蒸し器と電子レンジの違いは「加熱の原理」!
電子レンジと蒸し器を使った調理には、どのような違いがあるのでしょうか?
両者の違いは、加熱方法の原理にあります。
蒸し器は、高温の水蒸気を当て、食品を外側からじっくりと加熱していきます。温かい水蒸気が食品に浸透しながら温めるので、温度が急激に上がることなく均一に火を通すことができます。
電子レンジはマイクロ波(電磁波)を食材の水分子に当てて振動させて発熱させています。そのため、食品の内部が先に次第に外側へ温まっていくという特長があります。
【電子レンジ】調理のメリット
1. 調理時間が短い
電子レンジ調理の場合は、電磁波の力で一気に加熱するため、短い調理時間で食品を温めることができます。
鶏もも肉を調理する場合の時間の比較をしてみると、蒸し器で調理するのに比べて、電子レンジは短い調理時間で済みます。冷めてしまった食品も手軽に温め直すことができますね。
2. 脂を落とすことができる
東京ガス都市生活研究所の調査では、電子レンジ調理は蒸し器調理と比べ、脂質含有量が少なくなることがわかっています。
これは、食品を加熱する際に、食品内の脂が溶け出すためです。しかし、脂と一緒に旨味なども溶け出してしまったり、肉が硬くなってしまうこともあるので、一概にメリットとは言えないかもしれません。
【電子レンジ】調理のデメリット
1. 加熱にムラがある
電子レンジ調理では、食品の内部から一気に加熱するため、急激な温度の上昇を伴います。庫内での食品の置き場所や、食品の大きさによっては、全体に熱が行き渡らないなど、温まり方にムラが生じる場合があります。
2. 火加減の調整が難しい
調理が早い一方で、急激に温度が上がりやすいことから、加熱調整が難しい場合も。特に、低温で固まる食材(卵を使ったプリンなど)や、温め過ぎを防ぎたい時などは、加熱時間の設定や調整が難しい場合があります。
3. 一度にたくさん加熱できない
機種にもよりますが、電子レンジ調理は庫内の置き場所によって、温まり方が異なる場合があります。また、温まり方にムラが出やすいため、一度にたくさんのものを調理するのは向いていないと言えそうです。
【蒸し器】調理のメリット
1. しっとりとジューシーに仕上がる
高温の水蒸気で加熱するため、食材の水分が失われることなく仕上がります。また、加熱温度が100度と比較的低いため、肉を加熱する場合は脂の溶出量が少なく、肉汁が保たれます。
蒸し料理は、脂が落ちてヘルシーというイメージを持つ方が多いですが、実際には肉汁の流出が少なく、やわらかくジューシーに仕上がると言えます。
2. 食材の甘みを引き出してくれる
調査では、さつまいもを蒸し器で加熱した場合、電子レンジ調理と比べると甘みが増すことが分かっています。実際に、さつまいも調理後の甘さを比較したところ、「蒸し器」で調理したさつまいもは甘いと評価されました。
さつまいもの甘みの元となる「麦芽糖」は、さつまいものでんぷんとアミラーゼが作用し、加水分解することで生まれます。麦芽糖が多く生成されるためには、水とアミラーゼが反応する温度を長い時間保つ必要があります。
「蒸し器」による調理は水分を多く含み、加熱時間が長めなことから、麦芽糖が多く生成されたと考えられます。蒸気で穏やかに加熱する蒸し料理は、さつまいもの甘みを引き出してくれると言えそうです。
3. 加熱にムラが少ない
電子レンジが内側から加熱していくのと違い、蒸し器は外から加熱していきます。そのため、ムラなくおだやかに加熱することが可能です。
4. 火加減の調整が簡単
蒸し器での調理は、水蒸気によって食品を加熱します。水蒸気の温度は約100℃と安定しており、食品の外側から均一に加熱していきます。おだやかな加熱で急激に高温になることがないので、火加減の調整が簡単です。
【蒸し器】調理のデメリット
1. 調理時間が長め
低めの温度で温めていくため、調理時間は長くなりがちです。
2. 調理コストが高くなることも
調理時間に比例して、エネルギーコストも高くついてしまうと言えます。
蒸し器と電子レンジ、結局どちらがいいの?
蒸し器も電子レンジも、それぞれメリット・デメリットがあります。
短時間で仕上げたい場合は、電子レンジが手軽かもしれませんが、美味しく作りたい場合はやはり蒸し器を使用することがオススメです。
茶碗蒸しや肉まんなどを作る場合、美味しく見た目もキレイに仕上げるには熱をじっくりと均一に加えることが大切です。電子レンジで加熱すると熱が偏り、生焼けの原因になることも。
蒸し器調理は素材の甘みを引き出したり、肉料理では脂や旨味の流出を防いでくれます。時間はかかりますが、美味しく調理するなら蒸し器の方が失敗が少ないと言えるかもしれません。
おわりに
蒸し器と電子レンジの特徴、それぞれのメリットとデメリットをご紹介しました。
どちらにもメリット・デメリットがあります。調理時間や手間、美味しさや仕上がりを考慮して、上手に使い分けてくださいね。