離乳食はいつまで? 終える目安や幼児食へ移行する時の注意点
一般的に生後5~6カ月くらいから始まり、1歳~1歳半までとされる離乳食ですが、歯の生え方やそしゃく力など個人差もあるので、本人の様子を見ながら徐々に幼児食に移行していくのが良いとされています。
小児栄養学を専門とする上田玲子さんによると、この時期の子どもの消化機能はまだ未熟で、離乳食完了後も調理の仕方には注意が必要なのだそう。
幼児食は大人の食事より薄味でやわらかく【離乳食完了期〜2、3歳頃まで】
「大人と同じかたさのものがある程度食べられるのは3歳以降になってからです。乳歯が全部生えそろうのは何歳頃かご存知でしょうか。だいたい2歳半~3歳ごろです。それまでは奥歯(乳臼歯)の上下が生えそろっていないため、臼のように食べ物をスリスリとすり潰すことができません。このため、レタスや油揚げのように薄くてペラペラしたものやトマトの皮などをすりつぶすことが出来ず、のどにつまらせる恐れがあるので嫌がります。これは生命の危険を感じて嫌がるのであり、わがままではないことを理解してほしいのです」と上田さん。
3歳までの間は歯の生え方やそしゃくする力により、「食べない」のではなく「食べられない」ものがあると上田さんは指摘します。また一言で「幼児期」と言っても。複数の段階があるそうです。
上田さん「ところで幼児期は1歳~5歳代(就学前)をさしますが、歯が生えそろう前の1歳~2歳代を幼児前期、3歳~5歳代を幼児後期として調理法や摂食量に変化をつけていくことが大切です」
幼児食に移行しても食中毒には注意【2、3歳ごろ〜8歳ごろまで】
乳幼児は免疫機能や消化能力が不十分なため、食中毒になりやすく、大人よりも重症化しやすい傾向にあります。正しい知識を身につけ、お子さんを食中毒から守りましょう。
食中毒予防の3原則(1)つけない
食中毒の原因となる菌やウイルスを食品につけないために
・調理や食事の前にはしっかり手洗いを。
・包丁やまな板などの調理器具は、食材別(肉用、魚用、野菜用など)に使い分ける。
使い分けできない場合は、きれいに洗い、熱湯や塩素系漂白剤などで消毒してから別の食材を扱う。
・食品の保存容器は清潔なものを使う。
食中毒予防の3原則(2)ふやさない
食中毒菌は10度から50度の温度帯で増殖しやすくなります。食品を室温に長時間放置するのは危険です。
・要冷蔵・要冷凍の食品は、すみやかに冷蔵庫や冷凍庫に入れる。
・作った料理はすぐに食べる。温かいものは温かいうちに、冷たいものは冷たいうちに。
・すぐに食べないときは、冷蔵庫に保管する。
・保存した料理は早めに食べきる。
・口をつけた食べ残しは廃棄する。
食中毒予防の3原則(3)
食中毒菌は熱に弱く、その多くは加熱することで死滅します。
・特に肉料理は、中心までしっかり加熱する。「中心温度75℃で1分間以上」が目安。
・料理を温めなおす場合は、よくかきまぜながら、全体を沸騰させ、均一に温める。
・乳幼児には生もの(生卵、生魚、生肉など)を与えないようにする。
サルモネラ菌や黄色ブドウ球菌など、食中毒の原因となる細菌は日常のあちこちに潜んでいます。免疫力が弱い子どもは重篤な症状に陥ることもありますので、十分に注意しましょう。
知っておきたい「離乳食の基本」
離乳食は、赤ちゃんの成長に伴って母乳だけでは不足するエネルギーや栄養素を補うための食事です。「離乳食を食べない」「食べるのを嫌がってなかなか進まない」とママやパパの悩みも多いですが、上田さんによると、月齢や赤ちゃんの状態に合わせてやわらかさを調整したり、苦手な味をやわらげるなど、工夫することが大切だそう。
「『母乳は栄養満点』とのイメージがありますが、実は、母乳の栄養価は出産以降、徐々に減少しています」と上田さん。段階を踏んで無理なく進め、食べ物からしっかりと栄養を摂取できるようサポートしてあげたいですね。食べやすくする工夫や進め方を詳しく伺いました。
離乳初期(月齢5〜6カ月ごろ):ゴックン期
離乳食は一般には生後5〜6カ月ごろからスタートします。「首がしっかりすわっている」「支えれば座れる」「食べ物に興味を示す」といった条件がそろっていれば、5か月を中心に早くても4か月以降、遅くても6か月中にはじめることができます。
まずは1日1回、ひとさじからスタート。大切なのは、赤ちゃんが食べ物の舌触りや味に慣れることです。つぶしたお粥から始め、赤ちゃんの様子を見ながら、野菜、豆腐、白身魚、固ゆで卵黄を試していきましょう。スタートの頃は唇を完全には閉じられませんが1か月ぐらいすると口をしっかり閉じて食べ物を取り込み、スムーズに飲み込めるようになります。
卵について、「そんなに早いタイミングで卵を与えて大丈夫?」と思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、問題ありません。むしろ、厚生労働省が発行する「授乳・離乳の支援ガイド(2019年)」においても、早い段階から卵を食べ始めた方がアレルギーリスクを抑えられるとの研究結果が示されています。
なお、食物アレルギーが疑われる症状が見られた場合には、自己判断で進めず医師に相談して進めていく必要があります。
参考:授乳・離乳の支援ガイド(2019年)
離乳中期(月齢7〜8カ月ごろ):モグモグ期
下の前歯の乳歯が生え始める時期です。食べる行為にも慣れ、舌と上顎で食べ物をつぶせるようになります。お粥を中心に、舌でつぶせるかたさの野菜や赤身魚(かつおやまぐろなど)、鶏ささみ、乳製品などを1日2回食べるのが目安。食べ物の種類を増やし、いろいろな舌触りや味を経験させましょう。
離乳後期(月齢9〜11カ月ごろ):カミカミ期
朝、昼、晩と1日3回の食事で、栄養をしっかり摂取します。食べ物のかたさの目安は、歯ぐきでつぶせるかたさです。
離乳完了期(月齢12〜18カ月ごろ):パクパク期
食事の回数、かたさの目安は歯ぐきで噛めるかたさに。手づかみ食べなど、赤ちゃん自身が食べるのが楽しいと感じ始めたら離乳完了への合図です。1日3回の食事となり、間食を1,2回の生活リズムが確立したら、乳汁は母乳や育児用ミルクだけでなく牛乳やヨーグルト、チーズなどの乳製品の利用でも問題がなくなる時期です。幼児食への準備を進めていきましょう。
歯が少ない乳幼児期、苦手な食材は避けてOK
「うちの子はあまり食べるのが好きではなくて・・・」と悩むお母さんは少なくありません。せっかく作った離乳食を食べてくれないと、心配になりますね。
でも、上田さんによると、「嫌だから食べない」のではなく、「本能的に食べられない」ケースも多いのだと言います。好き嫌いではなく、本人の発達の段階により食べられない食材も多いのがこの時期なんです。
上田さん「乳歯がすべて生えそろうのは、2歳半から3歳ごろ。離乳時期にはまだ歯が生えそろっていないので、食べ物を噛み取り、噛み砕くためのそしゃく力が足りません。そのため乳児は、口当たりの悪いものや食感に違和感のあるものが口に入ったとき本能的にのどに詰まらせる危険を察知し『危ない』と感じ、嫌がることが多いのです。例えば以下の食材がそれに当たります」
- ペラペラしたもの・・・レタス、わかめ、油揚げ
- 皮が口に残るもの・・・豆、トマト
- かたすぎるもの・・・塊肉、えび、いか
- 弾力のあるもの・・・こんにゃく、かまぼこ、餅
- 口の中でまとまらないもの・・・ブロッコリー、ひき肉
- 唾液を吸うもの・・・パン、ゆで卵、さつまいも
何を苦手とするかは個人差も大きいので、本人が嫌がる食材は無理強いしなくてOK。食べられるものから進め、刻んだりとろみをつけたり、和え物にしたり工夫をして徐々に食べられる食材の種類を増やしていきましょう。
離乳完了期になっても母乳やミルクを欲しがるのは、鉄分不足の可能性も
離乳完了期になっても夜泣きがあり夜間授乳がある、離乳食が進まない、体重の増えが悪い、1日に何度も母乳を欲しがる場合は、「鉄欠乏性貧血」の心配があると上田さんは指摘します。
上田さん「『子どもが欲しがるから母乳をやめられない』との声は少なくありませんが、甘えているのではなく、不足している鉄分を欲している可能性があります。冒頭で母乳の栄養価は出産以降徐々に減少するとお伝えしましたが、それは鉄分も同様。母乳でお腹を膨らませていると離乳食が進まず、結果的に鉄欠乏貧血に陥ってしまうことがあるので注意が必要です」
近年の研究により、乳児期に鉄欠乏性貧血の状態が3カ月以上持続すると、精神運動発達遅延につながることが分かっています。さらに3カ月以上見逃した場合、貧血が改善しても精神発達遅延は改善しにくく、将来にわたり影響を与える実験結果も報告されています。離乳が終わったかどうかにかかわらず、特に2歳までは鉄分補給を意識して行う必要があります。
上田さんによると、鉄分を多く含んだ食材(赤身の肉・魚・小松菜・ほうれん草など)を献立に活用する他、鉄鍋の活用に加えフォローアップミルクや、乳幼児用の鉄分強化食品を利用すると良いそうです。鉄欠乏性貧血の可能性が疑われる場合には、専門機関に相談してください。
「ベビーフード自主規格」商品を選ぶと安心
ベビーフードは、大きく分けて「ドライタイプ」と「ウエットタイプ」の2種類があります。レトルトや瓶詰の調理完成品は離乳後期以降ではやわらかすぎるので、ご飯にかけたり野菜と和えたりしてかたさを調整するといいでしょう。
最近は、さまざまなメーカーから離乳食が販売されています。「ベビーフード」を名乗るには厚生労働省が設けた「ベビーフード指針」をクリアする必要がありますが、さらに厳格な基準を設けている日本ベビーフード協会「ベビーフード自主規格」をクリアした商品を選ぶとより安心です。
調理品を利用するときは、清潔なスプーンで別の容器に移してから使いましょう。残ったベビーフードは、冷蔵庫で1、2日程度保存できます。冷凍食品は長持ちすると思われがちですが、ベビーフードに関しては1週間以内で食べきると安心。食品メーカーではマイナス40〜80℃で加工しますが、家庭用の冷凍庫はマイナス18℃と保存性に劣るため、消化機能が未発達な乳幼児に長期保存した食品を食べさせるのは避けた方が無難です。
おわりに
親の負担が少なくない離乳食。いつまで続ければ良いのか、どのように幼児食に移行していけば良いのかを知っておくことで、気持ちが楽になるかもしれませんね。なお、ウチコトでは大人の食事と離乳食を同時に作る「取り分け離乳食」のレシピをご紹介しています。取り分けなら面倒な離乳食も手間をグッと減らせますよ。