好きな絵や模様で雑貨が作れる! プラバンの魅力とは?
「プラバン」とはプラスチック製の薄い板のこと。さまざまな種類のものが、100円ショップや文房具店、ホビーショップなどで販売されています。そのプラバンに油性ペンや色鉛筆などで自由に絵を描いてカットし、オーブントースターで焼くと、そのまま小さく縮むので、オリジナルのキーホルダーやアクセサリーなどの雑貨が作れます。プラバンは透け素材なので、絵が苦手な方でも好きな絵や模様にプラバンを重ねて転写すればOKという気軽さも人気です。
今回はプラバン雑貨の作り方の書籍も出版されている、イラストレーターの福家聡子さんに、プラバン雑貨作りの楽しさや基本の作り方などを教えていただきます。福家さんのオリジナル作品はカラフルでポップ、相撲や民芸品、歴史上の人物など、ユニークなモチーフも取り入れられていてどれも魅力的。こんなかわいいものがプラバンができるなんて驚きです。楽しいデザインはどんなところから思いついたのでしょうか?
福家さん「こんなものがあったら自分が欲しいなというのが私の雑貨作りの原点なので、デザインはそれが色濃く反映されています。相撲モチーフのものは、そもそも相撲好きだったので、力士ものはもちろん、裏方さんもののグッズがあったら欲しいなと思って、自分のイラストをグッズ化しました。紙もの、布ものなどいろいろ作りましたが、プラバンならではのツルッとした質感ならこんな色のものが欲しいなと考え、今のデザインや色合いに行き着きました。せっかくの手作りなので、自由に楽しんでます」
では、プラバンの魅力とは何なのでしょうか?
福家さん「手作りものってあたたかみがあったり、柔らかい質感のものが多いと思うんですが、それに反してプラバンは、手作りでも無機質でツルッとした質感、ケミカルで実験的な要素があります。画材や成形などの工夫で、あたたかいニュアンスを加えることも可能で、アイテムの幅が広く、追求するほどに手作りなのに手作りっぽくないものができるのが魅力です」
確かに色や形のアイデア次第で、手作りと思えないものが作れるのはプラバンの大きな魅力ですね。プラバンは、紐を付ければキーホルダーやストラップ、ネームプレートに、アクセサリーパーツを付ければピアスやブローチ、リングにと、工夫によっていろいろなアイテムが作れます。最近よく見かけるアクリルスタンドも実際には素材が違いますが、似た雰囲気のアイテムを自作できます。
試行錯誤が楽しい色付け
では、福家さんがプラバンを作り始めたきっかけは何だったのでしょう?
福家さん「大学卒業後、イラストレーターをしつつ、紙もののオリジナル雑貨などを作って販売していました。ある時、自分のイラストをグッズ化できるインクジェット対応のプラバンの存在を知り、小さい頃に作ったことを思い出して、プラバンでの雑貨製作を始めました」
最初はインクジェット対応のプラバンのみで雑貨を作っていましたが、震災後にチャリティーワークショップをやることになり、どんな人でも楽しめる手描きのプラバンでの製作もスタートしたそうです。商品として販売できるように完成度を高めるため、いろいろな画材で試してみたり、インターネットや本で情報収集をして現在の製作スタイルに落ち着いたと話す福家さん。
福家さん「手描きのプラバンは、画材の特質を活かせるようになるまで、初めは試行錯誤でした。画材によるニュアンスの違い、色の組み合わせのバランス、重ね塗りで生まれる色合いなど再発見することが多々あり、イラストレーターとしても勉強になりました。また、塗った色がそのままで完成するわけではなく、熱して縮むと色が変化するので、そこが難しいところでもあり、面白いところでもあります。変化を計算に入れて色付けするのですが、考えていた色よりも濃くなってしまったり、雰囲気が変わってしまったり、逆にあまり変化がない場合もあって、思いもよらない色になってしまったりもします。そこが追求し甲斐があるのかもしれません」
縮んでいくドキドキ感を楽しんで!
プラバンを作ってみて最も驚くのが、オーブントースターで焼いたプラバンがそのまま縮んで小さくなる工程です。せっかく上手く描けたプラバンもこの工程で失敗するのではと心配する方も多いかもしれません。歪んだりせずにちゃんと縮むのか、不安になりますが、どういう点に気をつければいいのでしょうか?
福家さん「オーブントースターに入れて焼く時は確かにドキドキしますよね。でも慌てないで大丈夫です。大きさや形、使用している画材、オーブントースターの機種、温度などさまざまな条件によって焼き時間は変わりますが、プレスのための道具などをきちんと準備しておき、焼いている間は目を離さず、あせらないで作業を進めれば失敗は少ないと思います。プラバンの端材に少し色付けをして、本番前に試しに焼いてみると大体の流れがわかると思うので、試し焼きは是非やってみて欲しいです。
焼く工程は、プラバン雑貨作りの醍醐味です。徐々に縮み始めたプラバンが反り上がり、もうダメかな、失敗かなと思ったところで急に平らに戻るという、なかなかドラマチックな展開なので、一瞬たりとも見逃せません。他の手作りでは体験できないエンターテイメント性があるので、ワークショップなどでも一番盛り上がる工程です。恐れず、焦らず、ドキドキ感を楽しんでもらえるといいかなと思います」
どうしても慌ててしまいそうな工程ですが、準備をして臨めば心配無用とのこと。もし例え失敗したとしても、手作りならではの味になるので、それもまた楽しんで欲しいとのことです。
プラバンを楽しみ尽くす! 連載の内容をご紹介
今回の連載では、画材、モチーフ、アイテムなど、回ごとに違うものを福家さんにご紹介いただきます。2〜4回目までの掲載アイテムは、福家さんに「ウチコト」限定で描き下ろしていただいたオリジナルデザインです。図案、型紙もダウンロードできるようになっていますので、絵が苦手という方でも、重ねて写す方法で、楽しく作っていただけます。連載の詳しい内容は以下の通りです。
- 1回目(今回):プラバン雑貨作りの準備。全部の回に共通で使用する材料や道具、プラバンにおすすめの画材、製作前の下準備と注意点などを紹介します。
- 2回目:色鉛筆と油性ペンという身近な画材を使ったプラバンアクセサリーを作ります。図案を重ねて模様を写すだけ、パーツを貼り付ければ完成のおしゃれなアクセサリーです。
- 3回目:画材を少しステップアップ。プラスで不透明水性顔料インクのマーカーを使用して、ポップな色合いのフルーツモチーフのキーホルダーを作ります。
- 4回目:少し複雑な図案に挑戦します。お子さんに人気の動物をモチーフにしたネームタグを紹介します。
- 5回目:写真をトレースして作る、人気のアクリル風スタンドです。お子さんやペットの写真から上手に転写するポイント、コツなどをしっかり紹介します。
かわいいデザインが満載ですが、連載のお楽しみポイントを福家さんに伺いました。
福家さん「今回は基本的に図案や型紙を写す方法です。模様を写すというデザインからスタートして、シンプルなラインのフルーツ、愛らしい動物、最後は写真を写してオリジナルを作るというものにしました。画材や色は回ごとに一応指定していますが、ぜひ自由に組み合わせてみて欲しいです。ぬり絵とかが好きな方は重ね塗りやグラデーションなど時間をかけて塗り込んでみるのもいいですね。縮む工程はドキドキ感があるので、お子さんと一緒に作っても盛り上がって楽しめると思います」
それでは、プラバン作りの準備を始めましょう!
では早速、準備を始めましょう。今回はプラバン作りの材料、道具、画材、下準備、注意点を紹介します。
プラバン作りの材料
- プラバン
透明タイプ、フロストタイプ、インクジェットタイプなど、用途によってさまざまなタイプのものが販売されています。またサイズ、厚さもいろいろあるので、作りたいアイテム、用途、色付けの仕方などで選ぶといいでしょう。今回は透明タイプ、厚さ0.3㎝のものに紙やすりをかけて使用しています。
プラバン作りの道具
- オーブントースター:今回は一般的なオーブントースターを使用しています。製品によってワット数、温度が違うため、焼き時間は窓からプラバンの状態を覗きながら調整しましょう。
- アルミホイル、クッキングシート:プラバンをトースターで焼く時に使用します。アルミホイルの上にクッキングシートを重ね、その上にプラバンを置くことでプラバンがくっつくのを防げます。
- プレス用のトレー:焼いた後のプラバンを平らにする時に使用します。今回はステンレスのものを使用しましたが、熱に強い平らなものなら代用も可能です。
- 紙やすり:透明タイプのプラバンを使う時、色を定着させるために表面をやすりがけします。今回は#400の細目を使用しています。
- マスキングテープ:プラバンと型紙を固定したり、プラバンの表面に付いたゴミを取ったりする時に使用します。
- はさみ:プラバンをカットするのに使用します。複雑な形でも切りやすい、細めの刃のものがおすすめです。
- 水性アクリルニス、筆、絵皿:色落ちや色移り防止のため、焼いた後のプラバンに塗布します。ホビーショップなどで販売されています。
プラバンを色付けする画材
- 色鉛筆:少ない色しか手元にない場合でも、重ね塗りをすることで色を混ぜることができます。また塗り方でグラデーションや濃淡をつけることも可能です。
- 油性ペン:プラバンに塗ると透明に見えます(黒だけは不透明です)。広い面を塗る時は太い方を、輪郭や細かな模様を描く時は細い方を使用します。
- 不透明水性顔料インクのマーカー:一般的に「ポスターカラーマーカー」として販売されている水性顔料インクのものを使用しています。乾くと耐水性があり、発色がいいのが特徴です。
プラバン作りの下準備
プラバンの片面を紙やすりでやすりがけします。削った粉が飛び散るので紙を敷き、その上にプラバンをマスキングテープで固定します。円を描くように全体を均等にやすりがけし、終わったらぬらしたティッシュペーパーなどで削り粉を拭き取ります。
これでプラバンの下準備は完了です。このやすりがけをした面に色付けをしていきます。
プラバン作りの注意点
①型紙と完成品の比較
一般的に販売されているプラバンは、焼くと4分の1から6分の1に縮むため、型紙と完成品を比較するとこのくらいの差が生じます。まずは作りたいサイズを決めて、どのくらい小さくなるかを考えて型紙を用意しましょう。
②使用するプラバンの大きさ
焼く工程で端が反り上がるため、あまり大きなサイズで作ってしまうと、反り上がった端同士がくっついてしまうことがあります。それを防ぐためにも、元のプラバンは10×10㎝以内に収まるサイズにしましょう。
③焼き時間の目安
焼き時間は、サイズ、画材、温度によって違うので、縮んでいく状態を見ながら調整します。プラバンが縮み終えて平らになったらすぐ電源を止めて、大体10秒後くらいを目安にプレスするといいでしょう。焼きすぎるとプラバンに気泡ができてしまいます。
おわりに
次回から実際にプラバンを使った雑貨を作ります。初回に作るのは、幾何学図案を重ねて模様を写すだけ、パーツを貼り付ければ完成のプローチピンです。アクセサリー、マグネットなどのアイテムにも展開します。
福家さん「幾何学模様は失敗が少なく、色使いでかわいくも大人っぽくもなるので、幅広く応用が楽しめるデザインです。身近な画材で作りますので、プラバン初心者の方にぜひおすすめ! お楽しみに!」