まいが寒いと風邪をひきやすいという事実。感覚的には理解していましたが、データで見てみると明らかですね。
【暖かい住まいの健康メリット3】血圧リスクが低下する
住まいの暖かさは、血圧とも深い関係があります。
上のグラフは、リビングの断熱改修と床暖房改修を行うことで、最高血圧に変化があったかどうかを調べたもの。独立行政法人 健康長寿医療センターが行った研究です。
これによると、最高血圧に変化がみられています。
床付近の温度が上昇すると、最高血圧(24時間連続測定の全日の平均値)が低下。高気密で足元温度が高い家は、血圧を低減できる可能性が示されています。
【暖かい住まいの健康メリット4】ヒートショックのリスクを軽減
ヒートショックとは、温度の急激な変化が体に与えるショックのこと。
寒い脱衣所で服を脱ぎ暖かい浴槽に浸かる、暖かい部屋から寒い部屋へ移動するなど、温度の急激な変化によって起こるさまざまなショックを総称して、こう呼びます。
寒い季節は入浴中の死亡者数が急増します。
入浴事故死者数は、年間約19,000人(※1)。これは、交通事故死者数の約4倍と推計されたこともあるのです(※2)
※1 厚生労働科学研究成果データベース「厚生労働科学研究費補助金 入浴関連事故の実態把握及び予防対策に関する研究 平成25年度 総括・分担研究報告書研究」代表者 堀進悟
※2 一般財団法人 全日本交通安全協会「平成25年中の交通事故死者数」
ヒートショック予報を上手に活用しよう!
冬の入浴事故を少しでも減らすために、東京ガスは日本気象協会と協力して、「ヒートショック予報」を開発しました。
日々変化する気象の予測情報に基づいたヒートショック予報は、全国の市区町村ごとの予報を日本気象協会が運営する天気予報専門メディア「tenki.jp」でご覧いただけます。
※毎年10月頃から3月頃まで提供しています。
ヒートショックについて楽しく学べる情報サイト「STOP! ヒートショックSTATION」!
東京ガスはヒートショック対策の啓発を目的とした企業協働の活動「STOP! ヒートショックプロジェクト」を幹事企業として推進しています。
このプロジェクトは、協賛企業が協働で行う社会貢献型啓発プロジェクトです。ヒートショックのリスクと対策の認知度をより高めるために、様々な啓発活動を実施しています。
公式X(旧Twitter)でも情報を発信中! 詳しくはこちら
【上手な住まいの暖め方1】足元は暖かく15℃以上をキープしよう
寒い家が健康リスクを高める、とわかっていても、住まい全体を隅々まで暖めるのはなかなか大変です。
そこで「足元を暖める」ことをポイントにしてみましょう。「国土交通省スマートウェルネス住宅等推進事業調査」によると、床付近の室温が低い家ではさまざまな疾病・症状を有する人が多いことがわかっています。
室温が同じでも、床や壁が暖かいと体感温度がアップする
暖かさといえば室温を思い浮かべますが、室温と同じくらい床・壁・天井の温度も重要といわれています。体感温度を算出する式は以下のようになります。
体感温度には、空気温度だけでなく、表面の温度も重要です。同じ空気温度でも、壁・床・天井の表面温度が低いと、体感温度が下がって暖かさの質が下がってしまうのですね。
【上手な住まいの暖め方2】エアコンを使うなら風向きに注意!
手軽なエアコンは冬に便利ですね。でもエアコンの暖かい気流は喉の痛みやせき、痰などの症状を悪化させることがあるようです。体調不良の時には、エアコンなどの気流式暖房は控えめに、床暖房やパネルラジエーターなどの放射式暖房を使うと良いかもしれません。
上のグラフはリビングで気流式暖房を積極的に使った場合と放射式暖房を積極的に使った場合を比較した結果です。放射式暖房は、 気流式暖房よりも「喉の痛みが重くなる人」「せきや痰がでる人」の割合が少なく、過ごしやすい環境である可能性が示されています。
床暖房を上手に取り入れて!
床暖房なら放射式暖房なので、気流を出すことなく部屋全体を暖めることができます。また足元から暖めて全身ポカポカに。
東京ガスのガス温水床暖房は、新築の住まいはもちろん、リフォームで設置することもできます。日常を家で過ごすことが増えてきた人は、この機会に検討してみませんか。
おわりに
暖かいものを着こんだり、しっかりとお風呂に浸かったり、温かいものを摂ったり・・・。冷えの影響から体を守ることはもちろん大切ですが、「暖かい住環境づくり」は、私たちが想像している以上に健康リスクに直結していることが今回のレポートで改めて実感できました。
寒い住まいの健康リスクは、まだまだ認識されはじめたばかりの新しいトピック。運動、睡眠、食事と並ぶ、健康づくりの重要な要素として、「住まい」も意識していきたいですね。
出典:東京ガス都市研究所「あなたのウチは大丈夫? 暖かさの質が冬の健康を左右する」(2020年9月)
出典:東京ガス都市研究所寒い住宅の健康リスクを知ろう! 高齢者が安心して住める家(2019年11月)
出典:(厚生労働省研究班監修)女性の健康推進室 ヘルスケアラボ「女性に多いからだの不快な症状と病気 冷え」