おいしいおにぎりを握る5つのコツ
形はしっかりしているのに、口の中でほろっと崩れる。そんなおいしいおにぎりはどうすれば握れるのでしょうか。「銀座米料亭 八代目儀兵衛」の料理人であり、五ツ星お米マイスターの菊地さんに教えていただきました。
1. 水加減は分量通り
2. 炊き上がったご飯を切り混ぜる
3. ほどよい塩加減
4. 熱いうちに握る
5. 空気を含ませながら角を出す
この5つのコツをつかむと、おいしいおにぎりに。さっそく菊地さんに、それぞれのポイントを教えていただきましょう。
【おにぎりのコツ1】水加減は分量通りでOK! さらに粘りの少ないお米を選ぶと◎
「おにぎりを握るときはよく“水加減を控えめにして炊く”といわれますね。でも、水加減の少ないお米は硬く、米本来のおいしさが楽しめませんし、パサついた食感になってしまいます。分量通りの水加減で炊いてOKです」(菊地さん)
一般的な水加減は、米1合(150g)に対して、水190g。あくまでこの基本を守った上で、こだわるならば、お米を粘りの少ない銘柄にするとよいそう。
「もっちりとやわらかいお米は、特に冷えたときにお米同士がくっついて喉ごしが悪くなってしまいます。粘りの少ないあっさりとした食味のお米が、おにぎりには向いています」(菊地さん)
菊地さんが腕を振るう「銀座米料亭 八代目儀兵衛」は、その日その時期に最もおいしいお米数種類をブレンドして、ご飯のおいしさと奥深さをとことん追求して楽しむ料亭。
お米の銘柄にこだわるのも、頷けます。
【おにぎりのコツ2】炊き上がったご飯を切り混ぜる
ご飯が炊けて蒸らしが終わったら、炊飯器や鍋の蓋を開けてご飯全体を切るように混ぜます。
「しゃもじをご飯の横から入れて、サッ、サッ、サッと、手早くご飯を切っていきます。ご飯の粒をつぶさないよう、軽い力でお米とお米の間に空気を入れていきましょう」(菊地さん)
ご飯を切り混ぜるのは、釜やご飯の中の水蒸気を逃がして「釜がえり」を防ぐため。「釜がえり」とは、蓋までの空間にたまった水蒸気がご飯にポトポト落ちてしまうことですが、これがご飯をベチョッとした仕上がりにしてしまう大敵なのだそう。
「おにぎりを作るときに、炊き立てのご飯をバットや大き目の皿にあける人もいますね。おそらくこれは、水分を飛ばすためにしているのだと思うのですが、そんな手間はかけなくて大丈夫です。ご飯が冷えすぎるとおいしくなくなるので、蓋を開けて釜の中で切り混ぜる程度でOKですよ」(菊地さん)
【おにぎりのコツ3】ほどよい塩加減
おにぎりのほどよい塩加減は、指先を軽く濡らしたあと、指2本または3本の指の腹に軽く塩をつけたくらい。塩自体の味が濃い(しょっぱさが強い)ものは少なめにするなど、好みで加減していきます。
「塩を使うタイミングは、おにぎりを握る前でも握ったあとでもOK。塩は自然になじんでいくので、握ったあとに塩を外側からつけても問題ありません」(菊地さん)
ちなみに菊地さんは「後付け派」。
「濡らした手に塩を広げてからおにぎりを握る人、塩水で握る人などいろいろですが、手水や手塩で台所が汚れてしまうのが気になるんですよね。僕は形を作ったあと、最後に外側に塩をつけるのが好きです。塩を外側につけると、あたたかいうちは塩の粒感が残っていておいしいですし、冷えれば全体にしっとりと塩がなじみます。おにぎりの芯まで塩気が入らなくても、具の塩気が十分あるので問題ありませんよ」(菊地さん)
【おにぎり作りの裏ワザ】炊く時に1%の塩でご飯が締まる!?
菊地さんのおすすめは、ご飯を炊くときから塩を入れること。1合に対して2gほどの塩を入れて炊くと、手水や手塩がいらず、成型しやすいおにぎりができるそうです。
「塩を入れるのは、味つけのためだけでなく、ご飯を“締める”ため。塩の凝固作用で、一粒一粒がコーティングされて口の中でほどけやすくなるともに、おにぎりの形をしっかりキープできます」(菊地さん)
ちなみに、塩を入れて炊いたご飯は、おにぎりとして使い切るのがベター。普通のご飯として食べるには、ちょっと塩気が気になるかもしれません。
【おにぎりのコツ4】熱いうちに頑張って握る!
おにぎりはご飯の熱が冷めないうちに握るのがベスト。アツアツご飯でふんわり握ると、米と米の間にふっくらと空気が入り、冷めたときもご飯同士が詰まりすぎず、ふんわり感を保ちながら形をキープすることができます。
「炊き立てご飯って本当に熱いんですよね。僕らも手が真っ赤になります。でもそこを頑張って握る! 氷を入れた冷水をボウルに用意して、手を冷やしながら握るといいですよ」(菊地さん)
【おにぎり作りの裏ワザ】「茶碗コロコロ」で成型!
ご飯が熱すぎて握れない! というときは「茶碗コロコロ」がおすすめ、と菊地さん。
「茶碗にご飯を入れ、具を入れてご飯をかぶせたあと、茶碗の中でコロコロとご飯を転がしながらざっと丸い形にまとめます。このあと、手に取って三角に仕上げて、塩をまぶして海苔を巻けば完成。当店の料理長のスタイルです(笑)。当店のご飯はオリジナルの土釜(どがま)で炊いたアツアツご飯。とにかく本当に熱いので、茶碗も活用しています」(菊地さん)
プロも使っている「茶碗コロコロ」。ぜひ活用してみてください。
【おにぎりのコツ5】空気を含ませながら角を出す
おにぎりを握るときに大切なのは、ご飯を「握らない」こと。握力を使って強く握ってしまうと、おにぎりの中の空気が抜けてしまうだけでなく、ご飯が練りつぶされてしまい、もっちりした食感になって喉ごしが悪くなります。
「右手が利き手の場合、ご飯を載せる左手をうまく使いましょう。右手は角を出すために直角に曲げて軽く形をつくるだけ、左手の親指の付け根から手首にかけての部分で、おにぎりの中央を押しながら形を整えていきます」(菊地さん)
1、2、3とリズムを取りながら角を出し、美しい三角形に仕上げます。
具を入れるときはご飯の中央に。具をご飯でふわっと巻き込み、右手左手の両方を使って成型すれば、形はくずれないのに口の中でほろっとほどけるおにぎりになります。
おにぎりをラップで握る時のコツと、やりがちなNG行動は?
おにぎりを握るときにラップを使うこともありますね。手荒れが気になる人もラップを使えば気兼ねなくおにぎりが作れます。
「ラップを使って握る際、握ったラップを一度外す人もいると思います。でも、おにぎりとラップがぴったり密着している状態なら、むしろそのままにしておくほうがいいんです」(菊地さん)
ラップとおにぎりの間に空気が入ると、その間に水蒸気がたまってご飯がベチャッとしてしまいます。海苔をつけるなどでラップを一度外すのなら、おにぎりが冷めてしまってからラップに包むのがベストなのだそうです。衛生面が気になる場合には一度外すのではなく、そのまま包んでおきましょう。
おにぎりを冷ますときは「保湿」を心がける
おにぎりを冷ます間に気を付けたいのは、乾燥。
乾いたご飯はパサついて食感が悪くなってしまうため、おにぎりの上から湿らせたクッキングペーパーや濡れ布巾をふんわりかけて、ご飯が乾かないようにしておくことが大切です。
「このとき、乾燥させないようにとラップを使うと、今度は水蒸気が抜けきらずにベチャッとした仕上がりになってしまいますので注意してくださいね」(菊地さん)
「冷めてもおいしいご飯」は鍋や土釜で炊くのがおすすめ
ガスコンロと鍋で炊いたご飯は、冷めてもおいしいのが特徴です。
強火ですばやく炊くことで、高温の水分がお米の芯まで行きわたり、デンプンを十分に糊化させることができます。
しっかりと糊化したご飯は、炊き立てはもちろん冷めた状態でも水分を多く含んで食感を保つため、冷めてもおいしさが損なわれにくいのですね。
「銀座米料亭 八代目儀兵衛」では、米を炊く際、開発に3年をかけたオリジナルの土釜(どがま)を使っています。熱放射率の高い土釜で炊いたご飯は、粒がしゃっきりと立ち、中までふっくらとした炊き上がりが自慢だそうです。
【ガスコンロ】の「自動炊飯」ならスイッチ一つ
最新のガスコンロなら、自動で簡単にご飯が炊けるって、ご存じでしたか?
ガスコンロの「自動炊飯」機能は、ボタン1つで火加減の調節から消火まで全て自動で「かまど炊きのようなご飯」を炊きあげます。※
1合から美味しく炊けて、しかも炊飯時間は3合で約20分程度! (蒸らし時間は除く)
「自動炊飯」機能では、水位目盛りが付いた水加減が簡単な自動炊飯専用鍋などもありますが、ご家庭にあるでフタ付きで深めの金属製のお鍋(アルミ、ステンレス、ホーロー製など)で簡単にご飯を炊くことができます。
土鍋など一部「自動炊飯」機能に対応していない鍋があります。詳しくはコンロの取扱説明書をご確認ください。
目盛りがついていない鍋の場合は、お米の容積の1.2倍の水で炊いてください。水分を多く含んだ新米の場合は1~1.1倍で炊いてくださいね。
その他にも「ガスコンロ」には自動でおまかせの便利な機能がいっぱい!
ガスコンロを使いこなせば、調理グッズをたくさん買いそろえるよりも、時短&上手に料理ができますよ!
(※各機能は搭載されていない機種もあります。各画像はイメージです。専用容器は別売の場合もございます。)
おわりに
「おいしく握るコツさえ押さえておけば、塩を付けるタイミングも、具の選び方も、海苔の大きさも巻き方も、自由です。おにぎりには正解の形ってものはないんですよ」と、教えてくださった菊地さん。ご飯をベチャッとさせないこと、硬く握りすぎないこと、乾燥させないこと。この3つを守れば、あとは自由に楽しんでOK! というお米のプロの言葉に、おにぎりへのハードルがぐっと下がった気がしました。ガスコンロでおいしいご飯を炊いて、おにぎりを自由に楽しみたいですね。