トイレの蓋は、椅子としての用途があった?!
トイレの蓋の誕生は、現在のような水洗の設備が無かった時代に遡ります。当時はニオイを防いだり、見た目を良くするためにトイレの蓋が必要でした。
また、欧米の住宅では、トイレ・お風呂・洗面台の3つの設備を「バスルーム」にまとめて設置する間取りが一般的です。トイレの蓋は、洗面所の椅子代わりに座って化粧や身支度をするのに使われてきたそうです。
現在の日本の住宅の間取りでは、トイレと洗面所は別室に設置されるのが主流になっています。別室であればトイレの蓋を椅子代わりに必要はありませんね。
また、そもそも、日本では座れる設計にはなっていないそうです。座ると壊れてしまうリスクがあるので、椅子代わりに使ったりトイレの蓋を背もたれにして、寄っかかったりするのはNGです。
それでは、なぜ今もなお日本のトイレに蓋がついているのでしょうか? 大手住宅設備メーカーTOTO株式会社さん(以下、TOTOさん)に伺いました。
ちゃんと知りたい! トイレの蓋の意味とは?
TOTOさんによると、トイレの蓋には以下の3つの意味があるそうです。
1. 物が便器の中へ落ちることを防ぐ
2. デザイン性を向上する
3. 温水便座の断熱性を向上する
それぞれ詳しくみていきましょう。
【トイレの蓋の意味1】物が便器の中へ落ちることを防ぐ
トイレの室内には掃除道具やトイレットペーパーなどの必需品を収納しているお宅も多いのではないでしょうか。
トイレの蓋を閉めておけば、地震が起きた時や、棚から物を落とした時などに、便器の中へ落ちてしまうことを防げますね。
【トイレの蓋の意味2】 デザイン性を向上する
トイレのデザインは年々進化しています。和式便器から洋式便器がスタンダードになり、最近はタンクレス設置の割合が増えています。タンクレストイレとは、便器の後ろ側のタンクがなく、水道から直接水を流す仕組みです。そのスッキリしたデザインと省スペースなことから人気を博しています。
このように、トイレの本体と蓋を合わせて設計することで、優れたデザイン性を実現しているのですね。
【トイレの蓋の意味3】温水便座の断熱性を向上する
最近では温水便座が家庭にも広く普及してきましたね。トイレの蓋には、暖房便座の断熱性を向上する役割もあります。
トイレの蓋を閉めておくと温水便座の放熱を防ぎます。使ってない時は、トイレの蓋を閉めることで、1年間で約1,336円程度節約になるそうですよ。※フタを閉めた場合と、開けっ放しの場合との比較(温水洗浄便座の場合)
出典:東京ガス「ウルトラ省エネブック」
トイレの蓋を閉めることは、感染症予防につながる?
トイレの蓋を閉めてから流すことで、新型コロナウィルスや感染性胃腸炎、食中毒などの感染を防ぐことは可能なのでしょうか? トイレの蓋を閉めることで、汚物を流す水の飛散を軽減し、ウイルス巻き上がりを防ぐのではないかと期待され、ネットでも話題になっているようです。
TOTOさんによると、汚物を流す際の水の飛散を軽減する効果はあるものの、ウィルスを防ぐ効果についての知見はお持ちでないそう。
トイレの蓋の歴史や現在の役割(落下防止、デザイン性、温水便座の断熱性)を考えると、ウィルス防止の役割を期待されるようになったのはごく最近の話。今後、こうした効果についても研究が進んでいくのかもしれませんね。
ちなみに、厚生労働省では近年、トイレの蓋を閉めてから水で流すことを推奨しています。気になる方は、トイレの蓋を閉めてから流すのを習慣にしても良いですね。
なお、厚生労働省によると、「新型コロナウイルスを想定した新しい生活様式の実践例」として他にも以下のような方法が推奨されていました。ぜひご参考になさってみてくださいね。
・不特定多数が接触する場所は、清拭消毒を行う
・ペーパータオルを設置するか、個人用にタオルを準備する
・便器内は通常の清掃でよい
おわりに
トイレの蓋には、色々な意味があるんですね。また、温水便座を使用している方は、トイレの蓋を閉めることで節電にも繋がるので、ぜひ試してみてください。
出典:厚生労働省「新型コロナウイルスを想定した新しい生活様式の実践例」