絵本とのふれあいは何歳からスタートすればいいの?
「絵本とのふれあいのスタートは早ければ早いほどいいので、0歳から始めましょう」と語るのは、絵本読み聞かせの活動をしている一般財団法人・絵本未来創造機構の仲宗根敦子さん。
「0歳から6歳頃までのお子さんはスポンジのように、あっという間に周りの全ての事を吸収します。いわば脳の黄金期です。この時期にたくさんの良い体験、上質で豊富な刺激を与えることで、子どもの脳は活性化し、神経細胞のネットワークに良い影響があると高性能な脳に成長します」(仲宗根さん)
出産後、育児がスタートすると忙しい日々が続き、絵本をゆっくり読んであげたいと思ってもつい後回しになってしまうママ、パパも多いはず。子どもの脳の「ゴールデンタイム」を逃さないためには、早めに絵本とのふれあい方を知っておきましょう。
0歳児に絵本の読み聞かせ、こんな効果が!
赤ちゃんというのは0歳から1歳の間に、超天才的な成長をします。生まれたての何もできないところから、たった約12カ月で歩けるまでになってしまうのです。脳の情報を伝達する接合部にあるシナプスも、0歳期が最も発達するといわれています。
絵本とのふれあいで、脳の成長発達に一番大切な時期に言葉のシャワーを浴びることは、将来の子どもの能力に大きな影響を与えます。
「わが家の体験をお話しますと、生後1日目から毎日絵本を読んでいました。すると1カ月もたたずに絵本を目で追ったり、反応するようになったのです。言葉を覚えるのも早く、7カ月頃にはもう『ママ』と言い始め、2歳頃には自分の気持ちをしっかり言えるようになりました」(仲宗根さん)
0歳から絵本の読み聞かせを始めることは、「早すぎ」ではありません。むしろ0歳から始めてみるのがよいようです。
また、胎児は7カ月ぐらいで聴覚が発達してくるので、胎教として絵本を読むことも意味があるとのこと。胎児にはママが好きな本を読んであげるとよいそうです。
「人は絵本に出てくるようなやさしい言葉、美しい言葉から安心感を得ることができます。好きな本を読んでいるとママの心が安定して、それが赤ちゃんにも伝わります。絵本は親自身をも癒やす力があるのです」(仲宗根さん)
絵本とのふれあいで、赤ちゃんの知と心が育つ
乳幼児期に最も発達するといわれる脳の神経細胞のネットワークは、知能だけでなく、情緒の向上にも密接な関わりがあります。
「子どもの能力開発にとって大切なこの時期に、圧倒的に多くの時間を共にする親は、0歳児の能力を開発していく土台をつくっていることになります。
赤ちゃんや子どもにとって一番大きな影響を与えるのが、肯定的な言葉です。優れた絵本を通じた肯定的な言葉掛けは、親に愛されているという安心感から、赤ちゃんの心にポジティブな気持をもたらします」(仲宗根さん)
そして仲宗根さんは、「絵本を読んだ後で子どもを褒めること」をすすめています。絵本を読み終わった後、ママやパパが子どもを褒めたり、認める言動をすることで、子どもは絵本を好きになるそうです。
仲宗根さんによると、赤ちゃんや子どもへの褒め言葉は、「よく聞いていたね」「えらかったね」「ママは楽しかったよ」など、ちょっとした一言でよいそうですよ。
0歳児の知育に効果的な本の選び方
「赤ちゃんの興味をひきやすい絵本というのがあるのです。例えば0歳児向きの絵本の一冊『な~んだ?』は、言葉の繰り返しがポイントです」と仲宗根さん。
0歳児の知育に効果的な絵本の特徴を教えていただきました。
1. 色使い、コントラストのはっきりした絵本
0歳児は視力がまだ発達していないので、コントラストのはっきりした絵本、動きのある絵本が理想的です。赤ちゃんが見やすい絵本の読み聞かせをすると、脳神経の発達にも効果があります。
2.「オノマトペ」のある絵本
絵本にたくさん出てくる擬音表現や擬態表現である「オモマトペ」は、赤ちゃんの想像力を豊かにします。「オノマトペ」を聞いたり使ってみたりする中で表現する力も養われ、子どもの感性や個性を育ててくれます。
3. 繰り返しの言葉が出てくる絵本
まだ言葉と物が結びついていない0歳児には、繰り返しの言葉やリズムの面白さを味わえる絵本もおすすめです。定型文のように繰り返される言葉は、赤ちゃんに安心感を与えます。
4. 生活の疑似体験ができる絵本
0歳の赤ちゃんはこれから未知のもの、出来事にどんどん遭遇していきます。
そのため、疑似体験となるような絵本もおすすめです。
「たとえば、お風呂、歯磨き、トイレトレーニングなど、子どもが嫌がるような生活習慣について、まず絵本で親しみを持ってもらうのもおすすめです。果物、野菜といった食べ物に関する絵本もいいですね。そういう絵本を見た後にスーパーなどで本物に出会ったら、『これ本で見たね』などと共感してあげてください」(仲宗根さん)
0歳児におすすめの絵本8選
仲宗根さんが豊富な絵本読み聞かせの経験の中から選んだ、0歳児への読み聞かせにおすすめの絵本8冊をご紹介します。
『うまれてきてくれてありがとう』
おすすめの月齢:0カ月~
出版社:童心社
0歳から小学生くらいまでにぜひ読んであげてほしい絵本です。「うまれてきてくれてありがとう」という親からの大切なメッセージを伝えることで、子どもの自己肯定感が高まり、情緒の安定につながるでしょう。
おすすめの読み方:
寝る前の定番の一冊に。「うまれてきてくれてありがとう」が繰り返し出てきますので、読む前には心を落ち着かせて、気持ちを込めて読んであげましょう。口下手で伝えるのが苦手なママ、パパでも、絵本を活用して愛情を伝えることができます。
『じゃあじゃあ びりびり』
おすすめの月齢:0カ月~
出版社:偕成社
初めての絵本の定番で、ママから「0歳の赤ちゃんが気に入った」との意見が多かった絵本。「ぶーぶー」「じゃあじゃあ」という擬音部分で赤ちゃんが反応してくれるそうです。改訂版は、赤ちゃんに渡しても安心の厚紙絵本になっています。
おすすめの読み方:
絵本の最初に「〇〇ちゃんの絵本です」と名前を入れて呼んであげられるようになっているので、名前を毎回呼び掛けてあげてください。めくっていて赤ちゃんが気に入ったページがあったら、じっくり見せてあげましょう。
『くだもの』
おすすめの月齢:3カ月~
出版社:福音館書店
前述した「赤ちゃんの疑似体験になる」絵本の一つで、果物が丁寧に描かれています。子どもたちに身近な果物が丸ごと登場し、「さあどうぞ」と次に食べやすい形で出されます。
おすすめの読み方:
離乳食がスタートする6カ月前後、食べ物をリアルに描いた絵本は「食」への興味をひくきっかけになるかもしれません。食べ物の絵が出てきたら、ママやパパが食べる真似をして、「食べる」という動作をイメージさせてあげましょう。
『だるまさんが』
おすすめの月齢:3カ月~
出版社:偕成社
ユーモラスな赤いだるまさんが主人公で、0歳児がよく反応したり、喜んでくれたりする絵本として人気があります。0歳から大人まで笑いの渦にひきこまれる、「だるまさん」シリーズ第1弾です。
おすすめの読み方:
ページを開いていくと、転んだり、縮んだり、笑ったり、だるまさんのアクションが次々に出てくる絵本なので、子どもが読むだけで笑って反応してくれる絵本です。何度も繰り返し読み聞かせして親子のコミュニケーションを深められる絵本です。
『きたかぜとたいよう』
おすすめの月齢:3カ月~
出版社: 西村書店
北風と太陽が、旅人の洋服を脱がそうと競う、有名なイソップ寓話です。ママやパパが気になったり共感できたりするお話の絵本を選んで、読んであげるのもいいと思います。
おすすめの読み方:
お話だけでなく、美しい風景の描写も魅力なので、風景を見ながら、絵を見て感じながら読み聞かせをしてください。長いお話の絵本は0歳時には、まだ内容が理解できなくても集中していなくても大丈夫です。ママの感情はしっかり伝わっています。
『な~んだ?』
おすすめの月齢:6カ月~
出版社:パイインターナショナル
「はっぱが ついていない えだに にているもの、な~んだ?」0歳からの子どもの想像力をかき立てる繰り返し絵本。世界17カ国以上で翻訳され、英語も付いています。
おすすめの読み方:
ただめくるだけでなく、広げて見せる仕掛けのある絵本なので、めくる瞬間に「な~んだ?」と声を掛けて、赤ちゃんに興味を持ってもらうとよいでしょう。月齢が上がってきたら、赤ちゃんの反応を見ながら、ママやパパからのヒントを付け加えてあげるのもいいですね。
『おつきさまこんばんは』
おすすめの月齢:6カ月~
出版社:福音館書店
紺色の夜空に明るい月のコントラストが印象的で、夜寝る前に読む絵本としておすすめ。月の表情もすてきで、穏やかな気持ちになれる絵本です。
おすすめの読み方:
6カ月頃になると赤ちゃんの視力も上がってくるので、絵本に親しみつつ、実際の月も見せてあげましょう。裏表紙には舌を出したおつきさまが描かれているので、ママやパパがおつきさまと同じ顔をしてあげたら、赤ちゃんが喜んでくれるかもしれません。
『ふとんが ふっとんだ』
おすすめの月齢:6カ月~
出版社:講談社
ママやパパが面白がって読んで、その楽しい感情が赤ちゃんに伝わったらいいなと思う絵本です。ふとんくんの中にいろんなものが入っています。「ふとんが・・・ふっとんだ!」「いるかは・・・いるか?」など、駄洒落が次々に出てきます。
おすすめの読み方:
赤ちゃんは意味は理解できなくても、言葉の抑揚を楽しめます。駄洒落だからこそ抑揚を大きくしたり、ジェスチャーをいれたりしながら読んであげるとよいでしょう。
0歳児の絵本とのふれあい方Q&A
0歳児に絵本を読み聞かせするときに、よくある悩みや質問について仲宗根さんに回答していただきました。
Q. 絵本を読んであげても、子どもが絵本に集中してくれないのですが、どうしたらいいのでしょう?
読み聞かせで最も多い悩みが、「絵本を見てくれない」「集中してくれない」ということです。早くから絵本を読んでもらっていた子どもは絵本を読むと機嫌が直ったりするそうですが、それも継続の結果だと思います。見てくれなくてもすぐにあきらめず、習慣づけていくことが大事です。
Q. 絵本を破ったりかんだりしてしまいます。まだ絵本は早いのでしょうか?
0歳児で破ったりかんだりするのが楽しい時期なら、「絵本を大事にしようね」と声を掛けたり、かんでも大丈夫なものや、破れにくい硬い紙の絵本を渡したりするのもいいと思います。
絵本はまだ早い、と思っていると絵本を読み始めるタイミングがつかみにくくなってしまいます。もしかすると赤ちゃんが絵本をかんだりするのは、絵本を気に入っている証拠かもしれません。
Q. 疲れて絵本の読み聞かせがつらいときはどうしたらいいですか?
疲れた日の夜は、読むのは1冊だけでもいいのです。0歳児の赤ちゃんに絵本を読んであげる場合でも、ゆっくり読まないで、自然のスピードで読むことをおすすめしていますので、普通に読めば1冊はたった5分、10分で終わります。
朝でも日中でも夜でも、とにかく隙間時間を使って読んでみましょう。読み聞かせを習慣にするには、親自身が疲れないことも大切です。
おわりに
仲宗根さんによると、「読み聞かせを始めても最初は反応が少ないこともありますが、習慣をつくり、少しずつでも続けることが大事」とのこと。
0歳児からの絵本とのふれあいで、子どもの未来の土台を作っていきましょう。