終活はまず何からすればよい?
人生の終わりに向けて身辺整理を行うことを終活と言いますが、具体的にいつから何を進めればよいのでしょうか。終活カウンセラーや社会保険労務士など複数の資格を持つファイナンシャル・プランナーの中村薫さん(以下、中村さん)にお話を伺いました。
「終活というと、死後の儀式や身辺整理という狭いイメージで捉えている人もおられるかと思いますが、それだけではありません。生きている『今を納得感ある毎日にするために』やっておきたいことや、万一のことが起こった場合にどうしたいか、あるいはどうしたくないかを考えておくことも大切なんです」と中村さん。
死後のことを考えるのは気乗りがしない人も多いもの。そうした場合は、死後のことを考える前にまず、生きている間にやっておきたいリストを作ることから始めるのもよいそうです。中には、20代でエンディングノートを書きたいと相談にきた女性のお客さまもいるとのこと。終活は「残りの人生を自分らしく生きるための活動」という考え方が広がっているんですね。
終活で考えるべきテーマは「資産の有効活用」
「終活というと『財産の相続をどうするか』がメインテーマと思う人もおられます。お金は可能性や選択肢を増やす道具ですが、お金や物的資産だけでなく、人間にはさまざまな資産があります。家族や親族、人脈などの人的資産や自分の身体や心も大事な資産。こうした全ての資産について、どう有効活用するかを考えていきます。
有効活用とは死後にどう残すかだけでなく、『したいことをする』『したくないことを決める』ことも重要です。自分らしく、満足のいくように、自分を中心に考えていきます。「会いたい人に会っておく』『行きたいところに行く』『食べたい物を食べる』など自分の資産を活かして生きることを考えていきましょう。
健康状態も大事です。体力や気力がなくなるとセルフネグレクトにつながってしまいます。自分にとって大事なものをメンテナンスしつつ、うまく付き合っていくことを考えていくことが大切です」(中村さん)
終活は自分らしく最期まで生きるための活動だという中村さん。例えば、健康状態が思わしくなくてやりたいことができなかったり、好ましくない人間関係が出てきたりとネガティブな状況に気付くこともあるかもしれません。それでも、今ある状態を0(ゼロ)と捉え、一度リセット。そこから人生をリスタートするイメージで考えていくとよいとのことです。
完全保存版「終活のやることリスト」
□ 資産の洗い出し・整理(お金、人脈、心身の健康状態)
□ 遺言書の作成
□ 不用品の片付け・整理
□ デジタルサービスやデータの整理
□ 今後の生活、ライフプランについての希望
・介護状態になった時の希望(施設入所か自宅介護かなど)
・家族信託、成年後見などの制度利用に関する希望
□ ペットを託す先の検討
□ 葬儀・お墓・散骨に関する検討
中村さんに、やることリストを洗い出す上でいくつか注意点も伺いましたので、詳しくご紹介していきます。
資産の洗い出し(お金、人脈、心身の健康状態)
自分の財産を洗い出す(お金、不動産、車、家財、宝飾品など)
中村さんによると、金融機関を遺族が調べて解約するのは大変なので、日常生活の口座と貯蓄用の口座の2つに分けて整理しておくとよいとのこと。有価証券は、そのまま残しておきたい希望がなければ、頃合いを見て現金化しておけると後の負担が少なくて済みます。
自分の人的資産を洗い出す(家族、親族、友人、取引先など)
人間関係の洗い出しと整理もしておきましょう。エンディングノートには必ず家系図が入っています。こうした様式を使って記入していくことで、家族や親族、元配偶者など、相続に関わる人たちを漏れなく洗い出すことができます。
「おひとり様の場合は、兄弟姉妹の子どもたちなど頼れる人がいるかどうか。いないなら制度を利用したり、業者に頼む方法もあります。家族信託や成年後見制度の利用を考えるのであれば、家族信託に詳しいFPや税理士、司法書士を探しておきましょう。また、遺産を引き継ぎたい人がいるかも考えておく必要があります」(中村さん)
家系図に加えて、連絡先のリストも作っておくとよいそうです。
「友人、仕事の取引先、知り合いなど、生きている間に会っておきたい人、お礼を言いたい人、万一の時に連絡してほしい人(連絡してほしくない人)などリストアップしておきましょう。普段意識していない人脈も含めて、あらためて確認することが大切です。こうした人脈も資産です。そうすることで、自分の持つ資産の大きさに気付くこともあると思います」(中村さん)
自分の健康状態を確認
健康は自分らしく生きるために一番大切な資産と呼べるかもしれません。体の健康や心の健全さを保つには、体力・気力の棚卸しも必要です。体力や気力に心配があれば、どうメンテナンスすれば、残りの人生をイキイキと過ごせるか考えてみましょう。
スポーツジムに通う、健康ランドに行く、食べ物に気を付けるなど、さまざまな選択肢から自分にあったものを選べるとよいですね。
遺言書の作成
「遺書はいつ書いてもOKですが、法的効力はありません。自分の財産を誰かに受け取らせることを指示するには、遺言書を書く必要があります。遺言書は自筆証書遺言や公正証書遺言など、種類によって様式が決まっています。様式通りに作成しないと、法的効力を持たなくなる(つまり思った通りに遺産を分けられない)ので注意が必要です」(中村さん)
不用品の片付け・整理
不用品を片付けて整理しておくことも大切です。不用品かどうかを判断したり、片付けるには意外と体力が必要なもの。体力と気力が十分にあるうちに、少しずつ不用品の整理を進めていきましょう。遺族が片付けをしている中で、亡き人が隠していたものを見つけることも少なくないようです。日記など見られたくないものがあれば、早めに処分をしておくと安心ですね。
デジタルサービスやデータの整理
死後にどのデジタルサービスを契約しているのか、遺族が把握し切れず困ることも多いそうです。契約しているデジタルサービスは一覧を作っておきましょう。ログインの際に必要なメールアドレスやID、パスワードも遺族が分かる場所に記載しておく必要があります。ただし、IDとパスワードを一緒に書いておいておくのは危険もあります。別々に保存し、遺族なら分かるようにしておくと安心かもしれません。
また、保存している写真や動画などのデジタルデータも他の人に見せたくないものがあれば削除しておきましょう。
今後の生活、ライフプランについての希望
施設入所を希望する場合、若くて元気なうちに入りたいのか、それともある程度まで自宅で過ごし、介護状態が進んでから入りたいのかにより、対象となる施設の種類が変わります。前者の場合はサービス付き高齢者向け住宅(サ高住)、後者の場合は介護や看取りまでケアしてもらえる有料老人ホームが対象になります。
施設を見学しながら自分がどういう生活を送りたいのかを、具体的にイメージするとよいそうです。
葬儀・お墓・散骨に関する検討
最近では、葬儀を無宗教にしてお経の代わりに好きな音楽を流す、お墓を樹木葬にする、墓自体持たずに散骨にするなど、選択肢は広がっています。人生の最期くらい自分の好きなようにしたいと思う人も増えてきています。葬儀や埋葬について事前に決めてエンディングノートに記して、業者ともやり取りを進めておけば遺族の負担を減らせます。
一方で、葬儀や埋葬方法は故人が勝手に決めた方法で行おうとしても、実際に実現できなかったり、故人の遺志通りに実現しようとした遺族がその他の親族から責められることもあります。
例えば、無宗教の葬儀にして戒名をもらわなかったことで、決めていたお墓に入れてくれないお寺もあるようです。気に入った墓石を注文しておいても、指定していたお寺で拒否されてしまうことも。人気の海での散骨ですが、船酔いが不安で参加したくない親族がいることもあります。
このように自分の希望がその他の遺族と合わなかったり、実現しにくいこともあるため、自分の希望が見えてきたらエンディングノートに書くとともに親族にも伝えておくとよいそうです。
「自分の希望する内容が見えてきたら、まだ決まっていない状態で、ふんわりと家族や親族に聞いてみるのがオススメです。死後に遺族同士のもめ事につながらないよう、家族の意見も反映しながら決めていくとよいでしょう」(中村さん)
ただし、自分らしい最期のためなので、周りの意見に振り回されすぎず、譲れないポイントは大切にしても良いと思います。
中村さんによると、遺族に負担をかけたくないと、生前に希望した業者と契約しておく方も多いようですが、これも少々注意が必要だそう。あまりに先の未来を想定して先に業者と契約を進めてしまうと、その間に業者が廃業してしまうリスクもあるため、契約や支払いは死期を意識し始めた時期がよいとのことです。
ペットを託す先の検討
ペットがいる場合、誰に託したいのか、家族信託契約を用いたペット信託を使うかどうか、決めておくのが大切です。ペットには健康保険がないため、病気の時など想定外にお金がかかる場合もあります。知人や親族に託す場合でも必要なコストをどう工面するか考えておく必要があります。
エンディングノートはどう選ぶ? 選び方のポイント
終活が認知されるようになり、今や多様なエンディングノートが出版されています。エンディングノートを使えば、終活のやることリストが一覧になっているので、大事なことを抜け漏れなく整理できますね。
中村さんによると、エンディングノートはライフプランを重要視するもの、財産目録的なシンプルなもの、自分史に力を入れたものなど多様なので、書店に行き実際に手にとって選ぶとよいそうです。いくつか買っておくのもよいといいます。
「『エンディングノートは一度書いたらおしまい』と思っている人も多いですが、将来や死後に関する気持ちは変わることもあります。気持ちが変わったら書き直してもいいんです。ただその際、どの記述が最新か分かるように、項目ごとに日付を書いたり、書き直したときもその部分に日付を書いておくと良いでしょう」(中村さん)
中村さんによると、気が重かったり決断しきれないことがあると、エンディングノートを書く手が止まってしまいがちなのだそう。とりあえず書けるところだけ埋めてみて、家族に書いたことを伝えるのが大切だそうです。
エンディングノートは無料でダウンロードできるものも
インターネットで書き込んだり無料でダウンロードできるPDFもありますが、中村さんによると、大事なのは「そのファイルを印刷し書いたことを必要な人たちに伝えておくこと」だそう。印刷しておけば、パソコンに保存したまま遺族が見つけられないというリスクを避けられます。
なお、葬儀に関して細かな仕様を決めておきたい場合には、葬儀会社が出しているエンディングノートを使うとよいそうですよ。
参考:法務局 「エンディングノート」(PDFダウンロード版)
実際にエンディングノート作成にチャレンジ
実際に終活を考え始めたというご夫婦にお話を伺いました。ご夫婦ともに70代に差し掛かる年代で、検討し始めたきっかけは、奥さまのお母さまが要介護の状態になったことだったそうです。
「母が誤嚥性肺炎になり、治療を進める中で段々と薬が効かなくなってきました。このままでは余命があと1週間と言われ、本人の意識がない中で胃ろうの手術をするかどうか決断を迫られたのです。兄弟で話し合い、最後まで親孝行できるように母の手術をお願いすることに決めたのですが、今でも母は本当はどうしたかったのかと思うことがあります。生前、もっと母と話し合っておいたらよかったかなと」
本人の意志確認ができていなかった場合、どうしても家族の意志が尊重される形になります。ご家族で最善の策をと、話し合って決めた結果、胃ろう手術を実施したものの、それでよかったのか迷うことがあるそう。
こうした決断はどんなタイミングであれ難しいものですが、元気なうちに夫婦や家族でお互いの意向について話し合っておくことは、決断の一助になりますね。
お二人に売れ筋のエンディングノートを数冊お渡しし、書きやすいところから書いてみていただきました。
「葬式やお墓は高くなければ何でもいいと思うけど、まだイメージできないな」
「健康という資産が一番大事だから、どうメンテナンスして健康寿命を保つのかも書いておきたい」
「普段、飲んでいるお薬が何か、本人しか分からなかったりするから、こうして一覧にしておくといいわね」
ご夫婦でいろいろお話しながらパラパラめくるも、どこから書いてよいのか迷うご様子でした。ご主人がふと目を止めたのが自分史の欄。
「こうやって何歳で何があったか思い出しながら書いていくのはいいね。過去のことを思い出していると、脳が活性化する感じがする」とご主人。そのページを見ながら、パソコンにメモを書いていきたいと言います。年を取っていくと段々、記憶が薄れていくこともある中で、こうしてメモに残しておくことで安心感があるそうです。
ご夫婦で話し合いながら書く中で、「こういう本を使うことで、家族のコミュニケーションツールになるし、あらためて見落としていることがないかを見直すきっかけになった」とご主人。
また、「高齢になるかどうかではなく、自然災害や事故など何があるか分からない。結婚や出産など、家族に大事な出来事があるたびに書いたらいいと思う。エンディングノートという名前が良くないな、生きている間に必要なノートという意味が伝わるといいね」というご意見も。家族で楽しみながら一緒に作れたら理想的ですね。
参考:K&Bパブリッシャーズ「自分史年表+エンディングノート 令和版」
なぜ終活やエンディングノートが重要なのか?
葬儀といえば、昔は特別なこととして近所から人が手伝いに来てくれるのも当たり前でしたが、今や遺族が全て自分たちで執り行い、並行して死後の手続きも進めていく必要があります。遺族の負担が格段に増していると中村さんは指摘します。
中村さん「昔はめったにないことだから仕方ないという意識が浸透していて、近所の人たちが手伝ってくれたりとある程度、周囲に皺寄せが出ることが許されていました。しかし、少子高齢化が進み、亡くなる人が増え全体の人口が減ってくる中で、そうした意識は薄れてきています。総務省の2018年の人口推計によると、1980年には亡くなる方1人に対して109人の労働人口※があったのが、2021年には52人と半分以下にまで減っています。近所の人たちなどの手伝いは得られず、自分でお葬式や手続きなど作業を進めながら、同時並行で決めるべきことを決断していかなくてはなりません」
「こうした中で遺族の負担を増やさないためにも、死後の準備をある程度進めておくのが重要」だと中村さん。事前にエンディングノートを書いて自分の希望を整理しておくとともに、必要ならお金を用意して業者さんにも相談しておくとよいそうです。
※15歳~64歳以下の人口を労働人口としています
おわりに
終活というと、死後の準備や整理をするのが中心だと思いがちですが、それだけではありません。残りの人生をより豊かに楽しく生きるための活動でもあります。体力や気力に余裕がある時にこそ、少しずつ取り組んでいきましょう。
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