入浴中の事故の原因のひとつ「ヒートショック」とは?
ヒートショックとは、暖かい部屋から寒い部屋への移動などによる温度の急な変化が身体に与えるショックのことです。急激な温度変化により血圧が変動し、身体に大きな負担がかかります。
全国で年間19,000人もの人がヒートショックも関連すると考えられる入浴中の急死に至ったと推計されました※1。この死亡者数は、交通事故による死亡者数のなんと4倍以上です※2。特に、気温が低い冬には、入浴中の死亡者数が急増しており、注意が必要です。
※1 厚生労働科学研究費補助金 入浴関連事故の実態把握及び予防対策に関する研究 平成 25 年度 総括・分担研究報告書 研究 代表者 堀進悟
※2 平成25年中の交通事故死者数 - 一般財団法人 全日本交通安全協会
入浴事故で亡くなる方は高齢者層が多く、ご高齢の方が住むご家庭ではヒートショック等による入浴事故対策が重要になっています。
対策1:最も重要!「温度差を減らす、温度のバリアフリー化」
ヒートショック対策のポイントは「温度差を減らす」ことにあります。
上のグラフは脱衣室と浴室の温度によって、血圧変動にどのような違いが生じるかを調べたものです。脱衣室・浴室がより温かい条件では、入浴時の最高血圧の変動幅が小さくなることが確認できています。脱衣室や浴室を暖めることがいかに重要かがわかります。
また、お湯の温度にも注意が必要です。ぬるめの38℃と熱めの42℃では、血圧の振れ幅がかなり違います。振れ幅が大きいほど身体に受けるショックが大きくなります。
“室温は高く、湯温は41度以下”を心がけましょう。
効果的な住宅リフォーム!
2019年に発表になった、「高齢期の健康で快適な暮らしのための住まいの改修ガイドライン」※3では、既存住宅の改修にあたって、高齢期の健康で快適な暮らしを実現するための配慮すべき重要な項目が示されています。その中の「温熱環境」と「トイレ・浴室の利用のしやすさ」を踏まえて住宅改修を行うことで、ヒートショックの防止の効果が期待できると記載されています。お風呂の入り方に注意することに加え、可能な範囲で住まいのリフォームも検討すると良さそうですね。
※3 国土交通省「高齢期の健康で快適な暮らしのための住まいの改修ガイドライン」
脱衣室での対策も忘れずに!
浴室と同様、温度のバリアフリー化を図りたいのが脱衣室です。脱衣室の暖房に関しては築年数の浅い住宅でも設置率が低く、対策が進んでいないことがわかっています。
小型のヒーターを置くなどして室温に気を配りましょう。
浴室暖房乾燥機をお持ちのお宅は、浴室の扉を開けて浴室暖房をかければ脱衣室も暖まりますよ。
浴室暖房乾燥機はヒートショック対策になるだけでなく、カビを抑えてくれたり、洗濯物の部屋干し臭から解放してくれたりと、日常生活の助けになることがいろいろあります。 安全で快適な入浴を楽しむために温度バリアフリーを実現しましょう。
対策2:「ヒートショック予報」を活用する
冬の入浴事故を少しでも減らすために、東京ガスは日本気象協会と協力して、「ヒートショック予報」を開発しました。
日々変化する気象の予測情報に基づいたヒートショック予報は、全国の市区町村ごとの予報を日本気象協会が運営する天気予報専門メディア「tenki.jp」でご覧いただけます。
※毎年10月頃から3月頃まで提供しています。
ヒートショックのリスクの目安が一目でわかるので、是非参考にしてみてください。
ヒートショック予報は3ランク
ハートマークの色で注意度がわかるようになっています。
天気予報のようにヒートショック予報も日々チェックすることで、適切な対策を行うことができ、毎日の入浴をより安全に楽しむことができますよ。
対策3:お風呂場の見守り「安心入浴サポート機能」搭載の給湯器リモコンを導入する
浴室内の見守りとして、給湯器リモコンに見守り機能が搭載されたものも登場しています。
「安心入浴サポート機能」とは
給湯器リモコンに搭載された「安心入浴サポート機能」。その機能は、浴室の入退室の確認をするドアセンサー、浴槽内の水位や動きを検知する水位センサー、そして浴室内の人の動きを感知する人感センサーの3つのセンサーによって、浴室内の家族の動きを見守ります。
人感センサーは、九州工業大学と東京ガスが共同研究を行い開発しました。独自のアルゴリズムを採用しており、高温多湿な浴室内でもより正確に人の動きを検知出来るようになりました。
これら3つのセンサーにより、浴室内で一定時間動きがない場合、浴室内のリモコンから入浴者に呼びかけを行います。呼びかけを行っても動きが無い場合、台所に設置されたリモコンへの警告を行い、異常をお知らせします。
台所に設置したリモコンでは、入退室や入浴状況をアイコンで確認できるため、一緒に暮らす家族は浴室に行くことなく浴室の状況が確認出来、安心して他の家事を行うことができますね。
離れて暮らしている家族も安心
さらにスマートフォンアプリ「パーパスコネクト」を使うと、遠隔操作でガス給湯器の操作が可能となり快適に過ごすことができます。また、離れて暮らすご家族がアプリをダウンロードし、ご高齢のご家族のご自宅の給湯器と接続すると、お湯を使った時に通知を送信するのでゆるやかな見守りが可能です。
対策のまとめ【ヒートショック対策のポイント】
脱衣室・浴室のポイント
- 浴室暖房や脱衣室暖房、小型のヒーターなどで入浴前にあらかじめ暖めましょう。
- 浴室暖房乾燥機をお持ちのお宅は、浴室の扉を開けて浴室暖房をかければ脱衣室も暖まります。
- 専用の暖房がない場合は、高い位置に固定したシャワーで浴槽にお湯をためると浴室全体が暖まります。
- 温風タイプの浴室暖房は水にぬれた体にあたると寒く感じるため、入浴時には「弱」にする。もしくは、体に直接当たらない方向へ風向変えるとよいです。
湯温のポイント
- お風呂の温度を41℃以下に設定しましょう。
- 湯温が設定できない場合は温度計で測るなどしましょう。
その他のポイント
- 気温が下がる深夜や早朝の入浴は避けましょう。
- 浴槽に入る前に手足など体の末端からかけ湯をしてお湯に体を慣らしましょう。
- 浴槽から急に立ち上がるのはやめましょう。浴槽から出るときは、手すりや浴槽のへりを使ってゆっくり立ち上がるようにしましょう。
- 家族と一緒に住んでいる場合は、家族にひと言かけてから入浴しましょう。
- ヒートショック予報をチェックするなど家族皆で意識を高めましょう。
- 浴室暖房乾燥機の導入や安心入浴サポート機能搭載のリモコンなど、新たな機器やサービスの利用も検討してみましょう。
おわりに
いかがでしたか?
最近の住宅は断熱性の高いユニットバスや、浴室暖房乾燥機や冷たく感じない床材の導入など、温度のバリアフリー化が進んでいますが、実は、ヒートショック対策が必要な高齢者層ほど築年数の古い戸建に住んでおり、寒い浴室で入浴していると考えられます。
すぐに実践できることも多くありますので、一緒に暮らすご家族はもちろん、離れて暮らすご高齢の家族にも、ぜひ声かけをしたり、実践をしてみてくださいね。
ヒートショックについて楽しく学べる情報サイト「STOP! ヒートショックSTATION」!
東京ガスはヒートショック対策の啓発を目的とした企業協働の活動「STOP! ヒートショックプロジェクト」を幹事企業として推進しています。
このプロジェクトは、協賛企業が協働で行う社会貢献型啓発プロジェクトです。ヒートショックのリスクと対策の認知度をより高めるために、様々な啓発活動を実施しています。
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