布団はなぜ干さないといけないの?
よく晴れた日に干した布団は、ふっくらと厚みや柔らかさが増して、ほんのりお日様のいいにおい。
さらりと乾いたふかふかの布団に寝そべると、気持ちよく眠れますね。
「なぜ布団を干すのか?」という基本的な部分から、上級睡眠健康指導士の加賀照虎(以下、加賀さん)さんにお聞きしました。
【上級睡眠健康指導士とは?】
一般社団法人日本睡眠教育機構が養成し認定する資格。睡眠に関する正しい睡眠知識を一般の社会人に伝え、日本国民の健康増進に貢献することを目的に、医師や研究者など睡眠の専門家によって設立されています。
【布団を干す効果】布団を干すとカビ・ダニ予防になる
「布団は寝ている間にかく汗をたくさん吸っています。よくコップ1杯分などといわれますが、一晩寝るだけでかなりの量の水分が布団の側生地や中綿に吸収されます。こまめに干して水分を飛ばさないと、布団にカビやダニが繁殖する原因になります」(加賀さん)
カビ・ダニは快眠を損なうだけでなく、アレルギーを引き起こす原因になります。布団を干すことは健康にもつながるのですね。
【天日干しの新常識】布団を干すのに「日光」は重要ではない!?
よく晴れた日は布団を干したくなりますが、加賀さんによると「日光」は布団にとって重要でないばかりか、マイナスになることもあるそう。
「日光に当てると消毒になる、ダニ退治ができるというイメージを持っている方が多いようです。残念ながら、日光程度の紫外線や熱では、消毒やダニ退治は難しいのです」(加賀さん)
ダニは50℃以上の熱を20~30分以上当て続けないと、死滅しないそう。
「真夏の炎天下でも、日光にあてるだけで布団を50℃以上の高温にするのは難しいです。布団は分厚いので、表面に強い日光を当てても、ダニは涼しい裏側に逃げてしまいます」(加賀さん)
それよりも、紫外線で布団の側生地が傷むことのほうがマイナスになる、と加賀さん。
「紫外線は側生地の退色や黄ばみ、ゴワつきの原因になります。繊維生地のシルクやレーヨンだけでなく、綿やポリエステルも紫外線のダメージを受けてしまうんですよ。天日干しよりは日陰干しのほうが布団にやさしく、長持ちします」(加賀さん)
布団に天日干しはNG。これには驚きです!
布団を干す際に重要なのは、「湿度が低いこと」と「風通し」
日光が布団にNGということは、晴れた日には布団を干さない方がいいのでしょうか?
「いえいえ、晴れた日が布団を干すのに適しているのは、間違いありません。布団を干す目的は、布団の中綿を乾かすこと。ですから、湿度が低いことや風通しが重要です。よく晴れた日は、曇りの日よりも湿度が低いので、布団がよく乾くんです」(加賀さん)
加賀さんのおすすめは、晴れた日に日陰干しをすることです。
天日でないと干せない場合は、布団干し袋を使うのがおすすめ!
日陰干しがおすすめといっても、日当たりのいいマンションのベランダなどは、そもそも日陰がない場合があります。
「そんなときは『布団干し袋』を活用してみてください」(加賀さん)
布団干し袋とは、布団を干す際、布団をぐるりと包み込んで側生地などを守ってくれる袋状のカバーのこと。
「布団干し袋を使うとシーツや側生地の日焼け防止になりますし、花粉・大気中の浮遊物、物干し竿や壁の汚れなどが布団に付着しづらくなります。黒色のものは熱をよく吸収して袋内の温度が上がりやすいため、真夏であればダニ退治の効果も期待できます」(加賀さん)
布団干し袋に入れて干した後は、布団に掃除機をかけてダニの死骸を吸い取っておくのも大事なポイントだそうです。
布団干し袋がない場合はシーツをかけたまま干す
布団干し袋がない場合は、シーツをかけたまま干して、その後シーツを洗濯しましょう。シーツは紫外線で傷みが早くなりますが、布団本体へのダメージは減らすことができます。
【布団の上手な干し方1】掛布団と敷布団で干し方を変える
布団干しは意外に重労働。ポイントを押さえて効率よく行いたいものです。
布団を干す頻度や干しておく時間は、布団によって異なります。
●掛布団
1~2週間に1度をめやすに2時間程度の日陰干しを。
綿布団は水分を吸いやすいので、週に1度を目安にしましょう。
体に接する面に風が当たるように干すと◎。
●敷布団
綿布団は1週間に2~3度、表と裏をそれぞれ2時間以上の日陰干しを。
ポリエステルや羊毛は乾きが速いので、週1度程度でもOK。
掛布団とは異なり、両面をそれぞれ風に当てるのがポイントです。
「掛布団よりも敷布団のほうが、より多く寝汗を吸います。また、冬場は床との温度差によって、敷布団の下面が結露することもあります。布団は掛布団よりも敷布団のほうを頻繁に干してくださいね」(加賀さん)
布団たたきはかえってダニを増やす!?
布団を干すときに、叩いてホコリやダニを落としていませんか?
「布団叩きの効果を測定した実験によると、布団を叩くことで布団の奥深くに隠れていたダニが叩き出されて舞い上がり、表面に付着することなどから、布団表面のダニの糞とダニの数が増えることが確認されています」(加賀さん)
布団を叩くと舞い上がったダニやダニの死骸・糞などを吸引してしまう恐れも・・・。布団を強く叩くと中の「わた」がちぎれたり、側生地を傷めることにもなります。
「布団叩きは百害あって一利なしです。今後は控えるようにしましょう」(加賀さん)
【布団の上手な干し方2】11時から17時に干すのがベスト。朝や夕方は避けて
布団を干すなら1日の中でも湿度の低い11~17時の間がベスト。
「特に湿度が高い夏場は、17時以降になると布団が湿気を吸い初めてしまいます。早めに取り込みましょう」(加賀さん)
前日の深夜に雨が降った場合は、たとえ晴れていても湿度が高いことも。外干しは控えましょう。
【布団の上手な干し方3】室内に干すときは「風」「湿度」「換気」に注意
バルコニーがない、窓が小さく布団を外に出すことができないなど、室内で布団を干すときはどんなことに気を付けるといいのでしょう。
ポイントは「風を当てる」ことだそう。
「汗がついた部分を狙って扇風機の風を当てるといいですね。物干し竿のようなものに布団をかけられるとベストです。床などに置いてしまうと、接地した面の水分が逃げていきません」(加賀さん)
布団をかける場所がない場合、掛布団なら肌にふれた面を表にしてソファなどの上に広げ、扇風機を回すだけでもOKだそう。
敷布団の場合は裏と表の両面に風を当てる必要があります。敷布団の下にすのこなどを敷いて、布団の下面にも風が当たるようにする必要がありそうですね。
「湿度にも気を付けることも大事です。洗濯物を室内に干していたり、加湿器を使っているなど、湿度が高い部屋に布団を干してしまうと、せっかく手間と時間をかけても布団を干していることにはなりません。布団を干すときは必ず換気をして部屋の中の湿気を外に逃がすことも大事です」(加賀さん)
布団を干せないときはめくっておく
布団を干すこと自体が難しい場合は、起きた後に布団をめくっておくだけでも違います、と加賀さん。
「身体が接する内側が空気に触れるようにめくっておくと、布団の水分がより早く抜けていきます。その際、寝室の窓はなるべく開けておきましょうね」(加賀さん)
浴室暖房乾燥機も活用して、サラッと乾いた布団で眠りましょう
干した布団に敷くシーツは洗って乾いたものを使用したいですね。大物のシーツは浴室に干すのもオススメです。
浴室なら日中あまり使わないので、大物を干しても邪魔にならず、換気扇もあるため、布団から蒸散した水分が部屋の中に充満することもありません。さらに浴室暖房乾燥機があれば温風が出て短時間で乾きます。
浴室暖房乾燥機の「乾燥」モードを活用すれば、短時間で効率よくシーツなどを干すことができますよ。
おわりに
布団を干すといえば天日干しというイメージがありましたが、直射日光は布団にはNG。「布団の快適さに日光はあまり関係がない」という、目からウロコのお話しでした。布団干しの新常識、次回の布団干しから、さっそく取り入れたいですね。