なぜ肉は硬いのか? 硬い肉の特徴を知る

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肉の硬さは部位によって異なります。硬い部位には2種類あり、筋繊維の多い部位と脂肪が少ない部位があります。脂肪が少ない部位は水分が抜けパサつきやすい特徴があり、火を通すと硬く感じます。
筋繊維の多い部位
豚・牛の肩、モモ、スネなど、運動量が多い部位は筋繊維が発達し、筋繊維やそれらを束ねている結合組織(コラーゲン)の量が多くなります。これらの部位は、じっくり煮込むことでコラーゲンがゼラチンに変わり、トロトロの柔らかさが生まれます。
脂肪が少ない部位
脂肪の多い部位は加熱時に脂身が溶け出すことで肉の内部に水分を閉じ込められ、ジューシーな食感を保ちます。牛ヒレ肉や豚ヒレ肉、鶏むね肉などは筋繊維は少ないものの、脂肪も少ないため、加熱すると水分が抜けやすく、パサつきや硬さを感じやすくなります。
肉の厚みのバラつきも硬さの原因に

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肉は加熱すると、中のタンパク質が変性し、水分を絞り出すように収縮します。そのため、肉の温度が上がりすぎると、水分が抜けてパサつき、硬くなってしまいます。
また、肉の厚さにムラがある場合、加熱時に薄い部分だけが先に火が通りすぎて硬くなります。厚みにバラつきがある肉は、厚さをできるだけ均一にして、調理前に室温に戻しておくことが大切です。
硬い肉を柔らかくする3つの方法

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筋繊維の多い部位はじっくり煮込む、脂肪分の少ない部位は厚みを均一にしてサッと火を通す、加熱方法を工夫することがポイントです。では、厚みのあるステーキの場合は、どのような工夫が効果的なのでしょうか。
中村さんによると、肉を柔らかくする方法は3つあるそうです。その内容を詳しくご紹介します。
酵素の力で分解
舞茸、パイナップル、キウイ、ハチミツなど、酵素を含む食材に漬け込みます。米麹、玉ねぎ麹などの野菜麹や塩麹でもOK。これらにはプロテアーゼ酵素が含まれており、筋繊維を分解し肉を柔らかくします。同時に、アミノ酸や糖分のおかげでうまみも増します。
酸やアルカリの力で保水性アップ
肉はpH5.5と弱酸性。筋繊維がキュッと締まっており、水分を保持する力が強くありません。酸性のヨーグルトや日本酒、アルカリ性の重曹に漬け込むことでpHが変化し、タンパク質の荷電状態も変わります。これによってタンパク質分子同士の引きつけ合いが弱まったり、反発が起きたりして、筋繊維がゆるんで保水性が向上します。
物理的な力で硬い繊維を断ち切る
肉をたたいたり、筋切りするなどして筋繊維を断ち切ります。物理的に力を加えることで、硬い繊維を断ち切り、硬さや加熱ムラを防ぎましょう。
【徹底比較実験】ステーキ肉を一番おいしく柔らかくするのはどれか?

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左から、重曹水、舞茸、塩麹、ヨーグルト、たたき、そのまま
硬くなりやすい安価な牛肩ロースステーキ肉を使い、上記のアプローチを組み合わせた5つの下処理を行い、下処理をしない肉と比較する実験を行いました。
硬さがどれくらい変化するのか、ナイフを使わずに箸で切れるかどうかをチェックし、同時に牛肉特有の臭みや風味がどう変化するのかも調べました。
- 実験条件肉:安価な牛肩ロースのステーキ肉(厚み・大きさを均一にカット済み)
- 漬け込み時間: すべて1時間
- 下処理:以下の処理方法を行った後、ラップで包んで1時間置く
- たたき:包丁の背で筋繊維を断ち切るようにたたく
- 重曹水:重曹水に1時間漬け込む(水200ccに対し重曹小さじ1の重曹水)
- ヨーグルト:プレーンヨーグルトに1時間漬け込む
- 舞茸:舞茸を刻み日本酒と合わせて1時間漬け込む(※)
- 塩麹:塩麹ペーストに1時間漬け込む
- 何もなし:何も処理せずにそのまま焼く

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※酵素を含む食材としては、パイナップル、キウイなどいろいろとありますが、安価で手に入りやすい食材として舞茸を選定しました。上の写真の通り、小さく刻んで日本酒とともにまぶします。
焼き方
フライパンで同じ火力・同じ焼き加減(ミディアム)で焼成。塩麹・舞茸・ヨーグルトはキッチンペーパーで軽く拭ってから焼く。他の下処理はそのまま焼く。
どの下処理でも驚くほど柔らかく変化!

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安価な牛肩ロースステーキ肉が下処理によってどれくらい変化したのか、実験の結果をご報告します!
(1)たたき:包丁の背で筋繊維を断ち切るようにたたく

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均一に火が通っており、肉肉しさを強く感じます。普通においしいですが、他の方法と比べると少し臭みが残る印象です。
(2)重曹水:重曹水に1時間漬け込む

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柔らかくジューシーさも感じられる食感になります。臭みも消えてまろやかな味が広がります。不自然な薬品臭もありません。
(3)ヨーグルト:プレーンヨーグルトに1時間漬け込む

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水分がしっかりと保たれ柔らかく、ジューシーな食感です。ヨーグルトの酸味は感じず、肉の臭みが消え、まろやかな風味です。
(4)舞茸:舞茸を刻み日本酒と合わせて1時間漬け込む

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非常に柔らかく、筋繊維がしっかり分解された印象です。風味が豊かですが、舞茸の香りが強く、肉本来の風味はやや控えめになるため、好みが分かれるかもしれません。
(5)塩麹:塩麹ペーストに1時間漬け込む

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柔らかくジューシーで、肉のうまみと麹の優しい甘みが感じられます。うまみと柔らかさのバランスが最も良い印象です。
(6)何もなし:何も処理せずにそのまま焼く

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硬くて箸では切れず、弾力がありかみ切りにくいです。臭みも感じられ、肉本来の硬さや風味が強くでています。

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5つの下処理は、いずれも柔らかく仕上がりました。もしうまみと柔らかさの両立を求めるなら「塩麹漬け」、硬さと臭みが気になるなら「ヨーグルト漬け」または「重曹水」、コスパが気になるなら、「たたき」や「重曹水」がおすすめです。舞茸の風味が好きな方や和風のソースで食べたいなら「舞茸」も良いでしょう。
また、塩麹の代わりに、玉ねぎ麹やしょうが麹など野菜の麹を使うと、さらに複雑な風味と栄養価をプラスできます。
おわりに
ちょっとした下ごしらえを加えるだけで、硬い肉も柔らかくできることがわかりました。ぜひお試しくださいね!


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