マットレス・布団にカビが生えるとどうなるの?
朝起きると布団やマットレスがしっとりしていることはありませんか?
「このままでは寝具にカビが生えてしまうのでは・・・?」と、心配している人のために、上級睡眠健康指導士の加賀照虎(以下、加賀さん)さんからカビ対策のアドバイスをいただきました。
【上級睡眠健康指導士とは?】
一般社団法人日本睡眠教育機構が養成し認定する資格。睡眠に関する正しい睡眠知識を一般の社会人に伝え、日本国民の健康増進に貢献することを目的に、医師や研究者など睡眠の専門家によって設立されています。加賀先生が持っている上級資格はより難易度が高く、医学的な知識や睡眠のメカニズム、睡眠衛生について深い知識を有しています。
寝具(布団・マットレス)に生えるカビは主に3種類
マットレスや布団のカビには、どんな特徴があるのでしょう? 加賀さんによると、寝室のカビは主に3種類だそうです。
「最も多いのはアスペルギルス。いわゆる赤カビといわれるもので、冷蔵庫、エアコンなどにも多くいます。次に多いのがクラドスポリウムで、いわゆる黒カビです。最後がペニシリウム。色は様々ですが、青カビとして知られます」(加賀さん)
寝具に点々と黒い跡をつけるのは、黒カビのクラウドスポリウム。
「カビは寝具に限らず空気中に自然に存在しています。個人の体質や免疫力にもよりますが、体内にカビを吸い込んでも多少の量なら問題はありません。ただ、布団などが目に見えて黒く点々としているのは、カビが大繁殖している状態。ここまでになると、黒カビだけでなく他のカビも大繁殖してしまっていることが多いです」(加賀さん)
赤カビのアスペルギルスや青カビのペニシリウムは、胞子を大量に吸い込むとアレルギー反応を起こすことがあるそう。「真菌過敏症」といわれ、気管支喘息やアレルギー性鼻炎の原因にもなるとのことです。カビ対策は欠かせませんね。
カビは冬も夏も増える!? 寝具(マットレス・布団)にカビが生える3つの条件
カビは「湿度」「温度」「汚れ」の3つの条件が揃うと、大繁殖につながります。
「カビが繁殖しやすい『湿度80%以上、温度20度以上』というと、梅雨時から夏にかけての気候です。ただし、マットレス・布団のカビは、夏だけに限らず冬期も多いのです。冬はマットレス・布団の上面は人の体温で暖まりますが、下面はフローリングなどの冷気で冷やされます。そうなると、下面(裏側)が結露して、カビが生えやすくなってしまうのです」(加賀さん)
カビは、夏に限らず年中つきまとう問題なのですね。
加賀さんによると、カビの原因や対策はマットレスと布団で異なるそうです。以下にそれぞれ詳しくご紹介します。
【マットレスにカビが生える原因1】 寝室の換気が悪い
マットレスのカビというと、どうしてもマットレス本体だけに目が行ってしまいがち。ですが、実は「寝室」の環境が寝具に及ぼす影響は大きいそうです。
「寝室は長時間締め切ったままになることが多く、湿度も高くなりがちなので、意識して風を通すようにしてください。寝室は窓を開けてしっかり換気を。1日1回は空気を入れ替え、空気中に浮遊するカビの胞子を部屋の外へ追い出しましょう。」(加賀さん)
寝具から出るホコリはベッドの下に積もりがち。これもカビのエサになるため、こまめな掃除も必要です。
【マットレスにカビが生える原因2】 ベッドが空気の流れを遮っている
ベッドを置く位置によっても、カビの好む環境になりやすい、と加賀さん。
「ベッドは壁から最低でも10㎝は離して置きましょう。壁とベッドがくっついていると、汚れやよどんだ空気が溜まりやすく、カビの繁殖の原因になってしまいます」(加賀さん)
ベッドと壁は離して置くのが鉄則。また、結露の影響を受けやすい窓際にベッドをぴったりと付けることも、マットレスにカビが生える原因になるようです。
【マットレスにカビが生える原因3】 床に直置きしている
マットレスをベッドフレームがない状態で床に直置きすると、マットレス下面から湿気を放出することができず、カビが生える原因になります。
「床とマットレスの間はできれば10㎝以上の高さがベストです。ただ、難しい場合にはマットレスの下にすのこを敷くだけでもかなり通気性がよくなります」(加賀さん)
【マットレスにカビが生える原因4】 マットレスの上に直接寝ている
マットレスの上にベッドパッドや敷きパッドなどを使わず、ボックスシーツをかけるだけで使用している人もいます。
これは、寝心地という観点からは良いですが、カビ防止にはNGだそう。一晩にコップ1杯分といわれる寝汗を吸い取り、清潔性を保つためには、パッド類を上手に使うことがポイントです。
また、マットレスはそれ単体で寝心地が設計されているため、マットレスの上に布団を敷くのはおすすめできないとのことです。
マットレスやパッド類、シーツの組み合わせは、以下の3通りが一般的。
① マットレス+ベッドパッド+シーツ
② マットレス+敷きパッド
③ マットレス+敷きパッド+シーツ
加賀さんによると、さらにマットレスプロテクターを使うと良いそうです。
「マットレスプロテクターは寝装品の中でもマイナーな存在ですが、知らないのはもったいないですよ! 防水加工が施されているため、マットレスを汗などのシミや汚れから守り、結果的に防カビに。何よりマットレス本体を長持ちさせてくれます。マットレスが新品のときから使い始めるとより効果的です」(加賀さん)
さらに完璧を目指すなら、湿気を取り除いてくれる除湿シートをマットレスや布団の下に敷いておくのも良いようですよ。
【マットレスにカビが生える原因5】 シーツやパッドを取り替えていない
人のフケやアカは、カビの大好物。部屋の中で自然に発生するチリやホコリも、カビが繁殖する原因になります。
「皮脂や汗がついたままのシーツを付けっ放しにしておくことは、カビの原因になります。できれば2~3日に1度、難しい場合でも2週間に1回はシーツを替えて洗濯をしましょう」
頻繁にシーツを替えているのにマットレスにカビが生えてしまう・・・という人は、シーツの取り替え方にも注意を。
「汚れたシーツを外すときに勢いよく『バッ!』とはがしていませんか? シーツの上にはフケやアカなど、カビのエサになるものがたくさん落ちています。マットレス本体に汚れをまき散らしてしまわないよう、シーツはそっと外してくださいね」(加賀さん)
ウレタンマットレスとコイルマットレスはどちらがカビやすい?
マットレスの構造によって、カビやすさの違いはあるのでしょうか?
「低反発などをうたうウレタン系のマットレスとコイルマットレス、カビへの耐性という観点からは、どちらも大差はないようです。それよりも重要なのは、マットレスの外側をくるむ側生地(がわきじ)の素材。綿など繊維内に水をためやすいものや、放湿性・発散性のよくない素材だと、カビが生えやすくなります」(加賀さん)
【マットレスのカビを防ぐお手入れ法1】 立てかけて風をよく通す
カビ予防には、なんといっても風通し。2週間に1回程度、マットレスを立てかけてマットレスの下面に風を通すと、カビ予防に効果的です。
「高反発マットレスや敷布団であれば重量は7kg前後。片側を持ち上げて半日ほど立てかけておくと、かなり湿気が取れます」(加賀さん)
立てかけるのが難しい重量のあるマットレスは、本などを挟んでベッドフレームから浮かせるようにして、マットレスの下面に風を送るのもいいそうです。
逆に避けたいのは、天日干し。マットレスは天日にさらすと側生地を傷めてしまいます。
日光は意外にもカビ防止の効果が低いそうで「重要なのは風通しです」と、加賀さんはいいます。
【マットレスのカビを防ぐお手入れ法2】掃除機で汚れを吸い取る
カビの繁殖要因になるフケ、アカ、ホコリなどは、掃除機で吸い取るのが一番! 寝室を掃除する際やシーツ換えのタイミングで、汚れをしっかり吸い取りましょう。
「吸引力は、ごく一般的な家庭用掃除機の強さで十分です。必ず寝具専用のアダプターを使って、部屋の汚れをマットレスにつけてしまわないように注意してくださいね」(加賀さん)
【マットレスのカビを防ぐお手入れ法3】 側生地を外して洗う
マットレスから側生地(がわきじ)を取り外せる場合は、取り外して洗濯を。繊維の奥にしみ込んだ汚れが取れ、カビの繁殖原因を取り除くことができます。
「側生地を乾かす際は、乾燥機の使用は控えましょう。側生地が縮んでしまうと、側生地がマットレスに対して小さくなってしまい、中材が歪んだりして寝心地が悪くなります」(加賀さん)
日陰干しでも多少縮む可能性があるため、洗濯後に側生地を縦横に引っ張ってから乾かすと縮みを軽減できます。
【布団にカビが生える原因1】 畳や床に直に敷いている
布団を畳や床の上に直に敷いていませんか?
床は見えない汚れが落ちてたまりやすいところ。カビの原因となる汚れが布団に付きやすくなります。
「布団は、夏は寝汗で湿りやすいですし、冬は床との温度差で布団の下面が結露しやすくなります。布団の下に1枚、除湿シートなどを入れることで、布団が湿気るのをかなり低減することができます」(加賀さん)
【布団にカビが生える原因2】 すぐにしまい込んでいる
ジャマになる布団はすぐに押し入れに収納してスッキリしたいもの。でも、これがカビの原因になることもあります。
「起きた直後の布団には、たくさんの寝汗がしみ込んでいます。湿気を含んだ状態で押し入れに入れてしまうのは避けましょう。押し入れは空気が動きにくい空間のため、湿度が高く、ホコリもたまりやすいところです。カビが好む条件が整っているといえます」(加賀さん)
布団をカビさせないポイントは、しばらくめくって広げておくこと。
「起床時の布団は寝汗で湿っているので、押入れにしまう前に空気と触れさせて乾燥させることをおすすめします。30分程度でいいので、掛布団をめくって放置しておくと、布団をカビから守ってくれます」
【布団にカビが生える原因3】 中材の放湿性がよくない
布団の素材によっても、カビの生えやすさに違いがあります。加賀さんがカビが生えにくい素材としておすすめしているのは、放湿性にすぐれた羊毛です。
「綿の布団を使っている人も多いと思いますが、綿は吸湿性にすぐれる反面、放湿性がいまひとつ。汗をよく吸ってくれるのですが、乾きが悪いのです」(加賀さん)
【寝具の素材別の特徴】
ただし、カビが生えにくい材質だからという理由でポリエステルなどの素材を選ぶ必要はないそう。「寝具は寝心地重視で選びましょう」と、睡眠のプロならではのアドバイスもいただきました。
【布団のカビを防ぐお手入れ法1】 最低でも週1回は布団を干す
布団の湿気を飛ばすには、干すのが一番だそう。特に敷布団は寝汗で湿りやすいため、掛け布団よりも頻繁に干す必要があります。
「綿は乾きづらいため、週2~3回を目安に、表と裏をそれぞれ2時間程度、日陰干しをするとよいですね。ポリエステルや羊毛は乾きが早いため、風通しのよいところで週1回前後を目安に日陰干しを。いずれの場合も、体がよく触れる部分をしっかり広げて、風が当たるように干しましょう」。
布団干しに最適な時間帯は、湿度が低い11~17時の間。布団を干すならこの時間帯にしましょう。
「特に夏場に言えるのですが、17時以降も布団を屋外で干していると、布団が湿気を吸い始めてしまいます。湿気を吸うと布団干しの効果が下がるので、早めに取り込みましょう」(加賀さん)
【布団のカビを防ぐお手入れ法2】 布団乾燥機を使う
悪天候が続いている、日中に家にいない、など、布団が干せないときは、布団乾燥機が便利です。
「なんとなく布団が湿気った感じがしたら、布団乾燥機を使いましょう。2~3時間くらいが目安です。普段からまったく布団を干さず、布団乾燥機で代用するという場合は、3日に1回くらいの頻度で使うのをおすすめします」(加賀さん)
【布団のカビを防ぐお手入れ法3】除湿シートを使う
除湿シートとは、布団やマットレスの下に敷き、寝具の湿気を取ってくれるもの。薄い布状のものや、すのこ状になったものなど、さまざまな種類があります。
朝起きて敷布団を押入れにしまうときには、除湿シートを敷布団に巻いたままが良いそう。押し入れ内で布団の湿気が拡散するのを防ぐことができます。押し入れ内に除湿シートを敷いておくのも効果的だそうです。
マットレス・布団にカビが生えてしまったらどうすれば?
カビでマットレスや布団が変色してしまった場合は、市販の漂白剤やカビ取り剤を使うという方法もあるそうです。
ただし、薬剤を使用した方法は、布団やマットレスに大きなダメージを与える上、柄物には使用できないものも・・・。作業を行う前によく確認が必要です。
睡眠のプロおすすめの最強カビ対策。それはプロの布団クリーニング!
布団・マットレスの乾かし方から布団の煮沸消毒まで、加賀さんは寝具のさまざまなお手入れ知識をお持ちです。
そんな加賀さんが最もおすすめしている最強のカビ対策は、プロの布団クリーニングを頼ること。
「クリーンな睡眠環境を維持するために、1~2年に1回は布団類をクリーニングするのが理想です。とにかくかさばる、大物の寝具に合った洗浄・乾燥機器を持っているのは、やはり業者さん。丸洗いやカビ取り、使っていない布団の保管などさまざまな付加サービスもありますので、ぜひ一度利用してみてほしいと思います」(加賀さん)
カビが生えてしまった布団は捨ててしまう・・・という人も多い中、見直されているプロの布団クリーニング。
1枚5,000円前後でクリーニングができるため、愛着がある布団などはぜひとも検討してみましょう。
おわりに
睡眠に占める時間は、1日の1/3。つまり私たちは、人生の1/3を、布団やマットレスの上で過ごしていることになります。
ふっくらふかふかの布団に大の字に寝転がると、何ともいえない気持ちよさがありますね。見えない部分のカビや汚れまでディープに洗い上げてくれる布団クリーニングで、人生の質をアップしたいものですね。
マットレスの頑固な汚れなら、プロに依頼するのもおすすめ!
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東京ガスのハウスクリーニングは、自社研修を受けたプロが、汗やおねしょのシミ、ベッドマットレス内部に溜まったアレルギーの原因物質(カビやダニの死骸、花粉)を取り除いて、キレイにクリーニング。
汚れやホコリ、ハウスダストと一緒に気になるニオイも。まとめてリフレッシュします。