太陽光発電システムの仕組み
太陽光発電に興味はあるものの、「メリットや仕組みがいまいち分かりにくい」と感じている方も多いのではないでしょうか。今回は、住宅用太陽光発電システムの販売や施工を行う日天株式会社の岡野克さんに、太陽光発電システムの仕組みから、ご家庭に導入するメリット、設置の前に気を付けたいポイントを伺いました。
太陽光発電で電気を発電する仕組みは、大きく3ステップに分かれます。
【ステップ1】太陽電池をつなげた「ソーラーパネル」で太陽光を吸収する
【ステップ2】吸収した太陽光のエネルギーを電気に変換する
【ステップ3】変換した電気を、さらに「家庭用の電気」に変換する
「太陽光発電のシステム自体は、実はそこまで複雑ではありません」と岡野さん。一つ一つの仕組みについて、詳しく見ていきましょう。
【仕組み1】ソーラーパネルで太陽光を吸収する
太陽光発電と聞いて最初にイメージするのは、屋根の上に設置されたソーラーパネルではないでしょうか。太陽光発電システムは、このソーラーパネルで、太陽エネルギーを吸収するところから始まります。
ソーラーパネルとは、太陽電池をたくさんつなげて、風や雪などの自然環境でも正常に作動するように保護する素材で包み、パネル状にしたものを指します。
【仕組み2】太陽エネルギーから電気をつくる
ソーラーパネルに当たった太陽光は、太陽電池により電気に変換されます。太陽電池はp型とn型という2種類の半導体が組み合わされてできており、太陽光が半導体に当たることで電子の移動が活性化され、発電ができるのだそう。しかし、この電気はそのままでは家庭での使用ができないため、変換する作業が必要になります。
【仕組み3】電気を「家庭用」に変換する
太陽電池で発電された電気は、「接続箱」という装置でまとめられて、電気を家庭用に変換する装置「パワーコンディショナ」に送られます。
岡野さん「太陽電池でつくられた電気は直流電力といわれる種類です。この直流電力はそのままではご家庭で使用できないため、パワーコンディショナで交流電力というご家庭で使える電気に変換する必要があります。その後、家庭用のブレーカーにつなげることにより、各部屋に送電することが可能になります」
このような工程を経て、太陽光発電で発電した電気が使えるようになるのですね。
太陽光発電の仕組みは、専門的なところもあり難しいかもしれませんが、大まかにでも仕組みを理解しておくと、実際に導入する際に役立ちますので、ぜひ覚えておきたいですね。
太陽光発電システム導入のメリットとは?
太陽光発電といえば、「自家発電ができるようになる」「余った電気を電力会社に売ることができる」などのイメージをお持ちの方も多いのではないでしょうか。
一方で、ご自宅への導入を検討するとなると、「どれくらい電気をつくることができるのか」「電力会社にどのくらいで買い取ってもらえるのか」など、もっと具体的なところが知りたいですよね。そこで、岡野さんに太陽光発電を導入する具体的なメリットを伺いました。
【メリット1】電気代が節約できる
住んでいる地域・家の方角・屋根の角度や広さなどによって、つくれる電気の量は変動しますが、東京都に在住の方の平均では、1年で約5,423kWhの電力を発電することができると言われています。全国平均で消費するエネルギーの量は約4,322kWhなので、年間で使う電力を太陽光パネルで賄うことができる計算になります。
岡野さん「太陽が出ている日中の電気代は大幅に節約することができます。一方で、太陽がでない雨天や曇天の日、夜の時間帯には、電力会社から電気を供給してもらう必要があります」
太陽光発電を導入するからには、なるべく自家発電で賄いたいという方も多いと思います。その場合は、蓄電池も併せて導入することがおすすめです。蓄電池については、【メリット3】で詳しくご紹介します。
【メリット2】余った電気を電力会社に売ることができる
日中つくった電気を使い切ることができず、余ってしまった場合には、電力会社に買い取ってもらうことができます。経済産業省によると、2024年度の電力会社が電気を買い取る金額は、50kW以上で9.2円(屋根設置で12円)、10kW以上50kW未満で10円(屋根設置で12円)、10kW未満で16円です。
岡野さん「10年前は倍程度の金額で買い取ってもらえましたが、今は価格が落ちてきています。余った分を電力会社に売ることもできますが、蓄電池を一緒に導入し、余った電気をためて発電しない時間帯に使うか、停電のような非常時に使うことをおすすめすることが多いですね」
余った電気を売ることはあくまでプラスアルファとして考え、それ以外のメリットで導入を検討する方がよさそうですね。
参考:経済産業省 なっとく!再生可能エネルギー 固定価格買取制度
【メリット3】蓄電池を設置することで、夜間や非常時にも電気が使える
岡野さんによると、最近は蓄電池と太陽光発電をセットにしてご提案することが多いのだそう。
蓄電池とは、充電することにより何度も使えるような電池のことを指します。身近なものでは、モバイルバッテリーに使われているような電池のことです。
太陽光発電システムは、電気をつくることはできますが、ためておくことができません。蓄電池を一緒に設置することで、日中つくった電気をためておいて、日が当たらない夜間や曇天の日でも有効に電気が使えるようになります。
また、蓄電池は緊急時にも役立ちます。近年、地震や台風などの予測できない自然災害が多く発生し、停電するケースもあります。そんな時、蓄電池に電力をためておけば、電力会社からの供給がストップしても、電気を使用することができるのです。災害時の停電も増えてきている中で、非常時での活用メリットは大きいですね。
太陽光発電システムと蓄電池も東京ガスにお任せ!
東京ガスでも、太陽光発電システムを取り扱っています。ガスと太陽光を組み合わせると、ロスがなく高効率というメリットはそのままに、エネルギーを安定供給しながら売電できる量を増やすことができるというメリットがあるんです。蓄電池と併用することで、災害対策はもちろん、太陽光発電による電力をためて自家消費できるので、購入電力量も削減できます。詳しくは下記も参考にしてみてください。
太陽光発電システムを導入する前に、これも知っておきたい!
では、実際に太陽光発電を設置する際、どんな点に気を付ければよいのでしょうか?
ここでは、事前に確認しておきたいポイントをご紹介します。
設置方法と工事にかかる時間
太陽光発電システムの工事は、大掛かりで大変そう、という印象はありませんか?
岡野さんによると、設置工事自体はおよそ3日で終わる場合が多く、意外と手間が掛からないとのこと。具体的にどんなスケジュールで設置されるのか見てみましょう。
【1日目】ソーラーパネルを屋根に取り付けるための足場を組みます。足場の組立ては3~4時間程度です。
【2日目】ソーラーパネルの設置とパワーコンディショナー・接続箱を設置します。これらは同時並行で行うことができ、作業時間は約6時間程度です。蓄電池を付ける場合は、追加で3時間程度の作業時間が必要になります。
【3日目】1日目に組んでいた足場を取り外し、これで設置完了となります。
平均的な使用期間は?
岡野さんによると、ソーラーパネルを使う年数は25年から35年程度が大半なのだそう。そう聞くと、「長期間同じパネルを使えるのか不安」「故障した時の保証はあるのか?」といった不安を抱く方も多いかもしれません。しかし、ソーラーパネルには、定期的な点検やパネルの保証期間などが設けられているそう。
岡野さん「定期的な点検については、経済産業省にて、安全性確保、発電量維持の確認を4年に1度点検することが義務付けられています。また、保証期間は提供するメーカーにもよりますが、10年程度が一般的です」
長期で安定的な発電が維持できるように、定期的な点検を行うことで、継続して使える工夫をしたいですね。
参考:経済産業省 最近の太陽光発電市場の動向
気になる導入費用は?
岡野さんによると、10年以上前には何百万円もの設置費用が必要だったそうですが、今は100万円以下でも設置できるようになり、昔に比べて検討しやすくなっているそうです。
また、太陽光発電・蓄電池システムを導入するにあたり、補助金が活用できる自治体もあります。設置を検討する際には、事前に各自治体のホームページを確認するようにしましょう。
よりお手軽に太陽光発電システムを導入するには?
以前より導入費用が下がっているといっても、まとまった費用が必要な太陽光発電。更に、蓄電池を一緒に設置する場合は、容量にもよりますがプラスで100~200万円ほど必要になるそうです。
「太陽光発電や蓄電池を導入したいけど、初期費用はなるべく抑えたい・・・」と思われる方は多いのではないでしょうか。そんな方には、太陽光発電を初期費用0円から始められる、第三者所有モデルという買い方がおすすめです。
第三者所有モデルとは、従来のように太陽光発電システムを自分たち(電力需要家)が所有するのではなく、電力会社等が所有し、太陽光発電で発電した電気のうち、自分たちで自家消費した電気の対価を電力料金やサービス料として支払うモデルのことです。
初期費用がかからず、月々の電力料金やサービス料を支払うモデルなので、なるべく初期費用を抑えて太陽光発電システムを導入したい! という方に最適な導入方法の一つです。
おわりに
日天株式会社の岡野さんにお話をお伺いする中で、一般的に知られているメリットの他にも、さまざまな利点を知ることができました。太陽光発電を検討している方であれば、夜間や緊急時にも電力が使える蓄電池システムの設置も、ぜひ検討してみてはいかがでしょうか。