小学生になって片付けが苦手と気づくのはなぜ?
小学生になっても片付けが苦手だと、物をなくしたり、忘れ物をしたりで学業にも支障がでることも。「今すぐどうにかしたい!」と悩む親御さんも多いのではないでしょうか。
大人になっても簡単ではない整理整頓・収納の習慣を小学生が身につけるために、親はどのようなサポートをすればよいのでしょう。
無印良品にて生活雑貨の企画・デザインに携わった後に整理収納アドバイザーとして活躍されている水谷妙子さんに、整理整頓や収納のコツを身につけさせるための働きかけのポイントを教えていただきました。
そもそも、なぜ小学生になって片付けができないことが目につくようになるのでしょうか? その理由として、以下のことが挙げられます。
そもそも未就学児レベルの片付けが身についていない
「片付けは、小学校に入っていきなり始まるわけではありません。2歳くらいになるとおもちゃや服などの片付けをする機会がありますが、まだ片付けるものの数は少ないです。この2歳くらいの時期に簡単な片付けができていないと、小学生になってからの学用品などの片付けが難しくなってしまう場合があるといえます」(水谷さん)
管理する物の種類が増える・毎日必要なものが異なる
「小学生になると、一気にさまざまな学用品を管理しなくてはいけなくなります。量も多いですが、種類も増えますので、子どもによっては管理しきれなくなることもあるでしょう」(水谷さん)
また、授業や行事で持ち物が日々異なることも水谷さんは指摘します。
「片付けなくてはいけない物の量や種類が増えても、毎日同じ内容ならさほど混乱はしないでしょう。しかし、小学校では曜日や季節によって必要になる持ち物が違うことも。これも片付けが難しくなる原因です」(水谷さん)
親の目が行き届かなくなる
「なんとか学校に必要なものを親が持たせたとしても、家に持ち帰らずに、学校の机の中や、ロッカーに忘れて帰ってしまうということも。幼稚園や保育園の時のようにフォローもしてもらえないので、子ども自身に自分の物を管理するという意識が薄いと、家と学校で持ち物を往復させたり、学校の机をきれいに片付けることも難しいです」(水谷さん)
小学生になると、子どもたちは成長してさまざまなことができるようになります。しかし、片付けに関しては、未就学児時代に比べると、子どもに任せる場面が多くなるので、できないことが目立つこともあるようです。
「小学生なのに片付けができなくなった! と焦ってしまう親御さまもいると思いますが、こうした小学生ならではの事情を認識して、まずは心構えをしていただくことが大切です」(水谷さん)
「整理」「収納」「片付け」「掃除」の基本4ステップを大切に
「大人でも、整理・収納・片付けといった言葉の意味を理解できていない場合も。すべて意味は異なり、行うのは整理→収納→片付け→掃除の順番になります」(水谷さん)
それぞれの意味と共に、おすすめの実践方法を水谷さんに説明してもらいました。
整理
まずは現在持っている物を「使っているのか、使ってないのか」を基準に、使用頻度や種類によって分ける作業が整理です。
「整理をする際、物を捨てる作業も必要になりますが、一緒に整理をしている時に子どもに『これはいるの? いらないの?』とは聞かないようにしましょう。なぜなら、この聞き方の場合、例え使っていなくても、物を失うことへの不安から、子どもはつい『いる』と答えてしまうケースが多いからです。
実際は使っていないものでも、手元になくなることはつらいと感じるもの。そのことを踏まえて、『実際に使っているのか、使ってないのか』を問いかけながら、一緒に分けていきます。
また、学用品の中には、毎日のように使う物のほか、プール用品や縄跳びのように特定の時期だけ使用する物もあります。使用頻度によってまずは分けておきましょう」(水谷さん)
収納
「物を整理できたら、次に収納です。収納とは、簡単に言うと『物のおうちを決めること』だと私は子どもたちに教えています」(水谷さん)
“収納”は、「おさめる」という意味のある二文字から成り立っているため、クローゼットや引き出し、収納ボックスなどにしっかりしまいこむことだと考えがちです。しかし、水谷さんは「置くことだって立派な収納です」と言います。
大人目線で、物が隠れていて一見きれいに見える収納よりも、まずはその子にとって収納しやすい方法を考えることが大切です。
また、水谷さんのお宅では、使用頻度の高い学用品(週に1回程度使用)は最も取り出しやすい場所に収納し、数カ月に1回使うような学用品はそれよりは少し奥まった場所に収納しているとのこと。使用頻度で収納場所を分けることで、毎日の物の出し入れが楽になります。
片付け
「片付けは、物を決めたおうちに戻すことです。しかし、これは実はとても大変なことなのです」(水谷さん)
片付けは、自分や一緒に住む家族が後で使う時に困らないように、すっきりした環境で暮らせるように行います。今ではなく将来のために、周囲への思いやりでもあり、自分を律して理性的に動かなければならないため、子どもにとってとても大変な行動とのこと。
「もともと収納場所を決めていても、実際に片付けられていない場合は、子どもが片付けられるように収納場所を変更する必要があります。現時点で片付けられていないなら、その物を使う場所の近くに収納するなどハードルを下げていきましょう」(水谷さん)
掃除
「片付けが済んで、散らかっていない状態になって、やっと掃除ができます」(水谷さん)
掃除しにくいのは、物が片付いていないから。物が片付かないのは、収納場所があっていないから。収納場所があっていないのは、整理ができていないから。
まずは「整理」「収納」「片付け」を順番通りに行うことが大切なのです。
子どもが片付けられるようになるために親がすべきことは?
片付けが苦手な子どもに対して、親としてどのように働きかけるとよいのでしょうか。気をつけるべきことを伺いました。
怒り口調で指摘しない
「私自身経験があり、イライラする気持ちはよく分かるのですが、親が怒りながら片付けられていないことを指摘すると、怒られたことが印象に残るだけで終わり、次につながりません」(水谷さん)
散らかっていると、つい「片付けないと、捨てるよ!」と言ってしまいがちですが、それだと物を捨てられてしまうという恐怖心を植え付けるだけになってしまうことも。整理の際、ますます物を手放せなくなる可能性もあります。
事実だけを伝える
「例えば、廊下にランドセルが放りっぱなしになっている時、つい『片付けて!』と指示してしまいがちです。しかし、ここでは『ランドセルが廊下に置きっぱなしだよ』というように、まずは事実だけを伝えてみてください」(水谷さん)
「ここにしまって!」「片付けて!」と指示してしまうと、自分で考えずにやらされるだけなので、どう動けば片付くのか、いまいち自分ごとにならない可能性も。そのため、「~しなさい!」と言わないでおくのがポイントです。
難しいなら、レベルを下げる
「整理整頓が得意で完璧主義な親御さんに限って、子どもに自分と同じレベルで片付けることを望んでしまっている場合があります。そして子どもが同じようにできないことで、結局親御さんが片付けてしまっていることも。
親が片付けるのではなく、子どもが片付けられるように考えなければいけません。収納も引き出しの奥深くに入れるのではなく、置くだけの収納にしたり、いつもその物を使う場所の近くに収納したりするようにします」(水谷さん)
水谷さんによると、置くだけの収納ができていない場合、引き出しにきれいにしまう収納はまず難しいとのこと。親としては整理整頓のレベルを下げることに抵抗を感じるかもしれませんが、子どもが自分で片付けられるようにするために試してみてください。
水谷さん「また、小学校入学を機会に子どもに個室を用意することがあるかと思いますが、リビングにある収納に片付けられていないなら、個室を与えるのは時期尚早といえます。子どもがどの程度片付けられるのか随時確認しながら、段階を踏んでいくようにしましょう。
漠然と置いただけでは、散らかっているようで気になる、ということもあると思います。その場合は『この棚の上に置く』とか 、『床には置かない』など置く時のOKルールとNGルールを決めてみるとよいのではないでしょうか。 その際も、『まずは置く。ぐちゃぐちゃでもOK』。それができたら、『物を揃えて置く』というように、段階的に進めていくと取り組みやすいと思います」
子ども自身に考えさせる
「整理整頓や収納についても、できなかったり困ったことがあった場合、親だけで改善策を考えるのではなく、子どもにも『どうしたらいいかな?』と尋ねてみてください。
そうすることで、自分で考える力を養えますし、親にやらされているだけとは違い、子どもが自分で考えを発言することで、記憶に残り、モチベーションアップにつながりやすくなります」(水谷さん)
収納の方法は柔軟に変更する
「片付けが苦手な人ほど『もうこれ以上考えたくない』と一度作り上げた収納の方法を変えるのを嫌がりますが、まずはやってみて、うまくいかないなら柔軟に変更してください」(水谷さん)
そのためにも、例えば収納ボックスや引き出しに何が入っているか分かるようにラベリングする際は、変更しにくい印字ラベルは使用しないほうがよいと水谷さんはアドバイスします。
「テープに印字してラベルを作るものだと、マシンを立ち上げて、設定して…と手間がかかります。また、印字された文字の拘束力は強く、気軽に変更しにくいです。マスキングテープや養生テープなど、簡単にはがせるものに油性ペンで書いて貼るのがおすすめです」(水谷さん)
子どもの成長によって生活スタイルは変わっていくもの。上記のラベルの例のように、収納方法を柔軟に変化できるようにしておくことも、整理収納の大きなポイントと言えますね。
おわりに
整理収納アドバイザーとして活躍されている水谷妙子さんに、整理整頓のコツとともに、整理整頓や収納が苦手な小学生への効果的な働きかけのポイントを伺いました。
「頭ごなしに叱らずに自分で考えさせる声かけをしながら、まずは現在のレベルで片付けられる仕組みを作っていくことが大切です」と水谷さん。無理をせずに段階を踏みながら子どもの成長を促すようにしましょう。