【うすくち醤油】とはどんな醤油?

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「うすくち醤油」とは関西で生まれた色の淡い醤油です。色が淡く、素材そのものの色合いを生かす効果があります。「淡口(うすくち)醤油」が正しい記載ですが、「薄口(うすくち)醤油」と記載されることもあります。
通常の醤油(濃口醤油)より「色が薄い」醤油で、濃口醤油よりも塩分が高く、醤油の香りが控えめになっています。
発祥は兵庫県たつの市。江戸時代初期の寛文年間に製造業者が醤油もろみに甘酒を添加して造ったといわれてます。色が淡く香りが良いと関西料理で重宝されてきました。
「うすくち醤油の方が塩分が高い!」というのは本当?

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しょうゆ情報センターによると、通常の濃口醤油(こいくちしょうゆ)の塩分は約16%に対し、うすくち醤油は約18%と少し高めになっています。
少量でもしっかり味がつくということを念頭において、味見をしながら料理するとよいですね。
減塩意識が高まる中、塩分控えめのうすくち醤油も市販されています。塩分が気になる方は購入前に種類を確認しておきましょう。
うすくち醤油は、味や塩分が薄いという意味の「うすくち」ではないということを覚えておきたいですね。
うすくち醤油は普通の醤油(濃口醤油)とどう違う?

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うすくち醤油と濃口醤油は、原料、製法、賞味期限、使用場面が異なります。
原料
濃口醤油の主な原料は大豆、小麦、食塩です。大豆はうまみのもと、小麦は香りや甘みのもとになります。
うすくち醤油は、濃口醤油の材料にさらに、「甘酒」「米」を加えています。
製法
色を薄くするために、発酵・熟成中の温度を低めにし、醸造時間を短くして造られます。
賞味期限
醤油に含まれるアミノ酸と糖は化学変化によってメラノイジンという物質を造り出し、酸化すると色が濃くなる性質があります。うすくち醤油の場合も同様で酸化すると、色が濃くなってしまいます。うすくち醤油では「色の薄さ」が大切であるため、濃口醤油より開封前の賞味期限が6カ月程短く設定されていることが多いようです。
開封後は温度が低く日の当たらない場所に保存し、1カ月を目安に使い切りましょう。使用頻度が少ない場合は、量の少ないものを購入するのが良いでしょう。
使用場面
うすくち醤油は京料理など関西で主に使用されています。素材の色や持ち味、香りを活かして仕上げたい時に使用されています。たけのこの煮物やお吸い物、関西風のおでんなどには不可欠な存在です。
一方、濃口醤油は全国的に使われています。豚の角煮やぶり大根など、青魚や肉の臭みをおさえてコクを出したい時によく使われています。
うすくち醤油の製法

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醤油の伝統的な製造方法は本醸造方式といい、蒸した大豆と炒った小麦を混ぜて、種麹を加え、麹を造り、食塩水と一緒にタンクに入れて、もろみを造って数カ月熟成させます。
うすくち醤油の場合も基本的な製法は同じですが、塩分を多めに配合する上、もろみの段階で甘酒を加えます。甘酒を加えることで味がまろやかに仕上がります。
上述した通り、うすくち醤油の方が濃口醤油に比べて塩分が高めです。
うすくち醤油を使う時の注意点とは? 濃口醤油で代用できる?

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全国的によく使われる濃口醤油と比べると、うすくち醤油を使い慣れない人もいるでしょう。使用する際は以下のような注意が必要です。
【注意点:1】色の薄さに惑わされず適切な量で味付けをする
うすくち醤油を料理に使う時は「色=味の濃さ」ではないということを頭に入れておきましょう。濃口醤油の見た目に慣れていると足りない気になってしまいがち。しっかり味見をして、適切な塩加減にするよう心がけましょう。
【注意点:2】うすくち醤油は濃口醤油を薄めても代用できない
濃口醤油を薄めてもうすくち醤油にならず、代用できません。濃口醤油を薄めて使うと「うまみの足りない水っぽい味」になり、そこに塩分を足しても濃口醤油の強めの香りが残ります。レシピに「うすくち醤油」と指定がある場合は指示通りにしましょう。
【注意点:3】レシピに濃口醤油と記載されている場合にうすくち醤油で代用しない
濃口醤油の指定があるのに、うすくち醤油を使用すると味が変わってしまいます。レシピの調味料に「醤油」と表記がある場合、ほとんどが「濃口醤油」を指します。
その場合、うすくち醤油を使用すると、塩分量の違いからしょっぱく仕上がってしまうことも。どちらを指しているのか確認しましょう。
知っておきたいうすくち醤油の豆知識

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うすくちは薄口、淡口、どっち?
「うすくち醤油」は、漢字でどう書くのでしょうか? 薄口醤油という漢字が浮かんできますが、実は「淡口醤油」という漢字を使用します。
うすくちを「薄口」と表記すると、「濃口」に対して「味・塩分が薄い」と誤解を与えかねないため、醤油業界では古くから「色が淡い」という意味合いを込め「淡口」という文字を使っているのだそう。
ただ、商品には「うすくち醤油」とひらがなで記載されていることがほとんどなので、お店で探す際は「うすくち醤油」か「淡口醤油」を探してみてください。
うすくち醤油が使用される割合は?

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出典:しょうゆ情報センターのデータ(出荷数量の推移2023年)を元にウチコト編集部にてグラフ作成
関西方面で人気のうすくち醤油。全国的にみると、どれくらいの割合で使用されているのでしょうか。
しょうゆ情報センターの統計データによると、醤油全体の2023年の出荷数量の中でうすくち醤油は約11.4%。出荷数量1位の濃口醤油のシェア、約84.9%に次ぐシェアです。その他はたまり醤油は約2.1%、さいしこみ醤油は約0.9%、しろ醤油が約0.7%と、濃口醤油とうすくち醤油が圧倒的なシェアを誇ることがわかります。
うすくち醤油と白醤油はどう違う?

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うすくち醤油よりさらに淡い色合いが特徴の白醤油。うすくち醤油が兵庫県たつの市生まれなのに対し、白醤油の発祥は愛知県碧南市。
主な原料は小麦で、大豆はごくわずかに使用されています。うすくち醤油では大豆と小麦がほぼ同量で使用されるので、配合は大きく異なることがわかります。また、大豆は皮をむき、小麦も脱皮して使用されることで、美しい金色の色合いに仕上げています。
うすくち醤油を使ったレシピ
うすくち醤油のまろやかで上品な甘みとうまみ、フルーティな香りは、いろいろな料理に使えます。琥珀色の鮮やかな色合いは料理をしていて楽しくなりますよ。
ウチコトでもうすくち醤油を使ったプロのレシピを公開しています。うすくち醤油を買ったけど使いきれない・・・そんな時はぜひプロのレシピをご確認ください。

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おわりに
「うすくち醤油」とは通常の濃口醤油に比べ「色と香りはうすいけれど、塩分濃度は高い」醤油でした。
どんな醤油かを知ると、レシピの調味料欄に「うすくち醤油」の記載があっても迷わず調理できそうです。使う頻度は多くないかもしれませんが、濃口醤油と使い分けできると、料理の幅が広がりそうですね。
参考:兵庫県「兵庫県の地場産業の紹介 > 醤油」
https://web.pref.hyogo.lg.jp/sr09/jibasan/05.html