オンライン帰省とは?
オンライン帰省とは、オンライン会議アプリなどをツールとし、オンライン上で帰省の雰囲気を味わうことです。政府や各自治体もオンライン帰省を推奨しはじめています。
オンライン帰省を実施した人は、まだ少ないのが現状ですが、実施した人の満足度は高く、今後オンライン帰省を選択する人は増えると見込まれています。
子育て世代の家庭では、両親や親戚に高齢の方がいる場合も多いでしょう。気温・湿度が下がり、新型コロナウイルスが活発になると予想される年末年始シーズンは、帰省を悩むことになりそうです。この機会にオンライン帰省を試してみてはいかがでしょうか?
オンライン帰省におすすめのツール
オンライン帰省は、オンライン会議ツールやテレビ電話機能のあるアプリを使って行います。帰省する側はこうしたアプリに慣れている方が多いものの、祖父母世代は難しく感じる方が多いかもしれません。
まずは、セッティングしやすく、遠隔でも説明しやすいオンライン会議ツールがおすすめです。その後もテレビ電話として気兼ねなく利用できるように、無料のツールを選びたいですね。一般的には「LINE・ZOOM・skype」などが、よく知られているのではないでしょうか。各ツールの使い方はリンクをご参照ください。
【LINE】
【ZOOM】
【skype】
祖父母世代には、オンライン会議ツールやテレビ電話を使うのが初めての方もいらっしゃると思います。その場合、こうしたアプリを使うのはとても緊張するものです。お正月のオンライン帰省を行う前に、何度か練習しておけるとよいですね。
【和文化研究家・三浦康子先生に聞く】そもそもお正月とは?
新年1月1日は、「元日」ですね。しかし「お正月」というと、いつからいつまでを指すのかなど、あやふやな方も多いでしょう。お正月の意味も含めて、和文化研究家の三浦康子先生に伺いました。
お正月の定義とは?
ーお正月はいつからいつまでという定義はあるのですか?
「お正月」という言葉をどう捉えるかで異なります。
正月は、年始の月である1月の別名なので丸1カ月間となりますが、現在はお正月行事をする期間と捉えるのが通例です。このお正月行事をする期間にも、いくつかの捉え方があります。
一般的には、1月1日から7日までの「松の内」をお正月と捉えます。「あけましておめでとうございます」とあいさつをするのも、年賀状のやりとりや新年のあいさつ回りをするのも、松の内が目安になっています。
また、門松やしめ縄などの正月飾りを焼く「どんど焼き」の1月15日までを、お正月と捉える場合もあります。15日は「小正月」の日であり、小豆粥などの正月行事があります。昔は上方と呼ばれた関西地方では15日までを松の内としていたため、今でも京都や大阪などでは松の内は15日までとされています。
さらに、昔は1月20日に鏡開きをしていたため、「二十日正月」と言い、20日までを正月と捉える地域もあります。
ーいずれにしても、お正月は、お正月行事の期間ということなのですね?
そうです。実は、お正月行事は前年の12月13日から始まっています。すす払いを行う12月13日の「正月事初め」から年神様をお迎えする準備が始まり、1月1日に年神様を迎えてもてなし、1月15日のどんど焼きでお見送りをして「正月事終い」とするのが一連のお正月行事です。
しかし、日程に地域差があるなど、さまざまな捉え方があります。現代のライフスタイルに合わせて、一般的な松の内である1月7日までをお正月期間としても差支えはありません。さらに、7日以降もお正月本来の伝統や意味を意識しながら生活できるとよいでしょう。
お正月は睦み合う月
ーお正月というのは、新年が始まること以外にどんな意味があるのでしょうか?
お正月は、新年を司る年神様を迎え、もてなし、無事新年を迎えられたことに感謝をする。さらに新年も無事でより良い年になるよう、年神様に祈願するという意味があります。一連のお正月行事は、このような思いを表すために生まれました。
年神様は、五穀豊穣の神様であり、ご先祖様でもあると考えられているので、子孫の家にやってきます。1月は別名「睦月」で、家族や親戚などが仲良く睦み合う月という意味が込められています。お正月は日本の行事文化の大黒柱であり、家族の絆を強める最良の機会です。だからこそ、家族で集まり睦み合うことが大切とされてきたのです。
ーオンラインという形でも、年神様は満足していただけるのでしょうか?
年神様にとっては、子孫が仲睦まじくしている様子を見るのが何よりの喜びと言われています。その時できる形で一緒におせち料理を食べたりお正月遊びを楽しんだりしながら、仲睦まじい一家の姿を見ていただくことが、年神様への感謝や敬意を示すことにつながります。離れていても、お正月ならではの文化を取り入れたオンライン帰省ができるとよいですね。
オンライン帰省でお正月を楽しもう!
オンラインでも、お正月に実家や親戚と交流を深めたいですよね。しかし、オンラインに慣れていないご高齢の方は口数が少なくなったり、子どもがオンラインでの通話に飽きてしまったりすることもあります。
せっかくのお正月のオンライン帰省。お正月らしさが感じられるように、また、睦まじい姿を年神様に見ていただけるようにしたいものです。会話が盛り上がるよう、いくつかイベントを盛り込めるとよいでしょう。オンラインでも実践できる、お正月らしい楽しみ方をご紹介します。
お正月といえば、やっぱりうれしいお年玉!
子どもたちにとって、お年玉はお正月のメインイベントといえる風習です。お年玉には、どんな意味があるのでしょうか? 三浦先生に伺った、お年玉の由来やオンライン帰省でお年玉のやり取りをするコツをご紹介します。
意外に深いお年玉の由来
お年玉に現金が一般化したのは、戦後の高度経済成長期だそうです。
お年玉の「玉」は「魂」を表していて、お年玉には「その年を生きる気力=年魂を年神様から授けていただく」という意味があります。昔は元日に皆一斉に年をとる「数え年」だったのは、年神様から授かった魂の数を数えれば年齢になるからです。
年神様は正月中、鏡餅に滞在すると考えられているため、年神様の魂が宿ったお餅を、家長が家族に分け与えたのがお年玉のルーツです。こうしたルーツを知ると、あげる方ももらう方もいつもと違った気持ちでお年玉のやり取りができそうです。
オンライン帰省でお年玉
お年玉はお正月には欠かせない風習なので、オンライン帰省でも行いたいもの。その場合、お年玉の準備はどうするのか、あらかじめ実家と話し合って準備しておけるとよいですね。
通話中に、子どもにお年玉を渡したら、子どもからお礼だけでなく新年の抱負や目標を聞くなどすると盛り上がりそうです。お年玉本来の目的としても新年への決意を新たにすることが重要なので、風習を大切にするという意味でも理にかなっています。
帰省先に持っていくつもりでいたお年賀や手土産があれば、事前に送っておいてもよいですし、オンライン帰省中に用意した品物を見せてから送ってもよいでしょう。
品物は、加湿器や空気清浄機・マスク+消毒グッズなど、今年ならではの健康グッズもよいかもしれません。例年通り、現金やお菓子はもちろん、ビールやお米など、買い置きに適した品も喜ばれそうです。
オンラインで盛り上がれそう! お正月の遊び
子どもがオンライン通話に飽きないように、オンライン帰省中にお正月遊びをするのはいかがでしょうか? 会話が弾み、子どもも大人も楽しめるでしょう。
お正月遊びに込められた意味
オンライン上で子どもから高齢者まで楽しめるお正月遊びとして、かるたや福笑い、コマなどがおすすめです。こうしたお正月遊びをするなら、同じ道具をあらかじめ送っておくとよいですね。
三浦先生にそれぞれのお正月遊びの意味を教えていただきました。
● かるた・・・その年の学力向上などを願う
● 福笑い・・・「笑門福来」を願い、家族で笑って幸福を呼び寄せる
● コマ・・・物事が円滑にまわるように。コマは漢字で独楽と書き、子どもの自立や成長を願う
オンライン上でお正月遊びを盛り上げる方法
かるた遊びでは、かるたの読みあげは祖父母、取り合うのは子どもたち家族、などと簡単なルールを決めておくと祖父母世代も遊びに参加しやすいでしょう。地域によっては、名産や方言を盛り込んだご当地かるたが販売されているようです。こうしたかるたで、この機会に本来帰省するはずの故郷について学ぶのもおすすめです。
福笑いは同じ絵柄のものを、同じペースで進めて、お互いに出来上がりを見せ合うと過程も楽しめます。子どもと福笑いを作り、事前に実家に届けておくと喜ばれそうですね。
コマは回る時間を競う遊びをしましょう。地域や年齢によりますが、一部の幼稚園や小学校ではコマ回しが流行っています。子どもにも祖父母世代にもなじみがある遊びの一つなので、コマ回しのコツなどを教え合うのも盛り上がりそうですね。
コマはそもそも縁起物で、長く回れば回るほど縁起が良く、子どもが順調に成長するとされています。成長し器用になった子どもの様子を伝えられ、縁起も担げる遊びなので、ぜひ取り入れてみませんか?
お正月ならではのおせちや郷土料理
実際には帰省できない年末年始だからこそ、郷土のおせち・お雑煮などが恋しくなるかもしれません。レシピを聞いたり、祖父母の故郷のおせちやお雑煮について質問したりすると勉強にもなり、会話も弾みそうです。三浦先生に伺った、おせちやお雑煮の由来などについてご紹介します。
おせちの由来やマナー
おせち料理は、もともと四季折々の「節供料理」で、桃の節供や新嘗祭など、日本の伝統行事や祝い事で出される料理や供物、すべてを節供料理と呼んでいました。
数ある節供料理の中でも、お正月は最も重要な行事であり、お正月の節供料理にはたくさんの意味が込められています。そこで、「節供料理」とは、お正月料理をさすようになり、おせちと呼んで親しまれるようになりました。
また、一説には普段忙しい主婦が休めるようにおせち料理には保存が効く物が多いと言われています。一方で松の内に台所の神様である火の神にも休んでいただくためという意味合いもあります。
忘れてはいけないのが、おせちは祝い箸(箸の両方の先端が細くなっている白木の箸)で食べるという風習です。箸の一方は年神様、もう一方は人が使うと考え、神様と人が共に食事をすることを表します。そのため、取り分けなどのために、箸をひっくり返して使うのはやめましょう。マナーや風習の面だけではなく、取り分け用の箸やさじを用意した方がスマートです。
お雑煮の由来と意味
お雑煮には、お年玉として授かったお餅、すなわち年神様の魂が宿ったお餅を身心に取り込むという意味があります。
先述した通り、年神様は鏡餅に宿るため、西日本を中心に多くの地域でお雑煮に丸餅を使っています。一方、東日本ではお雑煮には焼いて膨らませ、角を取った角餅を入れる地域が多いです。
東日本の冬は、西日本に比べて寒いです。手で丸める「丸餅」は気泡や水分が多いため、寒冷地ではひび割れしやすく、保存に適さない傾向がありました。そのため、東日本では気泡や水分を押し出した「伸し餅(のしもち)」を切り分けた、「角餅」が普及したのです。
お雑煮は、お餅の形だけでなく、地域や家庭によって味にも違いがあるものです。その土地の産物・海や山の幸を入れたり、縁起の良い食材を入れたりと、地域や家庭の食文化を反映するからです。
京風や関東風など多くの種類がありますが、家族の出身地や好みなどが反映されるため、同じ地域でも家庭によって微妙に異なるものです。「どれが正しい」といったことはなく、その家の味を大切にしましょう。
せっかくオンライン帰省をするなら、実家やパートナーの家のお雑煮を一から教えてもらうのもよいでしょう。一緒に台所に立って教わるより、教える方も教わる方もハードルが下がるかもしれません。直接帰省しづらいお正月だからこそ、実家の味や郷土料理はよい話題になるでしょう。
ウチコトでもいろいろなお雑煮レシピをご紹介しています。ぜひ参考にしてみてくださいね!
おわりに
大切な人たちの健康を守るために、今年はいつもと違った年末年始を過ごす方もいるでしょう。頭では理解していても、お正月に故郷に帰れないのは、自分たちも帰省先もさみしいものです。
この機会にオンライン帰省を試してはいかがでしょうか? ちょっとした工夫で、まるで一緒にいるかのような過ごし方ができるかもしれません。お互い元気で会える日が早く来ることを願い、オンライン帰省で新年の喜びを分かち合いましょう。
参考:厚生労働省「人との接触を8割減らす、10のポイント」
参考:厚生労働省「ゴールデンウィークの帰省などに関するポスターを作成しました」
参考:首相官邸「新型コロナウイルス感染症対策本部(第30回)」