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子供たち

「STEM教育」について親はどのくらい知っている? プログラミング教育もSTEMの中に!

最近耳にすることが多いSTEM(ステム)教育やSTEAM(スティーム)教育とは、教科を横断した知識や技能を組み合わせて主体的に問題解決を行える力を培う学びのことです。小学校などで導入されているプログラミング教育もSTEM教育の一部なのだそう。親が知っておきたいSTEM教育の意味や内容について、埼玉大学教育学部の准教授でSTEM教育研究センターの代表でもある野村泰朗先生に教えていただきました。

最終更新日:2025.3.13

目 次

STEM(ステム)教育とは「総合的な学習の時間」の目標

野村泰朗さん

uchicoto

「そもそも「生きる力」の育成を目指す学校教育では、特に変化の激しい現代社会においては未知の課題に取り組むことができる『主体的な問題解決力を育成する』ことを重視してきていますが、実はこれ自体がSTEM教育の目標でもあります。
 
今ことさらSTEM教育は最先端の学びです、などといっている人たちは、子どもの教育よりもビジネスに重きをおいていると考えたほうがいいでしょう。そもそもSTEM教育で掲げられている目標は、『総合的な学習の時間』の目標として、1998年には文部科学省の教育課程に導入されているものだからです」(野村先生)
 
実際には、STEM教育は小学校1・2年生では生活科(社会、理科、家庭科)が該当し、小学校3年生から高校3年生まで、総合的な学習の時間として教科横断的な学びが20年以上実践されてきているそうです。

「海外では、もっとSTEM教育を取り入れることが重要だと認識していながら、時間割がいっぱいで新たに入れられない現実があります。それに対して日本では、小学校1年生から高校3年生までの授業の中に、既に取り入れています。ですから日本のSTEM教育は、世界の最先端にあるといえます」(野村先生)

※参考:文部科学省「総合的な学習(探究)の時間
   :文部科学省「STEAM教育等の各教科等横断的な学習の推進

「S・T・E・M」それぞれ構造・関係性・意味がある

「STEM教育も学校教育も『主体的な問題解決力の育成』を目標にしていることに変わりありません。その上で、STEM教育をより理解するために『S』『T』『E』『M』それぞれの構造と関係性について説明します。
 
まず、最初に着目してほしいのは『E』、すなわちエンジニアリング(engineering)です」(野村先生)

「E」(engineering))は、STEM教育を理解する上でトップにくる概念

教室の子どもたち

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エンジニアリング(engineering)とは「工学」のことです。これがSTEM    教育の目標である「主体的な問題解決力の育成」の核となる概念だと野村先生はいいます。でもあまり馴染みがある言葉ではありませんよね。野村先生は、これからは小学校から知っていく必要がある概念だと言います。
 
「問題解決とは、より良い解決を探求する様(さま)のことをいいます。より良い解決を探求するアプローチが『工学』、すなわちエンジニアリングです」(野村先生)

野村先生によると、

  • 目的や条件に合わせて適切な解決策を選択し実行できるか
  • 解決策を提案し実現できるか
  • そのうえで解決先を選択する


これが問題解決の定義で、ここからさらに分解して工学的に考えると、問題を解決するときには、順番があると言います。

「目的や条件は、まず先にくると理解しましょう。そして、その目的を達成するためにあらゆる可能性を考えること。その理由は、その中から最も適切なものを選ぶというプロセスを経ないと、解決策は見つからないし選べないからです」(野村先生)
 
さらに工学の「工」は、工夫の「工」を指す言葉だと捉えると、より分かりやすいと野村先生。
 
「工学というと、どうしても大学などの工学部というイメージがあります。僕はそのイメージを払拭(ふっしょく)するためにも、小学生のときからもっとエンジニアリングについて教える必要があると考えています。子どもたちがもっと工学を意識すれば、主体的な問題解決力が育成されていくからです」(野村先生)

「M」(mathematics)の一部にプログラミング教育もある

パソコン

uchicoto

ここで、STEMのMが登場しました。そもそもSTEM教育の「M」では何を目指すのか、その目的は2つあると野村先生は言います。
 
「STEM教育の『M』で学ぶことのひとつめは数量化です。量的な物事を考えることと、量的に対象を捉えることを目指しています。これを学ぶことで、比較ができるようになります。
 
もうひとつがプログラミング的思考(論理的思考)です。実はこの論理的思考にも2種類あって、ひとつが狭い論理学的思考。具体的にいうと『ベン図』や『三段論法』などで、もうひとつがプログラミング的思考です。別の言い方をすると『手続き思考』ともいいます」(野村先生)
 
手続き思考を分かりやすくいうと、物事には順序があるとか、順序が変われば結果が変わるなどの考え方です。
といっても特別に難しいことではなく、例えば算数の基本や、料理を作ることも手続き思考が元になっています。
 
「この手続き思考を身近で徹底的にやっているのは、料理をつくるお母さんです。料理というのは、実はプログラミング的思考が重要です。

例えば、二つしかコンロがないけど、複数のメニューをつくる場合に、どんな順番でコンロを使うのか考える必要がありますね。いわゆる手際がいい人というのは、同時にいくつも作れますが、これは限られたリソースで、効率的に物事を考えられるからです。さらに無駄な動きもしないでしょう。

これとこれはまとめてできる、など、論理的に考えられることはプログラミング的思考であり、手続き思考です。学校教育では算数・数学で教えています。算数の授業で習う割り算のひっ算のやり方は、まさに手続きのかたまりだと言えます」(野村先生)    
 
下記はプログラミング的思考にフォーカスを当てた記事です。こちらも参考にしてみてください。

小学校で必修化されたプログラミング教育「プログラミング的思考」とは?

「T」(technology)とは、有効に使うことができる知識の集まり

教室の子どもたち

uchicoto

STEMの中でも「T」(テクノロジー)は、実は一番分かりにくい概念で、単に工学的な技術という意味ではなく、例えば人の話術などもテクノロジーを意味するのだそう。これらのテクノロジーは、別の言い方をすると「見方・考え方」だと野村先生はいいます。
 
「いまの学校教育でものの見方・考え方を教えている背景には、このテクノロジーの考え方があります。例えば社会科で使う年表がありますが、そもそも年表とは何なのかが分かることが大事であり、年表とは時間軸で見た時の因果関係を示すものだ、という捉え方ができる見方・考え方が重要です」(野村先生)
 
テクノロジーの見方・考え方について野村先生がもうひとつ例をあげてくれました。
 
「例えば運動会のことを作文にするという課題がでたとき、手が止まってしまう子どもがいます。その理由は、そもそも運動会をどう見ればいいのかを知らないからです。先生はみんな見ているはずだから書ける、と思っているかもしれませんが、見方を教えていないとそれは無理です。手が止まっている子どもは見方が分からない、それはすなわち情報を持っていないといえます」(野村先生)

「S」(science)は、正確さを確かめる方法

探究活動の様子

uchicoto

子どもたちはそれぞれが大人にアドバイスをもとめながら自分のテーマにこだわって探求活動を進めます

「STEMのSはサイエンス、科学です。科学とは、正確さを確かめる方法であり、正確さを追求・探求する方法でもあります」(野村先生)
 
これからの時代は、STEMのSであるサイエンスの考え方がますます重要になりそうだという野村先生。その根拠は、学校の授業自体にあると言います。
 
「学校教育はそもそも何のためにあるのかというと、僕は人をより科学的にするためにあると考えています。その理由の一つが教科書です。学校でわざわざ教科書が用意されて、先生が教えることも決められているのか。その答えは、誰かが教科書そのものが科学的により正確だと確かめて、研究をしてくれたからです。教科書はその成果といえます」(野村先生)
 
児童・生徒たちの勉学の土台・素地が作られているのは、常に反証にさらされながらも正確さを追い求めて完成した教科書を中心に学んでいるからと言えますね。

STEAM(スティーム)教育について

料理

お料理も科学(S)も必要だし段取りや手際の良さ(MやE)も味や盛り付けなどで好み、価値観が大事になってきて、STEAMの活動として適しています(提供:野村先生)

STEMにAが加わったSTEAM(スティーム)教育も広がりを見せています。現在、日本のみならず世界的にもそのSTEAM教育を取り入れる流れがあるといいます。このSTEAM(スティーム)教育について、野村先生に聞きました。
 
「STEAMのAはアート(美術や芸術)と呼んでいるグループと、リベラルアーツ(教養)と捉えるグループとに分かれており、それぞれ解釈も違います。僕はこのAについては、リベラルアーツと捉えています。簡単にいうと、教養を持つとはさまざまな分野の価値を知ることであって、価値教育と言い換えてもよい広い教養を育む教育が大事であるという認識です」(野村先生)
 
このA(リベラルアーツ)は、学校の授業でいうと道徳や特別活動につながります。世の中にはさまざまな考え方があり、さまざまな価値観があります。それを知り、その価値をどう取捨選択するのか、それが価値教育の本質だと考えています」(野村先生)

ICT・プログラミング教育・STEM教育に混乱する教育現場

野村先生によると、世界の最先端にある日本のSTEM教育は、学校の先生たちの多くがその価値に気づいていない現実があるといいます。

「灯台下暗しです。そもそもSTEMそのものの解釈や考え方に誤解があったりして、本来の目的を目指せているのか疑問です」(野村先生)

STEM教育が上質な時間になっていない大きな理由として、現場の先生たちが混乱しているからだと言います。具体的にいうと、「ICT(教育のデジタル化)」「プログラミング教育」「情報教育」そして「STEM教育」と、最近の教育に関する話題の中でよく出てくるこれらの言葉の意味を、正確に区別できていない現状があるそうです。

「例えば、ICT、教育における情報技術の活用についてです。ICT活用とは、インターネットやタブレットが使えるようになるのが目的ではありません。大事なことは、目的を達成するために必要だったらタブレットなどの情報技術も含めて適切なものを選択して使うことが大事で、必要がなければ使わなくていいという視点を持って、むしろICTも含めてさまざまな選択肢を持とうとする問題解決的な考えに結びかなければなりません。

しかし、ここで見えてくるのは、学校での授業は、問題解決的ではなくて、手段が先行していることが多いことです。つまりICTが導入されると、タブレットやパソコンなどを使うことが目的になっています。現場の先生たちが、目的と手段をはき違えないで、問題解決的に指導をすることが重要です」(野村先生)
 
これは、プログラミング教育やSTEM教育など「〇〇教育」全般にも当てはまることで、〇〇が目指している目的を捉えた時に、それを目指す教育はすでに行われているにもかかわらず、目新しさを強調したいために新しい「〇〇教育」を作り出してきているだけではないか、というわけです。

〇〇自体には手段が示されていることが多く、例えばプログラミング教育を、プログラミングをさせる教育、プログラミングができるようになる教育だと捉えるのは早計だということです。プログラミング教育で話題の、ScratchソフトウェアやPython言語を学ぶことは手段を学んでいるに過ぎず、それを使って何ができるのか、できないのかを学び、コンピュータとの付き合い方を考えられるようになることが目的なのだそうです。

お子さんが日々の授業でSTEM教育を受けている場合、タブレットやパソコンなどをテクノロジー(T)としてそれを使わせることが「目的」になってしまっていないかという視点で様子を見てみることも、大切かもしれませんね。

保護者にできるSTEM教育の後押しとは?

研究を発表する少年

子どもたちは自分のこだわった研究については熱く語りますし、たくさんの人に聞いてほしいと思っています(提供:野村先生)

STEM教育が広がる中、保護者に後押しできる方法はあるのかを野村先生に聞きました。 

「さまざまな勉強法や指導法について研究されていますし、世間にも情報が溢れていますが、私が実感する最も強力な教育方法は、親が背中を見せることです。子どもというのは大人の嘘を簡単に見破ります。そのため口だけで実際にやっていないことに対しては敏感です。実は子どもの教育にはより理想を語る必要があります。大人になるといわゆる不条理みたいなものが分かるようになりますが、子どもにはまだそれが分かりません。
 
だから年齢が低ければ低いほど、大人の理想的な姿を子どもに見せる必要があります。そうしないと、子どもは理想と現実の区別がつかなくなり、例えそれが私たちにとってよくないことでも「そんなものなんだ」と受け入れてしまうようになってしまい危険です。まだまだ解決されていない社会課題がたくさんあるはずなのにそのような課題に気づけなくなってしまいます。親は現状に甘んじず、問題を口にし、その解決に努力する姿や新たなことを勉強をする姿を見せると、子どもも課題意識を持って生きていこうとし、そのために必要な勉強をしようとします。

注意すべきは、親ができないことを子どもに求めてはだめだということ。なので、理想を目指すためには、今は親ができないことであっても、親はできないけれど子どもにはという他人任せな気持ちは捨てて、親も日々、知らないことに関心を持って学び続け、アップデートし続けることが必要でしょう。これはSTEMのEですね。ただ、理想を子どもに示していけるためには、親は現状の不条理に流されることなく、便利だけれど害悪なもの、例えば過度なゲームやYouTube視聴、スマホ依存などは、親自身も我慢をすることが必要になります。理想を示すとは、現状みんなが『いい』と思っていることに対して、そうじゃないかもしれないと批判的思考を働かせ、新しい生き方=価値を提案していくことです。STEAMのAですね。これはかなり大事です。結論としては『親もSTEM的であれ』ということです」(野村先生)
 
STEM教育の特徴でもある「横断的な学び」を子どもが素直に受け止められるように、家庭でも子どもとの対話で親子で一緒になってさまざまな分野に関心を持って調べてみたり考えてみたりすることが後押しになるかもしれません。
 
野村先生に教えていただいたSTEM教育のそれぞれの意味をまとめると、下記のようになります。
 
S:主体的な問題解決力の育成を促進するために、科学的な実験観察を通して正確な情報を確かめようとする態度がサイエンス
T:あらゆる分野の知識を人間にとって意味のある、使いやすい形に整理したメタ知識、おばあちゃんの知恵袋的な知識、先人のあみだした「見方・考え方」がテクノロジー
E:「なぜ・どうして」という疑問を常に持ち、あらゆる手段を駆使してよりよい解決策を考えようとする問題解決的な態度がエンジニアリング
M:正確さを高めるために必要な数量化の考え方や論理的思考、プログラミング的思考がマセマティクス
A:さまざまな分野の「よさ」、いろいろな人の立場からの問題意識、いろいろな人の持つ価値観を知ろうとする態度がリベラルアーツ(教養) 
 
例えば、「落とし物をした時に、同じことを繰り返さないためにその原因(S)と、防止するためにはどんな解決策があるかと考える(E)」「今日のご飯はハンバーグとサラダとスープを4人分作りたいけどその買い出し(M)から料理の段取りを考える(E)」など親子で日常生活にある問題に気づき(A)、一緒に考えてみることはSTEM的な取り組みといえそうですね。

おわりに

STEM教育は総合的な学習の時間の目標として、すでに小学校低学年から高校3年生までほぼすべての授業に取り入れられていると分かりました。さまざまな価値観や情報がはんらんする時代の学校教育に、STEM教育はますます必要なアプローチといえそうです。

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公開日:2025.3.13

最終更新日:2025.3.13

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