【無洗米と普通の白米の違い】そもそも無洗米って何?
無洗米とは研ぎ洗いする必要のないお米のことです。便利なものですが、そもそも普通の白米とどう違うのでしょうか? なぜ研ぐ必要がないのでしょうか。その製法とは? 老舗米問屋「株式会社八代目儀兵衛」の五ツ星お米マイスター、マツバラさんに詳しく伺いました。
ーーーそもそも無洗米とは何なのでしょうか?
(マツバラさん)お米の籾殻(もみがら)を取り除いたものが玄米、精米して表面の糠(ぬか)や胚芽を取り除いたものが白米です。ただ、通常の精米では、表面に粘着性の強い糠が残っています。これは肌糠(はだぬか)と呼ばれ、お米を乾燥や嫌なニオイから守ってくれます。
「お米を研ぐ」ことで、この肌糠を洗い流します。完全に糠を取り除くことで、糠特有のニオイもしなくなりますし、炊いた時によりふっくらとして甘みが増します。
無洗米の場合、さらに加工を加えてこの肌糠を取り除いているため、ご飯を炊く前に米を研ぐ必要がないのです。
ーーー無洗米も白米も、玄米から糠を取り除いたものなんですね。無洗米の場合、どうやって肌糠まで取り除いているのでしょうか?
(マツバラさん)白米では一般的な精米機を使い、米同士をこすり合わせて摩擦の力で糠を取り除きます。無洗米では残った肌糠まで取り除きますが、その製法はさまざまです。ブラシで肌糠をこすり落とす「乾燥式」、水の力で落とす「水洗式」、タピオカ粉を使って吸着させる方式、ステンレスの筒の中で白米を高速回転させて吸着させる「BG精米製法」など、数多くの製法があります。
ーーーなるほど、「無洗米の加工過程で、化学物質を使っているのではないか」という不安の声も耳にしますが、すべて安全性に配慮した方式なんですね。
(マツバラさん)そうですね。弊社ではお米への負荷が低いと考え、乾燥式を取り入れています。方式によって肌糠が若干残りやすかったり、劣化しやすかったりと、それぞれメリットやデメリットがあります。
無洗米と白米、栄養価はどう違う?
ーーー無洗米と白米、栄養価に違いはあるのでしょうか?
(マツバラさん)お米の主成分である炭水化物やタンパク質は大差ないかと思います。ただビタミンなどの水溶性の栄養素は、水を使わない製法の無洗米の方により多く残っているかもしれませんね。
白く濁った水は流す!? 無洗米を美味しく炊くための注意点とは?
ーーー「無洗米はパサパサして美味しくない」という声も聞きます。無洗米を調理する時の注意点があるのでしょうか?
「無洗米を美味しく食べるコツ1」冷たい水でサッと洗う
(マツバラさん)無洗米に加工する際、完全に肌糠を取り除こうとすると、お米に負荷をかけることになるため、「わずかな肌糠は残っている」と考えた方が良いでしょう。わずかな量の糠なので研ぐ必要はありませんが、一度水を入れて軽く混ぜ、白く濁った水は捨てると良いですよ。その際、水の温度が高めだと割れやすいので、冷たい水でサッと洗うのがポイントです。
「無洗米を美味しく食べるコツ2」密閉容器に入れ冷蔵庫で保存し、なるべく早めに食べ切る
(マツバラさん)無洗米は乾燥から守る役割の肌糠を取り除いているため、「乾燥しやすく、嫌なニオイを吸着しやすい」という特徴があります。また乾燥すると割れやすくなり、亀裂が走ったり、粒が小さく欠けてしまうことも。普通の白米より早めに食べ切ると良いでしょう。
お米に賞味期限はありませんが、精米から時間が経ったものは酸化して臭いが気になるようになったり、水分が抜けて食感が悪くなったりします。弊社で買ってくださったお客さまには「精米してから30~45日までに食べ切るのが目安」とお伝えしています。
また、お米をタッパーなどの密閉容器に入れた上で、湿度と温度が安定した冷蔵庫で保存するのもポイント。無洗米の場合は、さらに早めに食べ切る事を意識された方が良いかもしれません。
「無洗米を美味しく食べるコツ3」しっかり浸水する
(マツバラさん)「無洗米は浸水はいらない」とお考えのお客さまも多いのですが、浸水は必要です(※)。浸水時間は普通のお米の同じくらいで構いません。
※なお、炊飯器の無洗米モードで炊く場合は浸水は不要です。鍋でご飯を炊く場合や、炊飯器の通常(早炊き)モードで炊飯する場合には浸水してください。
おわりに
普通の白米と無洗米の違いや美味しく食べるコツをご紹介しました。
少しお値段が高めですが、忙しい時や冬場に冷たい水でお米を研ぎたくない時期には便利ですね。必要に応じて、無洗米を上手に取り入れてみてはいかがでしょうか。
参考:「全国無洗米協会」無洗米Q&A
参考:農畜産業振興機構「タピオカでん粉の無洗米製造装置への利用」