黒留袖(くろとめそで)
正装には3種類あり、第一礼装、準礼装、略礼装の順で格が異なります。
黒留袖は、既婚女性の「第一礼装」で格調の高い着物です。黒留袖は、「黒地」で「裾だけに模様」があり、背中・両袖・両胸に「五つ紋」が施された着物です。
黒留袖の着用シーン
主には結婚式で、新郎新婦の母親や仲人夫人、親族の既婚女性が着用します。
留袖とは
留袖とは、江戸時代に花嫁が着た振袖の袖を切って短くし、縫い留める習慣があり、これを「留袖」と呼んでいたことから、既婚女性の礼装となっていったそうです。
振袖(ふりそで)
振袖は、未婚女性の「第一礼装」です。
袖丈の長さによって大振袖・中振袖・小振袖と異なり、袖丈が長いほど格調が高いとされています。
振袖の着用シーン
- 大振袖・・・成人式、花嫁衣裳のお色直しなど
- 中振袖・・・成人式、謝恩会、新年会、結婚披露宴、初釜、パーティなど
- 小振袖・・・卒業式の袴と合わせる、茶会やパーティなど
色留袖(いろとめそで)
色留袖は、未婚既婚を問わず着用できる礼装です。色地が「黒でない」留袖で、「裾だけに模様」があり、「紋付き」です。五つ紋だと「第一礼装」、三つ紋や一つ紋だと「準礼装」になります。
色留袖の着用シーン
五つ紋を付けると黒留袖と同様に「第一礼装」となり、祝儀や正式なレセプションで着用できます。
三つ紋(背と両袖の外側)や一つ紋(背のみ)の場合は「準礼装」となり、披露宴やパーティ、正式な茶事など、準礼装の中で最高格の着物として着用できるそうです。
訪問着(ほうもんぎ)
訪問着は、未婚既婚の問わず着用できる「準礼装」の着物です。未婚であれば振袖に次ぐ礼装、既婚であれば留袖に次ぐ礼装です。
上の色留袖と訪問着は一見似ていますが、上半身は無地で裾だけに模様が入っていれば色留袖。肩から裾に流れるような模様が入っているものは訪問着というのが見分けるポイントの一つです。
訪問着は「絵羽(えば)」という模様付けが特徴的な着物で、生地を一度仮縫いし、着物全体が一続きの絵になるよう描いた後、再度仕立て直すという手の込んだものです。
縫い目で模様が切れず、一続きの一枚の絵のように仕上がるので、礼装らしく華やかな雰囲気の着物になります。
訪問着の着用シーン
結婚式の参列、パーティーなどの晴れの席や、卒業式や入学式、お宮参り、七五三など幅広く着用できます。
付け下げ(つけさげ)
付下げは、見た目は訪問着に似ているものもありますが、訪問着と異なり、縫い目に模様がかからず、着た時に模様がすべて上を向くように柄付けした着物です。
付下げの着用シーン
絵羽模様でないことから、訪問着より下の「略礼装」にあたりますが、「準礼装」に近く訪問着とほぼ同格とされ、同じようなシーンで着用されます。
色無地(いろむじ)
色無地は、無地染めされた生地で柄がないのが特徴です。紋がついていれば「準礼服」「略礼装」として着用、紋が無ければ外出着として着れます。
色無地の着用シーン
色無地は慶事にも弔事にも使用出来ますが、弔事に使用する場合は目立つ色は避けましょう。
小紋(こもん)
小紋は、全体的に上下の方向に関係なく細かい模様があるのが特徴です。染めの技法によって、紅型、更紗、絞りなどさまざまなものがあります。
小紋の着用シーン
いわゆるお洒落着、普段着として着る着物です。格式張らないけれど華やかさを求められる場合などに着用します。無地に見えるほど細かな模様がある「江戸小紋」は格が高いので、紋を入れると、紋付の色無地のように着用できます。
紬(つむぎ)
紬は織り模様が特徴的で、普段着にあたります。張りのある生地で、高価なものでは結城紬や大島紬などが有名です。
紬の着用シーン
趣味やお稽古ごと、街歩きにも最適です。どんなに高級な紬でも、婚礼など礼服が要求される場では着用しません。
イベントではどんな着物をきればいいの?
七五三・お宮参り/入学式・卒業式 には、一般的に、「準礼装」か「略礼装」がいいとされています。訪問着、付け下げ、色無地がふさわしいようです。
七五三・お宮参り
主役は子どものため控えめな色柄のものがよいとされていますが、お子さんの着物とのバランスを考えて選びましょう。
入学式・卒業式
主役は子どものため、落ち着いた色柄で上品な色味・春らしい季節感があるものを選びましょう。
おわりに
着物は華やかさと上品さを演出してくれる、とても素敵な衣装です。着用の種類と着用するシーンが理解できれば、コーディネートは難しくありません。着物を着ることで、普段とは違う雰囲気の自分を楽しんでみてください。
参考:日本和装「着物の種類」