食品に使われている乾燥剤の種類

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水分を吸湿することで、食品、精密機器、医薬品などさまざまな商品を湿気から守る乾燥剤。佐伯さんによると、一般的に用いられる粒状の乾燥剤には以下の4種類があるそうです。
- シリカゲル
- 生石灰乾燥剤
- 合成ゼオライト乾燥剤
- クレイ系乾燥剤
「4種類の乾燥剤のうち、一般の家庭でもよく目にする食品に使われているのは、シリカゲルと生石灰乾燥剤の2種類です。どちらが使われているかは、個々の商品によって異なります。お菓子類にはシリカゲルが、のりやお煎餅などには生石灰乾燥剤が使用されているケースが多いようです。乾燥剤としての効力や、その持続期間は、湿度に応じて違いはありますが、ご家庭で使用される分にはどちらも十分にお使いいただけると思います」(佐伯さん)
合成ゼオライト乾燥剤や、クレイ系乾燥剤については、精密機器や医薬品など、主に食品以外に用いられることが多いそうです。
一般家庭でよく見かけるシリカゲルと生石灰乾燥剤について、詳しく伺いました。
シリカゲル
シリカゲルは、透明や青色のビーズ状をしており、写真のように通気性のよい不織布袋や、またはポリフィルム袋に入れられています。水分を吸っても膨張したり溶けたりしないため、食品だけではなく、医薬品や精密機器の乾燥剤としても使われています。
シリカゲルは大きく分けて、A型とB型の2種類があり、A型は低湿度な環境で水分を吸収しやすく、B型は高湿度な環境で水分を吸収しやすいという特徴があります。一般的な食品の乾燥剤として使用されているのはA型です。
生石灰乾燥剤
生石灰乾燥剤は白いブロック状で、耐水紙の袋に入れられています。シリカゲルとは異なり、水分を吸収すると体積が膨張しますが、用途は同じで、用途は主に食品用の乾燥剤として使用されています。
外気の湿度に関わらず、自重の約30%に相当する吸湿能力があるため、低湿度での保存に使用するのが効果的とされています。一度、水分を吸収して膨張すると再利用はできませんが、シリカゲルより安価です。
乾燥剤と間違いやすい「脱酸素剤」とは?
乾燥剤とよく似た商品に、脱酸素剤があります。脱酸素剤は、酸素を除去して、酸化を防ぐことで食品の品質を保ち、長持ちさせるために用いられる、鮮度保持剤の1種です。マドレーヌやカステラといった、ある程度水分がある食品や酸化すると品質が低下する食品の包装に使われています。
脱酸素剤は、酸素を透過するフィルムに包まれていて、内容物と酸素の化学反応により酸素を吸着しています。
これまだ使える? 乾燥剤の寿命の見分け方

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「シリカゲルにしても、石灰乾燥剤にしても、湿分を吸収するという性質上、環境によって寿命は大きく左右されます。そのため、寿命を一概に申し上げられないのが正直なところです。
しかし、見た目や、色が変わるタイプのものなら、効果がなくなったかどうか分かる場合もあります」(佐伯さん)
シリカゲルと生石灰乾燥剤の寿命について詳しくご紹介します。
シリカゲル
シリカゲルの袋の中に入っている青い粒状のシリカゲルは、吸湿が進むと、青から紫へ、その後ピンクへと変色します。ピンクの粒がある場合は、これ以上の吸湿は難しいというサインです。粒の色としては、黄緑からオレンジへ変化するものなどもあります。
生石灰乾燥剤
シリカゲルとは異なり、吸湿が進んでも色は変化しません。しかし、吸湿が進むと膨張して硬くなっていきます。乾燥剤の袋が元よりも膨らんで、硬くなっている場合、寿命を迎えていると考えてよいでしょう。
乾燥剤は再利用できる? できない?

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効果がなくなった乾燥剤を、復活させて再利用することはできるのでしょうか?
「生石灰乾燥剤は、一度吸湿で膨張してしまうと、元には戻せないので効果は復活させられません。しかし、シリカゲルは効果復活が可能です」と佐伯さん。
理由は、シリカゲルの形状と吸湿のメカニズムによるのだそうです。
「実はシリカゲルには、目では見えない微細な大きさの穴がたくさん開いていて、表面積が相当広くなっています。その微細な穴に、水分を吸着させることで、乾燥剤としての機能を果たしているのです。そのため、穴に吸着された水分を放出させれば、再び吸湿できるようになります」(佐伯さん)
シリカゲルの吸湿効果を復活させる方法
シリカゲルに吸収された水分を放出して、再び吸湿できるようにするには、どうすればよいのでしょうか。
「すでに吸収した水分を蒸発させて、吸湿効果をある程度再生するためには、加熱することがおすすめです。加熱温度は、シリカゲルA型とB型で異なります」(佐伯さん)
シリカゲルA型の場合
シリカゲルA型は、ご家庭で目にするものとしては、主に食品の乾燥剤として使用されています。
水分を蒸発させるには、150℃程度の高温で加熱する必要があります。
「吸湿効果を復活させるためには高温で加熱する必要のあるA型のシリカゲルは、天日干しでは効果は復活しないため、電子レンジかフライパンで、加熱する方法がよいでしょう。
また、シリカゲルは、多くの場合、プラスチックやポリエチレン製の袋に入っていますが、袋ごと電子レンジやフライパンで加熱をするのはNGです。袋からシリカゲルを取り出して、加熱します。加熱した後は、お茶の葉を入れるパックなどに入れて再利用するとよいでしょう」(佐伯さん)
シリカゲルB型の場合
シリカゲルB型は、調湿機能があるため、楽器やタンス、押し入れ、靴、カメラなどの乾燥剤として使用されています。
こちらは、100℃前後の温度で水分を蒸発させることができますが、一定程度の再生ならば天気の良い日に天日乾燥も可能です。
シリカゲルを再生するときの注意点
「まず、効果を復活できるといっても、無限に再生できるわけではありませんのでご注意ください。微細なホコリ・ゴミなどや水分以外のガス分子がシリカゲルの穴の中に入って詰まってしまうと、加熱しても水分を放出することができなくなります。そのため、家庭で何度も効果を復活させるのは難しいでしょう」(佐伯さん)
また、加熱して再生するときにケガをする危険もあります。
「私たちメーカーが、ご家庭で加熱して効果を復活させることを推奨しにくいのは、お客さまがやけどをしてしまう懸念があるからです。その点も十分にお気をつけくださるようお願いします」(佐伯さん)
シリカゲルA型の場合、再生させるためには、150℃程度の高温での加熱が必要です。加熱後もとても熱い状態なので、注意が必要です。冷ますときも、小さなお子さまの手が届かない場所に置きましょう。
再生した乾燥剤は何に使える?

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食品に入っていたシリカゲルを再利用したい場合、どのような活用方法があるのか、佐伯さんに伺いました。
食品や雑貨のカビ防止に
乾燥剤には、カビの増殖に必要な湿度を下げる効果があります。そのため、ある程度カビ防止になると考えられます。乾物や乾麺、木工品、皮製品などを入れた袋や缶に入れておくとよいでしょう。
サビやくもりを防ぐ
空気中の水分を減らすため、金属製品のサビを防ぐ効果も期待できます。また、金属製品やガラス製品の結露も予防できるので、くもりを防ぐことにもつながります。
「他にも、ペットフードやカメラなどの電子機器の保管にもご利用いただけます。ただし、効果を復活させても、ずっと使い続けることは難しいため、青い粒の色を確認しながら、ある程度で交換することをおすすめします」(佐伯さん)
乾燥剤の保管方法と注意点

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「乾燥剤は、防湿性の高い袋などに入れて保管いただくと、効果が長持ちしやすいです。防湿袋は、ネットショップなどでも購入できます」(佐伯さん)
それでも、長期間効果を維持するのは難しいため、早めの使用がおすすめとのこと。
ちなみに、乾燥剤のパッケージには「食べられません」と記載がありますが、口に入れると危険なのでしょうか?
「シリカゲルは、日本やアメリカでは食品添加物にも使用されており、食べても毒ではありません。しかし、食品ではないため、口に入れないよう注意してください。誤食を防ぐため、保管場所をお子さまや認知機能が低下している方などの手が届かない場所にするなど工夫しましょう(佐伯さん)
また、佐伯さんによると、シリカゲルは粒が細かいため、床に落とすと掃除が大変で、隙間に入りやすく取り出すのも難しいとのこと。
再生するために袋から取り出すときは、こぼさないよう注意しましょう。
乾燥剤はそのまま捨てて大丈夫?

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食品をはじめ、多くの商品に使われている乾燥剤。商品パッケージを開けて、乾燥剤がでてくるたびに、「この乾燥剤、どうやって捨てればいいの?」と迷ったことがある方も、多いのではないでしょうか。
「乾燥剤は、基本的に燃えるゴミになると思いますが、ゴミの扱いは自治体ごとにルールがあるので、各自治体のルールを確認してください。また、乾燥剤と同様、食品包装によく使われている脱酸素剤は、成分のほとんどが鉄なので、燃えないゴミに分別されることもあります。こちらも各自治体のルールを確認しておくとよいでしょう」(佐伯さん)
また、乾燥剤を捨てるときに、注意すべきこともあるそうです。
「生石灰乾燥剤は、水分を含むと発熱して高温になりますので、できる限り水分に触れないようにして、捨ててください」(佐伯さん)
廃棄する際にも、十分注意したいですね。
おわりに
乾燥剤シリカゲルのメーカー、高砂産業株式会社の代表取締役である佐伯さんに、食品に使用されている乾燥剤の再利用の方法や、保管方法、処分の際の注意点などについて、教えていただきました。再利用については、シリカゲルに限られますが、実際に再生する際はやけどなどに十分ご注意ください。
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