「お風呂」ブームじわじわ到来? 現代の入浴習慣と頻度

PIXTA
日本人にとって「お風呂」は、あまりにも身近な日常の一部です。歴史をさかのぼれば、日本では寺院が僧侶や病気の人、貧しい人々に対して、入浴する機会を施すことが「施浴(せよく)」とされ、文化として古くから根付いてきました。
東京ガス都市生活研究所のデータで見る日本人の入浴頻度推移
平均的に、1週間に何回入浴しますか【冬】

東京ガス都市生活研究所「生活定点観測レポート2023」より
東京ガス都市生活研究所の生活定点観測レポート2023によると、1990年に冬、週7回以上入浴する人は全体の57.4%でしたが、徐々に増加し、2002年に71.9%となり、その後は約7割で推移しています。
なお、夏は84.2%の人が毎日入浴しており、季節を問わず毎日入浴することが定着しつつあるようです。
驚きのデータ:毎日湯船に浸かるだけで「将来の病気のリスク」に影響

PIXTA
東京都市大学教授で、温泉療法専門医の早坂信哉先生によると、昨今の大規模な調査により、毎日の入浴には私たちが想像していた以上のメリットがあることが判明しました。特に注目すべきは、数年以上にわたる追跡調査の結果です。最新の科学的研究によって、毎日「湯船に浸かる」という行為に、さまざまな健康効果が得られることがわかってきたのです。
温泉療法専門医が解説! 入浴が低減する介護・抑うつ・認知症・心筋梗塞のリスク

Shinya Hayasaka
早坂先生「入浴には、体温上昇や血流改善があることはわかっていましたが、それに加え、毎日の湯船での入浴は介護状態や抑うつ、認知症発症のリスクを低減できることが明らかになりました」
入浴直後の短期的な効果だけでなく、将来の介護や認知症のリスクを有意に低下させるなど、長期的な効果まであるとは注目すべき結果ですね。具体的な調査結果を以下で簡単にご紹介します。
- 要介護: 3年間の追跡で毎日入浴する人は、週0〜2回の人に比べ、新規の要介護認定リスクが約29%低い傾向。
- 抑うつ: 6年間の追跡で毎日入浴する高齢者は、週0〜6回の人に比べ、抑うつの発症リスクが約24%低い傾向。
- 認知症: 9年間に及ぶ長期追跡の結果、毎日入浴する習慣がある人は、認知症の発症リスクが約26%低い傾向。
さらに、他の研究グループの結果では脳卒中や心筋梗塞のリスクも、約30%減少するというデータも出ています。東京都市大学の早坂信哉教授は、この結果について次のように述べています。
早坂先生「入浴には体温上昇、血流改善などの短期的な効果だけでなく、介護予防やうつ病、認知症予防といった長期的な健康メリットもあります」
この背景には、一酸化窒素(NO)の産生による血管内皮機能の改善や、細胞を修復するヒートショックプロテイン(HSP)の活性化など、さまざまなメカニズムが想定されているそうです。
このように研究からわかることは、入浴頻度は「毎日(週7日以上)」とすることで、高い健康効果が期待できることです。
出典:Akio Yagi, Shinya Hayasaka, Toshiyuki Ojima, Yuri Sasaki, Taishi Tsuji, Yasuhiro Miyaguni, Yuiko Nagamine, Takao Namiki, Katsunori Kondo.Bathing Frequency and Onset of Functional Disability Among Japanese Older Adults: A Prospective 3-Year Cohort Study From the JAGES, Journal of Epidemiology 29(12) 451-456 2019年 https://doi.org/10.2188/jea.JE20180123
出典:Natsuyo YANAGI, Shinya HAYASAKA, Katsunori KONDO, Toshiyuki OJIMA. Frequency of Bathtub Bathing and Developing Dementia in Community-Dwelling Older Adults in Japan: A 9-Year Follow-Up in JAGES Cohort Study, The Journal of Balneology, Climatology and Physical Medicine 88(2) 73-82 2025年3月
https://www.jstage.jst.go.jp/article/onki/88/2/88_2365/_article/-char/ja/
出典:Shinya HAYASAKA, Toshiyuki OJIMA, Akio YAGI, Katsunori KONDO. Association between Tub Bathing Frequency and Onset of Depression in Older Adults: A Six-Year Cohort Study from the JAGES Project, The Journal of Balneology, Climatology and Physical Medicine 87(2) 49-55 2024年5月
https://www.jstage.jst.go.jp/article/onki/87/2/87_2359/_article
「シャワー派」が見落としがちな0.4℃の壁:湯船とシャワーの決定的な違い

PIXTA
「汚れを落とすだけなら、シャワーで十分」という人も多いですね。実際、東京ガス都市生活研究所の調査でも、夏場は週7回以上、「浴槽入浴はせず、シャワーだけ」という人が3割以上いることがわかっています。
1週間に入浴するうち、シャワーだけで入浴することは 何回ありますか【夏】

東京ガス都市生活研究所「生活定点観測レポート2023」より
データから見ると、夏に週7回以上「浴槽入浴はせず、シャワーだけ」という人は2005年まで増加傾向でしたが、その後は増えていない状況です(上図)。
一方、冬に「週1回以上、シャワーだけの入浴を行う」という人は、じわじわ増加しています。1990年の15.5%から2023年には36.6%となっており、冬に「たまには、シャワーだけで済ませたい」というニーズがあることがわかります。気密性の高い住宅が増えて、冬のシャワー浴でも、身体が冷えにくくなったことも影響しているかもしれません。
シャワーだけでは得られない湯船の4つの作用:温熱・血流改善・浮力・水圧

PIXTA
シャワー浴でも、汚れを落とすことはできますが、シャワー浴と浴槽入浴が健康に与える影響は、大きく異なります。決定的な違いは「深部体温」の上昇幅にあります。
早坂先生「10分間の入浴で体温は約0.5℃上昇しますが、シャワーだけでは上昇が0.1℃程度にとどまるとされています。このわずかな差が、健康効果の明暗を分けます。湯船特有の以下の4つの作用、温熱効果、血流改善、浮力、水圧は、シャワーでは得られない大きな利点です」
早坂先生に詳しく伺った利点は、次の通りです。
血流改善
血管を拡張させ、全身の血流を改善します。疲労回復や良質な睡眠が得られることが期待できます。
温熱作用による痛みの緩和
温めることで、痛みを感じる神経の過敏性が抑えられます。関節がやわらかくなって、痛みが緩和される効果が期待できます。
浮力
普段、重力に逆らって姿勢を維持している背中や首などの筋肉が、浮力のサポートによって働く必要がなくなります。筋肉や関節の緊張が解放され、脳のリラックス状態が促されます。
水圧
適度な圧力が、末梢(まっしょう)血管から心臓へと血液が押し戻され、全身の血行が改善されます。
シャワー派でもできる! 湯船の効果を得るための工夫

PIXTA
湯船でないと得られない効果が多いことがわかりました。シャワー浴を活用したい場合には、足湯を併用したり、バスタブに10cmほどお湯を張って、バスタブの中でシャワーを浴びたりするなど、工夫が必要です。足湯やバスタブに少しお湯を張って、シャワーを浴びることで、温熱効果が高まります。
健康効果が高い入浴も万能ではない? 体調によっては浴槽入浴を控えた方がいいことも・・・

PIXTA
浴槽での入浴が健康のために良いことだとわかりましたが、体調不良時には無理をしない方が良いそうです。
早坂先生「血圧が高い場合(目安は上が160、下が100を超える場合)や、体温が37.5℃以上の場合は、事故のリスクが高まるので、入浴を控えた方が良いでしょう。ただ、風邪をひいていても熱が37.5℃以上でなければ、入ることで楽になるケースもあります。例えば、湯気を吸い込むことで、痰(たん)が出やすくなるなどの効果もあります。体調不良時には無理をせず、医師とも相談した上で入浴をするか決めてください」
また、住宅の構造上、湯上がりに身体が冷えてしまいやすい場合には、ちょっとした体調不良でも、入浴を控えた方が良いケースもあります。
最新テクノロジーで「入浴」をアップデート! マイクロバブルとウルトラファインバブル

近年、かつては工業分野で使われていた技術を家庭に応用した「バブル技術」が登場し、入浴がアップグレードされています。
マイクロバブル入浴
1〜100μmの微細な気泡が、さら湯よりも高い温浴効果をもたらします。深部体温を高く保ち、脳波や心拍から見ても高いリラクゼーション効果が確認されています。一日の疲れを癒やし、深い眠りにつきたい夜に最適です。
ウルトラファインバブルシャワー
1μm以下のさらに小さなナノサイズの気泡が、高い洗浄力を発揮します。シャキッと活動を始めたい朝のリフレッシュにも適しています。
出典:青木 駿介, 野々山 昌生, 早坂 信哉. 多様な入浴方法が生体情報に与える影響:マイクロバブル入浴とウルトラファインバブルシャワー浴の比較検証, 日本健康開発雑誌 46 37-44 2025年6月
おわりに
入浴は単なる「洗浄」ではなく、健康維持や改善のために効果が期待できることがわかりました。忙しい日々の中ではなかなか難しいこともありますが、たまにはゆっくりとお湯を張り、未来の自分のために極上のリラックスタイムを過ごすのもいいですね。
出典:東京ガス都市生活研究所「生活定点観測レポート2023」


-small.jpg)

