鋳物鍋は、一度あたたまると熱をじんわりと保持してくれるので、煮込み料理には最適。
鋳物というのは、どろどろに溶かし込んだ金属を、型に流しこみ成型したもの。中までみっちり金属ですから、木で言えば無垢。それだけしっかりと熱も保持し、耐久性も高いのです。
ルクルーゼ、シャスール、ストゥブ。いろんなブランドが登場していて、そのまま食卓に出せるデザインも人気です。
その鋳物鍋に「第2世代」が登場しています。それがアルミ鋳物鍋。アルミ、というと軽くて薄くて、というイメージもあるかと思いますが、鋳物になればそれなりの厚みに存在感。けれども持ち上げると「あれっ」って思うほど軽いのです。さすがアルミ!
クッキングツールの新作発表会でも、今年はこのアルミ鍋が勢揃いしていました。
日本製、輸入物とありますが、私が面白いなとおもったのはスペインの「キャスティ」。
実は400年前から教会建築のパーツ、鐘、蝋燭スタンドを製造してきた会社なのです。
余談ですが、鋳物はヨーロッパには独自の文化があります。このキャスティに限らず、教会建築の技術が現在のプロダクトに発展しているヨーロッパのブランドは意外と多いのです。
イタリアなどでも、カトラリーなどの鋳造製品をつくっている会社には、もともと教会の装飾部品の工房だったりするところもあります。北欧の建築家、アルネ・ヤコブセンのデザインによる水栓が知られるデンマークのボラ社なども、もとは教会の燭台をつくっていた工房でした。
さて、キャスティの面白いところは鋳物の本体に、現代的な技術を組み合わせたことにあります。それがふたのガラスと、フチと取っ手のシリコン。
アルミだから鉄の鋳物に比べ、鍋のふちを厚くしても重くなりません。その厚いふちに吸い付くよう密着するのが、シリコンリッドです。シリコンはゴムと混同されがちですが、200℃近い熱に耐える、密着性のある鉱物素材。熱い鍋に使っても大丈夫なのです。
熱伝導のいいアルミは、直火との相性も抜群です。炎の熱を効率よく吸い上げ、食材を加熱。その熱々の蒸気はシリコンでしっかり密閉されます。しっとり熱の通る様子が、ガラスふた越しに見えて、食欲をそそります。意外とこのふたあってこその、鍋だと思うのです。
アルミ鋳物の保温製→シリコンの密着性で蒸気や熱を密封→その様子がガラスの蓋で見える。
この3段仕掛けが、食材の美味しさをじっくり引き出してくれるように思えます。ハンドルのオレンジ色は現代のスペインデザインらしい、元気さを感じさせます。
先日、料理研究家の枝元なほみさんがこのお鍋で料理を実演していましたが、おいしかったのがすき焼き! リボン状に薄く削った大根を、牛こま肉と調味料と蒸し煮にしただけなのですが、あっというまに野菜に火が通り、牛脂からじんわりとしみ出す味を吸って、最後は卵でとじてもふんわり。パエリアなど、お米料理も得意です。
フタ以外はそのままオーブンに入れてもオッケー。
寒さがぐっと厳しくなる季節、一台あると便利そうですね。
取材:ワールドクリエイト「キャスティ」