テレワークを実施する企業は25%。在宅勤務は今後も増えていく!?
テレワーク普及の第一人者として知られる株式会社テレワークマネジメントの代表、田澤由利さんによると、新型コロナウィルスの感染拡大防止のためテレワークを実施した企業は約25%という調査結果があるそうです(※)。
田澤さん「企業規模別では、大企業の48.0%が実施したと回答したのに対し、中小企業では20.9%。大企業と中小企業では実施率に倍以上の差が出ましたが、多くの人々がテレワークに切り替えた状況がわかりますね」
田澤さんによると、この状況はしばらく続くだろうとのこと。
田澤さん「ソーシャルディスタンシング、つまり人との接触回避ですが、これは『2022年ごろまで断続的に続くかもしれない』、という試算があります。テレワークも一時的な措置ではなく、長期的に行われていく可能性は高いでしょう。
否応なしに始まったテレワークとはいえ、実際にやってみるとよい面もたくさん見えてきたはずです。これを機に『新しい働き方を創るんだ』という意識を持つことをおすすめします」
テレワークは、子育て世帯や介護世帯、障がいのある人など、多様な人たちの柔軟な働き方を可能にするのはもちろん、自分の時間を増やしたり、好きな場所で暮らしたりと、すべての人に新しい生活をもたらします。
この機会に前向きにテレワークに取り組むことで、新しい働き方を手に入れるチャンスになるかもしれません。
※東京商工リサーチ実施、有効回答1万7896社、2020年3月27日~4月5日
ただ、自宅でのテレワークではオフィスのように仕事に特化した環境が整っていません。「仕事の生産性が下がった・・・」といった悩みや腰痛や肩こりなどのマイナートラブルも少なくないようです。
田澤さんによると、ちょっとした工夫でこうした問題は解決できるのだそう。田澤さんのアドバイスを元に実際に環境を改善してみました。
【テレワークの工夫1】腰痛防止にダイニングチェアにひと手間!
テレワークを始めてから、普段なかった腰痛に悩まされるようになった・・・。そんな声をよく聞きます。
田澤さん「ダイニングテーブルをデスクの代わりに使っている人は多いと思いますが、ダイニングチェアの多くは長時間座ることを目的として作られていません。仕事で1日6~7時間も座ってしまうと、硬さに腰が悲鳴をあげてしまうんです」
そこで田澤さんがおすすめしているのは、家中のクッションや座布団で「座り心地」を調整すること。ダイニングチェアのほうを、体に合わせて改造してしまおう、というわけです。
硬いシェルチェアに低反発の円座と座布団を組み合わせてみると、腰にやさしいイスに早変わりしました!
椅子の下の足置きで高さを調整
座面の高さが上がってしまったため、踏み台を足元において姿勢を補正。足がブラブラせず、すごくラクになりました!
クッションの下には滑り止めシートを
クッションがずれるのを防ぐため、すべり止めシートをカットしてイスの上に設置してみました。小さなストレスが解消されてスッキリしました。
【テレワークの工夫2】肩コリ・首コリ防止に、パソコンの高さを調節!
テレワークを始めてから、首と肩のコリが酷くなりました。これも姿勢の悪さからくる問題のようです。
田澤さん「パソコンの高さが合っていないのではないでしょうか。ご自宅のダイニングテーブルでノートPCを使うと、ディスプレイの位置が低すぎて、知らず知らずのうちに下向きになってしまう人が多いようです」
そこで、身近なものを使ってPCの高さをかさ上げ。試行錯誤した結果、なんと、子どもの雑誌の厚さが、私の体格+わが家のダイニングテーブルにピッタリだということが判明しました。
PCの高さを調節すると、目の疲れも少し和らいだ感じ。元手ゼロで目に見える効果を実感できて、とてもいい気分です。
【テレワークの工夫3】背中痛予防にスタンディング作業。WEB会議にもおすすめ!
オフィスでは意識していなくても立ったり座ったりを頻繁に繰り返していますが、テレワークをしているとずっと座ったままの作業になりがち。
田澤さん「そういうときは、時々『立ち作業』を取り入れるのがおすすめです。ノートPCの場所を動かして、立ったままタイピングをすると、姿勢も気分も変わってリフレッシュできますよ。
高さが変えられる昇降式デスクがあれば理想的ですが、ちょっと価格が高いのが難。手が出ないわ・・・という人は、高さのある家具をデスクにしてみたり、箱やバスケットなどを使ってPCの高さを変えてみましょう」
こちらは、田澤さんが実際にご自宅で取り入れている『立ち作業』。プリンターの上にかごを置いて、即席のスタンディングデスクを作り上げています。
田澤さん「立ったままだとタイピングができない・・・という方は、WEB会議の時だけスタンディングを取り入れてみてください。姿勢を変えるとリフレッシュできますし、PCのカメラの高さを上げると、気になる『二重あご』が映ってしまうのも防ぐことができます(笑)」
二重あご防止! 女性には嬉しい情報ですね。
厚さ20㎝ほどのピクニックバスケットをノートPCの下に入れると、ノートPCのカメラが真正面から顔を映してくれるので、WEB会議にピッタリの高さになりました。
【テレワークの工夫4】仕事部屋を作れない場合、移動式オフィスを作る
自宅でのテレワークを前提に住まいをプランニングしていれば別ですが、多くの人は、自宅で長時間仕事をすることなど想定外だと思われます。
ダイニングテーブルいっぱいに書類を広げて業務を進めていても、昼食時間が来れば、家族のためにテーブルの上は片づけねばなりません。そして昼食が終われば、もう一度書類を広げて再起動。その分だけ作業が止まってしまうこの状況、とても時間効率がいいとはいえません。
田澤さん「仕事道具をひとまとめにしておけるバッグやかごなどを用意しましょう。お子さんが小さいなら、鍵をかけられるスーツケースもおすすめです。オフィスを持ち歩く感じでバッグやスーツケースごと移動をすれば、家中のいろんなところで効率よく仕事ができますよ」
我が家で用意した「お仕事のかご」。「ここの中身は絶対にさわっちゃダメだよ!」と、子どもたちに言い聞かせています。
【テレワークの工夫5】気分が切り替わらない場合「疑似出社」にトライ
テレワークの難点は、気分を切り替えにくいということ。目に映る風景がいつもと同じという状況では、なかなか仕事モードのスイッチが入りません。
田澤さん「テレワーク生活が長い方の中には、毎日『疑似出社』を実践している人が少なくありません。ちゃんとメイクをして、髪を整えて、仕事着に着替えて、アクセサリーもつける。そして、通勤のつもりで外を散歩するんです。これが思っている以上に効果的で、気持ちの切り替えがうまくいくんですよ」
WEB会議がある日でも、ない日でも、身なりを整えると心が整っていくのを実感できます。ラクなカジュアル服でなく、きちんとしたオフィス用の服を「あえて」着るというのも効果がありそうです。
田澤さん「いつも座っているイスの位置を変えてみるだけで、新鮮な気分になります。とにかく、目に映る景色に変化を持たせてみてください。テレワークは五感が大事。『視界を変える』というのは、思っている以上に効果があるのでぜひやってみていただきたいですね」
【テレワークの工夫6】WEB会議は、音を遮る空間を探す
こちらは我が家で子ども部屋内に一時的に作ったWEB会議スペース。イス1個とPCを置く空間があれば、WEB会議はなんとか乗り切れます。
田澤さん「WEB会議の成功のポイントは、家の中の音声をどれくらい遮断できるかにかかっています。書斎がない場合、寝室、洗面所、バスルームも活用しましょう。
寝室で会議なんかできない! 丸見えで恥ずかしい! と思うかもしれませんが、パソコンを置く位置を工夫れば生活感は隠せますし、ドアや窓(カーテンを閉めてね)を背景にすると意外にわかりません。お気に入りの画像を背景にするバーチャル背景も活用してみてくださいね」
【テレワークの工夫7】ランチタイムを厳守し、休憩のリズムをつくる
テレワークの問題としてよく挙げられるのが「仕事をし過ぎてしまう」ということ。テレワークに慣れてくるほどに、集中しすぎてしまい、食事(ランチ)がいい加減になるという人は少なくないようです。
田澤さん「テレワークをする人は、ランチタイムを大事な時間の区切りとして意識してほしいです。12時でも13時でもいいので、毎日決めた時間に1時間、しっかりと休憩を取りましょう。休憩をきちんと取ることが、結果として作業効率を落とさず仕事をすることにつながります」
休憩時間になったら、リラックスできるものを身近に持ってくるのも◎。マッサージをしたり、10~15分程度の短い昼寝を取るのもリフレッシュになるようです。
【テレワークの工夫8】時間を区切って、定期的に運動をする
通勤がないため運動不足になることも、テレワークのあるある問題です。
田澤さん「ラジオ体操は10分間でコンパクトに体を動かすポーズが入っていてとてもおすすめです。朝の始業前、とか、午後の始業前、など、時間を決めて『あえて』取り入れていきましょう。いまはたくさんの体操がYoutubeなどにアップされていますので、お気に入りの動画を見つけて一緒に体操するのもいいですね」
我が家ではやる気を出すため、ラジオ体操のスタンプカードを自作。休校中の子どもとともに、ラジオ体操をした日はスタンプを押して、工夫しながら実践しています。毎日は難しくても、スタンプがたまったらご褒美においしいものをみんなで食べようという目標を立てています。
ちなみにラジオ体操の音源は、無料のインターネットサービスなどでも見つけられます。動画でも探せますし、気軽にできるのが良いですね。
【テレワークの工夫9】お気に入りの飲み物を淹れ、時間にメリハリをつける
「あえて」の休憩時間が、テレワーク中の時間管理にはとても大事、と田澤さん。
もしコーヒー好きならば、コーヒーをミルで豆から挽き、1杯淹れるのにゆっくりと時間をかけてみるのもいいですね。
ガリゴリ・・・と、すべてを忘れて豆を挽く。物理的に時間がかかってしまうことが、かえってメリハリのある時間の使い方になります。
おわりに
家具の工夫から時間の使い方まで、専門家のアドバイスに従いつつ、できそうなことから「あえて」意識して取り組んでみました。
自分から能動的に取り組むと、テレワークをポジティブにとらえられるようになったことが、一番の効果だった気がします。外出自粛のため仕方なく・・・という消極的な気持ちではなく、この経験を今後に生かすぞという前向きな気持ちで、より効率のいいテレワークを考えるきっかけになれば、幸いです。
出典:東京商工リサーチ『第3回「新型コロナウイルスに関するアンケート」調査』(2020年4月)