おしゃれで機能的! 琺瑯(ほうろう)とは? メリットは?
琺瑯(ほうろう)は、金属(鉄、アルミなど)の表面にガラス質の釉薬(ゆうやく)を焼き付けたもの。金属のようでもあり、磁器のようでもある独特の質感は、この構造によって生み出されています。
その歴史は古く、紀元前1300年頃につくられた古代エジプト・ツタンカーメン王の黄金マスクが最初期のものといわれています。
日本に伝わったのは飛鳥時代。江戸時代には装飾品としてふすまの引手や刀のツバ、印籠などに使われていましたが、近代になってから鉄のサビ止めとして応用されるようになり、身近な生活素材になりました。
【琺瑯のメリット1 耐腐食性】酸や塩に強い
琺瑯は、酸や塩分に対して、強い耐久性を持っています。
そのため、貯蔵や醸造などの容器としてよく使われます。金属の器では錆びたり腐食してしまう味噌、梅干の保存のほか、塩分のあるぬか床を長期保存しておく容器としても適しています。
耐薬品性にもすぐれているので、理化学用品としてもよく使われています。
【琺瑯のメリット2 耐熱性】熱に強い
琺瑯は金属の素地をガラス質でおおったもの。直火にかけられ、オーブンにも直接入れられます。
ちなみに琺瑯には、鋳物をガラスでおおった「鋳物琺瑯(いものほうろう)」と、鋼板にガラス質を吹き付けた「鋼板琺瑯(こうばんほうろう)」があります。
「鋳物琺瑯」はどっしりとした鍋などでよく見かけます。こちらは熱の伝わり方がゆっくりな分、保温性にすぐれます。
「鋼板琺瑯」は軽く、食器や調理器具などによく使われます。こちらは熱伝導率がよく冷却性もいいので、食品の粗熱を取るバットや、作り置き食材の保存容器などに適しています。
【琺瑯のメリット3 非吸着性】においがつきにくい
琺瑯の表面は、ガラス。ガラス質は中性かつ不活化性のため、内容物と化学反応を起こすことがありません。
表面がつるんとなめらかで吸着しにくい性質(非吸着性)を持っているため、マリネなどを漬け込んでおいてもニオイがつきにくいのです。
硬度もあるため傷がつきにくく、汚れやにおいがつきにくい、雑菌が繁殖しにくい、汚れ落ちがいいなどのメリットも。プラスチック容器に入れるとにおいや油のヌルつきが残る食材も、琺瑯ならスッキリです。
強いニオイがある「ぬか床」の保存容器としてよく使われるのも納得ですね。
【琺瑯のメリット4 安全性】有害な物質を使っていない
琺瑯が欠けたり、剥がれたりしてしまうと、体に有害なものが出てしまうのでしょうか?
答えはNO!
琺瑯の表面が剥がれても、出てくるのは鉄。有害物質が発生することはないそうです。
【琺瑯のメリット5 装飾性】発色がきれい
ガラス質に着色ができるため、美しい色あいが楽しめる琺瑯。食器や調理器具のほか、システムキッチンや建物の外壁、看板にも多く使用されています。
琺瑯のお手入れ方法とNGな使い方
琺瑯のお手入れは簡単。中性洗剤と傷のつかないスポンジで洗い、水気をよく拭き取り乾燥させるだけです。乾燥させることがサビの防止につながります。
アルカリ性洗剤(食器洗浄機専用洗剤など)や塩素系漂白剤は、琺瑯の表面のツヤを損ない劣化を早めることもありるため、使用する際はご注意を!
金属の調理器具はNG!
アルミ製、ステンレス製の調理器具(お玉、ヘラ等)を使うと、黒っぽい跡が琺瑯に付くことがあります。
これは金属の硬度が琺瑯より低いため、金属が削れて琺瑯に付着してしまうから。
お玉、ヘラなどの調理器具は木製やシリコン製がおすすめです。
焦げをこするのはNG!
琺瑯の皿や鍋などについた焦げつきは、こすらずに浮かせて取ります。
1.焦がした鍋にぬるま湯を入れる。
2.大さじ1の重曹を入れ、かき混ぜる。
3.食用油を少量(2~3滴)加える。
4.鍋を火にかけ、沸騰したら火をとめる。
5.そのまま数時間置き、冷めたら流してスポンジで洗う。
焦げがひどい時には、1~5を何度か繰り返します。ただし、琺瑯のツヤが損なわれる場合もあるので、まずは焦がさないようにすることが大事ですね。
落下や強い衝撃はNG!
琺瑯は表面がガラス質なので、衝撃や落下があると欠けたり割れたりすることがあります。
欠けた箇所は鉄地(にぶい銀色)が露出することも。このような箇所は水分や酸、塩分がついたままの状態になるとサビが出やすくなります。
鉄サビなので有害ではありませんが、使用後は水分を切ってしっかり乾燥させて使いましょう。
電子レンジはNG! IHクッキングヒーターも使えない可能性が!
琺瑯は金属で成型されています。オーブンの使用はOKですが、電子レンジでは使えません。IHクッキングヒーターも使えないケースがあります。琺瑯容器の取扱説明書にIHクッキングヒーター対応と記載があるかどうか確認しましょう。
急冷はNG!
熱に強い琺瑯ですが、アツアツに熱した琺瑯を冷水に浸けると、急激な温度差でガラス質をいためてしまうことがあります。
食器から看板まで、琺瑯の使いみちはさまざま
琺瑯は鉄とガラスがしっかりと結合し、密着しています。
そこから生み出される耐久性、耐摩耗性、非吸着性、硬度は、琺瑯の使いみちを多彩に広げています。
【琺瑯の用途1】冷蔵・冷凍保存容器、貯蔵容器に
酸や塩分に強く、冷却性がよくて、油分やにおいを吸着しにくい琺瑯。
食材や料理を選ばないため、保存容器として最適です。冷蔵はもちろん冷凍まで対応できるのもうれしい点! 重ね収納ができるものを選ぶと、冷蔵庫もすっきり整理できます。
表面が硬く雑菌が繁殖しにくいため、ぬか床の容器として琺瑯をご指名買いする人も多数!
【琺瑯の用途2】鍋、オーブン皿に
熱に強い琺瑯は、鍋ややかんなどの日常使いのほかに、オーブン調理も得意。
琺瑯のグラタン皿やキッシュ皿は、下準備をしてオーブンに入れ、そのまま食卓へ直行できるのがうれしいポイントです。
【琺瑯の用途3】ガーデニング用品、建材・看板に
発色が美しく、ほっこりとしたやさしい風合いがある琺瑯は、花器やガーデニング用品としても人気です。
琺瑯のマグカップに切り花を入れておくだけでも、絵になるのがうれしいですね。
おわりに
そこに置いてあるだけで、独特の存在感がある琺瑯。ステキな見た目もさることながら、すぐれた機能性に惚れ直してしまいますね。強くて、やさしくて、美しい、普段づかいにもおもてなしにも重宝する琺瑯。暮らしをきちんと楽しみたい人にこそ、おすすめのアイテムです。
参考:野田琺瑯株式会社「ほうろう(琺瑯)について」