<きしめんとほうとうの違い>ゆかりの地や由来とは?
まず、「きしめん」と「ほうとう」のゆかりの地をご紹介します。
ご存知の方も多いかもしれませんが、おさらいしておきましょう。
きしめん
ゆかりの地は愛知県の名古屋市。
名前の由来は諸説あり、「キジの肉を入れたことから『きじめん』と呼ばれたことがはじまり」とか、「紀州で作った『紀州麺』がなまった」などと言われているそうです。
ほうとう
「ほうとう」は、山梨県を中心としたエリアの郷土料理です。
山梨県は山が多いため稲作が難しく、米の代わりに麦を栽培して主食にしていました。ほうとうは、麦の食文化から発展したと考えられています。戦国武将、武田信玄が当時貴重だった米に代わる陣中食として、甲州に出入りした高僧から伝承され、戦中食として用いられたとも言われています。
「ほうとう」の名前の由来はいつくかあり、うどん粉を水でねって切ったもののことを表した「餺飥(はくたく)」からきているという説や、武田信玄が自分の刀で食材を切ったことから「宝刀→ほうとう」と名付けられたという説があります。
きしめんとほうとうの違い<麺の製造過程>
次に、麺の製造過程の違いを見てみましょう。
きしめん
きしめんの作り方はうどんとほぼ同じ工程で、小麦粉に塩と水を加えてこねたものを延し、細長く切って麺にします。
麺は平たく薄い帯状で、日本農林規格(JAS)によると、乾麺のきしめんの場合「幅4.5mm以上、厚さ2.0mm未満の帯状のもの」とされています。
きしめんなど、名古屋地域のうどんは麺が硬めという特徴があるそうです。これは、製造過程で麺に含ませる塩が多めだからと言われています。
また、麺を打つ際に使う棒にも特徴があります。きしめんを打つ際に使う麺棒は、直径1.2mm〜1.4cm。通常のうどんの麺棒(直径2〜3cm)よりも細めの麺棒を使います。
これは、硬めな生地を伸ばすには、細い麺棒の方が適しているから。細い麺棒を使用することで、力がかかりやすく、生地を早く薄く伸ばせるそうです。
ほうとう
ほうとうの製造過程を見てみましょう。
「ほうとう」は、薄くて幅が広めな「きしめん」よりもさらに薄く、幅が広いものが多いようですが、特に規定はないそうです。
ほうとうは通常のうどん等と異なり、製造過程で麺に塩分を混ぜません。また、うどんやきしめんは、麺を打った後に寝かせて、幾重にも重ねて切っていきますが、ほうとうは麺を打ったら薄く伸ばしてすぐ切ります。
塩分を混ぜず、生地を寝かせないため、ほうとうはグルテンの形成が弱く、コシが弱いもちもちした食感になるのが特徴です。
麺は生のまま鍋(汁)に入れるため、打ち粉が一緒に入り汁にとろみがつきます。また、煮込むうちに麺のデンプンが汁に溶け出し、更にとろみがつきます。具材の旨みや出汁が染み込んだとろみのある汁が、ほうとうの美味しさの秘訣です。
きしめんとほうとうの違い<味付け>
それでは、きしめんとほうとうの味付けの違いを見てみましょう。
きしめん
きしめんは、合わせる汁も特徴的です。
まず、出汁は主に「ムロアジ」という魚の節を使います。濃い目の出汁が取れるのが特徴です。
この出汁に、「たまり」と呼ばれる調味料を加えます。
通常醤油は大豆と麦を半々混ぜて作られますが、「たまり」はほぼ大豆のみで作られ、うま味成分を通常の醤油より多く含んでいるので、濃厚な味付けに仕上がるそう。
きしめんは、麺幅が広く汁がからみにくいため、濃いめの汁を合わせるようになったと言われています。
ほうとう
ほうとうの出汁は主に煮干しで取り、味噌を加えて味付けをします。
そこに、野菜を中心とした具材を加えて煮込むことで、麺から出るとろみが加わり、味に深みが増します。
使う野菜に決まりはありませんが、カボチャや根菜、きのこ類を多く使います。カボチャは煮崩したものが美味であるとされているからです。
おわりに
ほうとうときしめん、幅広で平べったい麺という点では似ていますが、麺の製造過程や味付けには大きな違いがありました。
スーパーなどで麺を見かけたら、ぜひ一度チャレンジしてみてくださいね。