悩んでいませんか? 子どものお小遣い
子どもが小学生になると、「そろそろお小遣いを渡そうかな」と考える親は多いのではないでしょうか。
しかし、いつから、どれくらい、どのようにお小遣いを与えればいいのか、親としては悩むところ。そこで、ファイナンシャルプランナー・キャリアコンサルタントであり、お金の教育やキャリア教育を普及する「キッズ・マネー・ステーション」を主宰されている八木陽子さんに、現代のお金の価値観も踏まえながら、小学生のお小遣いについてお話を伺いました。
小学生のお小遣い、どれくらいの頻度で渡している?
少し古いデータになりますが、金融広報中央委員会の調査結果から小学生のお小遣い事情をひもといてみましょう。
2015年度の「子どものくらしとお金に関する調査(第3回)」によると、「お小遣いをもらっていない」と回答した子どもは、低学年では全体の27%、中学年では全体の26.8%、高学年では全体の26.6%でした。
どの学年でも7割強の子どもがお小遣いをもらっていることになりますが、もらい方には違いがあります。上のグラフの通り、低学年では「ときどき」お小遣いをもらっていることが一番多く57.3%で「月に1回」は13.4%。高学年では「ときどき」が38.3%で、「月に1回」は45%です。
「低学年のうちはどこに行くにも親と一緒のことが多く、生活面でも親がきめ細かくサポートしているのでお小遣いを使うタイミングが少ないこともあります。しかし、中学年になると徐々に子ども同士で出かける場面も出てくるので、お小遣いを使うことがあるでしょう」(八木さん)
金額については、全学年「月1回」の場合は、最も多いのが500円。「ときどき」の場合は、低学年と中学年は100円が多く、高学年では1000円に。行動の自由が広がる中学生になる前に金額が増えています。
参照:金融広報中央委員会 子どものくらしとお金に関する調査(第3回)2015年度
子どものお小遣い【いつから】【いくら】【どのように】
「お小遣いは、あげるだけでお金を上手に使えるようになる魔法の杖ではありません」と八木さん。
金銭感覚を養い、計画的にお金を使うということを経験から学んでいくことが必要なのです。
中学生や高校生になると友達と軽食を取るなど、お小遣いを使う額が大きくなります。また、思春期になるとコミュニケーションが難しくなりがちということもあるので、小学生のうちにお金を使う練習を重ね、金銭感覚を身に付けておくことが望まれます。
そのために、お小遣いを【いつから】【いくら】【どのように】渡せばいいのかについて、八木さんに伺いました。
【いつから】子ども同士で出かけ始める時期が適切
「お小遣いを渡し始めるのは、子ども同士の付き合いの中でおやつや飲み物などを買うためのお金が必要になってくる時期が目安になります」(八木さん)
家庭ごとに子ども同士で遊んだり、習い事に行ったりするようになるタイミングは異なりますが、だいたい小学校中学年からお小遣いを渡し始めるのが適切といえるでしょう。
【いくら】使い道(使い方)によって金額を決める
「お小遣いの額は、以前は『学年×100円』や、『年齢×100円』といった感じで決めることが多かったと思います。年齢が上がるに従って必要な金額が増えることを考えると、それも悪くはないです。しかし、計画的にお金を使えるようにするためには、まずお小遣いの使い道をはっきりさせてから、それに応じた金額を渡すようにするのがおすすめです」(八木さん)
例えば、月に3回友達とお菓子を買うためならいくら必要か、毎月まんが本を買うとしたらいくら必要かというように、まず必要なお金を考えることから始めて、お小遣いの金額を決めるのがよいとのことです。
【どのように】お小遣いの渡し方
お小遣いの渡し方には大きく分けて「定額制」、「報酬制」、「定額制と報酬制の併用」に分けられます。
「どの方法にもメリットとデメリットがあります。そのため、デメリットをカバーするために、子どもへの声掛けも重要になってきます」(八木さん)
定額制
「毎月1日に1000円渡す」というように決まった日に渡す方法です。「いつ」に「いくら」もらえるかが分かりやすいので、お小遣いを計画的に使いやすいといえます。
しかし、自動的にもらえることから「お金が労働の対価」であることが伝わりにくくなるという懸念も。
「定額制の場合は、『お父さんとお母さんが働いているから、君にお小遣いを渡せるんだよ』と一言添えて渡すのがおすすめです。それだけでも、子どもの意識が変わります」(八木さん)
報酬制
「お風呂掃除1回につき10円」など、お家のお手伝いをしてもらった時にお小遣いを渡す方法です。頑張っただけお金がもらえるため、お金が労働の対価であるという感覚が身に付きやすいです。
しかし、家族の一員として当然やるべき仕事も、お金をもらわないとしなくなってしまう可能性があります。
「あらかじめお小遣いをもらえるお手伝いとその金額を決めておき、『お金がもらえないお手伝いもお願いね』と伝えておきましょう」(八木さん)
定額制と報酬制の併用
定額制と報酬制の利点を持ち合わせています。定期的にお小遣いがもらえるため見通しがつきやすく、お手伝いによってお金が労働の対価であることも分かりやすいです。
しかし、「お手伝いをしてお小遣いをもらえばいいや」と油断して、定額制でもらえる金額を無駄遣いしてしまう可能性も。無駄遣いや計画性のない管理はしないように伝えておきましょう。
お小遣いで、子どもに金銭感覚を身に付けさせるためのポイントは?
お小遣いを通して子どもに金銭感覚を身に付けさせるためには、どのようなことが必要なのでしょうか。八木さんにおすすめポイントを伺いました。
お小遣い契約書を作る
「口約束ではなく、お小遣いに関する契約書を作って子どもと契約を交わす形にします。それによって、子どもに大切なお金をもらっているのだという責任を感じてもらえます」(八木さん)
契約書には、「おこづかい会議」と称して子どもと話し合って決めたお小遣いのルールを記載します。
内容は、
- 金額
- お小遣いをもらう日
- 使い方
- (報酬制のお小遣いなら)お小遣いをもらえるお手伝いについて
上記の他に、「もしテストで良い点数を取ったら」「もし約束を守れなかったら」など、各家庭の方針に沿って子どもと話し合いながらルールを決めていけるとよいでしょう。
また、お年玉などの臨時収入があった時にはどうするか、お小遣いの使い道を親にどのように報告するかなども決められるといいですね。
八木さんの著書「マンガで覚える 図解 おこづかいの基本」では、「お小遣いを上手に使うには?」「お小遣いは何のためにあるの?」といった子どもたちの疑問を、フルカラーの漫画で楽しく、子ども目線で解説しています。具体的にお小遣いをどのようにあげたらいいかも分かりやすく、親の疑問点にも答えていて実践的な内容です。内容に沿ったオリジナルのお小遣い帳も付いています。
お小遣いが上手に使えるようにサポートする
仕分けすることを教える
「あらかじめ “自分のために使うお金” “人のために使うお金” “貯めるお金” の3つにざっくりと分けておくことが、お小遣いを上手に使うポイントだということを教えましょう。
“自分のために使うお金” は、お菓子や文房具や漫画など自分がやりたいことや、欲しいもののために使うお金。“人のために使うお金” は、家族や友達へのプレゼントなど。“貯めるお金” は、1カ月分のお小遣いでは買えないものを買うためや、急にお金が必要になった時のために貯めておくお金です」(八木さん)
「貯めておく」必要を教える
「今すぐ欲しい」「高価なものを買いたい」といった理由でお金が必要になった時のためにお金を貯めておくこともやりくりの基本です。毎月使い切ってしまうのではなく、貯めておくメリットについても教えるようにしましょう。
子どもに任せて、失敗も見守る
「お小遣いは、お金を使う練習です。そのため、失敗しておくこともよいことだといえます。例えば、ガチャガチャで一気に使い切ってしまうと、親としてはお金の使い方に失敗する子どもの姿を見て『かわいそうだなぁ』と思いますが、大人になってから初任給を一日で使ってしまうよりは被害は少なくて済みます」(八木さん)
親はあまり口を出し過ぎず、子どもが失敗しても良い経験をしたと考えることが大切なようです。中学生、高校生になるとお小遣いも生活スタイルによって高額になっていくため、小学生のうちに失敗するほうがよいのではないでしょうか。
お金に関する知識を伝える
月に1回はお金の話をする
お小遣いを渡すタイミングなどで、月に1回は子どもがどのようにお小遣いを使っているか確認しましょう。
「親が厳しくお小遣いについてチェックするというのではなく、お小遣いを介してお子さんとコミュニケーションを取ってください。お小遣い帳を付けていれば、どういう使い方をしているのかも分かりやすいです。『高いお菓子を買ったようだけど、どうだった?』など、お金を使った際の感想を聞くのもよいでしょう。そうすることで、お子さん独自の価値観も育ちます」(八木さん)
電子マネーは使う目的をはっきりさせ、プリペイド式で
小学生になると、多くの子どもが電子マネーを使用する機会が出てきます。電子マネーの使用には、一定のルールを設ける必要があります。
「電子マネーの場合、限りがある、減ってしまうという感覚を持ちにくいのがデメリットです。そのため、何に使うかを限定して、プリペイド式にしましょう。可能なら親子一緒に現金でチャージしてください。また、残高を把握し、1カ月に一度は履歴を確認するとよいでしょう」(八木さん)
お小遣いを渡して、学用品の買い足しなどを任せる
「子ども自身が欲しいと思っているものだけではなく、学校で使う鉛筆や消しゴム、ノートなど学用品の買い足しを、お小遣いを与えて任せるのもよいでしょう。親御さんの手間が軽減されますし、『自分のお金』を使って買うことで、物を大切にするようにもなります」(八木さん)
お金に関する知識を伝える際は、難しい話を一方的にするのではなく、子どもが実際にお金を使ってみて感じたことや経験を通して、コミュニケーションを取りながら教えていけると理想的ですね。
おわりに
お金の教育・キャリア教育を推進する「キッズ・マネー・ステーション」を主宰されている八木陽子さんのお話で、小学生のお小遣いについてのさまざまな具体策が分かりました。八木さんによると、「お小遣いは、親子のコミュニケーションのツール」とのこと。子どもと話し合って楽しみながら、時には失敗もしながら、家族みんなで大切なお金について考えていきましょう。
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