質の良い睡眠とは?
湿度が高い日や気温の変化が激しい季節の変わり目に、眠りが浅くなるという方は多いのではないでしょうか? まずは眠りが浅くなる原因や、睡眠の質を高めるためのポイントをご紹介します。
さらに、快適な睡眠を得るためにおすすめの寝具について、無印良品として素材にこだわり、さまざまな寝具を展開している株式会社良品計画 生活雑貨部の久保田 裕子さんに伺います。
まず初めに、質の良い睡眠とはどのようなものなのでしょうか?
人間は、浅い眠りのレム睡眠と、深い眠りのノンレム睡眠を約90分の周期で交互に繰り返しています。一度の眠りの中で深い眠りが規則的に訪れるのが質の良い睡眠です。
たとえ多少睡眠時間が短かったとしても、眠りが深ければ「たっぷり眠った」、つまり質の良い睡眠になると言われています。
では、眠りの質を高めるにはどのような方法があるのでしょうか。
参考:日本成人病予防協会「睡眠と生活リズム ~ストレス解消法~」
眠りの質を高める3つのポイント
快適な眠りには、生活習慣や眠りにつく環境など、さまざまな要因が関係しています。
すぐにできる眠りの質を高める方法を、3つご紹介します。
【睡眠の質を高める方法1】湯船に浸かって体温を上げよう
就寝の前に入浴する方も多いと思いますが、入浴の仕方が大切です。
良質な睡眠のための入浴のポイントは3つです。
1.就寝1~3時間前に入浴する
2.40℃程度の高すぎない温度
3.ゆっくりと湯船に浸かる
入浴は、なぜ睡眠に効果的なのでしょうか?
入浴により体温を一時的に上げておくと、その後体温が下がり始めます。人間は体温が下がり始めると深い眠りにつきやすくなります。例えば、運動をした後しばらくすると眠くなったことはありませんか。これも同じ理由です。
そのため、意図的なタイミングで入浴を行うことで快眠につながるのです。
また、良質な睡眠には精神的にリラックスした状態であることも大切です。入浴には精神的なリラックス効果もあります。
しかしながら、高温の湯船に浸かると体温が上昇し過ぎてしまい、入眠を妨げる原因になると言われていますので、上記の入浴ポイントを守って実践しましょう。
【睡眠の質を高める方法2】エアコンを上手に活用しよう
気温や湿度が高いと非常に寝苦しいですよね。
質の良い睡眠を取るには、寝室の気温が28℃以下、湿度が40~60%の状態が理想的と言われています。夏の熱帯夜の時などは、就寝1時間前に低めの温度で設定して部屋を冷やしておき、寝る時に設定温度を快適な温度まで上げて、そのままエアコンをつけっぱなしにしておくというのがおすすめです。
また、エアコンの風が直接体に当たると、冷え過ぎの原因になります。
扇風機やサーキュレーターをエアコンとあわせて使用し、部屋の空気を循環させることで、室内全体を快適な温度に保つことができます。
【睡眠の質を高める方法3】季節に適した寝具を使おう
温度や湿度を適切に保つためには、眠りを妨げないような寝具を使うことも有効です。
寝室と布団内の温度・湿度は別物で、布団の中の温度や湿度は「寝床内気象(しんしょうないきしょう)」と呼ばれています。
理想的な寝床内気象は、温度が33℃、湿度が50%程度。
寝具の種類や素材で、寝床内気象は大きく変化します。季節や自分の性質にあった寝具を選ぶことで、より快適な睡眠を得ることができます。
無印良品の担当者に聞く! 睡眠の質を高める寝具とは?
ここからは、寝具におすすめの素材や、選ぶときに確認したいポイントなどを、素材にこだわり、さまざまな寝具を展開している株式会社良品計画 生活雑貨部の久保田 裕子さんに教えていただきました。
久保田さん「最近では、冷感や温感の機能に特化した寝具を見掛けますが、冷え過ぎや蒸れ過ぎが不快で眠れなくなることもあります。温度だけではなく、触り心地などの快適さも大切です」
実際に、良品計画さんで商品開発の際には、心地よさという観点から、天然素材にこだわって開発を行うのだそう。
久保田さん「天然素材は、自然で生きる中で、気温や湿度に対応する力を元々持っています。その力を極力生かすことで心地よさを追求しています」
天然素材の寝具は、「吸水性・放湿性」といわれる、適度な温度・湿度にコントロールする力が優れているそうです。冷感素材のシーツだと夏しか使えない、ということが起きてしまいますが、天然素材のものだと春~夏、夏~秋などの季節の変わり目でも適度な環境を保ってくれるため、シーズンをまたいで長く使えることもメリットなんだとか。
もちろん、素材によって吸水性が優れているもの、吸水性はあるが放湿性はあまり高くないものなど特徴があるので、素材ごとの良さを知って使い分けるのもよいでしょう。
ここからは、寝具を選ぶときのポイントについて久保田さんに教えていただきます。
眠りを快適にする枕を選ぼう!
枕を選ぶポイントは、沈み込み過ぎない、頭を支える機能を持ったものを選ぶこと。
久保田さん「頭部は汗をかきやすく、寝具に臭いが溜まりやすいため、洗濯機で丸ごと洗えるような作りのものだと、いつも快適に使用することができます」
枕はカバーをつけて使用することが多いと思いますが、肌に触れる部分に近い表面の素材は、肌なじみが良く、汗を吸い取るような天然素材が優れているそうです。
敷布団や掛布団はどう選べばいいの?
敷布団や掛布団は安いものではありませんので、長く快適に使えるものを選びたいですよね。また、敷布団はなかなか洗濯ができないので湿気が気になるもの。久保田さんに敷布団や掛布団についても教えていただきました。
敷布団
久保田さんによると敷布団は湿気の温床と言われるほど、湿気が溜まりやすい場所とのこと。そのため、湿気を吸うような素材を含むものを選んだほうがよいそうです。
久保田さん「ウール混の敷布団がおすすめです。ウールと聞くと、暑いのではないか、というイメージを持ちがちですが、こちらも吸保湿性が高いので快適さにつながります」
また、敷布団を一般家庭で洗うのはなかなか難しいですよね。その場合は、洗えるベッドパットを使用するのがよいのだそう。ベッドパットも枕と同様、吸水性・放湿性があり、汗を吸ってもさらさらした肌触りを保てる素材のものがおすすめとのこと。
また、敷布団をどこに敷くかによっても寝やすさが変わります。寝苦しさを感じる方は、すのこのように通気性が高いものを下に敷いて使用すると、快適さが増すそうです。
掛布団
久保田さん「掛布団なら、羽毛がおすすめです。羽毛自体が湿気をコントロールする力を持っていますし、保温性があります」
天然素材である羽毛は、吸水性と保湿性に優れており、薄がけのものを選べば、春~初夏、晩夏~秋と、シーズンをまたいで使えることもおすすめの理由なのだそう。
真夏にはタオルケットや薄がけ布団を使用するのもよいですが、その場合は洗濯機で洗えるものを選ぶようにしましょう。
枕や布団そのものはもちろん、カバー選びも大切!
体に直に接触する枕カバーや布団カバーは、寝心地の良さに直結します。
久保田さんによると、汗を吸収しつつも、さらっとした肌触りを保てる素材を使ったカバーを選ぶのがよいそう。
枕や布団を買い替えるのは大変、という方でも、カバーであればすぐに取り入れることができるのではないでしょうか? 久保田さんにおすすめの素材について教えていただきました。
【おすすめ素材1】綿
久保田さん「綿素材は、吸水性が高いことが一番の特長です。人間は一晩でコップ1杯分の汗をかくと言われていますので、寝具に吸水性は欠かせません」
また、とても丈夫なことも良さの一つだそうです。
久保田さん「洗いざらしのシャツのように、洗うことでより吸水性が上がってきます」
一方で、少し放湿性が弱いそうですが、後述しているリヨセルとあわせた素材のものを選ぶと湿度の高い夏でも快適に使えるそうです。
【おすすめ素材2】麻
久保田さん「特に麻は、寝具の素材としてはキングと言ってもよいくらい、吸水性に加えて放湿性が高く、さらさらとした使い心地が特長です」
放湿性が高いので、春~夏に特におすすめの素材だそうです。
【おすすめ素材3】リヨセル
リヨセルは、パルプからできている天然由来の素材で、麻と同じように吸水性・放湿性に優れています。
久保田さん「綿にリヨセルを入れれば、綿が持っていない放湿性を兼ね備えた素材になります。また、当社ではリヨセル麻というものを開発していて夏季に販売していますが、高い吸放湿性に加えて、麻だけのものと比べてしわになりにくく洗濯しやすいという特長を持っています」
おわりに
生活習慣や寝具を変えるなど、工夫次第で快適な睡眠を得ることができます。睡眠の質は、心にも体にも大きく影響します。一日頑張った自分をいたわるように、質の良い睡眠をとり、毎日を快適に過ごしましょう。