リボベジってなんのこと?
「リボベジ」とは、「リボーン・ベジタブル(Reborn Vegetables)」の略称です。
調理に使用しなかったヘタや根など、普通は廃棄するような部分から、もう一度葉や実の部分を食べられるように育てるので「再生野菜」とも呼ばれています。
昔から家庭の知恵としてある家庭栽培のひとつですが、最近では気軽にできるSDGsとしても改めて注目されています。
そんなリボベジには、どのような魅力や育て方・楽しみ方があるのでしょうか?
連載第1回目の今回は、リボベジや家庭菜園についてSNSなどで積極的に発信し、書籍も出版されているそらベジガーデンハックさん(以下そらベジさん)に、リボベジの魅力や楽しみ方、基本の育て方を教えていただきます。
「リボベジは、余った野菜と容器、あと水だけあればできる、とっても簡単な家庭菜園なんです。それで新鮮な野菜が収穫できるうえにエコだなんて、良いことづくしですよね!」(そらベジさん)
リボベジには、野菜のヘタや根の部分を水に浸けておくだけの水栽培タイプや、土の入ったプランターなどに植え替えて育てる方法があります。
今回の連載では、より気軽にできる水栽培タイプをメインにご紹介していきます!
まずは、リボベジの魅力についてそらベジさんに伺いました!
リボベジの魅力1:フードロスを削減できる
リボベジは、廃棄するはずだった部分まで有効活用できるという点で、フードロス削減に貢献できます。
「捨てるものが減るのは地球にも自分にもうれしいことなので、リボベジは自分で簡単にできるSDGsでもありますね」(そらベジさん)
ゴミの量が減れば処理もラクになるし、生ゴミが減ることでニオイやコバエなどの問題も少なくなります。
また、生ゴミを肥料にするコンポストもフードロスとして注目されていますが、肥料となるのには時間がかかります。それに対してリボベジは、早ければ1週間ほどで収穫できるという点も魅力です。
リボベジの魅力2:観葉植物としても楽しめる
リボベジは水を使って室内で育てるので、キッチンなどの観葉植物としても楽しめます。野菜によっては、どんどん青々とした葉をつけていったり、良い香りが楽しめるものも。育てるうちに愛着もわいてきて、野菜の成長を家族で見守ることで会話が増えることもあるでしょう。
「普段はスーパーで売っている野菜や、すでに調理された状態でしか野菜を見ることがないお子さんも多いと思います。リボベジをすることで、小さな新芽が出てくる様子などを観察でき、お子さんの食育にも繋がっていきますね」(そらベジさん)
リボベジの魅力3:野菜代の節約になる
水で育てるリボベジは、大量に作れるわけではありませんが、野菜代の節約になります。「わざわざスーパーで1袋買うほどはいらないけど必要!」というときなどにピッタリです。
例えば、ネギやバジルといった薬味野菜は、キッチンでサッと収穫してトッピングなどに使用できます。レタスなどの葉物野菜もどんどん新しい葉が育つため、少量をお弁当に使いたいときなど、日々の使い勝手が良いのが特徴です。
「もし土に植え替えて育て続けた場合は、大量収穫によって本格的な食費削減も期待できますよ」(そらベジさん)
リボベジの魅力4:人との輪が広がる
「リボベジを通じて、地球に優しい人が増えてくれるとうれしい」と語るそらベジさんは、リボベジをするメリットとして、人の輪や会話が広がるキッカケにもなると考えています。
「さまざまな野菜をリボベジしていくなかで、たくさん採れたものを友人や近所の人におすそわけすることがあります。会話も膨らむし、リボベジも知ってもらえて、次はその人が作ってみてくれたりするんです!」(そらベジさん)
そらベジさん自身の経験談として、実際に、土に植え替えたゴーヤなどが大量に収穫できた際いろいろな人に配ったそうです。野菜を楽しむだけでなく、そこから生まれるコミュニケーションも楽しめるところがリボベジの魅力ではないでしょうか。
リボベジの魅力5:抜群の鮮度で味わえる
採れたての野菜を味わえるのは、リボベジの大きなメリットです。
野菜は鮮度が命。自宅で採ったばかりの野菜は味や香りが良く、いつも以上に料理が楽しくなります。
「また一般的に流通している野菜や果物は、完熟前に収穫されますが、自宅でリボベジを土に植え替えて育て続けた場合は、完熟して甘さやうまみが最高潮となったタイミングで味わえるのもポイントです」(そらベジさん)
リボベジのデメリットとは?
リボベジのデメリットとして、水で育てる場合は1日1回以上の水替えが必要なことが挙げられます。
「その他にも、土で育てる場合と同様に、枯れてしまった際の処理や虫が来ることがデメリットといえます。僕はリボベジが楽しくて、いろいろな野菜でトライしたくなるので、結果的に自宅がジャングルのようになっているのもデメリットかもしれませんね(笑)」(そらベジさん)
リボベジに向いている野菜で気軽にトライ!
これまでさまざまな野菜やフルーツのリボベジをしてきたそらベジさんに、水で育てるリボベジの難易度を、素材の準備のしやすさや収穫までの期間、収穫量などをもとにレベル分けしてもらいました。
「これならできそう!」「やってみたい!」と思えるものからチャレンジしてみてください。
長ネギ ★☆☆
長ネギは乾いた葉の部分は剝いて取り除き、根から3cmほど残して育てます。
根がついている場合は残して栽培します。
1~2週間で青々とした部分ができあがります。
ニンニク ★☆☆
ニンニクは1片から栽培できます。表面の乾いた皮を剥いて水に浸けておくと、上から緑の茎、いわゆる「ニンニクの芽」が生えてきます。
2週間ほどで収穫ができます。
ニンジン ★☆☆
ニンジンは根元を2cmほど残してカットしたものを使用します。
3~4日でヘタ付近から新しい葉が生えてきます。成長が早く、2~3週間で20cmほどの長さになります。
非常に細いので、葉だけを炒めて調理するのというのには向きませんが、オムレツに混ぜたり、ケーキに飾り付けたりという使い方ができます。
大根 ★☆☆
大根は茎とその根元をそれぞれ2cmほどずつ残して使用します。
茎の中心から新しく葉が生えてきて、2週間くらいで収穫できるようになります。
残っている茎が折れてしまっていても大丈夫です。
小松菜 ★☆☆
小松菜は根元から3cmほど茎部分があればリボベジが可能です。
「根がついている場合は根も残すとより成長が早いです」(そらベジさん)
残した茎の中心から、どんどん新しい葉が生えてきます。
1株から5枚くらいの葉が採れるでしょう。
キャベツ ★★☆
キャベツは芯とその上部分を円錐のように残してカットします。半玉や1/4カットされて芯が切れているものでも使用できます。
乾燥したヘタは細胞が傷んでいるので、薄く切り落としておくと水を吸い上げやすくなります。
芯周辺の葉は残っていると腐りやすくなるので、芯にぎりぎりのところまで切り落とし、爪楊枝をさしておきます。
数週間で先端から新しい葉が生えてきます。
リボベジ基本のキ
水で育てるリボベジは、基本的にどの野菜も育て方や管理のコツは同じです。
ここでは、失敗しないためのコツを含めて、そらベジさんがおすすめするリボベジの基本をお伝えしていきます。
リボベジに必要なもの
- 育てる野菜
- 容器
- 水
- 爪楊枝
容器は、通気性があって中の様子が見える透明のものが育てやすいです。
「長ネギなどのように長細い野菜が、同様に長細い容器の中へおさまってしまうと、通気性が悪くて傷んでしまいます。真横から見て、容器から野菜が半分以上出ているくらいの通気性があるといいですね。
また、野菜は容器と接すると刺激となって傷みやすいので注意が必要です」(そらベジさん)
そのため、爪楊枝を使用して容器から野菜を浮かせるようにするのがポイントです。
「今はリボベジ用に作られたおしゃれな容器も販売されているので、そういったものを使用するのも気分が上がって楽しいですね」(そらベジさん)
育て方
準備した野菜に爪楊枝を刺して、一部分を水につけておく、というのがリボベジの基本です。
今回は、リボベジのスペシャリストであるそらベジさんが必ず行っているというポイントも教えていただきました!
【育て方のポイント1】
- 水に浸かる面は、薄くそぎ落とす
「例えば茎や芯がある野菜(小松菜やレタスなど)をリボベジする場合は、水に浸かる面を1mmほど薄くそぎ落とすようにします。乾燥や酸化で赤茶色になっているのは、すでに細胞が傷んでしまっているので、なかなか水を吸い上げられません。花の水切りのように、一度リセットしてあげましょう」(そらベジさん)
【育て方のポイント2】
- 水の量はギリギリ接する程度にする
「水に浸ける際も全体をドボンと浸からせるのではなく、茎や芯の下端にギリギリ接する程度の水量にすることもポイントです。水を吸うのは側面や葉ではなく1番下の部分なんです。あとの部分は水に浸かると腐っていくばかりなので、水はギリギリの部分までにしましょう。
【育て方のポイント3】
- 日陰で涼しい場所に置く
「水温が23~26度以上になるとカビが発生しやすくなるので、日当たりが良い場所は不向きです。キッチンの隅の方など、日陰で涼しい場所が水替えもしやすくておすすめですよ!」(そらベジさん)
リボベジに関するQ&A
リボベジに関するよくある質問にも、そらベジさんにお答えいただきました。
よくあるトラブルは?
「やはりカビですね。野菜がカビてしまった、というお悩みはよく聞きます。ただ、カビは突然発生するわけじゃないんです!
まず、最初は水に接している面がぬめっていきます。ぬめりが残っていると、そこから腐り始めます。そのあと、最後にカビてしまうんです。ぬめりが出た段階で、それをキレイに洗い落とすようにしておくことで、カビが予防できます。ぬめってしまう原因としては、水温がポイントなので、『なんだかよくぬめるな』と感じたら、水替えの頻度を上げると良いと思います」(そらベジさん)
始めるのに適した季節や場所はある?
「水で育てるリボベジは1年中、いつでもできるというのが魅力です! 寒い時期でも暑い時期でも、浸ける水温が高くなりすぎないように気を付けていれば問題ありません。ただ、水温が10度を下回るのも良くないので、室内で育てるようにしましょう。もし水栽培で育てた後、土に植え替えたいのであれば、1~3月のもっとも寒い時期だけ避ければOKです」(そらベジさん)
1つの野菜で何回リボベジできるの?
「水で育てるリボベジは、素材とした野菜自身の栄養と水だけで育っていくため、3回ほど収穫できたら……という気持ちで育ててみてください」(そらベジさん)
液体肥料を入れたらたくさん採れるようになる?
「液体肥料を入れたらグングン育ちます! ただし、液体肥料を栄養とするのは野菜だけではないので、すぐに容器の中がコケだらけになりますね……。その結果、野菜もコケに覆われてしまって水が吸い上げられず腐っていく、という流れになってしまいます。水栽培で液体肥料を入れる場合は、完全に光をシャットアウトする必要があるのでかなり難しいです」(そらベジさん)
リボベジに向かない野菜はなに?
「根菜の根部分を収穫したいのであれば、リボベジでは難しいです。根菜を水で育ててリボベジする場合、葉部分のみの収穫となるからです。再生野菜で根菜の根まで育てたい場合は、土へ植え替える必要があり、また時間もかなりかかります」(そらベジさん)
おわりに
自身もたくさんの野菜をリボベジし、楽しんでいるそらベジさんにお話を伺いました。水を替えてあげるだけで、育てる過程を楽しむことができて、収穫の喜びも味わえるリボベジ。今日のご飯を作る時、野菜のヘタを捨てる前にちょっと思い出してみてくださいね!
連載2回目からは、今回リボベジに向いている野菜としてご紹介した野菜などを中心に具体的な育て方をお伝えします。
引き続き、そらベジさんにもご登場いただき、ウチコト編集部が育ててみた際に起こったリアルなトラブルや疑問に対するアドバイスもご紹介していきます!